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DQ転生?物語 ~車椅子の救世主~  作者: イツモ ノアレ
第1章 入院編
7/17

第6話 オジチャン?

翌朝、俺はとても重要なことに気がついた。

それは、両足の腿の筋肉痛がすっかり治っていたことだ。


毎日実施しているリハビリでは普段使わない筋肉に負荷がかかるため、俺の腿や腕はかなりの筋肉疲労状態だったのである。


つまり、ホイミンで直せるのは、体表面の傷や筋肉痛といった体の浅い部分の問題だけで、体の深い部分の問題には効果がないのではないだろうか?


俺はコマンドメニューから「つよさ」をタップした。

---------------------------

[たなかゆうじ]

 レベル:2

 HP:20

 MP:20

 ちから:20

 すばやさ:20

 たいりょく:20

 かしこさ:2

 うんのよさ:20

 さいだいHP:20

 さいだいMP:20

 こうげきりょく:20

 しゅびりょく:20

 Ex:10

---------------------------


よし、MPが全回復してる。


たぶんオリジナルのDQと同じで、一晩寝るとHPとMPが全回復するのだろう。


そして俺は、「じゅもん」もタップした。

---------------------------

 [ホイミン]

 [キアリーン]

---------------------------


俺は、呪文ウインドウに表示されている2つの呪文のうち、[ホイミン]をじっと見つめながら、さっき思いついた可能性を検証する方法について考えていた。


ホイミンの消費MPは3なので、今日1日で6回は使えるはずだ。


体の深い部分ていうとやっぱ骨かな?


ここは病院だし、骨折した患者を探すのは難しくないと思う。

問題は、どうやって患者に気付かれないようにホイミンをかけて、どうやって結果を確認するかだ。


患者が治療室や病室へ運ばれてしまえば、医者も看護師もそばにいる状態だから、もうホイミンの検証はできない。


…となると、やはりあそこしかないか…。


その日の夜、俺はとある廊下のドア付近でうろうろしていた。


看護師「あら、あなたこんなとこでどうしたの?」


たまたま近くを通りかかった年配の看護師が声をかけてきた。


オレ「あ、空き時間にリハビリ運動できそうな広い廊下がないかなーって探してたんです。」


もちろんウソである。

救急患者がやって来たら呪文をかけてみたい!などと言ったら閉鎖病棟に隔離されかねない。


看護師「そう…。でもこの救急搬入口からは緊急で患者さんが運ばれてくることあるから、通路はふさがないでね」


オレ「はい。気をつけます!」


ふー。なんとかごまかせた!


夜は、救急対応できる医者や看護師の数が少なくなるため、この通路付近は、めったに人がこない。

そのため、入院患者がこの辺りでうろうろしていると逆に目立つのだ。


俺は、近くのトイレの大部屋に入って鍵をかけた。

ここだったら、看護師に見つからずに救急患者を待てるはずだ。


俺は買ってきたレスカをチビチビ飲みながら20分ほど息をひそめて待っていると、急に廊下の方があわただしくなったので、トイレのドアを少しあけて外をのぞいてみた。


すると、救急隊員2人と看護師2人が担架にのせた患者の横で何か話をしていた。


俺はしばらくその様子を見ていたが、とても、近づいてホイミンを試せる余裕はなさそうだ。

そして、すぐに救急患者は病院の奥へ運ばれていった。


だめだ、取りつく島もなかった…。

やっぱ救急患者にこっそりホイミン作戦には無理があったか…。


俺は、あきらめて病室へ戻ろうとトイレを出たところで搬入口から徒歩で入ってきた5~6歳ぐらいの小さな男の子と鉢合わせした。


小さな男の子「ねーおじちゃん。ママどこ?」


オジチャンって…俺まだ20歳なんだが…。(苦笑)


そういえば、さっき運ばれていった患者は女性だったな。

てことは救急車に一緒にのってきた患者の子供かな?


オレ「ぼく、お母さんと一緒に救急車できたのかい?」


小さな男の子は、目にいっぱいの涙をためながら、

「うん。僕ママのこと心配で一緒にきたの…。」

…そう答えた。


ふと見ると、半そでのTシャツの背中の下あたりに血がにじんでいた。


オレ「ぼく、背中のところケガしたの?」


小さな男の子「うん。ママがぼくをかばって一緒にころんだときケガしたみたい。」

「でも、ママにくらべたらこんなの大したことないよ!」


オレ「救急車の人にはケガの事言わなかったのかい?」


小さな男の子「うん、ママのケガを先に直して欲しいから救急のオジチャンたちには内緒にしてたの。」



詳しい状況はわからないが、さっき運ばれていった患者がかなり重傷だったことから考えると、母親がこの子をなんらかの事故からかばって大けがしたのだろう。


オレ「そっか、ちょっと傷みせてね。」


俺はそう言うと男の子のTシャツの背中部分をそっとめくりあげた。


うぁぁぁ、肉がえぐれてる。血もけっこう流れてるし痛そう…。

子供に耐えられる傷じゃないだろこれ。


オレ「ぼく!これかなり痛いでしょ?」


小さな男の子「うん。でもママのために泣かないように我慢してるの。」


俺がこの子ぐらいの頃は、ちょっと転んだだけでも泣きじゃくるような泣き虫だった。

俺は心の底から、この子の強さに関心してしまった。


オレ「君、つよい子だね!ほんとすごいよ!オジチャンまじで関心しちゃった!」


小さな男の子「えへへ、そうかなぁ!」


オレ「すぐにこの傷治してあげるから!ちょっと待っててね!」


俺はそういうと、即行でホイミンをかけた。

傷は一瞬できれいに治ってしまった。


小さな男の子「あ、ぜんぜんいたくなくなったよ。オジチャンありがとね!」


俺は、その子を連れて先ほど運ばれていった患者の後を追いかけた。

しかし、すでに手術中だったため、近くにいた看護師に子供を預けてから病室へ戻った。


オレ「今日の検証は失敗だった。別の手を考えないとな…。」

俺はそうつぶやくと、ベッドに横たわるのだった。


【次回予告】

[第1章 入院編] 第7話 あんだって?


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