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プラカード  作者:
12/13

敷かれたレール

読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。


2017/08/24 修正。

 さぁて、ここからや。

 ヒントは、出してやったんや。

 はよ答え、導き出せよ。


 訴える気など、はなからなかった。

 そんな事をしても、ただ時間が掛って、面倒なだけだ。

 だが、脅すには充分な効果が期待できると考えた。

 ブラフの為だけに、わざと気付きやすい席で、補欠部員による10台のカメラが、審判を狙っていた。


 本来なら、審判を敵に回すことなど、あってはならない行為だ。

 判定が微妙な場合は、不利にジャッジされてしまうこともあると聞くから、心証しんしょうが良いに越したことは無い。

 だが、この程度がクリア出来ないようでは、最初からこのカット打法という作戦をやる意味がなかった。

 この春は、カット戦法を有利にするための、プラカードへの布石なのだ。


 回を重ねる度に、主審青木のコールは小さくなり、選手から聞き返されることも増えてきた。

 一球一球の判定に戸惑いながらも、慎重にジャッジを選んだ。

 余りにも、その判断が通常より遅れていることから、塁審の田中は試合を止め、青木に近づいた。


「どうしたんです? カットだけならまだしも、通常の判定まで時間が掛ってるじゃないですか」


「なら、お前が主審やれよ!」


「はい?」


「俺は、カットだけでなく、通常のジャッジだけでも文句言われかねへんねんぞ! もし、微妙な判定してみろ! 裁判で、不利な判定してたとか言われんのは、俺なんやぞ!」


「だからって……」


「じゃぁ、お前が主審やれよ!」


 そういって、アンパイアプロテクターを外して渡そうとした。


「ちょっと、止めてくださいよ!」


「だったら、最初から出てくんな! 引っ込んでろ!」


「青木さん、落ち着いて」


「うるさい!」


 何もできないままに、ただ怒りだけをかって、田中は仕方なく三塁へと下がった。

 青木の精神状態は、崩壊寸前だった。


「俺だけでは済まさんからな、田中も佐々木も矢野も、同罪や……」


 こんな試合、早く終わってしまえ!


 段々と青木のジャッジは、可笑しくなり、微妙なボールはストライクへ。

 それにいち早く気付いた学は、監督に指示してタイムを取らせた。

 タイムのコールに、ビクッとなった青木だったが、学がマウンドへ向かうと、ホッと胸を撫で下ろした。


 内野陣も、マウンドへ集まる。


「俺が指示するまで、ボール多目で、あの審判混乱してるから、多少外れててもストライクって言いよるわ」


 キャッチャーの南波は、もう少し細かく補足する。


「せやな、ボール1個分満たないくらいかな? ストライクって言っとる。で、お前の指示待ちってことは、あの審判、正常に戻るんか?」


「あぁ、あの主審が、俺の敷いたレールに乗ればな」


 それに気付かなければ、意地でもこの試合に勝たなくてはいけない。

 逆に、気付いてさえくれれば、負けても良いとさえ思っていた。


 アイツら、なんなんや! 俺の方ばっか見やがって!

 くっそー、俺が何したっていうんや!

 仕方ないやろ!

 お前らのカットは、ルール違反なんやから!

 それを提訴とか言いやがって、勝ったら提訴やめるんか?

 仮に認めても、お前ら勝てんのかよ!

 もう7回裏で、1-0やぞ!

 提訴確定やないか! くっそー!


 青木は『提訴』と言う言葉に、少し引っ掛かりを感じた。


 ん? 勝ったら提訴しないとは……いやいや、勝ったらせんやろ普通。

 でも待てよ……それやとアイツ等、試合の度に『提訴する!』って言うんか?

 それが毎回通ると、思ってんのか?

 それは幾らなんでも、監督も反対するやろ?

 あれ?

 なんで監督は、反対せーへんのや?

 そういえば、アイツ……『そのジャッジを提訴する』って、言ってたような?

 俺ら(審判)を訴えるとは……言ってない……、

 ちょっと待てよ。

 思い出せ!

 思い出すんや、3回表を!


 青木は、ゆっくりと3回にあった出来事を一つ一つ思い出していった。


 元々、俺はカットのやり過ぎで、19項を適用しようと考えた。

 そして、確かアイツは……そうや、俺の裁量に任せるって言ったんや。

 俺に任せるのに、なんでこんなことになっとんや?

 否、違う!

 アイツはルールを受け入れた上で、判定基準を聞いたんや!

 俺は、苛立ちに任せて、フォロースルーがしっかりしている事と答えた。

 市西と川西北陵のフォロースルーに差は……ない。

 否、むしろ市西の方が振っとる。


『もちろんですが、相手側も適用されますよね?』


 そうや、だからあの時、アイツは念を押したんや。

 言われたルールに従って行動したのに、明らかに平等に扱っていない。

 解った……間違ってたのはアイツらやない……俺の方や。


読んでくださってありがとうございます。

次は、早めにアップ……でき……そうな気がしています。

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