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DQ転生?物語 ~車椅子の救世主~  作者: イツモ ノアレ
第2章 アヤナ編
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第14話 個人の依頼ってことですか?

オレ「どこいくんですか?」


アヤナ「屋上よ!」

「じつは今晩、月下美人の花が咲くかもしれないって業者から連絡があったの。」

「ここで月下美人の花が見れるのは、たぶんこれが最後だと思うから…」

「あなたと一緒に見に行きたいの!」


オレ「わかりました。すぐに支度します」


俺は病衣の上から薄いガウンだけ羽織って車椅子へ体を移した。

俺が車椅子へ乗るとすぐに黒服の男は足早に車椅子を押してアヤナの後ろについて屋上へ向かった。


屋上の出入り口につくと、アヤナは手早く鍵をあけて外へ出た。


俺の車椅子を押してくれた黒服の男(たしか鈴木さんの方)は、

俺を外へ押し出すと、不意に俺の耳元でアヤナに聞こえないような小声でささやいた。


黒服の男A「田中様。どうかお嬢様をよろしくお願いします。」

黒服の男は心なしか涙声だった。


オレ「はぁ…。」

俺はよく意味も考えずそう答えた。


「カチャ」


俺が屋上に出ると、黒服の男たちは中へ戻って鍵をしめた。

昼間来たときと同じシチュエーションだ。


俺はハンドリムをまわして、アヤナの立っている月下美人の花壇の前までゆっくりと移動した。

屋上庭園は夜でも花が観賞しやすいように、花壇ごとに淡く白い電灯でライトアップされている。


アヤナ「ほら見て、もう咲き始めてるわ!うふふ。」


見ると、月下美人の花の白いつぼみの先端が少し開いていた。


俺たちは、そのまま小一時間ほど無言で月下美人の開花を見守った。


そして、月下美人の純白の花が満開になった22時頃、突然大きな音がした!


ヒュ~~。ドーーーーン。

パチパチパチパチパチパチ。


アヤナ「きれいね…。うふふ。」


オレ「花火?こんな時間に?」


ヒュ~~。ヒュ~~。ヒュ~~。

ドーーーーン。ドーーーーーン。ドーーーーーーン。

パチパチパチパチパチパチ。


夜空には、何発も何発も連続で花火が打ち上げられた。


オレ「どこかで花火大会やってるのかな?」


アヤナはただ黙って花火の上がっている夜空を見つめていた。

見ると、アヤナの頬には一滴の涙がつたっていた。


彼女は花火が好きで感動しているのかもしれない。

俺は無粋な会話は避け、彼女と一緒に夏の夜空に咲き乱れている花を黙って観賞し続けた。



そして、しばらくの沈黙の後、アヤナはそっと口を開いた。


アヤナ「じつはこの花火ね、近くの河原で上げてもらってるの…。」


オレ「え?個人の依頼ってことですか?」


アヤナ「そうなるわね。うふふ。」


オレ(まじかw、さすが金持ちのやることは違うw)


アヤナ「ねーこれってプロポーズとかしたくなるシチュエーションじゃないかしら?」


オレ「え?んーまーたしかにロマンチックな演出ですね。ハハハ。」


アヤナ「あら、じゃあ試してみるかしら?うふふ。」


オレ「いやいや今日会ったばかりでいきなりプロポーズとかないでしょ!」

俺はそう答えながら少し照れたように苦笑いした。


アヤナ「そーね。でも私の人生はもうこの月下美人の花のようなものだから…」

アヤナは言葉を途中で止めると、月下美人の純白の花弁を優しく悲しそうな表情でそっとなでた。


オレ「え?どゆ意味?」


アヤナ「いいの。月下美人の花も花火も見れたし、もう心残りはないわ。」

「私ね、最初からこの日って決めてたの…」

そう言うと、アヤナは急に曇った表情になった。


オレ「アヤナさん、なんかへんなこと考えてないよね?」


アヤナ「さーどうかしら…。うふふ。」


そう答えたアヤナの目が笑ってないことを確認した俺は、

無言のまま彼女の目を見つめ続けた。


アヤナは、無表情のまま首につけていたリンゴの形のペンダントをはずした。


アヤナ「ねーこれなんだかわかる?」


オレ「ペンダント?」


アヤナ「これ、ロケットペンダントなのよ」

アヤナはそう言って、リンゴの形のペンダントのフタをそっと開けた。


ペンダントの中には、白い粉がギッシリつまっていた。


アヤナ「この薬はね、シアン化カリウムっていうの。」


オレ「それ青酸カリでしょ?」

 「薬じゃないことぐらい俺だって知ってますよ。」


アヤナ「そう…。これを飲めば数秒で死ねるのよ…。」


オレ「どうしてそんなに死にたいんですか?」


アヤナ「私ね、余命半年の宣告を受けてもう7カ月目なの…」

俺は彼女の突然の告白に絶句した。


オレ「アヤナさんがいなくなったら、きっとお爺さんも悲しむと思うんです。」


アヤナ「私は、もういつ死んでもおかしくないの。」

 「祖父はもうとっくに諦めがついていると思うわ。」


 「どうせもうすぐ死ぬなら、苦しみに耐えながら病室で死んでいくよりも、

  好きな花に囲まれて安らかに逝ける日を自分で決めたいって思ったの。」


 「これってそんなに悪いことかしら?」


俺は彼女の話が正論にも思えて、何も言い返せなかった。


アヤナ「聞いたわよ。あなたトラックに飛び込み自殺したんでしょ?」

 「ねー、死ぬ寸前ってどんな気持ちだった?」


オレ(おいおい、この病院の個人情報ダダ漏れじゃねーか!)


オレ「いや、俺のは自殺じゃなくて、子供を助けようとして身代わりに事故っただけですよ。」

 「周りが勝手に誤解してるだけですから!」


アヤナ「そう…そういう設定にしたんだ…。」


オレ「いや、設定とかじゃないっつーの!」


アヤナ「まーいいわ。なんか無理やり付き合わせちゃって悪かったわね。」

「あなたはもう帰って!」


オレ「いやいや、この流れでほっとけるはずないですよ!」


アヤナ「あら、今日は優しいのね!」


オレ「今日はって、まだ今日しか会ってないですから俺たち!」


アヤナ「そうだったかしら?うふふ。」


オレ「俺、アヤナさんが死んだら悲しいです!」


アヤナ「あら、今日逢ったばかりなのに?」


俺はまた何も言えず黙り込んでしまった。


アヤナ「あなたにはね、とても感謝してるのよ。」

「最後にあなたと逢えて、本当によかったって思ってる。うふふ。」


「ありがとう!」


「そして、さよなら!」


そう言うと、アヤナはロケットの青酸カリをいっきに飲み込んだ!


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