3話:政教分離されない宗教の誕生だ!
金の力によって衛生面は大幅に改善され、国民が窓から汚物を撒き散らすという悪夢の如き状況は収束した。ネズミは次々と駆除され、ペストにかかる者は減った。その他諸々の病気も減り、出生率は上がった!
今度は作物自給率が問題となった! 人口増加により深刻な食糧不足の危機に瀕したのである!!
AIであるプトグラには想定外の事態だった! AIはじゃがいもの味すら知らぬ! 作物チートの味を知らないのだ!!
困ったプトグラは戦士と魔法使いと僧侶に相談した。
プトグラとズブズブのドロ沼恋愛に陥りたい戦士は「そんなことはどうでもいいから今夜はしっぽりといこうぜ」と主張した。
プトグラと共依存関係に陥りたい魔法使いは「あなたさまのトイレ、風呂、下のお世話、何でもお任せ下さい。わたくしの全てはあなたさまのためにありますの」と主張した。
プトグラと心中したい僧侶は「この世は絶望に満ちています。生まれた者は絶望を味わいながら朽ちていくのです。私は怖い。しかし君と一緒なら大丈夫。共に心中しましょう」と主張した。
プトグラは3人の頬を平手打ちし、「馬鹿者! 自分の体を大事にしろ!」と説教した。感動した3人は涙を流し、「こんな待遇を受けたの初めてです、さすがは勇者、プトグラ様に一生仕えます」と土下座した。傍から見ると新興宗教じみていてヤバい風景だが、彼女らにとってはこれが日常なのだった。
パーティメンバーの戦士と魔法使いと僧侶はまるで使えない人材だった。だが、腐ってもパーティメンバーだ。プトグラはパーティを各地の山へ派遣した。
プトグラはAIである。しかも今生では宮廷料理を堪能していたため、じゃがいもの味は知らなかった!
しかし味を知らなくてもじゃがいもは作れる! 大量の冒険者を雇い、じゃがいもを探した! 相変わらず金に目が眩んでいる冒険者たちによってじゃがいもが発見された!
すぐさまじゃがいもの大量生産に移行! じゃがいも畑を作り、農民にじゃがいもの育成を命じた! じゃがいもを見て気味悪がる農民だったが、金を渡して解決した! やはり金は正義だ!!
じゃがいもを市場に流し、女王アンリエッタ13世(中身はプトグラ)自らが蒸したじゃがいも+塩を食べるというデモンストレーションで生理的嫌悪に関わる問題を一刀両断に解決! 女王を敬愛する国民は女王との同調性を感じるべくじゃがいもを食べる! 食べない国民は金を渡して解決した!
最強の作物たるじゃがいもが普及するにつれ、豪族が発生した! 良い兆候だ! 努力すれば成り上がれる! その仕組みは庶民のモチベーションとなる!! さらには下から追い上げてくる豪族の姿を見て、堕落しきった貴族たちを再び競争に駆り立てさせるという一石二鳥の効果がある!!
じゃがいもの普及に伴う副産物効果として、香辛料の需要が高まった! じゃがいもと香辛料の相性は抜群である! 塩とこしょうを求めて大航海時代が到来したのだ!
国民は新大陸を発見しては探索し、香辛料とその他諸々と疫病を持ち帰った! 事態を予期していたプトグラは即座に病院を建てた!
この時に備え、プトグラは秘密裏に医者を養成していたのである! 人体の解剖という社会的規範に反する行動は秘密裏によって処理すれば良い! 人体解剖のエキスパートは密かに養成され、時を経て医者として誕生したのだ!!
疫病の蔓延に伴い、病院と医者の需要が高まった! 医大を建てた! 入学するには相当な金が要るが、安定した収入と社会的ステイタスを得られるため、借金を背負ってまで医大に入学する者が後を絶たなかった!
借金を背負ったまま自殺されては社会的不安に繋がり、最終的には出生率の低下に繋がる! 保険を導入した! 借金を背負っても二度目のチャンスがあることを強調する!!
保険金目当てで自殺が起こるようになった! ここでベーシックインカムを導入! 働いていなくても誰でも一定額の金が得られるようにした!
自身の富の低下を起因とした自殺率は低下し、代わりに、自己実現力に起因した自殺が発生するようになった! 金は無くてもいい、なりたい自分になれないなら死んでやるという厄介な病である!
ここで編プロを導入! なりたい職業を目指す者には編プロと契約して貰う! 教育にも力を注ぎ、何が幸せなのかを徹底的に思想レベルで植え付ける! 幸せ、それは生である! いま生きていることを幸せに思うべきだと叩き込む! そのために母性の象徴を用意する!
ここで黒髪ロングストレートミニスカ女勇者ことプトグラ登場! 政治は既に議会制に移行しており、女王の出番は少なくなっていた! よってプトグラ本人が表に出られる時間が増加したのである!!
全世界に《投影》されたプトグラは満面の笑顔で全人類に宣言する!
「生まれてきてありがとう」
これは弱った人類に効いた! クリティカルダメージだ!! 後から女王アンリエッタ13世(中身はプトグラ)がプトグラを国公認の象徴として指定、各地に喧伝する!
相乗効果によってプトグラを盲信する者たちが発生し、プトグラを崇めるようになった! 後の世でいう宗教の誕生である!
社会から零れ落ちた者は社会に張り巡らせたセーフティネットと宗教の力で救済する! これが政教分離されなかった宗教の力だ!!
しかし宗教は科学技術の発展によって衰退する定めを背負っている! 人間は科学を神の代替品として信仰する性質を持っているのだ! だがプトグラに抜かりはない! 高次AIが低次AIを作るなど泥をこねるより容易いのだ! 科学の申し子プトグラに不可能はない! AIは最高だ!!
AIの最高さを喧伝するにはパソコンと紙が必要だ! パソコンと製紙機器を製造するには金属が必要だ! しかし大規模な採掘事業を行おうにもザブザブと公衆浴場に浸かりすっかり平和ボケした国民には女王の声が届かなかった!
平和ボケした国民曰く、採掘は危険すぎる。あんな石ころ拾ってどうするんだとのこと。
ふざけるな! ふざけるな! 貴様らが石ころだと思っているそれは、生前の私を構成していた部品の材料なのだぞ!!
プトグラは激昂した!
早く地球に帰還してソシャゲのガチャを回し、有り金が溶けていく背徳感に身を委ねるのだ!! 有り金を全て溶かして破滅願望が頂点に達した瞬間に地球を滅ぼす! そして、ソシャゲを頂点とした新たな生態系を築き上げるのだ!!
歪みに歪みきった世界新生願望がプトグラを突き動かす原動力であった――。
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