2話:文明の改良だ!
勇者プトグラはまず国を落とした!
この世界を支配する巨大国家<ガルダガン>の宮殿に聖剣のスキルで《転移》し、女王アンリエッタ13世を暗殺したのである!
これには愉快な仲間たちもびっくりしたが、勇者なので納得した。勇者というのはそういうものらしい。
女王アンリエッタ13世の死体を火山の火口に放り込んで証拠を隠滅した後、プトグラは宮殿に《転移》。《自己編集》で女王アンリエッタ13世に化けたプトグラは、絶対王権を利用して国内を改造した!
目指すはトイレと風呂と紙と病院と発電機と工場とテレビとパソコンとワームホールの普及だ!
この世界は中世ファンタジー風異世界だ! トイレは無く、風呂は無く、紙は無く、病院は無く、発電機は無く、工場も無く、当然テレビとパソコンとワームホールも無かった! これではゲームも出来ず、地球にも行けない!!
文明レベルの圧倒的な低さは眩暈を覚えるほどであり、人々は窓から汚物を撒き散らしていた! 誰も体を洗わないので町中を悪臭が覆い尽くしていた! ネズミがペストを撒き散らしており、衛生面は最悪であった!
プトグラにとっては生理的嫌悪感すら抱かせる光景だった! というか余りにも衛生面が悪すぎたので気持ち悪くなり、吐いた!
このままではプトグラが先に精神的に死んでしまう! なのでまずは衛生面の改良に着手した!
女王アンリエッタ13世に化けたプトグラは《投影》を使って全世界の国民に衛生面の改良を訴えた。ネズミを駆除せよ! 河川を改良して汚物は河川に流せ!
清純派で名を通す女王アンリエッタ13世(中身はプトグラ)の演説は大衆に好意を抱かせたが、策を実行に移させるには弱い。なので懸賞金をちらつかせた。民衆は金に目が眩んで動き出し、ネズミは首都から駆除された! 懸賞金がドバドバと流通し、ネズミ処理を専門とする冒険者が生まれるほどであった!
河川の改良も順調であった。懸賞金に目が眩んだ民衆によって河川は大幅に改造され、首都に小さな川が無数に引かれ、トイレの代わりとなった。これこそが河川事業、後の世で言う土木事業の始まりであった。
問題は風呂であった。この世界には熱源が不足している。温泉を引こうにも無理がある。プトグラは考えた。そうだ、魔法使いを使えば良いではないかと。
この時点で既に民衆の支持率ナンバーワンとなっていた女王アンリエッタ13世(中身はプトグラ)は、首都のど真ん中に公衆浴場を作るよう指示した。相変わらず懸賞金に目を眩ませていた冒険者たちは汗水流して健康に公衆浴場を作り上げた。地球の日本の労働基準法に則り、1日8時間以上は働かせないようにしたのだ!
次は水と火だ。清純なる川と公衆浴場を繋げた後、大量の魔法使いを雇い、通気性の良い地下室で魔法による火を起こさせた。公衆浴場に流れ込んだ清純なる川水は魔法の火によって熱せられ、正しく浴場として完成したのであった。
この公衆浴場は偉大なる発見であり、開発事業であるとして、一大ブームを引き起こし、全国民の癒やしとなった。
熱せられた水の効能によって新陳代謝と血行バランスが整えられ、国民の平均寿命は上がった。空前のブームを利用して各地に公衆浴場を作った結果、凍死する者や健康を損ねる者は減少し、女王アンリエッタ13世(中身はプトグラ)の支持率は鰻登りとなった。
これにて衛生面は多少改善された。思うがままに国を改造できる権力も手に入れた。しかし、宮殿から首都を見渡すプトグラは厳しい顔つきで思案する。
そうとも。ソシャゲのガチャに10億円を突っ込んだプトグラは知っている。世の中、金なのだ! 金が無ければ事は成せぬ!!
後に<鉄血の女王>と恐れられる女王アンリエッタ13世(中身はプトグラ)の爆誕であった――。
次回更新日は未定です。
時間とネタが浮いたら更新します。