散髪
鏡を見るたび、「また負けた」と溜め息がこぼれる。わたしにとって美容室とは、髪を整える場所ではなく、敗北感を課金して買いに行く試練の場なのだ。
わたしは散髪が嫌いだ。髪を切ってもらうにしても、どのように切っても、必ず似合わないからである。
お金払って切って貰うのに状況は逆に悪くなる一方なのだ。わたしが散髪に行くと必ず後悔することになるのである。
お金払ったのに時間もお金も損するってどういうこと?なんのつもり?
体験が当然湧くだろうが、そんなことより、わたしの顔立ち、とくに骨格が絶望的にブサイクに、作られているのが悲しいのである。
街を歩けば、髪型が非常に美しく、スタイリングは、決して真似したくとも真似できないとしか、おもえやいかようなな女性が多い。
してみると、わたしが髪型を考えようとするのがもはや愚策なのさではないだろうかと思ってしまう。
こうなったら最終手段、髪を切るのではなく「髪に自分を合わせる」境地に達するしかない。似合わない髪型に合わせて変顔を極めるか、いっそ武者修行中の浪人として生きるか。そう、ブサイクなのではなく、時代と世界線がほんの少しズレているだけなのだ。次回からは美容室で「拙者を一番男前に見えるように頼む」と注文し、天下無双の開き直りで街を歩くことにする。
いただき、誠にありがとうございました。
今回は「散髪に行くと必ず後悔する」という日常の絶望からスタートし、最終的に「浪人として生きる」という天下無双の開き直りに至るまでの迷走を描いてみました。
理想の髪型と現実のギャップに打ちのめされた経験は誰しも一度はあるかと思いますが、変顔を極めて髪型に自分を合わせに行く境地まで達すれば、もはや怖いものはありません。次回、美容室で「拙者を……」と言い出す度胸が自分にあるかどうかは分かりませんが、世界線の方をこちらに引き寄せる勢いで生きていきたいと思います




