モブ、王妃とお茶と混乱と。
「ねえ、リリアン貴方わざと王城に近付いてないわね?」
挨拶もそこそこに、この国の王妃エリザベート義姉様が言う
「いいえ、そのようなつもりは微塵もありませんわ」
「・・・」
無言の圧力が凄いです・・・
「まあ良いわ、これから沢山会えるものね」
う、そうですね、ドレスを仕立てる約束しましたものね
エリザ義姉様ともラファエル義母様とも・・・
「はい、でもまだ早いのでは無いのですか?」
「何を言っているの!ヴィルの妻になるのだから、半端なドレスは許されないわ、だから手間も時間も掛かるし、掛けるのよ」
「あの、あまり華美なものは似合わないので・・・」
ドレスに負けてしまいます
「ドレス自体はシンプルに、でも刺繍や造りにじっくり時間を使いましょう」
ああ、楽しみ!と張り切るエリザ義姉様。
「お、お手柔らかに・・・」
「という訳で、特別顧問に協力をして頂きます」
「特別顧問?」
誰ですかね、エリザ義姉様の知り合いかしら
「はーい、リリアンちゃん宜しくね、腕が鳴るわ」
ラファエル王太后様!あ、そう言えばドレスのお話、ラファエル義母様ともしていましたね・・・
待って下さい!今思えば顔合わせの時にフラグ立ってたけど、これ大変な事なのでは。
別々では無く、王妃様と王太后様御二人監修によるドレス・・・
ヴィルヘルム様は王家と距離を取る為に臣籍に下ったのでは、あまり王家の威光を見せても、と言えば
「あら、あんなの権力と継承権のみの話よ、親子の縁を切った訳では無いのだから何も問題ないわ」
お、oh・・・、そういう解釈ですか。
「そうよ、それにわたくしにとっては義妹、ラファエル様にとっては義娘になるのよ、義姉と義母が可愛い家族を祝って何が悪いと言うのよ」
いえ、そう言えばそうなのですが、良いのかなぁ・・・
「良いのよ、余計な事言う奴が居たら言いなさい、しっかり脅迫するから、ね?」
わあ、エリザ義姉様もラファエル義母様もなんて恐ろしい笑顔なんでしょう、ゾクゾクします。
さてドレスについては、糸ならあそこ、織物の腕は誰彼、染物ならこっち、刺繍はわたくし、併せて宝石は何処産、彫金ならあの職人、と話は尽きません。
刺繍はわたくし!?
「あの、ラファエル義母様、刺繍はわたくし、と、聞こえたのですが?」
と、自分の耳を疑っていると。
「勿論、主に本職の方に任せるわ、でも義娘のドレスに刺繍してあげたいのよ、ダメかしら?」
え、これ畏れ多くて断れ、・・・ないですね?
「大丈夫よリリアン、ラファエル様の刺繍は本職の方にも負けず劣らず素晴らしいのよ」
と、エリザ義姉様。
「本当はエリザベートの時も刺繍を入れたかったのよ、でも当時わたくしは王妃としての仕事もあって満足の行く刺繍を刺せる時間が取れなかったの、出来に不満のある刺繍を義娘の晴れの日に着るドレスに刺す訳にはいけないから」
諦めたのよ、とラファエル義母様、でも
「今回わたくしは隠居の身、ウェインの病気も治ったし時間もあるから」
お願い、と言われてしまえば何も言えませんわね
「ラファエル義母様、甘えても良いのですか?」
本当に畏れ多過ぎますが、義母様といえば
「ええ、勿論よ、ヴィルとリリアンちゃんの子供も本当に楽しみね、おくるみも私が繕うわよ」
こ、子供ですか・・・、圧倒されっ放しです
あ、そう言えば・・・
「あの、ラファエル義母様、エリザ義姉様、私まだ成長が終わってなくて」
多分、身長は止まりました
ぎりぎり人並みに入らない位の低さ、そもそもこの世界の人が身長高過ぎるんですよ!でも・・・
「リリアンちゃん意外と立派よね」
「そうね、身長は低めの部類に入るのに・・・」
「あ、でもお母様のマリアさんを見ると納得なのかしら、立派だもの」
ええ、『お胸』が意外と育っているんです
お母様は身長もそれなりに有って、お胸は立派な魔性のお胸です
私は身長低めなので、そこで多少減るとしてみても最終的にはかなり立派なお胸になると思われます。
「大丈夫よ、そう言う所に関してはドレス作りの職人達は当然の様に補整して仕上げて来るから」
「そうね、それよりヴィルと街での様子を聞いているけれど、どこまで進んでいるの?」
ああー・・・、やっぱり報告上がっていますのね
「ど、どこまでとは・・・」
「人前の話は聞いているわ、人前でない所では?」
それは言えない事では!?
「リリアンちゃん、実は最近ヴィルの評判が良いのよ?」
「え?どういう事ですかラファエル義母様」
「あの強面が連れ歩いている令嬢に対しては、優しい笑顔で壊れ物を扱うかの如く愛でている、顔は怖いけど頼りになる御方、とね」
んな・・・
「・・・」
そして、エリザ義姉様が続ける
「リリアン貴方達は確かに婚約しているわ、それは王家も認める所、でもね、まだ公式発表した訳ではないのよ?」
「だから、良い人が居ると話が出ていても、ここ最近の好評価を受けて手を出してくる令嬢が居る、と」
「そうよ、しっかり捕まえていて欲しいの、心配なのよ、あの子は令嬢にチヤホヤされる事なくここまで来たから、どうなるのか・・・」
まさかの色仕掛け!?
「でも私に色気なんてありません」
「あら、わたくしに良い考えがありますわ」
とエリザ義姉様。
「いい事リリアン、殆どの男性は大きなお胸が好きよ、ヴィルもきっとそうね」
まあ、男性はそうでしょうね、全てがそうとは言わないけれど・・・
「だから、揉まれなさい」
「はい?」
何を言っているのエリザ義姉様
「あら、知らないの?お胸は好きな殿方に揉まれると大きくなるのよ」
ほあー!それは俗説も過ぎるのではないのでしょうか!?
ラファエル義母様も「まあ!」とか納得しないで下さいまし!
「エリザ義姉様?それは俗説、つまり根拠の無い噂話の類では・・・」
「リリアン貴方は可能性もあるのに何もせずに諦めるの?」
う、それは、そうなの、かな・・・?
「貴方はまだ成長途中よ、ならば、より良い刺激を与えれば可能性があるのではなくて?」
ううん??そう、かも?
「ヴィルは貴方のお胸に夢中になる、貴方はお胸が大きくなる、良い事しかないじゃない!」
何が悪いの!と言い切られ、自分の中の価値観が崩れるリリアン、目はぐるぐるである。
「解りました、試してみます!」
「流石、わたくし達の新しい家族ね、良い決断だわ、結果は教えてね!」
「はい!」
と、正気を失っているリリアンは気付いていない
王妃と王太后が「ほほほほ」と怪しい笑いを浮かべている事に。




