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DQ転生?物語 ~車椅子の救世主~  作者: イツモ ノアレ
第1章 入院編
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第9話 庭園を見たいのかしら?

お昼ごはんを食べると、俺はすぐに屋上へ向かった。


そうだ、炎天下でも熱中症にならないように飲み物をたくさんもっていくか!

俺はそう考えて、エレベータ付近の自販機でレスカを5本ほど買い込んだ。


「カーン、ゴロゴロゴロゴロ…」


両手で抱えていたレスカの1本が落ちて、廊下の先の方へ転がっていってしまった。


俺は、車椅子で転がったレスカを追いかけた。


「はい、どうぞ!」


俺は、転がったレスカを拾ってくれた人の手が見えたので視線を上げた。


そこには、栗色のロングストレートで上品な顔立ちの超絶美少女がニッコリと微笑みながら立っていた。


うおぉぉぉぉ!めちゃめちゃ美少女だ!俺のタイプじゃん!

俺は思わず息をのんで、その美少女に魅入ってしまった。


少女「レモンスカッシュが好きなのかしら?」


オレ「そそそ、そうなんです。」


俺(おいおい!俺、なにテンパってるんだよ!)

俺は自分にツッコミをいれながら、彼女から少し震える手でレスカを受け取った。


少女「うふふ。実は私もレモンスカッシュ大好きなのっ!」

「でも、そんなに買い込むなら、袋を持ってきた方がいいわね!うふふ…。」


少女はそう言うと、ゆったりとした足取りで立ち去っていった。


そして、真夏だというのに長袖の上下黒のスーツを着て黒いサングラスをかけた男が2人、少女の後を続くように歩いていった。


どこかのお金持ちのお嬢様だろうか?


少しやつれた病弱な雰囲気はあったけど、それでもめちゃめちゃ可愛いかったなー。


同じ病衣を着てたからこの病院の入院患者だと思う。

まー俺とは住む世界が違う感ハンパないオーラ出てたし、これきり縁はないだろう。


俺は少女の背中を見送りながら「高根の花」という言葉の意味を生まれて初めて実感していた。


その後、手提げ袋をとりに一旦病室へ戻ってからエレベータで屋上へ向かった。


エレベーターの最上階で降りると、すぐ目の前に小さな休憩スペースと屋上出入り口の扉が見えた。


小さな休憩スペースには自販機があり俺の好きなレスカも売っていた。


オレ「なんだここにも自販機があったのか!わざわざ下で買ってくる必要なかったな。」

俺はそうつぶやきながら屋上出入り口へ車椅子を進めた。


「あれ?」


「あかない?」


俺は屋上出入り口のドアノブをガチャガチャまわし続けた。


掃除のおばちゃん「屋上は今入れんだわさー。」


俺がドアノブをガチャガチャしていると、後ろから変なイントネーションの掃除のおばちゃんが声をかけてきた。


オレ「あ、もしかして事前申請とかいるんですか?」


掃除のおばちゃん「いーんや、すこし前に一般開放が禁止されたんだわさー。」

「なんか病院長の指示で急に決まったみたいんだわさー。」


オレ「そうなんですか…」


掃除のおばちゃん「ここの庭園はきれいな花がたくさん咲いてて患者さんには人気だったのに残念だわさー。」

「あんたももっと早く来てればここ見れてたのに残念だわさー。」


そう言い残すと掃除のおばちゃんはさっさと階段から降りて行ってしまった。


オレ「くそっ!マジでガックリだわさー。」


いかん、あまりのショックで掃除のおばちゃん語が移ってしまったようだ。


俺はあきらめて車椅子のハンドリムに手をかけた。


少女「庭園を見たいのかしら?」


俺が車椅子の向きを回転させたところで、ちょうどエレベーターから降りてきたさっきの超絶美少女が話しかけてきた。


オレ「ええ、でもここ立ち入り禁止になったらしくて…。」


俺は少女の端整な顔立ちを見てドキドキする鼓動を落ち着かせながらそう答えた。


少女「んー…。いいわ、ついてきて!」


オレ「え?」


黒服の男A「ですがお嬢様…。」


少女「私がいいと言ったらいいのです!」


黒服の男A「失礼しました。」


俺は2人のやりとりをあっけにとられて見ていると、その超絶美少女はスタスタと足早に近づいてきてドアノブに鍵を差し込んだ。


「カチャ」


鍵のあいた音がした。


少女「鈴木!車椅子押してあげて!」


超絶美少女はもう一方の黒服の男に指示を出すと屋上のドアをあけて外に出て行ってしまった。


黒服の男B「失礼します。」


俺は黒服の男に車椅子を押されてそのまま屋上の外へ出た。


オレ「おーー!すごい」


あたり一面にきれいに区画分けされた花壇があり、様々な種類の花が咲き乱れていた。


少女「あなたたちは、中で待ってて!」


少女は車椅子を押してくれた黒服の男に代わって自分で車椅子のグリップを握るとそう言った。


黒服の男A「ですがお嬢様…。」


少女「佐藤!私は中で待っててと言ったのよ!」


黒服の男A「失礼しました。」


黒服の男はそう答えると2人とも中へ戻ってドアを閉めた。


「カチャ」


あれ、鍵しめられた?

…ということは、俺と超絶美少女は今この空間に2人きりじゃないか!

やばい、超ドキドキする!


俺はここにやってきた目的も忘れて超絶美少女と2人きりの密閉空間にアタフタしていた。


少女「きれいでしょ? うふふ…。」


オレ「はい。めちゃめちゃ可愛いです。」


少女「は?」


しまった!この超絶美少女に見とれすぎて質問の意味を取り違えてしまった。


少女「私は桃園アヤナ。アヤナでいいわ!」

「あと、その超絶美少女って表現はやめてくれるかしら?」


オレ「え?アヤナさん?」


あれ俺、超絶美少女なんて一言も声に出してなかったと思うけど…。


アヤナ「あーうん!今なんとなくそう言われてた気がしたから…。」


うっ!俺の心を読んだのか?エスパーも顔負けの読心術じゃねーか!


オレ「あのアヤナさんは、なぜここの鍵を持っているんですか?」


アヤナ「あーそれ?私の祖父がこの病院のオーナーだから…かしら?」


オレ「なるほど…。」


彼女は病院関係者にとってVIP待遇な重要人物ってわけか。納得!


オレ「ポーチュラカ、アナベル、ジニア、アガパンサス…。」

「ざっと見ただけでも10種類以上の珍しい花が咲いてますね!」

「むこうにあるあれ月下美人でしょ?」


俺は彼女の一言一句に驚かせられながらも最初の質問にそう答えた。


アヤナ「あら、ずいぶん詳しいのね!うふふ…。花が好きなのかしら?」


オレ「ええ、俺植物とか昆虫を観察するの大好きなんです!」


もちろんウソである。

俺は小さい頃「生ける植物図鑑」の異名を取っていたぐらい花もそこそこ詳しい!

だがしかし別に花が好きだから詳しくなったわけではない。

小さい頃病弱だった俺は、たまたま家に置いてあった分厚い植物図鑑を暇つぶしに毎日見ていて覚えてしまっただけなのである。


アヤナ「そう。うふふ。私はあの月下美人の花を見るためだけに夜来ることもあるのよ。うふふ…」


彼女は俺の答えに満足したのか、とても機嫌が良くなったようだ。


ふと辺りを見回すと、蝶やトンボなどの様々な昆虫が花の周りを飛び回っていた。

あれ昆虫ってこんな高い場所まで飛んでこれるのか?

俺は不思議そうに考えていると…、


アヤナ「ここは定期的に専用業者にお手入れしてもらっててね、花の受粉に適した昆虫も一緒に運んできてくれるのよ!」

「つまり、ここにいる昆虫たちも庭園の一部ってわけね。うふふ…」


俺(また思考を読まれた!このお嬢様本当にエスパーじゃないのか?)

(これじゃウッカリエッチな想像もできないじゃないか!)


俺はそんな心の声をかき消すように、


オレ「へー!かなり手間暇かけてるんですねー!すごいですー!」


…そう答えながら、ここに来た本来の目的を思い出していた。


これだけいろいろ昆虫が生息してるなら検証にはうってつけだ!

彼女には悪いが、俺の経験値稼ぎのためにはある程度犠牲が必要なのだ。


オレ「アヤナさん、少し見て回らせてもらっていいですか?」


アヤナ「ええ、どうぞ!私も適当に見てるから…。うふふ…」


俺は自分でハンドリムを回して、彼女から少しはなれた花壇の前まで移動した。


もちろん彼女に俺のエッチな想像を読まれないように移動したわけではない!

彼女が近くにいると検証がやりにくいからだ。


この庭園はめったに入れないことがわかった以上、

俺が今ここでやるべきことは、蚊以外の昆虫でも経験値が稼げるかを試すことなのだ!


[第1章 入院編] 第10話 痛くない?


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