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祝福のその先へ。  作者: 乃羅くらり
プロローグ
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プロローグ

「大魔法使いルカリオン、己の力に溺れ、魔法で人々を騙し国を崩壊寸前まで陥れた傲慢者よ。国への叛逆とみなし、断罪する。異論あるものはいるか」


「父上、私の話を聞いてください!私は_ 」


「異論があるものはいないようだな。以上で閉廷とする。連れて行け」


 強圧的な国王陛下の声によって発言を揉み消される。誰も自分の話を聞いてくれない。

 こんなにも自分は、大魔法使いとして尽くしてきたのに。どうしてこうなった。


 大魔法使いルカリオン。享年24歳。叛逆の罪に問われ永眠_______

 したはずだったのにどうしてこうなった?

 登り始めた太陽に促され目が覚めた。見覚えのある天井でどこか懐かしさを感じる。

 ここは死後の世界なのだろうか。少し肌寒いが、暖かなベッドから抜け出し鏡の前に立つ。

 そこには、少しあどけないが闇に溶けそうな漆黒の黒い髪に、透明で吸い込まれそうだが奥まで見えないブルーの瞳の自分が写っていた。


「あれ、俺冤罪かけられて死ななかったっけ?」


 頬をつねってみると、きちんと痛みを感じここが現実なのだと思いしらされる。

 とりあえず服を着替えようと思いあたりを見渡したが、大魔法使いだけが着ることが許されたローブが見当たらない。

 今回の騒動で、大魔法使いの権利が剥奪されたのかあるいは __。

 でも、もうどうでもいい。もう心の奥底に植え付けられた裏切られた痛みと、胸奥に巣食う黒い感情に支配されていた。



 ここは、ルミナシア王国。大陸北西部に位置し、四季がはっきりしているが冬は厳しい寒さに見舞われる。王都は山と森の間、川沿いに築かれており、自然の防御に恵まれている。

 また、この世界は魔法が使える人間が稀に現れる。それぞれの魔法属性の王が好む自然沿いに王国があるため、祝福を受けやすい。魔法という奇跡を扱える人間は、輝かしい未来が約束されているそんな世界だ。

 そんな、王国の第三王子としてルカリオンは生まれた。上に二人兄がおり、末っ子である。

 昔はとても仲の良い兄妹であったが、国王がまもなく退位するということからそこから王位争いが勃発。元々三男ということと、兄たちが大好きだったルカリオンは王位に興味はなかった。

 しかし、若くして妖精王に気に入られ祝福された光闇の大魔法使いという称号を授かったルカリオンに第三王子派の貴族たちが暴走し、この争いに足を踏み入れることになってしまった。

 彼は、とても温厚な性格で国民を守るために魔法を極めたのが悪かったのだろうか。

 ルカリオンを支持する声は意外にも多く、兄たちも焦りを覚えたのだろう。彼としては、興味がないこの争いに勝ち王位を授かる気はそうそうなかった。しかし、彼は真実を口にすることが叶わぬまま冤罪で死んでしまった。

 兄たちが大好きで、将来支えていくであろうこの国の国民を守るために魔法も勉強も頑張ってきたのに。


 それが俺、ルカリオンの生涯だった。


「……優しくなんて、ならなければよかった」



 瓦礫だらけの路地裏で、彼は小さく呟く。フラフラ歩いてあたりを回った感じ、ここは自分が生きていた時間軸ではないことがわかった。転生したのだろう。

 なんとも言えない怒りに呼応するように、闇属性の魔力が指先から溢れ出していた。


 その時、どこからともなく柔らかな声がする。


「それでも君は、まだ優しい」


 振り向くと、そこにいたのは一人の男。

 月明かりに照らされキラキラと輝く銀色の髪に毛先は黒くグラデーションがかかっている。年齢は25〜30くらいだろうか。整った顔に穏やかな笑みを浮かべている。だがその瞳には、人ではあり得ないほど強い光が宿っていた。


「……誰?」


「ただの通りすがりの旅人さ。君みたいな才能ある魔法使いを放って置けないだけ」


 それは嘘だった。

 彼に祝福を捧げた張本人の妖精王。名も素性も隠し、彼のそばに立っていた。


 __また同じだ。

 また、誰かが「理解者」のフリをして近づいてくる。

 ルカリオンは冷たく笑う。


「近づかないで。どうせ最後には俺を切り捨てるんでしょ…知ってるから」


 その言葉に、妖精王の胸はひどく傷んだ。

 自分が祝福した心。

 自分が守ってあげられなかった人生。


「……もし、世界を壊したくなったら」


 妖精王は一瞬、本音を滲ませる。


「君が壊しやすいように、道を整え支えてあげよう」


 ルカリオンは驚いたように目を見開く。


「止めないの?」

「止めない。君が進みたい道ならば、どんなことも隣で見届けよう」


 それは、忠誠ではない。自分が生きてきた中で最も気に入った人間へ贈る、歪んだ愛だった。妖精王は知っている。

 この少年が、怒りの果てに立つ頂点こそ__

 本来彼が座る“王座”であることを。

 彼が今は王になりたいと思わなくても、その黒い感情は必ず王座に導くであろうことも。


 だって、彼が死んだ後のルミナシア王国の王位争いは、見ていられないほどの悲惨な惨状であった。それぞれの魔法属性の王が受肉し人と直接関わるという禁忌を止めるでもなく、妖精王の背中を押した。

 それが答えであろう。


 妖精王は、ルミナシア王国を愛している。同様に、あの純粋で何も疑わずただ民を愛し守ろうとしたルカリオンも、同様に。



 そんな信じていたものに裏切られた復讐の魔法使いと妖精王の物語である。






「ねえ、なんでこの世界を壊したいってわかったの?」


 先ほどは、転生したばかりでまだ頭の整理ができていなかったから疑問に思わなかったが、明らかに前の俺を知っているような口ぶりであった。


「んー、そうだなあ。ルカのことずっとよく見ていたからだよ」


 穏やかに自分の愛称をいう彼の姿を見て、本当に前世を知っているのだと実感する。


「そっか。で、あなたは何者なの?俺だけ知られてるの、なんか不平等な気がするんだけど」

「僕の名前はセリフィル。何者かはまだ言えない、けど僕は君の味方だし君のやりたいことを尊重するって誓うよ」


 俺のことを殺しにきたのでないならいっか。

 セリフィルと名乗った男は、おそらく自分より強いとそう直感的に感じている。しかし、そんな彼が隣で見守っててくれれば、この先長いであろう人生も少しはマシになるのではないか。


「わかった。じゃあ、俺の隣にいてくれる?」

「もちろんさ、そのためについて来たんだから」


 迷いのひとかけらもない瞳で、俺を見つめる。


「じゃあセリフィル、これからよろしくね。俺は俺なりにこの国…まあ王族、貴族に復讐するよ」




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