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閑話 各々の家で

お披露目後、モブラック子爵家


「おかえりなさいませ、あなた」

「ただいまマリア、お披露目会の事で話がある」

「どうしたのですか、何かあったのですか?」


「リリアンが・・・、うっ」

目元を押さえて俯く父マイケル

それを見て不安そうな母マリア

「あなた、リリアンに何か・・・」


「リリアンが、リリアンが、、一目惚れした」

辛そうなマイケルに対し

「まあ!」

まあまあまあ!と嬉しそうなマリア。

「初恋ね!お相手はどちら様の子なの」


「・・・」


答えないマイケル。


「?」


それを訝しむマリア


「あなた?」





たっぷりと間をとり、漸く口にする

「・・・ヴィルヘルム・クロイツェル閣下」


「あらあらまあまあ!良い方を見初めましたね」

同世代どころか17も歳上、しかも王弟、流石に驚きを隠せないながらも喜ぶマリアは、豪胆と言うべきか暢気と言うべきか

「早過ぎる!いくら何でも、いや早いどころかずっとウチに居て良いのに」

悲し気ながらも娘が行き遅れになっても構わないとばかりの発言を聞き、マリアの目に剣呑な輝きが宿る

「あなた・・・」

っビクッ

「リリアンが行き遅れても良いと言うのですか?

まさか愛娘の初恋、邪魔なんてしていませんわよね?

もし、そうだとしたら私にも考えがございますわよ」

うふふふ、と妖しげな笑顔を浮かべるマリアにマイケルは怯える。


「い、いや、話は通したよ、後日詳細を決める為に手紙が来るだろう・・・」

しかし、と

「相手は王弟、公爵様だ、年齢差もあるし上手くいくとは・・・」

「あら、ならマイヤール夫人に相談しなくてはね、きっと力になってくれるわよ」


(のち)に、淑女教育が厳しさを増す事をリリアンは知らない・・・

また、それがどれだけのものかも。



――――――――――――――――――――――――――

お披露目後のヴィルヘルム・クロイツェル公爵邸



私はクロイツェル公爵に仕える執事ジェレミア。

今、手の中にはとても信じられない内容の手紙がある

送り主はルーク・ヒロイック国王陛下、ヴィルヘルム様への手紙ではなく、たかだか一執事の私に国王陛下から手紙である。


それだけでも信じ難いのに、内容にも驚愕する

国王陛下の手紙によると


ヴィルヘルム様を憎からず思っている令嬢が居る事

その令嬢はヴィルヘルム様の容姿に恐れるどころか、好ましいと思っている事

その令嬢はモブラック子爵令嬢リリアン様で、五歳である事

兄としても後押ししたいという事

ついては公爵邸の人間にも協力を請う、という事


陛下が後押ししたいと仰るという事は、少なくとも政治的には何も問題が無く、本人達が上手く行けば直ぐにでも書類を通してしまいそうだな。


しかし、五歳・・・、うーん五歳か・・・

何処の世界に主に向かって、五歳の娘を奥様にと薦める執事が居るのか

頭を抱える。


自分だけでは良い案が出ず、妻で侍女長でもあるアリアに手紙を見せて相談する




「どう思う?」と聞けば

アリアは難しい顔をしながらも

「良いんじゃないかしら?」

と言う、『良い』とはどの事に対してなのかと問うと

「全部よ、令嬢を迎え入れる事も、私達が協力する事も何も問題ないわ」

「令嬢は五歳なのだが」

「夫婦というなら今は問題があるけれど、10年経てば問題ないでしょう、陛下もそう考えたから公爵家を取り仕切っている貴方に手紙を送った、今後時間が掛かるからこそ、違う?」


ああ、なるほど確かに。

22歳と5歳では問題しかないが、32歳と15歳となれば多少歳が離れているが、貴族の婚姻に於いては、それなりに有りえる差ではある。


それに、と

「不敬を覚悟で言うけど、今後ご当主様に純粋に好意を向ける令嬢が来ると思う?

同年代や近い年代のご令嬢なんて、公爵家や王家にとって毒にしかならない人と家しか残ってないじゃない」

不敬よりも無礼が過ぎると思うが、事実その通りなので咎める気も削がれる。


「なら、ご令嬢と実際に会って人となりを確かめ、あとは当人同士上手く行けば、我ら使用人が後押しする、と」


「仮に、人となりに問題が有ったとしてもまだ五歳、真っ直ぐ成長出来る様に幼い今の内に、とも考えてそうではあるわね、わざわざ陛下が手を回すのだから、少なくともお披露目で見た限りは良い娘と判断したのでしょう」


「なら私達はご令嬢の心身の健康を守り、お二人の関係の手助けかな?

子爵家側とも連絡取り合った方が良いかな?」


「そうね、令嬢は五歳、良くも悪くも周りの環境と人で変わるわ、大人がしっかり導かないとね。

子爵家とは一度ご令嬢と会ってからでも良いでしょう、やっぱり実際に顔を合わせてみてからよ」


こくりと頷き合う執事と侍女長二人、直ぐ邸内使用人にもその旨が周知徹底される事となるが

まさか、主の奥様候補である人物を子育てするとは奇妙な状況にも程がある。

国王陛下は狸です。

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