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プロローグ

初めましてこんにちは、私の名前はリリアン・モブラック、モブラック子爵家が長女でございます。

家族は父マイケル、母マリア、兄トーマスの四人家族で、父マイケルが子爵領として国より拝領しております領地を、貧しくも無く、富める訳でもない、程々に「モブ」らしく平々凡々に運用管理して平穏な日々を送っています。


ええ、「モブ」なんて言葉を知っている通り、私には201X年現代、地球の日本人として前世の記憶があります。

リリアンとして三歳の誕生日を迎える直前に流行病に罹り、熱に魘される事五日、このまま死ぬのかもと思いながらも奇跡的に熱が下がり意識を取り戻したら、いつの間にか前世の記憶というものが頭の中に存在していました。


意識がはっきりしてくると

(転生キタコレ!)

なんて瞬間的にテンション上がりましたが、その直後

(いいえ、私死んだのね...。)

と落ち込み、今世と前世の記憶に困惑しつつ、今も怠さの残る身体を動かして周囲に首を向けると

「っ、・・・!?」

驚愕の表情を浮かべ固まっているメイドと目が合い、何をそんなに驚いているのだろうと声を掛けようと口を開いたと同時に、扉をバンッと開け放ち何処かに走って行ってしまった。

遠くから、旦那様、奥様!お嬢様が!と言う声が響く。

(・・・?、なに・・・?と言うか喉カラカラに渇いて声出ない・・・)

熱が下がったばかりでまともに働かない頭を必死に動かし疑問をまとめる。

私の中にある記憶は日本生まれの田中一郎、三十歳過ぎても趣味に生きるサラリーマン、最期の記憶は友達とバイクでツーリング中に信号待ちしていたら背中にドンっと衝撃を感じ・・・、そこから記憶が無い。

(男性として生きた記憶、これは転生モノのテンプレ、トラックアタックで死んだ?となると、隣に居た筈の友達も死んだの...?)

しかし、ふう、とひと息。

(主たる意識は「私」なのね)


今世の私リリアン・モブラックの人格に、前世の田中一郎の記憶が混じりあって、何とも言えない違和感がある。

(他人の意識があるみたいで気持ち悪い)

三歳に満たない娘に、三十歳男性の記憶が突如現れたのだから仕方ない事ではあるが

「「リリアン!」」

と、突如お父様とお母様が部屋に飛び込んで来て、抱きしめられる。

「ああっ、良かった元気になって、もう、ダメかと・・・」

(う、苦しい…離して欲しい)

良かった良かったとぎゅうぎゅう抱きしめられ、記憶の混乱と病み上がりも相まって気持ち悪くなってしまう

「お父様、気持ち、・・・わるい、離、して。」

ガラガラの喉で何とか声にすると、お父様はバッと離れたかと思えば、手と膝を床に付いて項垂れた

「っう、私の天使に気持ち悪いと言われた、もう生きていけない・・・」

泣き笑いで部屋に飛び込んで来たかと思えば、この世の終わりとばかりに絶望する父がおかしくて、ふふっと笑ってしまう。

すると、今度はお母様に優しく抱きしめられる

「あなた、リリアンは目を覚ましたばかりなのに、そんなに強く抱きしめたら具合が悪くなって当然ですよ。」

と、そっと髪を撫でられ母の柔らかさと温かさに安心し、混じった記憶の不快感と言葉にならない不安も身を潜め、心地良さに身を任せて私は意識を手放した。

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