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賭けた奪還

短いです。

 リリーナさんと二人でサマエルと向き合う。

 サマエルは嫌な笑みを浮かべては僕達を見下して、声高らかに宣言して来た。


「では召喚士に問う! 武力を使わずに対峙する場合、右か左の少女、どちらを助ける?」


 サマエルの問題を聞いて、一つの真実だけが解った。

 ユンとガーネットさん。

 どちらか一方(・・)は助けられないという結末だ。

 そんなの選べる訳が無い。

 心の中では「両方助ける」の一択しか無かったんだ。

 そこをサマエルは大前提から切って来た。

 しかも、「武力を使わない」というフレーズが肝になっている。

 ユンとガーネットさん。

 ユニコーンとギルガメシュ。

 ユニコーンのユンは回復が得意だ。

 だから僕が竜帝の力さえ取り戻しさえすれば、後方支援でコンビが組める。

 だが、ギルガメシュのガーネットさんはそうはいかない。

 冥界神であり自身が武神でもあるガーネットさんは「武」の体現者だ。

 ここはガーネットさんの優先度がガクンと下がる。

 だからと言ってガーネットさんを切る訳にはいかない。

 サマエルが言葉通りに武力以外で対峙するとは限らない。

 サマエルは強いガーネットさんを切る様に暗示をかけているのかもしれない。

 どうすればいいんだ?

 グヌヌ――。

 こんなのそう簡単に答えられないよ!

 歯を強く噛みしめている時に、右横から肩を軽く叩かれた。

 リリーナさんが心配そうに僕を見ていた。

「トーヤ、もう相手の掌の上で踊らされているわよ。質問は暗示よ。答えはその外にあるわ。深く考えないで。あなたの意思を強く持ってぶつかるのよ」

「でも、それじゃあチグハグな答えになって問答にならないよ」

「じゃあ、一人を殺す気?」

「そういう訳じゃないよ。助けたいさ。でも、どうしたら……」


「なぜ、奴の問題提起から一人を『殺す』と考えるの? 奴は一人を『殺す』とは一言も言って無いわよ?」


 ……。

 …………。

「本当だ! 僕はてっきり、選んだ方は助かってもう片方は落とされると思っていたよ」

「それを早合点って言うのよ。奴は姑息よ。早合点や思い込みを利用するみたいね」

「じゃあ、どっちでも良いから宣言すれば――」

「それも早計ね。奴はそこも考えて『武力を使わずに』という言葉を使用しているわ。奴は自分の身の丈を把握してるわ。そして、トーヤの力を分析して確実に勝利する事を念頭に置いて駒を進めているわ」

「じゃあ、ガーネットさんを警戒して?」

「その(ひと)が強いのね? 奴は解ってるのよ。徹底的に自分が追い込まれるのを回避する気ね」

 何て計算高い奴なんだ!

 ユンを助けて解放の術式を使っても、まだ余裕があると考えたから、ユンを先に解放させるフレーズを入れたんだ。

「なら、ユンから解放を進めていけばいいじゃないの?」

「引っかかるのよ。奴が主から渡された人質を簡単にアタシ達に渡していいと考える奴かしら?」

「ホラ、改心したとか?」

「馬鹿じゃないの? そんな考えで良くここまで生きて来れたわね?」

 一回、死んでるから何とも言えない。

 他人を信じなきゃ、この先何を信じたらいいのか解らなくなっちゃうよ。

 リリーナさんはポニーテールを撫でながら数秒間思案しては僕の眼を射抜くように見ては喋る。

「はぁ。ホンット、裏切られる事を知っていても信じちゃう馬鹿って居るのよね。普通、敵対する相手を『改心する』とか言うかな?」

「だ、だって! 殺さないならちょっとは期待しない!?」

 主人に無残に殺され、生前の記憶はあってもいい思い出なんてありゃしない。

 だから、今生きてる記憶は信用したり、ちょっとはいい気分で過ごしたんだ。

 対象が敵であってもさ――。

 リリーナさんが深いため息を吐いてはヒラヒラと右手を振る。

「ハイハイ。信じたいなら信じなさい。でもね、信じるには裏切られる事を含む覚悟が要るのよ? その覚悟はある?」

「うん。僕はあの天使にちょっと賭けてみたいんだ」

「なら、あなたの判断で行きなさい。アタシはフォローしてあげれる部分はフォローするから」

 リリーナさん、ありがとう!

 そう言って、一歩前に出る。

「サマエル! 僕はユンを――。右側の女の子の解放を望む!」

「二言は無いか?」

「無いよ」

「では、受け取れ! 貴様の所望した人質だ!」

 サマエルはユンに掌を向けると「GA!!」と吼えた。

 すると、ユンの姿が一瞬消えて、僕の頭上に転移して来た。

 落ちて来たユンを受け止める筈だったけど、落下の勢いが加わって重くなったユンを支えきれずに下敷きになってしまった。

「イテテ……。ユン! 大丈夫!?」

「ご主人! ご主人だ! ボク、生きてるよ! 元気だよ!」

 手を縛られていても元気一杯な所は相変わらずのユンだった。

 本当に無事みたいだ。

 良かった。

 本当に良かった――。


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