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異世界で咲く華  作者: ロンパン
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課題の消化

 「クソ応答せよ!応答せよ!」

 目の前に見える光景はまるでノルマンディー上陸作戦のような光景だった、ひっくり返った装甲車、炎上する上陸艇そして多数の味方の死体。無線機を開きすぐにその場を離れる。


 周りの兵もわれ先に小銃を撃ちながら逃げる、そこには7.62x54mmR仕様に改造したブルパップの小銃とSKS改造小銃が交差し中には汎用機銃を腰だめで乱射しながら応戦する者もいた。

 「84式で煙幕を張れ!」

 「了解!」


 すると海から海水でできた柱が盛り上がった、それは蛇のように形を変えユーチン上陸艇に襲いかかる。そこに乗せられた戦車などはもちろん海の底に引きずられる。それは比喩表現ではなく魔術によって操作された海流がそれをなしているのだ。

 「助けてくれ!」

 「空挺部隊は何をしている後方でかく乱をやる予定だろ!?何でここにいる!?」

 無線もタダでは済まずクレーム電話のように報告が入り乱れ指揮所は大パニックに陥っていた、また海の上も安全ではなく既に海中の化け物や魔法によりフリゲード艦が4隻沈められた。今回は遼寧も参加しており新型のフリゲードも交じっている、4隻のうち3隻は比較的新しい052B型駆逐艦であったがそれぞれ一発の攻撃で沈んでしまった。


 「対潜戦闘用意!」

 汗をたらしながらCICの薄暗い中で指示を出す、最も安全な箇所にいる筈なのに少しでも判断を誤れば死につながるという状況で緊張に満ちていた。物体ではないためどう対処したらいいか分らない。ただ言えることはこの海域から一刻も早く脱出することだった。

 『もっとよく調べないからこうなるんだ!』


 半年前もおそらく北京政府は揉めただろうが面子の為なのか相手のことをよく知らずに反攻を仕掛けてきたのだ。よくもまぁ行えたものである。

 「除分隊長が戦死!王が現在指揮を執っています!」

 上陸部隊の悲痛なやり取りが聞こえる。海であろうが陸であろうがどちらとも等しく戦場にいることを思い知らされた。

 この戦争は勝てるだろう、中国が国力を注ぎ込みそれこそ利益を無視して戦えば。だがそんなことをしている余裕は今の中国にはない。





 半年前

 「ローブやこのオリハルコンと呼ばれる金属で作られた鎧は使用者の階級によって強度が違います。」そこは中国軍の研究所で主席も含め文官から武官が揃ってその様子をみていた。

 ロシアどころか西側諸国でさえ作れないであろうこの防備品、これは小銃弾を弾き返し我が軍の歩兵が歩兵として機能しなくなったと報告にあった。まだミサイルや砲といったものは有効だったのが救いだが、軍で一番の基本である歩兵が役に立たないとなれば必ず今後の軍事行動にしかも致命的な損害が起きる。


 「このオリハルコンの素材なのですが未知の鉱石であることとある特定の分子の結合でこのような形になっていることが判明しました。」

 「つまりこの鉱石を鉄のように溶かしても、同じ炭素である炭とダイヤみたいに全く違う物になってしまうのか?」

 「そういうことになります、ただどうやってこのようにしたのか・・・・」


 すると台車から変な茂みみたいなオブジェが運ばれた。

 「見てください、これがあのオリハルコンです一度溶かして作ってみました。」

 「凄い形をしているな」

 「そして触ってみてください、念のために軍手を。」

 するとどうだろうか、厚さ3mmで銃弾を弾き返すと言われたオリハルコンがいとも簡単に崩れてパラパラと手から滑り落ちた。


 「これはまた・・・」

 「ローブに至っては製作不可能です、ただ加工は可能です。故に一部の特殊部隊などで使用しようと考えています。」

 「となれば、占領してからの制作になるな。」

 陸軍の武官がそういうが文官やお財布事情を良く知る者は楽天家めと心の中で呟いた。

 「そしてこちらを見てください。」

 その場所には固定具でセットされた狙撃銃がそこにあった、そしてその銃口の先にはオリハルコンとローブがある。

 「こちらをおつけください。」

 防音イヤーをそれぞれ渡され全員の装着を確認すると銃弾が発射される、するとどうだろうかそこにはあれ程報告にあった防弾性を誇る二つのそれに穴があいのだ。

 信じられないどうやったのか、もしやしたら魔法技術かそれとも新技術を使用した中国の新型銃弾か。


 「7.62x54mmRを使用しています、香港で回収された死体を調べると穴が空いている死体もありました、最初は12.7mmのような重機関銃だと思っていましたが死体から汎用機銃の弾丸が出てきました。そしてテストの結果指揮官クラスの防護服を除き5.6mm口径や7.62x39mm弾が効かないもののこのフルサイズ7.62mmRだと効果があることが判明しました。」

 東側には西側と違い7.62mmに二種類存在する、旧ドイツ軍に倣い反動を抑えるためフルサイズの7.62x54mmRではなく一回り短い7.62x39mmを採用した背景がある。(ただ単に弾が沢山合ったという理由もあったが)だが5.56mmNATO弾の登場によりより小さい口径と低反動の弾薬が生産されることとなる。


 「またもう一つ12.7mmと7.62x54mmRと穴の大きさが同じでしたこれは恐らくですがある程度の衝撃を吸収緩和する性質があると思われます。ただ限界値を超えると普通に衝撃が伝わりますね。」

 「しかしAKに使用されている7.62x39mmはNATOの7.62mmに匹敵する貫通力があると聞いたが?」

 「そこら辺はまだ未知数です、恐らくですが運動エネルギーによってこのような現象が起きたのではないのかと分析しています。ただそのように予想しているというだけですし、仮にそうだとしても12.7mmと7.62mmと多少の差異はあれどほぼ同じ破壊力である理由は解明されていません。今後さらに研究する必要があります。」

 「運動エネルギーねぇ・・・・」

 「ただ結界の・・・徹甲弾の件もありますので小口径かもしくは反動の少ない弾薬でも倒せるように考えておきます。」

 「それはいつごろ実現できる?」

 すると研究者の責任者が首を横に振り即答する。

 「それはお答えできません。自分は機械の性能だけで戦術についてはかじった程度しか知らないですので断言はしませんが、二次世界大戦のようにセミオートライフルで編成するべきだと思います。」

  「そこまでする必要はないだろう、調べればあそこまで精鋭化された敵はそうそういないそうだ。」

 張ライ大将はそういう、あの部隊は贅沢な武装をした貴族部隊であることは知った。また他国の武官や共和国に留学している留学生に問い合わせたらそのような回答を得たのだ。


「だが遭遇した時はかなり不味いだろ。通常の刀や剣を使用している部隊に遭遇した時小口径の部隊も対処はできるが、例の部隊に遭遇したら逃げるしかない。だが大口径の部隊ならばどっちに遭遇しても戦える。」

 「だが特殊部隊の火力が減る、フルオート射撃が難しくなると制圧や室内戦が困難になる。」

 「一部の部隊だけブルパップにするか?それとも貫通力の高いサブマシンガンを・・・」

 「そんな精鋭部隊に何度も遭遇するわけがない。」

 「いやしかし・・・・」


 どうだろうか、いつの間にか立ち会議になりその先が進まなくなった。

 しばらくすると一人の男が思い出したように言う。

 「戦力と言えば・・・確か彼らは世界の秩序を乱す中国は世界の英雄が倒しに来ると何人も言っていました。」

 「英雄?何だそれは?」

 「それが一人で船団を相手にしたりドラゴンの群れを倒したりするほどの戦力で、何でもどこの国にも属していない英雄協会なんて物があるそうです。」

 「何なんだそのアメコミみたいな内容は。」


 本当にアメコミの内容の様である、英雄つまりヒーロー協会なるモノが存在するのかばかばかしいと切り捨てたかったが、新大陸に兵と共に現場へ向かった士官であるため蔑に出来なかった。

 「一応本当に存在するようです、各国のパワーバランスを崩しかねないので大抵はその英雄は協会に所属しているものの・・・やはり国に属したり愛国心のある者が協会の言うことを聞かなかったりなどするそうです。」

 「ふん、正義の味方気取りの組織か。それでそいつらの本拠地はあるのか?」

 「もちろんありますが・・・例の浮遊大陸にあります。」


 浮遊大陸、元世界で中東があったあたりに多数存在している大陸である、当初は人工衛星で確認したところ何かの間違いだと考えていたが魔大陸の国経由で本物だと判明したのだ。

 「あの浮遊大陸に本部があるのか・・・・」

 「ええ、しかも魔大陸を敵視しており急接近した我が国も・・・という推測があります。彼らが短絡的でいきなり敵視しないことを祈るしかないでしょうね。」

 「軍事組織とかじゃないんだろ?恐れるに足らずだ。」

 空軍所属、胡秀堂少将がふんと鼻息を鳴らす。

 ここに転移してまだ一年もたっていないが魔法の正体こそ分らぬとも対策の取り方が分かったことと、ウニオー大陸での商業の優位性や将来約束された資源の確保そして時間こそはかかるが魔大陸に眠る石油がその余裕を生んだ。加えて強硬派はバージリ王国付近に眠る石油ももしかしたら手に入るかもしれないと考えている。


 「一応フルサイズの7.62mmに対応した銃を作るよう指示しておいたらどうだ?」

 「まぁそうだな、しないよりはましだ。」

 北の魔大陸では7.62×39mmでも十分通じ、大型モンスターでもない限り問題は発生しなかった。逆に人間に通じないケースがあるというのは皮肉なものでどっちが化け物か分からないと政治委員は思った。


 「つまり、歩兵が歩兵としての能力が活かせれれるようになったと解釈しても良いのだな?」

 政治委員で文官の彼は一番中国軍の危惧している事態を起こそうと思っていた。

 「犯罪者共に武器を持たせて出動させるのも悪くないと思わないか?あいつらを食わせる飯も転移前と比べて心もとない。かといって処刑をすれば反発を喰らう。解放軍に入ることで免罪符を与えようではないか。」


 だがそれは

 「転移前と比べて生活に困り盗人に走った人民もいます、転移前と比べ容易に出来ないことと動員による労働力の不足が懸念されます。」


 そう、経済が停滞している現在、潰れては困る会社に囚人を使いただ同然で働かせている。今中国では貧困ビジネスが転移前以上に発達しデフレが懸念されているのだ。

 「デフレの原因を断ち健全な経営をさせる、それおどこが悪い?」

 『それが出来ないから囚人を送っているのだろ。』

 不正が当たり前の中国で商売を行う自体問題なのかもしれないが、それ以上に資本主義経済が崩壊する危険性とそれに伴う国家分裂の方が危機的なのだ。


 でも、もしかしたら文官は分かっていて侵攻を画策しているのか?周りに敵を作り無理にでも侵攻しないと経済が滅ぶと、ナショナリズムを利用しないと国が崩壊すると恐れているのでは?

 周りに敵がいた方が分裂や反乱が発生する可能性は激減する、しかも今は不満が爆発する一歩手前このままでは本当の意味でコントロールの効かない政治が・・・・


 除作成大将は分かった、文官が隠れて何を行おうとしているのかを。ここにいる者は血気盛んな者もいるため表立って言わない、おそらく態勢を整えた後そのことを伝えるのであろう。

 なんと言う回りくどさ、そしてなんと言う理由で攻めるのか。決して国土を侵された復讐心ではなくいかに現体制を維持するかに集点を整えている。

 『だが文句は言えない、私もその一人なのだから。』

 反撃によって自分のことは忘れ去られるか責任が軽くなるだろう。そう思いながら実験場を後にした。






 ノリンコ 某兵器研究所

 「テスト開始、試験番号47番撃て。」

 フルオート機能での射撃を行う、通常機銃のような重い銃でも無い限りフルサイズの銃弾はばらけて命中精度はあって無いようなものになる。だがこの銃だけは別だった。

 「こんな小手先でやるなら普通に5.8mmの方が良いのでは?」

 研究員はそういう、だがその無茶な要求に応じるほか無くそれの開発を行っていた。


 7.62mmフルサイズ弾を使用で連射時で集弾率を実現し重さは4kgに抑えよ。

 「どうですか?」

 「いや、立ちながら撃つと考えると駄目だ。第一二脚を立ててもこの有様だというのに・・・」

 腕利きの射手はそういう、過密スケジュールの中急いで試作品を作り強度や安全性を確保し射撃を行っている、普通銃の開発は数年を必要とするが西側のコピーを使用することによってその時間を短縮を図っていたのだが、安全性を確保出来ても性能を確保することは出来なかった。

 強度を改ざんした某日本の会社のように作れないわけではなかった、米軍のショットガンやドイツ軍のMP5、米軍のM16ライフルそして、今必要としていそうなバトルライフルのM14等西側の弾薬も含めてコピーを製造してきた実績がある。

 だが政府の注文した内容は中国軍の弾薬と規格を合わせろとのことだった、規格を変えるということはガス圧や反動等の問題もあり不都合な点が発生し、最悪の場合暴発や銃の破裂の危険性もあり得る。


 「やはりAKシリーズを改造しそれに減薬を行うしか無い。」

 「司令部納得するかな?」

 「最悪の場合だよ減薬しても威力は短小弾と比べても物理エネルギーはフルサイズの弾薬の方が上だよ。それでも文句言うなら・・・特殊部隊に直接銃を選ばせるしかない。」

 「一応人間工学に前以上に沿って作ってブルパップ式に変更するしかないか?」


 AKライフルシリーズの改造を施しただけで大きく技術を必要とせずまた人間工学に適したフォルムにすれば使える銃が直ぐにできるだろう、だが中国軍の上層部は自国の技術向上を名目に自国の規格を統一したいのだろう。

 「特殊部隊は西側のコピーを使ってもらうとして、一般兵の分は時間がない、これで手を打とう。」

 「だな、上が五月蝿そうだけど・・・」

 残念がる設計者とその研究員、模倣する物が今後なくなっていき自分たちで考えなくてはならない時代が来るだろうその時に若手に任せるしかないだろう。追いかけるべき道がなくなった今自分たちで道を切り開くしかないのだから。





 「撃て!」

 重い銃声に重い反動、そして重い銃。

 「ふぅ重いな。」

 「威力強すぎる、だがこれでないと敵が倒せない。」

 中国北方工業公司通称ノリンコの研究所からどうあがいても貫通は難しいと判断され結局その場しのぎでフルサイズの小銃弾で訓練することになった、兵からは不満だらけで重くなった、反動がきつい、連射時にコントロールできない、また機銃も重い等訴えかけている。

 「うわ〜本当に二次世界大戦時か朝鮮戦争のような装備だ。」

 63式自動歩槍をフルサイズ弾薬に変更し、かつ弾薬変更によるテストと強度をあげフルオート機能を省いた小銃だ。

 「除隊長、どう思います?」

 「連射に慣れていた自分たちにとって不安だが、これでないと効かない上今まで以上に大人数で行動しなければならないようになったことを考えると・・・プラマイゼロかな?」

 一個小隊に通常ならば軽機銃を二つ装備するのだが、今では三人装備しており車両には必ず機銃をつけるようになっていた。(トラックにでさえ三脚の機銃をセットで置いている。)


 「しかし、上陸作戦って言ってもあれだろ?元の世界だと中東ぐらいの距離があるぞ、本当に補給とか大丈夫なのか?」

 「大丈夫だろ、俺らの船を沈めることができるとは思えないし、第一前の侵攻時返り討ちにしただろ?フォークランド紛争を思い出せよ。」

 「まぁな・・・」


 本当にそうだろうか、満足に銃が効かなかったのだ向こうも同じ装備のままで挑戦してくるとは思えない。例えば鎧をもう少し分厚くする、もしくはローブを二重にする、簡単に対処法が思い浮かぶ。いや形だけでも良い、とりあえず兵を安心させたいのだろう。まともに敵と戦える武器があるかないかで随分と違う。

 そのようなことを考えていると元囚人の新兵達がぞろぞろとトラックから物珍しそうに兵を見ていた。

 臨機応変に動けず上陸部隊になるのではとささやかれている楊 上等兵がため息を着きながら言った。

 「あいつら上陸第一波で出動するらしい。多分だけど囮として使うかもしれないだと。」

 「囚人だから何とも思わないけどな。」

 「そう・・だな。」

 口減らしの為に戦争を行っているのではないのかと思える程だった、今中国で深刻な食料不足で悩んでおり生ゴミをあさっている地域や、風習や慣例であっても必ず食べ物を残すべからずと言われている。

 それのせいもあって今中国軍の食堂はバイキング形式と一度に取れる量を制限している。おかげで良く食べる人間は何度も取りに回らないと満腹にならないと愚痴をこぼしていた。


 「しかし、ちゃんと支援は来るのかな?」

 「どういうこと?」

 「ミサイルが好きな時に降り注いで敵を倒してくれるのかなって話。いくら銃が効くようになったと言っても、変な化け物みたいな奴がやってくることには変わりがないのだろ?」

 妙な化け物、ゲームや映画のような化け物が現れた時はどうしようと考えたが想像するだけ無駄だと悟り新しい銃に慣れるため特訓を続けた。



 バラスカ王国

 「中華人民共和国、貴国に対し謝罪と賠償を求める。」

 バラスカ王国頭を抱えながらこの文章を見る、そこには捕虜の名簿があり、これからダシに使われるであろう。だがいざ交渉に応じると謝罪と賠償だけではなく魔法技術の寄与も迫り最終的にそこで交渉が長引き頓挫するだろう。

 「あの国はウニオー大陸で魔法を使える者を優遇し、学者を中国に引き入れようとしているからな。」

 「だがチュングア人がゲテモノばかり食べているせいで誰も行きたがらなかったとか。」

 ゲテモノを食べているような野蛮人の国に行きたがる物好きはいない、平民を除いて。

 上流階級や学校の講師や教師は全て断ったが、一部の変わり者やギルドに所属する端くれまたはそこにしか行き先の無い者は船で共に行ったらしいが、所詮はウニオー大陸の者で良くて知識があるだけで再現が出来ないか彼らの求める何かが手に入らないだろう。


 バラスカ王国の国王は立ち上がりヨウジ大臣に質問する。

 「正直に答えたまえ、守りに入って勝てるのか?」

 「戦術を変えない限り、難しいでしょう。私たちは歩兵の質では勝ってもあの数の兵士です、加えてサポート兵器に差があり敗北はなくとも多大な傷後を残してバージリ王国と挟み撃ちに逢います。」

 「では、どうする?まさかだと思うが」

 「彼らは魔法や少数戦法に対して・・・特に人と人での戦いに関してはかなり弱いです。彼らの本部を崩壊させたのも飛行船などではなく空中移動での攻撃や歩兵による攻撃で防衛戦をいとも簡単に潰しました。」

 ヨウジは中国が追加された世界地図を眺めそこに描かれている模様のような文字を見た。

 「彼らはこの世界に来て独自に地図を作り上げた、この世界の地図が本屋で売られていると聞いた時は驚いたよ。」

 まだ買いにきたり、他国を介してならば分かる。だがチュングアの持っていた地図は自分たちですら知らない箇所まで描かれておりどのようにして描いたのか分からないのだ。


 「英雄は幸い一人いますあの御方に出陣していただければ。」

 だがそれは抜かずの剣、例えで言うなれば国家の危機の時に出動する者であり安易に使えないもろ刃の剣という表現がふさわしいだろう。

 「魔法も使えない蛮族に英雄を向かわせた王と蔑まれるだろうな。」

 だがまだ軍の主力艦や兵器は残っている、あれの殆どは試作品や旧型艦であり本土にはあれ以上の武装を兼ね備えている。

 軽やかなノック、そしてドアが開かれると英雄たる王子が入ってきた。

 「父上、彼らが来ました。遥か高い場所に・・・・」

 「偵察だろうが無視はできないな・・・」

 「飛行船でも行けません距離です。」

 「・・・追い付けるのか?」

 「ええ、英雄協会の人たちと比べれば遅いです。」


 奇妙なことに彼は英雄と指定され、この国の跡継ぎであった王子は王との会話は許されど統治権や政治に口出しできなくなっていた。英雄協会に英雄とみなされる程の力を持つと認定された者はいかなる場合であれ軍の指揮下や国の指揮下に入るまた指揮をしてはならないことになっている。


 だがこれらは完全ではなく友人の為、家族の為、そして国のために英雄協会の指示を無視するケースが後を絶たない。また情に流されやすいこともありある程度は許される。だがそのグレーゾーンを突き破った場合は英雄協会から刺客が送られる場合によっては殺されることもある。

 「行ってきます父上。」

 「・・・くれぐれも撃墜はするなよ?」

 父親と違い優男の印象がある彼は窓から直接天空へと飛び立った。

 「英雄協会か、子供のころは憧れたが今や恨みの対象でしかないな・・・」

 訳の分らぬ理由で自分の子供の将来を奪っているのだ、許せるわけがなかった。だが彼らは魔物と対峙するための組織、そして神に選ばれし者達、魔族と戦うために・・・全ての人類の為に存在しているのだった。


 ボーイング777、本来旅客機だが中国は座席を取り外しそして可能な限りの自衛用の武装と軽量化を図った、17,446 km程の航続距離があり、軽量化によってもっとそれを高めたのであった。

 旅客機だったそれは迷彩で色塗られ、いかにも軍事用の航空機に変貌していた。

 「撮影を開始する。」

 人工衛星もまだままならない、また精度もよろしくないのでこれを行っている。

 世界がつながるグローバル経済、もしどこかの主要国が消えることになればこちらも作れない物が出てきて、また食べれない物や者が出る。

 ”地球市民”日本の左翼は人類は地球号の搭乗員であり国境がなくなり世界が一つになると言っていた。地球市民として、思想や文化は一つにならなかったが物質的な部分は、経済は確かに地球市民になっていたのだ。そのことを皮肉なことに憎き敵国がなくなって気付かされたのだった。


 「ん?レーダーに何か反応している10~いや30m?安定しないな?」

 「念の為だ、対空戦闘用意。」

 レーダーの反応が安定せずまるで風船のように膨らんだり縮んだりしているようだった。

 「!?速くなった!速度マッハ2!!」

 「何!?」

 「撃墜の攻撃か!?回避行動をとれ!!」


 民間機を改造しかつ本来であればこのような機動はしないはずだった、その時射手がバルカン砲をそこへ向ける、すると目標が見えた。


 「人間です!」

 「はぁ!?」

 「どうしますか!?戦闘機同様ミサイルでロックオンできます!」

 「駄目だ!宣戦布告を行っていないのに攻撃は許されない!」

 「しかし!もし撃墜の意図があったら!?」

 「本機の最高責任者は俺だ!黙って指示に従え!!絶対に撃つな!本国へ帰ったら俺らが処罰されるぞ!」


 すると急激に近づきついにボーイングを追い越しコックピットのガラスに張り付いた。

 「!!」

 驚愕としか言いようがなかった、ガラスの目の前に人が張り付き動けなくなった。普段数百キロ先の敵ばかりを見ていたり、仮に急接近しても30m以上は離れているだがこれは・・・

 「総員何かに掴まれ!振り落す!」


 機体をななめにずらし彼は滑りそのまま剥がれ落ちた。

 「やったか!?」

 「駄目だ戻って来たぞ!」

 ただの写真撮影とフライトテストだと思ったがとんでもない、思わぬ収穫とそして危機が付きまとった。


 「偵察機から緊急入電!攻撃許可を求めています!」

 5000km先の中国でその入電が入ると領空から逃げ出すよう命令を出す、彼らにそのような概念があるらしいが感覚的な物だ。すなわち海に出て初めてそれができる。


 「絶対に海まで逃げ切れ!」

 「機体が持ちません!」


 ジェットの出力を上げると甲高い音が聞こえまるで悲鳴のようであった、そして大きく気体の影響を受け翼が反りあがって(元から反るが)折れそうなぐらい曲がる。


 「海まで10秒前」

 「こちら上部カメラ、機体上部に接近!CIWSに向かっていますこのままだと破壊される恐れあり!」

 「背面飛行をするぞ!」

 「!?正気ですか!?」


 そうだ、本来このような旅客機では背面飛行に対応した設計ではない。もし行うことがあればそれは墜落を意味する。

 「俺の腕を信じろ!!全員背面に備え!」


 すると機体はひっくり返り事実上不可能だと思われたそれを成し遂げるが機体から悲鳴と警告ブザーが鳴り響きまた急激に高度が下がり墜落しているのではと部下は錯覚した。


 「剥がれ落ちたか?」

 「はい!」

 「うおおおおお!!」


 強烈なGが乗員に降りかかる中機体を立て直すとそこには海が広がっていた。


 「高度を取り直す!あの化け物はどこだ!?」

 「下です!下からこっちに上がってきます!」


 カメラから流される映像とそして連動するレーダ、パイロットたち待ち望んだそれを行使できる状態だった。

 「下は海、バラスカ王国から出たぞ!」

 「了解!撃墜開始!」


 するとCIWSが分速約3000発の銃弾の雨が舞い降りる、曳光弾という雨は吸い込まれるように彼に当たったが全て結界ではじかれむしろ態勢を整えた。

 「距離は取りましたが態勢を整えた模様!」

 「させるか!短距離対空ミサイル天燕90 射撃シュージ!」




 「信じられない、あの飛行船無茶苦茶速いぞ。しかもひっくり返ったぞ・・・」


 全く外から様子がうかがえない船体。人が見えた個所は真正面の部分だけ、まさかたった数人であの巨大な船を動かしているのであろうか巨大と言っても駆逐艦より小さいぐらいだ。

 『ん?光弾!?』

 結界を張り距離をとる、しかも一つ一つの威力がけた違いに強くそれが滝のように当たるのだ。もし自分が高位魔術師でなければバラバラになっていただろう。

 『く、クソ上陸部隊が全滅するわけだ!英雄の俺でもキツイ!! しかも彼らは魔法が使えなくてこれほど強力な攻撃を行えるとは!!』

 いくら英雄の称号を得たとはいえ軍艦に乗艦しようとしたことと、運行に支障をきたしたことはある意味敵対行為として見られても仕方ないだろう。

 「?何か来たな・・・」

 それはかなりの速さだった、加えて白い煙でできた白い尾をひいている。それは白い棒だった、そして避けようとしたその矢先目の前が真っ白になった。



 「目標命中!」

 「やったか!?」

 レーダーを見る監視員、レーダーに光点は写っていない、安心しきったが再び光出した白い光点が絶望へと突き落とした。

 「も、目標健在!駄目ですこっちに来ます!!」

 「距離詰められていきます!」

 「後部CWIS稼働!撃墜せよ!」


 丁度尻尾の部分に付けられたガトリングガンと短距離ミサイルが稼働する。護衛の戦闘機はいない、単機のみ。本来ならばこんなことはありえないはずだが今正に起きている、まさか音速を超えて攻撃する生き物が魔大陸以外にいたとは思えなかったのだ。

 いくら魔法でも不可能だ、いくら魔法でも高高度までこ来れない。そう判断し、パイロットたちも同じことを思った。

 「うわああ死にたくない!」

 パイロットとは別の箇所、CIWSの整備や弾薬補給班が後部から逃げ出し前方へ行こうとしただが・・・

 「・・・敵機(?)敵勢力圏に撤退していきます。」

 「・・・・助かった。」


 ふうとため息をつき機体を点検する、アラームと警告音がなっている箇所を確認する。警告音を切るがモニターに表示されている警告のアイコンやランプは消えなかった。

 「あ~クソ、どこかひん曲がったな?鋲とかもぶっ飛んだに違いない。」

 「あと翼も・・・・」

 これを修理整備する整備士の顔が浮かんでくる、恨みとずしりとした負の感情をため込み恨めしそうに自分たちを睨み付ける姿が容易に想像できた。

 「この映像見ろよ、随分とハンサムじゃないか。」

 それはCIWSに近づいたときの写真だ、金髪で碧眼で中性的な顔立ち。まるで日本のファンタジーゲームに出てきそうな人間だった。

 「本土の女の子が見たらキャーキャー言うぜ?」

 「だろうな。」

 祖国に帰ったら何をしようか、祖国行きの旅客機は夕日を背に向け東がある方向の星空に翼をはばたかせていた。





 「そりゃ世界から紛争が消えないわ・・・」

 地方の役所から派遣された役人は圧倒される量の武器を前にそのままの感想を漏らした。

 商売相手の国が消えたのだ、仕方ない。また間抜けなことに北方防衛戦の時に横領された弾薬が出てきたように、売ろうとして売れなかった弾薬が大量に発見されたのだ。

 工場の操業が一時停止した下請けを調べているときに発覚したのだ、登録されていない倉庫があり、たまコンテナを積んだだけの倉庫が山ほど発見されたのだ。

 「どういう管理をしたらこうなる?」

 結果的に防げたとは言えこの大量の武器が”今になって見つかったこと”が問題である。

 「町の住民は国から注文を受けていたから役人は知っていたと思っていただと。」

 「まぁ、現地の軍人も知っていたぐらいだしな・・・敵が侵入した訳でもないから気に留めなかったんだろうな。」

 チベットの某所、ここから中東へ運ばれる予定だったものが山ほどあり、中には見ては鳴らない物まであった。

 「おいおい、これ韓国軍のマシンガンじゃないか?」

 「・・・このAKライフル日本製って刻印しているぞ絶対パチモンだろ。」

 「MADE IN USA・・・搬入先は東南アジアの・・・偽造用ってタグに書いている、これってどゆこと?」

 「まぁ安価で揃えれるし、それで浮いた金を・・・」

 「いや我が国じゃないんだからそんなことしないだろ、それこそクーデターの資金源とかじゃないのか?」

 「変なことを考えるのは止めておけ、公安か秘密警察にやられっちまうぞ?」

 部下達が勝手な憶測を練りだしている中警告を送ったのは一番の年配者の人で一番上の上司だった。

 「変に調査せずまず役所に連絡、火薬など危険物があるから調査は中断し指示を待っている。そうすれば上がなんとかするだろ。あとは軍が隠蔽しに来るか公安の連中が来るかの二つだ。」


 元職業軍人だった彼はそういう裏の世界に精通しているのか、警告だけいうと火薬があるにも関わらずタバコに火を付け煙を吸った。

 「引火より怖い奴らが来る前に出るぞ。」

 「は、はい。」

 そういって部下を倉庫から追い出した。

 『武器は余っている、だが戦場が広すぎて兵が足りない、または行けない。なんとも奇妙な状態だ。』世界恐慌の時、明日食べることが出来なくて人々が配給をもらっている中、農作物が売れなくてキャベツをトラクターで潰している写真を見たとき違和感を感じた。

 彼は学校で感じた違和感を未だに覚えているが同じく感じることは無いだろうと思っていた、今日この日までは。

 『そういえば元々中国じゃなかった土地には北方の魔族以上に手強い敵がいたそうだな、南にいた魔族が北方に全くいないわけはない。この武器が役に立つ時がくるかもしれないな。』

 箱から垂れだしたライフル弾に映った彼の笑顔は死の商人だった。





 「反攻組は何も考えていない!!北方を植民地化し本土化する為には囚人や荒くれを送るのが最適なんだ!あそこはアフリカがペットショップに見えるぐらい危険な生物がウヨウヨいるんだぞ!?第一モンゴル国境付近だって未だに未確認の生物がいるんだ!機械化された掃射部隊でさえ犠牲者が出ているんだ!モンゴル付近の人民に自衛用のライフルを提供しようと本気で考えている状態なんだぞ!」

 「ドラゴンを押さえ込んだんだろ!?統制のない獣に成り下がった動物に何を恐れる!?」

 「バカ言うな!町の乗用車に突進して大破させた事例があるんだ!車が大破だぞ!?希少種じゃなくそこら辺にいる普遍種だ!一般人が装甲車を持っていると思うのか!?」

 「余っている輸出用の装甲車を配れば良いじゃないか!!」

 「反乱がおきたり暴動が起きた時はどうする!?それに燃料は!?魔大陸の石油の精製設備どころか、吸い上げの設備すら出来上がっていないのに!?」

 「資本主義を導入する前は皆自転車と交通機関で事足りた!」

 「昔と違って絞めすぎると経済に悪影響が出るんだよ!それに武器の製造も国境警備に伴う兵力増員のせいで慢性的な供給不足に陥っている!今予備部隊や新兵が何使っているか知っているのか!?AKライフルじゃなく引退したカービンライフルだぞ!?」


 穏健派と強硬派の怒鳴り合いは凄まじいの一言だった、しかもこれは陸軍だけであるこの後に海軍や空軍が出てきてより一層混沌とするだろう。

 空軍は現状維持だがせめてある程度の訓練と戦闘機の稼働率を落とさないでほしいと言うだろう、問題は海軍であり空母の増強計画とこの世界の調査の為調査船を大量に造りたいと申し出るだろう。だが一隻だけでもかなりお高く、しかも燃料と予算を馬鹿食いする。戦闘機も馬鹿食いするがそれ以上を目指す海軍の計画は陸軍を立腹させる材料としては十分だった。


 「そんな一部の極端な例を出すな!お前らはこの国の現状を分かっていない!」

 「分かっていないのは貴様らだ!」

 「攻めにいって外に敵を作らなきゃ健全な統制が出来ない!」

 お付きで強硬派の将軍に着いてきた士官は心の中で、どっちに転んでも不健全な統治だと思った。

 強硬派の言っていることは正しい、だが穏健派や慎重派も言っていることは正しい。大事なのはタイミングであり、民衆の感情の流れを読み解くことだ。


 『まぁそれができればこんな会議していないだろうけどな・・・・』

 昔のように号令で全ての国力を回すことので来た時代は何でそれが出来たのだろうと不思議に思う時がある。まぁそれも時代の流れなのだろう。


 「バラスカ王国侵攻時輸送船の護衛が必ず必要になる!それだけではなく敵国周辺の海図も必要な上そこに半永久的に武器を送り続けなければならない!だが港がもし使えない場合民間の輸送船では不可能だそれに備えて上陸艇や特殊輸送艦を!」

 「今ある上陸艇だけでいいじゃないか!!」

 「もし沈められたらどうなるんだ!?上陸艇の管轄こそ陸軍だが、それを守るのは海軍なんだぞ!上陸艇に積んでいる武装では武装では限界がある!!」

 「ただ単に突っ込んで上陸するだけだろ!空母で空爆かミサイルで沿岸をたたき上陸させる!何でそんな簡単なことが出来ない!?英雄協会の連中が怖いのか!?」

 それに対して上陸作戦を指揮する将軍と海軍から反論があった。

 「英雄協会は善処するそうだ、しかも接触はすれど攻撃はされていないし英雄協会も手をいかなる形であれ手を出さないと約束した。今偵察機と接触した英雄は本部に移送されている!」

 「ならば何が問題なんだ!」

 「香港の事例を無視して上陸は危険だと言っているんだ!東南アジアやベトナムのような国を相手するのとはわけが違うぞ!」


 会議は踊る、平行線を辿った会議は政府と強硬派の圧力によって態勢の整うことなく反攻が決定された。この無駄に思える長い会議と期間は決して無駄ではなく対バラスカ用の訓練期間が不十分ながらも行えたことと民衆の暴発は避けられたと評価する、だが旧世界連合や反中勢力からは碌な対策を立てずに戦い無駄な損害と、魔大陸における中国人による労働力の不足が発生したと評価した。


自国より売り先の方がよく運用していたり、中国が製造輸出しているのに買い手の国の兵士方が良い銃を持っていることが多々あるそうです。

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