閑話 前世田中の人生
俺は田中一郎。
しがないサラリーマン。
勉強を頑張るでもなく、運動を頑張るでもない漫然と生きてきて、某峠を走る車漫画が好きで整備士になった。
趣味に時間と給料を費やし、車はスポーツカー、バイクも買ってスポーツバイクをそれぞれいじり尽くす。
本職だから、自分でカスタムパーツを取り寄せて着ける。
車高を落とし足回りスプリングはガチガチの硬さにしてサーキットを走る、街乗りは最悪の乗り心地だが、サーキットでは最高の車だ。
気の合う友達と車談義で盛り上がり、バイクでは一緒にツーリングに行く。
気が乗らない時は家でゲームをやり、延々と引きこもる。
オンラインで馬鹿話をしながらレースゲーム、協力プレイ、ノベルに、アクション、興味があれば何でも手を出して遊んでいた。
そうして趣味に没頭している内に三十路を迎える
流石にこのまま趣味だけに生きてていいのか、漠然と不安を抱えつつも自分から何かを変える訳でもなく、自分にとっての日常を送る。
そんなある日、いつもの友達とツーリングに出掛ける。
バイクに乗ればそれだけに集中して、他のことなど忘れて楽しむ。
とある、信号待ちの先頭で友達と話をする
無線インカムなどは使っていないので、お互いのバイクの排気音に負けないように声を張り上げていう
「次は、北海道でも行かないか」
友達も答える
「ああ、2週間くらい休み取って行くか!」
サーキットとは違う、広くて、長い道をゆっくり旅するのもきっと楽しいだろう
これまではスピード狂だったが、キャンプ用品を揃えてツーリングも良いかも知れない
そんな近い未来の楽しみを考えていた
しかし、彼、田中一郎に今世の未来などは来なかった
背中に衝撃を感じ、次の瞬間に意識は真っ黒に塗り潰された。
さらっと追加の田中話。
書いたら暗い話になった・・・