第11話 お・た・の・し・み?
アヤナは俺の車椅子を押しながら、庭園の奥の方にあった大きな壁に囲まれた扉の鍵をあけて中に入った。
そこにはあたり一面にひしめきあうようにひまわりが咲いていた。
オレ「すごい!まるでひまわり畑のようですね!」
俺がそう言うと、
アヤナ「ええ。でもこれじゃないの!」
アヤナはそう答えた。
アヤナの足は、ひまわり畑のさらに奥にある小さなプレハブへ向かっていた。
小さなプレハブの前に到着すると、アヤナは厳重にかけられたドアの鍵をあけ始めた。
アヤナの後ろから小さなプレハブを見上げていた俺は、ふとあることに気がついた。
窓が1つもないのだ。
アヤナ「さー中に入るわよ!」
アヤナはそう言うと、また車椅子のグリップを持って押し始めた。
オレ「なんかドキドキしてきました。」
アヤナ「うふふ…」
アヤナは意味深に微笑むと、小さなプレハブの中へ俺を押して入った。
「涼しい!」
外の炎天下がまるでウソのように中は常時温度管理されているようだ。
「ガチャン」
アヤナが扉を閉めると、それまで真っ暗だったプレハブ内部に自動的に灯りがついた。
オレ「おお!すごい!」
俺はその幻想的な光景に思わず息をのんだ。
プレハブの内部は、まるで水中水族館のように床も壁も一面水槽が張り巡らされていた。
良く見ると水槽は複数の区画で小分けされており、たくさんの種類の熱帯魚が泳いでいた。
アヤナ「ここへ他人を招待したのは、あなたが初めてよ!」
オレ「それは光栄です!ありがとうございます。」
アヤナ「うふふ…。見て!こっちがテトラ系、こっちがグッピー系」
「こっちの大きいのはディスカスでしょ…」
「それからプレコやコリドラスなんかもいるのよ!うふふ…」
アヤナは目をキラキラ輝かせながら熱帯魚を説明し始めた。
しかし、俺は熱帯魚の種類はまったくわからなかった。
オレ「ちょ、あの、ゴメン。俺、熱帯魚の知識はほとんどなくて…」
アヤナ「いいのよ。私こそ偉そうに自慢しちゃってゴメンね!」
オレ「いやでもなんていうか…この魚たち見てるだけですごく癒されますね!」
俺がそう言うと、アヤナはうれしそうに微笑みながら、
アヤナ「ここは、私の父と母が作った自慢の場所なの!うふふ…」
…と答えた。
オレ「そうですか、こんな素敵な場所をつくりあげるなんて、きっとアヤナさんのご両親も素敵な方なんでしょうね。」
アヤナ「ええ、最高の両親だったわ」「もういないけど…」
そう言ってアヤナは、寂しそうな顔をした。
オレ(うっ!しまった!なんか地雷踏んでしまった感がハンパない!><)
俺はどうフォローして良いかわからず黙り込んでいると、突然アヤナは苦痛の表情を浮かべてしゃがみこんでしまった。
オレ「ゴメンナサイ!俺何か余計なこと言っちゃったよね!」
俺がそう謝ると、アヤナは小さなうめき声をあげながら右手の甲で背中を抑えた!
何か様子がおかしい。
オレ「腰が痛いの?」
アヤナ「痛い、背中が…」
「このまま…少し…こうしてれば……おさまるから…」
しかし、彼女は苦悶の表情を浮かべながら、額からたくさんの冷や汗を滴らせていた。
腰痛?ギックリ腰とかかな?
こんなに若いのに?
いや、たしか年齢は関係ないって聞いたことが…。
オレ(おっとそんなこと考えてる場合じゃねーだろ!)
俺は心の中で自分にツッコミをいれながら、
じゅもんウインドウからすばやく左手でホイミンをタップした。
そして、彼女が右手で抑えている背中の近くにそっと触れた。
俺の左手が白く淡く光った後、彼女の苦悶の表情が和らいだのを確認してから声をかけてみた。
オレ「大丈夫?」
アヤナ「う…あれ…なんか急に楽になったみたい…かしら?」
アヤナはそう言うとゆっくりと立ち上がった。
アヤナ「いつもはもっと長引くのに…」
「こんなにすぐ楽になるなんて…」
「今私に何かエッチなことしたかしら?」
オレ「してないっつーの!!」
「ちょっと秘伝のおまじないをしただけです!」
俺はニコっと微笑みながらサムズアップした。
もちろんウソである。
と言ってもウソなのは秘伝の話で、エッチなことの方じゃないからね!
あれ、俺今誰にいいわけしてたんだろう!
俺がそんな下らない自問自答をしていると、
アヤナ「ありがとう!」
彼女は少し頬を染めながらはにかむようにそう言ったと思ったら、急に怒ったような表情をして、
アヤナ「私が誰かにお礼を言うなんて、めったにないんだからね!感謝してよね!」
…と言った。
オレ「ここにきてツンデレお嬢様キャラ炸裂ですか?どうもまいりました!。アハハ。」
アヤナ「あなたって最高に面白いわね!あははははははは!」
アヤナは満面の笑みを浮かべながら笑い続けた。
俺は今日アヤナと出会ってから、彼女の心からの笑い声を初めて聞けたような気がしたのだった。
【次回予告】
[第1章 入院編] 第12話 アヤナの秘密?




