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モブと王弟。

人伝いに告白を終えているという羞恥に悶える令嬢

単純に好意自体には嬉しく思い、だが相手は五歳という年齢で困り果てている王弟。


(もう、これ以上の羞恥なんて、そうそうないのだから開き直って行くわ、素敵なだ、だんな様逃がしませんわ!)


(兄上が言い出した事を覆すなど絶対に無理だ、リリアン嬢もある程度付き合えば何れ相応しい相手に行くだろう)


片方は腹を括り、片方は兄には勝てないという消極的選択、様子見という名の思考放棄から二人の関係は始まった。


尚、公爵邸の使用人達は何としてでもお二人の婚約を、という使命に燃え上がっている。

ヴィルヘルムの相手が出来る令嬢、と言うだけで使用人は涙を流す程にヴィルヘルムは憐れまれていたのである

実は国王陛下から直接、公爵邸執事であるジェレミアに今回の仔細が伝えられており、ジェレミアからその他使用人へも周知され根回しが済んでいる事を当の本人ヴィルヘルムは知らない。


さて、捕まえたのは誰か、捕まえられたのは誰か・・・


―――――――――――――――――――――――――



「クロイツェル様、私お披露目の時、貴方様に一目惚れ致しました、どうか今後お互いを知るお時間を頂けませんか」

男女のお付き合いに関する前世の知識は役に立たないので、駆け引きや遠回しな表現は避け、取り敢えず言いたい事は言う、後悔と反省はその後で。

更には、相手に好意は伝わっているという開き直りがリリアンを動かす。

完全に猪突猛進な令嬢である


相手のヴィルヘルムもこれまで自身の容姿により令嬢に避けられて来た為に、年齢の差はあれど男女の経験は大して差がないので、実はお似合いな二人であるのはまだ誰も知らない。


しかし、自分の容姿がマイナスに働く事は有ってもプラスに働く事が無かった人間に

『一目惚れ』などと、ともすれば『貴方の容姿は好ましい』とも言えるアプローチを受けて、ヴィルヘルムは困惑しきりである。


(お、俺にどうしろと言うのだ兄上!)


ある意味、今の状況の元凶とも言える国王陛下に毒づくが、この場にいない人間に言ったところで何の解決にもならない。

そうして言葉に出来ずに居ると


「ダメ、ですか・・・、私のような地味な容姿はお好みでありませんか」

とリリアンは俯く。


違うのだ、とヴィルヘルム

「いや、容姿ではなく、その()()、いや容姿で言うのならば、貴方こそ怖くはないのか?」

私と取り繕う余裕もなくなる


「怖くなどありません!」

鋭い眼差しも大きな体もとても好ましいもので、と続く

「私の事は嫌いですか、好きですか?」

と今にも泣き出しそうな顔で聞かれてしまえば

「決して嫌いではない、好きかと問われればそこまで貴方の事を知らないし、少なくとも好ましい部類だ、とは、思う・・・」

実際嫌いではないのだが、ここで突き放してこの話を終わらせてしまおうかと頭を過ぎったが

(あんな泣きそうな顔を向けられて嫌いなどと言えるか!)


「ありがとうございます、では今後とも宜しくお願い致します、私、頑張りますわ」

と満面の笑みで返されては、もう何も言えない。


「ああ、よろしく頼む」

と返すのでいっぱいであった。


――――――――――――――――――――――――――



その後、庭園へとエスコートして頂きました

体格差から幼女を拐っ、いえ親子の様に見えてしまうのは悔しいですわ

どうにもならないので致し方ありませんが

時間が解決してくれる事を願うばかりですね。


しかしまあ見事な庭園です、今は寒い時期で少し閑散としていますが、暖かくなればお花が溢れるのではないでしょうか


「リリアン嬢はどのような花が好きですか?今は冬薔薇だけですが、春先になると一面薔薇に包まれて見事なものですよ」


「そうですね薔薇も好きですが、マリーゴールドやガーベラのような小振りで可愛いお花が好きです、一面の薔薇もとても興味があります」


「では、暖かくなったらこちらでお茶会をしましょう」


「はい!楽しみです」

うん、本当に楽しみです、にこにこです。


沢山お話します、好きなもの、嫌いなもの

直接お話しして分かった事は

ヴィルヘルム様は、やはりとても紳士です

怯えたという令嬢方は何を見ていたの、きっと思い込みと噂話を鵜呑みにしていたのね。


楽しい時間は本当にあっという間です

名残惜しい事ですが、お父様には「日が傾く前に帰ってくる事」と言われてますし仕方ないです。

すると帰り際に「こちらをどうぞ」と小さな花束を渡されます

なんと先程案内して頂いた庭園の奥に温室があるそうで、そちらのお花だそうです

好きだと言ったガーベラやマリーゴールドも入っている花束で、感激して「ありがとうございます」とお礼を言うと


「こちらの花が枯れる前に、またご招待しましょう、来てくれますか?」


って、完璧な紳士が!

嬉しくて言葉にならないので、なんとか頭を上下に振ります。

これまで、こんなに素敵な方に誰も惹かれなかったのなんて嘘でしょう!

見た目がゴリゴリの熊男みたいなもので、大半の第一印象が決まってしまう不憫な王弟。

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