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第1話 私の名前は破壊神

まずい、この状況は非常にまずい。

 今回の家は最悪のハズレだった。身体を動かそうとするたび走る痛みに呻くしかできない。 

 物心がようやくついたと思った頃には酒に溺れた父らしき男と毎晩男を漁る母らしき女にストレスのはけ口として幼い身体に暴力を受ける現実が待っていた。

 このままではここで今回の人生は終わってしまう。そう思った俺は早々にこの家を出ることにした。

 父が酒を飲み潰れ、母が男を探したまま帰らない明け方を狙って逃げる。記憶が戻ったばかりではまだろくに魔法は使えないが運が良ければ死ぬことはないだろう。

 どのみちこの家にいれば遠からず死ぬのだ。使えるかわからないが家にあった古いナイフと布、硬いパンのカケラをアイテムボックスにいれて転移の準備を整える。

 普通の転移魔法(テレポート)は基本、自分の行ったことのある土地と繋ぐものだ。しかしこの家から出たことのない俺には行ける場所がない。そのため今回使えるのは特殊魔法になる〈無作為転移(ランダムテレポート)〉だ。自分の魔力を全て使っていける最大限遠いところにランダムに飛ばす魔法。魔力が無くなるリスクは高いもののまだこの身体に馴染んでいない魔力の中で移動に使える魔法はこれくらいだ。

 明け方ならば強い魔物も眠りにつく頃だろ。身体中の怪我も昨日のうちにできる限り回復魔法で治しておいた。

 覚悟を決めて魔法を発動する。光の魔法陣が足元に出て身体がふわりと浮かんだ感覚になる。


 目を開けると荒野だった。

 にしても、やはりこの魔法は疲れる。それでもここに立ち止まっていては危険なだけなので動かなければ。全身から力が抜け鉛のような重さになった身体を引きずるように歩く。

 体内の魔力は気絶しないギリギリの量だけ残すことに成功しているので一応意識は保てている。だが普段からろくに食べていない上、虐待されている幼い身体だ。限界が近いことくらい誰にでもわかる。

 とりあえず周りを見て状況を確かめよう。見渡す限り広い更地で建物も人もない。遠くの方には森が見える。おそらくここは[ガイア]の蜘蛛の森。その中央に近い場所。

 運が良かった。薄々[ガイア]である気はしていたがまさか蜘蛛の森に飛ばされるとは。遅かれ早かれここには来るつもりだったので手間が省けた。ここなら誰にも邪魔されず当分は過ごすことができる。

 魔力が尽きている今、回復するのが必須だが回復薬を作ろうにも材料になりそうな薬草は近くになさそうだ。まあそもそも回復薬を作る魔力すらねぇけど。

 とにかくここは見晴らしが良すぎる。いつもの場所へ逃げなければ。あそこに行けば一つくらいポーション残してた気がするが…まだ飲めるだろうか…


『キシキシキシキシ…』


 真後ろで金属が擦れるような音が聞こえて背筋に冷たいものが走る。魔力の無い今、探索魔法も使えないことを忘れていた。

 凍る背筋を無理矢理動かしながらゆーっくりと後ろを振り向くと鋭い爪を擦り合わせながら獲物を捕まえようとしている魔物がいた。図体に似合わない静かさと凄い速さで近づいてきている、見た目は大きな蜘蛛の魔物。鑑定が使えなくてもこの魔物は分かる。

 この国では小さな子ども達が寝物語に親に聞かされること。森の中には悪魔がいるの。大きな蜘蛛を見たらもう終わり。逃げる前にパッと捕まってあっという間に食べられてしまうから。

 悪魔と呼ばれる蜘蛛の魔物、デーモンスパイダーだ。そして魔物が狙っている獲物とは言うまでもなく自分のことだ。

あ、しんだな。

ハッキリとした死を感じる。

今回は本当に早かった。

次また転生して物心つくまで待たないといけないのか。

産まれた家も散々でようやく逃げ出せば魔力が尽きそうなところに魔物。

ついてなさすぎる…

俺、運命値高いはずなんだけどな…

デーモンスパイダーが大きく爪を振りかぶっているのが見える。

あぁ、次はもっとまともなところに…

でなければもう、残りが…

などと考えながら目を瞑り死を受け入れようと…

ドガァァァァアン!!

目の前にとてつもない衝撃と音が響いた。


「へ?」


目を開けるとオレンジ髪の女が悪魔蜘蛛を殴っていた。


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