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異世界で咲く華  作者: ロンパン
修正前
7/20

各国の陰謀と崩れる日常

 「ふう。」

 楚云烨チュ・ユンイェーはRPGの攻略本を見ながら外を眺めた。

 転移事件から既に半年、完全に安全になった北方では魔物の生き残りを軍で処分している話だけになった。ネットの噂では南方の方で海軍の調査艇が海賊に教われたというニュースを聞いた。


 今彼の兄は北方の方でその駆除と進撃を行っている。高校に通っている自分は呑気に小略本を眺めているが兄貴は命のやり取りをしている。

 メールでは美人な魔族と会った等ウソ見え見えの楽しい話を盛り込んでくれていた。転移する前は時々飛行機雲があちこちにあったが今ではヘリコプターさえ見えない。飛ぶ箇所は国内線のみ、いやその国内線でさえ稼働していないことに等しい。

 一時期軍用機が飛び交っていたこともあったが、それもつかの間余裕が出てきたのかトラックばかり目に入るようになった。


 「漫画やゲームみたいなことが起きたって思ったのになぁ。」

 転移が起きてから車の数は減る、電車に乗る人数は増える。自転車に乗る人間がかなり増えてきて一部の車道では公用の車しか使用しては行けないようになってしまい、生活が苦しくなっただけでちっとも漫画やゲームのようなワクワクすることが起きなかった。


 因に学校の車両や老人介護用のバンと言ったものには特別なシールを使用している。無論数ヶ月もすれば偽物も出回り、最終的に賄賂で手に入れる輩まで出てきた。折角の許可証シールはそれの意味をなさなくなって社会問題になり、妥協策としてナンバープレートの奇数偶数による分別と二人以上の乗車を必要とされた。


 偽シールの製造会社や賄賂事件の容疑者は、国家の危機に便乗する国賊と大々的に報道され無期懲役を下されネットでは当然だと声が流れ誰もが納得していた。

 「さてと、何をしようか。」


 今はこういう風に少しだけ不便な生活をしているがいずれこの窮屈さはなくなるのか、もしかしたらその窮屈さに慣れてしまうのか。

 そんなことを考えているとアプリからお知らせがやってきた。ネット掲示板の反応をまとめたサイトリンク集のアプリだ。


 「この世界を植民地化すべし・・・海外製の工作機械の複製は不可能。」

 ネットでは中国の勇ましさばかり伝えるものと、中国の弱点を指摘する記事と極端に分かれていた。


 「植民地なんて持ったら日本軍と同じだっつーの。」

 そして今中国は同じ失敗の道を歩もうとしている。

 「この世界に転移したことを幸運と捉えるべきか不幸と捉えるべきか。」


 日本のように高校生の日常を満喫、今日は幼馴染と一緒に自動車で帰るつもりだ。

 燃料が高騰している中何故乗れるのか、理由は簡単で電気自動車を使用しているからだ。ただ問題は法が追い付いておらず電気自動車も奇数偶数制度に縛られており自由に動けないのだ。


 日本ならしっかりこういう不備も解決していただろうな、そう彼は思った。


 「ユンイェー、待った?」


 沈 林杏シュエン・リンシン彼女の父親は太陽光パネルの事業で大きく成長してきたがここ最近原材料が輸入できなくて営業に支障が出ている、だがその裏腹に株価は大きく上がっている。

 この石油危機の中自然エネルギーの重要性は高く今でこそ苦しいが絶対に見返りがあると中国政府のお墨付きで皆投資しているのだ、野蛮な外の世界からレアメタルさえ採掘できれば太陽電池が復活すると。


 そして天井に堂々と太陽電池が設置された白い業務用の軽ワゴン車が迎えに来てくれた。


 「ユンイェー君待ったかな?」


 とはいえ、彼の父親はどちらかというと実業家と言うより個人経営の風貌だ。威厳より親しみを感じやすく自分の父親も彼みたいだったらと思った。


 「久々だね、君が小学生のころよく私の車に乗ったのは憶えているかな?といっても、その時はガソリン車だったけどね。」

 「ハハ、でも電気自動車は環境に良いので。これからの時代電気ですよ。」

 ユンイェーが車に乗り込もうとするとき太陽電池の後ろには日本製と刻印されておりその隣にはその国の会社のロゴがあった。

 『これから日本製は手に入らないからな。』


 寂しくなった四車線道路に軽ワゴンが通る、排気音を鳴らさない特徴を持つ電気自動車はその寂しさを余計に感じさせた。




 「さて、旧世界の諸君。我々は窮地に立たされている。」

 アメリカ大使館を中心にNATOを初めとする西側諸国の加盟国そして中国を敵対視する国々が集まっていた。


 「本来我々は祖国を失い二つの選択がある。一つは中国に帰化するもう一つは祖国が再び現れることを待つこと。

 だが、二つ目の選択はハッキリ言って不明瞭でかつ分らないことが現状だ。」

 「何故中国だけがこの世界に転移したのか、そもそもどういう原理で転移したのか不明だしな。」

 「北朝鮮・・・忘れてませんか?」


 彼らとそして彼らの守るべき民衆は選択を迫られえていた。


 「普通・・ならば、帰化する選択が殆どだがハッキリ言って中国は『信用できない』。」


 彼らは頷く、かつてそこにはアメリカを相手に戦ったベトナムの姿もある。アメリカを相手に戦いそしてアメリカ軍に祖国を蹂躙と言っても過言ではない行為を行われたにも関わらず、ベトナムはこちら側を選択した。


 「しかし通告もなしに資産の没収という事態は起きなかったわけですし、まだよかったのでは?」

 ドイツ大使館はそういうが日本は首を振る。

 「それも今の間だけです、中国政府もおそらく何かの弾みで元の世界に帰ってしまった時のことを考えている。もし戻ってしまったとき自国の企業にどのようなことをしたかを全世界に公表されたら・・・まぁこの先は想像に任せます。」


 日本大使館代表はそういうとイギリスとフランスも目で肯定した。尖閣諸島の事件時日本の社員を拉致に近い形で監禁したこと。そして機材を撤退しようにも撤退ができないようにされた日本資本の会社を思い出した。


 「自国の利益の為なら何でもする。それが中国です20世紀の帝国主義の如く周辺国が矛を収めたことを良いことに好き勝手しようと考えていました。」


 例え敗戦国とはいえこの言葉には重く突き刺さった、そして同時にいつもの日本と違うと感じさせる。大使の態度は日本政府というより日本のマスコミといった物が存在しない今だからこその態度であり意見であった。

 「ある意味では日本は弱者としてのエキスパートです故に中国の本質が分かります。」

 「それはどういう?」

 アメリカとベトナムはもう予想がついていた。


 「祖国と言う後ろ盾を失った我々は好き放題されるでしょう。何か内政で不満があれば帝国主義だった当時の列強国をそのガス抜きに使われるかもしれません。相手が弱くなった途端あの国は豹変しますからね。」


 それを聞いたときイギリス大使はぞっとした。アヘン戦争と香港のこともある。異常な日本バッシングを見てきた(というよりイギリスも参加していた)者としてその矛先が向くと考えただけでぞっとした。


 「つまり第三の選択があると言うわけだな?」

 イギリスは再びアメリカ代表に目を向ける。

 「そうだ、無人の領土かもしくはそれに類する所を手に入れ旧世界による連邦国を建国立したいと考えている。」


 アメリカ政府の意見は突拍子もなかった。


 今なんと言った、彼は連邦国の建国?

 不可能だ、その場にいた殆どはそう思った。そもそもそれまでの間中国が手伝ってくれるとは思えないしする義理立てもない。

 「私に秘策があるのだよ。」

 彼はそう言ってある写真を見せた。


 「これは・・・ロシア軍?」


 「そうだ、パフォーマンスもあっただろうが中露共同演習の直前だったらしい。今ロシア大使館もこの案に賛成している。我々は、世界は中国を信用しない。そして我々には国を作るだけの武力がある。」


 無論これはあくまでも建国時だけでその後は何らかの形で安住の地を探しているであろう人々をその国家に入植させ、最終的に魔法技術も導入できる寸法だ。


 加えて魔法技術の導入までに各国の諜報機関は武器と人脈を持っている。

 「戦力そして意志最後には領土が必要だ。出来ればモンスターがいる大陸に・・・駆逐されたあとに我々が入る。

 中国とて防波堤として何か欲しい、最近は民衆の不満もある、なるべく自国民を危険にさらしたくない、正確には兵の両親が民衆がそう思っている。故にそれを了承するだろう。」


 そう上手くことが運ぶのだろうか、確かに祖国は消え自前の国が欲しいとは思っていたが同じ世界出身、文明国の力がある中国の後ろ盾を捨ててまでやることだろうか。


 「それに我々に協力しようとするのは何もここにいるものだけではない、この世界の人間で中国に反感を持つ国はいくつか現れても不思議ではない。」


 ここに集まっている者みなそれを確信した、あの安定した旧世界でもあの暴走っぷりこの世界で暴走を起こさない訳がないと判断した。


 「大変です。」

 大声をあげる訳でもなくアメリカ大使館の職員が飛び込んできた。


 「どうした?」

 「海南省の島がモンスターに襲われて壊滅状態だそうです!」

 「中国最南端の島じゃないか!」


 ベトナム代表が立ち上がりそういうと各国の代表は顔色を変える、確かモンスターは北方からじゃないのか、南には人間がいるのではないのか・・・


 「それはつまり、人間に飼われた化け物が襲っていると考える。軍事侵攻と捉えても構わないということだ。」

 「馬鹿な!?我々がここに召還されてまだ半年ぐらいしか経っていないぞ!いくら中国でも戦争を仕掛けるようなことをしないし、仕掛けた国だってよっぽどのことが無い限りっ!」

 「ちょっと待て!てことは何だ香港に近いのか!?」

 「香港で会合なんてするんじゃなかった!」


 周りが慌ている中アメリカやロシアイギリスと言った常任理事国は知っていた、そして日本も大方予想していた。


 『中国こそは信用ができない?そんなことはない。中国は確かに帝国主義で野蛮だがこの世界とて中国と同レベルもしくはそれ以下の品格なのかもしれないのだよ。』


 「さて、慌てるのは後だ。我々は警察のヘリで避難するぞ。」

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