敷かれたレール
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
2017/08/24 修正。
さぁて、ここからや。
ヒントは、出してやったんや。
はよ答え、導き出せよ。
訴える気など、端からなかった。
そんな事をしても、ただ時間が掛って、面倒なだけだ。
だが、脅すには充分な効果が期待できると考えた。
ブラフの為だけに、態と気付きやすい席で、補欠部員による10台のカメラが、審判を狙っていた。
本来なら、審判を敵に回すことなど、あってはならない行為だ。
判定が微妙な場合は、不利にジャッジされてしまうこともあると聞くから、心証が良いに越したことは無い。
だが、この程度がクリア出来ないようでは、最初からこのカット打法という作戦をやる意味がなかった。
この春は、カット戦法を有利にするための、夏への布石なのだ。
回を重ねる度に、主審青木のコールは小さくなり、選手から聞き返されることも増えてきた。
一球一球の判定に戸惑いながらも、慎重にジャッジを選んだ。
余りにも、その判断が通常より遅れていることから、塁審の田中は試合を止め、青木に近づいた。
「どうしたんです? カットだけならまだしも、通常の判定まで時間が掛ってるじゃないですか」
「なら、お前が主審やれよ!」
「はい?」
「俺は、カットだけでなく、通常のジャッジだけでも文句言われかねへんねんぞ! もし、微妙な判定してみろ! 裁判で、不利な判定してたとか言われんのは、俺なんやぞ!」
「だからって……」
「じゃぁ、お前が主審やれよ!」
そういって、アンパイアプロテクターを外して渡そうとした。
「ちょっと、止めてくださいよ!」
「だったら、最初から出てくんな! 引っ込んでろ!」
「青木さん、落ち着いて」
「うるさい!」
何もできないままに、ただ怒りだけをかって、田中は仕方なく三塁へと下がった。
青木の精神状態は、崩壊寸前だった。
「俺だけでは済まさんからな、田中も佐々木も矢野も、同罪や……」
こんな試合、早く終わってしまえ!
段々と青木のジャッジは、可笑しくなり、微妙なボールはストライクへ。
それにいち早く気付いた学は、監督に指示してタイムを取らせた。
タイムのコールに、ビクッとなった青木だったが、学がマウンドへ向かうと、ホッと胸を撫で下ろした。
内野陣も、マウンドへ集まる。
「俺が指示するまで、ボール多目で、あの審判混乱してるから、多少外れててもストライクって言いよるわ」
キャッチャーの南波は、もう少し細かく補足する。
「せやな、ボール1個分満たないくらいかな? ストライクって言っとる。で、お前の指示待ちってことは、あの審判、正常に戻るんか?」
「あぁ、あの主審が、俺の敷いたレールに乗ればな」
それに気付かなければ、意地でもこの試合に勝たなくてはいけない。
逆に、気付いてさえくれれば、負けても良いとさえ思っていた。
アイツら、なんなんや! 俺の方ばっか見やがって!
くっそー、俺が何したっていうんや!
仕方ないやろ!
お前らのカットは、ルール違反なんやから!
それを提訴とか言いやがって、勝ったら提訴やめるんか?
仮に認めても、お前ら勝てんのかよ!
もう7回裏で、1-0やぞ!
提訴確定やないか! くっそー!
青木は『提訴』と言う言葉に、少し引っ掛かりを感じた。
ん? 勝ったら提訴しないとは……いやいや、勝ったらせんやろ普通。
でも待てよ……それやとアイツ等、試合の度に『提訴する!』って言うんか?
それが毎回通ると、思ってんのか?
それは幾らなんでも、監督も反対するやろ?
あれ?
なんで監督は、反対せーへんのや?
そういえば、アイツ……『そのジャッジを提訴する』って、言ってたような?
俺ら(審判)を訴えるとは……言ってない……、
ちょっと待てよ。
思い出せ!
思い出すんや、3回表を!
青木は、ゆっくりと3回にあった出来事を一つ一つ思い出していった。
元々、俺はカットのやり過ぎで、19項を適用しようと考えた。
そして、確かアイツは……そうや、俺の裁量に任せるって言ったんや。
俺に任せるのに、なんでこんなことになっとんや?
否、違う!
アイツはルールを受け入れた上で、判定基準を聞いたんや!
俺は、苛立ちに任せて、フォロースルーがしっかりしている事と答えた。
市西と川西北陵のフォロースルーに差は……ない。
否、寧ろ市西の方が振っとる。
『もちろんですが、相手側も適用されますよね?』
そうや、だからあの時、アイツは念を押したんや。
言われたルールに従って行動したのに、明らかに平等に扱っていない。
解った……間違ってたのはアイツらやない……俺の方や。
読んでくださってありがとうございます。
次は、早めにアップ……でき……そうな気がしています。




