表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女のお茶会  作者: さとうとしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/22

過去に囚われた美の追求

登場人物

テティス=光明寺=ハーネス

アメリカの大企業のCEOの娘。オカルト趣味があり、かねてから興味があった魔女のお茶会に招待されるが、それは魔女の罠であった。SSのなずなと狼男のフリーダとリュディアに救出され、力の賢者のもとへ案内される。異世界でであった仲間を守る決意を固めた。ベガ=JIROの呪歌に対抗できる歌声をもつ。


服部なずな

テティスのSS。日本人であることをテティスに気に入られた。日本の格闘技の達人である。何よりも主であり、唯一無二の親友であるテティスを守ることを大切にしている。


フリーダ

人狼の代表。彫刻のように整った顔立ちと身体つきをしている美青年。人間界にビリヤードのプロ選手として潜入して魔女のお茶会の動向を探っている。力の賢者、レイノルズから人間界の常識を教わっていて、怪物のなかで唯一人間界に溶け込んでいる。


リュディア

フリーダの実弟。フリーダと同じく人間界に潜入しているが、人間界にいるときは隠れている。フリーダには劣るが腕っぷしが強い。親分肌である。


ヴォルフ=レイノルズ

力の賢者。40代くらいの男性。怪物たちが住む異世界と人間界の境界を守っている。賢者は一人1国家の権力が与えられているが家族を持つことができない、人間に魔法で攻撃してはいけないなど多くの制約に縛られている。自身が尊敬していた"養父ロメオ=フランケンシュタイン"を改造した義妹の魔女=ヴィクトリアを裁くことを目的としている。


シャイナ=レイノルズ 

守りの賢者。ヴォルフ=レイノルズとヴィクトリアの義妹。ヴィクトリアと対峙しているが、面会を許可されていて時々会うことができる。 


ギル=ニコラウス

レイノルズの側近。完全記憶能力を持つ人間の男性。 


ラクウェル

吸血鬼の代表代理。美少女と間違われるほどの美貌をもつ少年。


代表たち

人魚の代表代理、ローラ。ハーピーの代表カラビナ。エルフの代表カザリ。ドワーフの代表ヤゴ。オークの代表ウルゴラスとその妻ドラリナ。


ヴィクトリア=フランケンシュタイン

魔女。癒しの賢者。容姿端麗なフランケンシュタインを作る目的で魔女のお茶会というものを開いていた。養父ロメオ=フランケンシュタインの遺体を使いフランケンシュタインを作った。


ベガ=フランケンシュタイン

ヴィクトリアの"息子"。SNSやアーティストとしてはJIROと名乗っている。歌で怪物たちの動きをとめることができる。 


ロメオ=フランケンシュタイン

元々は賢者たちの養父であり、異世界の代表たちを束ねていた神父であった。国家反逆の罪を着せられ殺害されたのち、ヴィクトリアに最強の人造人間フランケンシュタインとして蘇させられる。

バーバラ=ブラウン


 かつて、誰もがその名を知っていた女。10代前半で芸能界に現れ、天使のような微笑みと完璧なプロポーションで瞬く間にトップアイドルとなった。


 歌えばヒット、出れば主演。 20代に入っても勢いは衰えず、女優としても評価され、数々の賞を手にした。


 だが――。


 結婚、出産。


 それは“終わり”ではなかったはずだった。  本人もそう信じていた。


 ママタレントとしての路線を加え、仕事は続いた。だが次第に、役は「母親」「過去に輝いていた女」「脇役」へと変わっていく。


 年相応の役を受け入れれば、安定はあったかもしれない。 だがバーバラのプライドは、それを許さなかった。


「私が、主人公の母親…こんなおばさんみたいな役?」


 そう言って断った仕事は一つや二つではない。 気づけば、オファーは減り、スポットライトは遠のいていった。


 夫とは離婚し、親権は彼女になった。彼女は美貌を保つために美容整形、アンチエイジング、痩身エステ。あらゆる努力を重ねても、“若い頃の自分”には戻れない。


 鏡を見るたびに増える皺。減っていくSNSのフォロワー数。


やめとけば良いとは分かっているが日課のエゴサーチでは


『悲報 バーバラ=ブラウン整形ババアに成り下がる』


『すっかり整形ババアになったよな』

『昔は可愛かったのに今は完全な化け物www』

『唇とか見てられないよな』

『ママタレ活動に必死だけど娘も気の毒だよな。完全にママのお人形さんだ』


「見るんじゃなかったわ!悪かったわね、化け物で!!」 


バーバラはスマートフォンを壁に投げつけた。


 ――それでも、彼女は“美しい自分”を諦められなかった。また彼女は新しい美容整形外科のHPにアクセスし、ボトックス注射の予約をした。


 スマートフォンで予約に必要な項目を入力していると、スマートフォンがメッセージの着信を知らせた。仕事の依頼かと思い、胸を踊らせたバーバラだったが、届いたのは仕事の依頼ではないが意外なものだった。バーバラに届いたのが、〈アストラル・サウンズ〉生誕祭の招待状だった。


「……懐かしいわね」


 昔、彼女が最も輝いていた頃、支えてくれた会社。CEOであるウォルター=ブラッドリーの名前を見て、バーバラは一瞬だけ、胸の奥が熱くなるのを感じた。


(まだ……私を覚えていてくれた)


 バーバラは、スマートフォンを手にしながら、過去の思い出が次々と蘇るのを感じていた。彼女が最も輝いていた時代、アストラル・サウンズは彼女のキャリアを支え、数々のヒット曲を生み出した。ウォルター=ブラッドリーは、彼女の才能を見出し、育ててくれた恩人だった。人気に陰りが出ても彼はずっと彼女に様子を聞いてきてくれた。


 彼女は、再びスポットライトを浴びることができるかもしれないという期待と、過去の栄光にすがる自分への不安が交錯する中で、スマートフォンを握りしめた。


 生誕祭の日が近づくにつれ、バーバラは自分を磨き上げることに没頭した。美容院で髪を整え、エステで肌を磨き、クローゼットから最も華やかなドレスを選び出した。彼女は、かつての自分を取り戻すために、全力を尽くした。


 そして、ついに生誕祭の日がやってきた。バーバラは、心の中で何度もリハーサルを繰り返しながら、会場へと向かった。彼女は、再び輝くことができるのか、それとも過去の幻影に囚われ続けるのか、その答えを求めていた。


 それだけで、行く理由は十分だった。


 会場は、かつての栄光と現在のビジネスが交錯する、豪奢なホールだった。赤い絨毯、シャンデリア、笑顔の裏で探り合う視線。


 バーバラは黒のドレスに身を包み、背筋を伸ばして歩いた。 だが、心の奥では絶えず誰かと比べている。今話題の女優、20代になりたてだが化粧品のCMにも出ている若者に人気の女。ネット配信から人気になった奇抜な髪型をした若い女性歌手。頭脳明晰とその美貌で若者の憧れの的になっている人気女性アナウンサー…


(若い……みんな、若い)


 そんな中、空気が変わった。


「――JIROが来たぞ!」


 ざわめきが走る。


 ステージ中央に現れたのは、今最も勢いのあるアーティスト、JIRO。


 ライトを浴びる彼の姿は、どこか現実離れしていた。 染めているのか分からないがストロベリーブロンドの髪がトレードマークである。若く、整った顔立ち。だが何より、目が違う。


(……この子……)


 バーバラは無意識に息を呑んだ。


ウォルター=ブラッドリーがJIROに続いて現れた。


 彼の登場により、会場の雰囲気は一変した。彼の存在感は圧倒的で、まるで彼がこの場の中心であるかのようだった。


 ウォルター=ブラッドリーは、彼の肩に手を置き、誇らしげに微笑んだ。


「皆さん、よくぞ我がアストラル・サウンズの生誕祭にお越しくださいました!」マイクから60代とは思えない生き生きとした声が通った。ブラッドリーはJIROの方を向いて「JIRO、彼が我々の未来です。彼の才能は、私たちの想像を超えるものです」


 その言葉に、会場は再び拍手に包まれた。バーバラは、その光景を見つめながら、かつて自分がJIROの場に立っていたことを思い出していた。


 彼女の心には、複雑な感情が渦巻いていた。羨望、嫉妬、そして、再び輝きたいという欲望。


 しかし、彼女はその感情を押し殺し、微笑みを浮かべた。


 JIROがマイクを取る。


「今日はお招きありがとうございます。配信で活動していた僕を見いだしてくれたこの会社がなければ、今の僕はありません」


 会場が拍手に包まれる。


 そして、JIROが赤いアコースティックギターを取り出した。


 最初の一音で、空気が変わる。 低く、甘く、胸の奥に直接触れるような声。


 歌声は、過去を呼び覚ます。若さ、栄光、拍手、愛された記憶。


 その歌声は、まるで魔法のように会場を包み込み、聴く者すべての心を揺さぶった。バーバラは、かつて自分がステージに立ち、同じように人々を魅了していた日々を思い出していた。


 彼女の心には、再びスポットライトを浴びたいという強い欲望が湧き上がってきた。しかし、同時にその欲望が叶わない現実も痛感していた。


 彼女は、過去の栄光にすがる自分を恥じる気持ちと、再び輝きたいという願望の狭間で揺れていた。


 しかし、アコースティックギターを片手に歌うJIROは希望の光に見えた。


 バーバラは、再びステージに立つことを決意した。彼女は、過去の自分に囚われるのではなく、新しい自分を見つけるために、もう一度挑戦することを心に誓った。


 バーバラの目に、知らず涙が滲んだ。


(……ああ、思い出す……)


 歌が終わると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。


 その後の歓談の時間。 JIROは自然な流れで、バーバラの元へと歩み寄った。


「こんばんは。もしかして……バーバラ=ブラウンさん、ですよね?」


 バーバラは一瞬、言葉を失った。


「え……JIRO?」


「もちろん。 あなたの全盛期の映像、何度も見ました。 あの頃の輝きは、本当に……特別でした。何度もレッスンをこなしたのですね。あなたは努力の人です。」


 その言葉は、完璧だった。 同情でも、媚びでもない。


 “理解”の声音。


 バーバラは胸が締め付けられるのを感じた。


「……ありがとう。 も、もう昔の話よ」


 ベガは微笑む。なんという甘いマスクなのだろうか。バーバラはこの少年の視線から目を背くことができなかった。


「昔、ですか?  僕には……そうは見えません」


 その視線は、まるで彼女の“本当の欲望”を見抜いているかのようだった。


(この人……危険だわ)


 そう思いながらも、バーバラは目を逸らせなかった。


 ――その瞬間、ベガは決めた。


(次のお茶会のターゲットは……彼女だ)


 生誕祭の後、ベガ=JIROはヴィクトリアの屋敷へ戻り、ヴィクトリアのもとを訪れた。


「母さん。いい獲物を見つけた」ベガは先ほどの柔らかい笑みとは違い冷たい目をしていた。「バーバラ=ブラウン。元人気歌手で女優。結婚と出産を期に一時芸能界から離れる。年齢と結婚を共に人気はガタ落ち。離婚し、シングルマザーのママタレとして活動する一方、美容整形にのめり込んでいる。近くで見たけどあれは酷い。やりすぎな顔だった。」


 バーバラの名前、経歴、現在の状況。 全てを聞いたヴィクトリアは、満足そうに微笑んだ。


「ええ……実に分かりやすいわ。 美貌と栄光に執着する女……最高よ」ヴィクトリアはロメオの肩を抱き寄せた。「彼女にふさわしいのは若さを取り戻すことができる魔法…吸血鬼の血」ヴィクトリアが指をパチンと鳴らすと、やはり顔の整ったフランケンシュタインの男性が赤い液体が入ったワインボトルをヴィクトリアに差し出した。ヴィクトリアはワインボトルを受け取るとロメオにキスをして、黒いローブをまとった。


 


 その夜。 バーバラは自宅で、スマートフォンを片手に鏡を睨んでいた。


「……また増えてる……」


 皺。 確実に、増えている。皺の横に不自然に突っ張った人工的な肌。


 5歳の彼女の子どもがキッチンから不機嫌そうな母親に恐る恐る声をかける。


「ママ、お腹すいた」


その言葉を聞いてバーバラはキッと眉毛をつり上げ、娘に当たらないようにスマートフォンを投げつけた。娘はひっと短い悲鳴をあげた。


「そんなの後よ!状況をみて考えなさいよ!ママはね!今大変なのよ!シリアルに牛乳でもかけて食べてなさい!もう!!自分で用意できるでしょう!?」


 苛立ちを隠さずに捲し立てる。娘はポロポロと涙を流し、その場から立ち去った。


 彼女の娘は、彼女にとって“シングルマザーアピール”のための存在になっていた。SNSに載せるための笑顔。 健気な母を演じるための小道具。ママとお揃いのブランドものの服を着て、ママが頑張って作ったキャラクターを模したお弁当を頬張るかわいらしい笑顔。…すべてバーバラが指示した演出であった。泣いたときに出てしまった鼻水を啜りながら、スプーンと食器がカチカチ鳴る音がした。娘がキッチンで言われたとおりにシリアルを食べているのだろう。


(何もかもうまくいかない…どうすればいいの?もう私じゃなくてあの子を…)


 良からぬ考えがよぎったそのとき。


 背後から、声がした。


「……かつての美貌を、取り戻したい?」


 振り向くと、そこにいたのは――  黒いローブを纏った女。


「誰……?」


 その女は、バーバラの目をじっと見つめた。彼女の瞳は、まるで深い闇の中に光る星のようだった。


「私はヴィクトリア。あなたの願いを叶えるために来たの。」


 バーバラは、彼女の言葉に戸惑いを隠せなかった。だが、その声には不思議な力があり、彼女の心を引き寄せた。


「願いを……叶える?」


 ヴィクトリアは微笑み、ゆっくりと頷いた。「そう、あなたが失ったもの、美貌を取り戻す手助けをしてあげるわ。」


 バーバラは、彼女の言葉に心を揺さぶられた。失ったもの――それは、彼女が最も欲していたものだった。


「どうやって……?」


 ヴィクトリアは、黒いローブの中から小さな瓶を取り出した。それは、赤い液体が入った不思議な瓶だった。


「これを飲めば、あなたの願いは叶うわ。」


 バーバラは、その瓶を見つめた。彼女の心には、疑念と期待が入り混じっていた。


「本当に……?」


 ヴィクトリアは、再び微笑んだ。「信じるかどうかは、あなた次第よ。」


 バーバラは、しばらくの間、瓶を手に取るかどうか迷っていた。しかし、彼女の心の奥底では、すでに決断が下されていた。


「……わかったわ。」


 彼女は、瓶を手に取り、ゆっくりとその液体を飲み干した。


熱が走る。肌が、骨が、内側から書き換えられていく。


「……あ……」


 鏡に映るのは――  皺のない、かつての自分。


 10代の頃の、美貌。


 ヴィクトリアは囁いた。


ヴィクトリアは、バーバラの反応を見て満足げに微笑んだ。彼女の計画は順調に進んでいるようだった。バーバラのように美貌に執着する者は、彼女の手の中で踊るのが常だった。


 バーバラは、鏡に映る自分の姿に見惚れていた。若さを取り戻したという実感が、彼女の心を満たしていた。だが、その代償が何であるかを、彼女はまだ知らなかった。


 ヴィクトリアは、バーバラに近づき、優しく囁いた。「あなたの美しさは、永遠に続くわ。ただし、私の言うことを聞いてくれるならね。」


 バーバラは、その言葉に少しの不安を感じたが、若さを取り戻した喜びがそれを上回っていた。「もちろん、何でもします。」


 ヴィクトリアは満足そうに頷き、バーバラに新たな指示を与えた。「まずは、私の用意したパーティーに出席してもらうわ。そこで、あなたの新しい姿を皆に見せてあげて。」


 バーバラは頷き、ヴィクトリアの言葉に従うことを決意した。彼女は、再びスポットライトを浴びることができるという期待に胸を膨らませていた。


…その様子をバーバラの娘がキッチンから聞いていた。


(ママが…)


母親が心配だった。でもまた何かをいえばヒステリックな母親に罵られるだけだと分かっていた。彼女は怯えることしかできなかった。


ステージ名は、過去を断ち切るように与えられた新しい名―― 《ヴァレリア》。


会場は都心の中規模ホール。 だが、空気は異様なほど張り詰めていた。


「……次が、新人アーティスト《ヴァレリア》です」


MCの声が消えると同時に、照明が一斉に落ちる。 客席がざわめいた。


――新人? ――聞いたことない名前だぞ。 ――でも、なんか……すごいって噂。


重低音のイントロが流れ、霧がステージを覆う。 その中央に、ひとつのシルエットが浮かび上がった。


黒と深紅を基調にしたドレス。 露出は少ないが、線は完璧に計算されている。 首筋、肩、腰のライン――若さではなく、完成された美。


ライトが当たる。


観客が、息を呑んだ。


「……誰?」


それは、かつて国民的アイドルだったバーバラの面影を、ほんの一欠片も残していない顔だった。 だが同時に、説明できない既視感が胸を刺す。


ヴァレリアは微笑まない。 ただ、静かにマイクを持つ。


そして、歌い出した。


声は低く、艶があり、深い。 少女の甘さではなく、夜を知る女の声。


観客のざわめきが、完全に消えた。


歌が進むにつれ、 客席の誰もが、理由もなく胸を締めつけられていく。


――懐かしい。


――怖い。


――なのに、目が離せない。


それはベガの呪歌とは違う。 だが、**ヴィクトリアの血が作り替えた“魅了”**が、確実に浸透していた。


サビで、ヴァレリアは初めて観客を見下ろす。


その視線に、数人が無意識に涙を流した。


曲が終わった瞬間。 一拍の沈黙。


――そして、爆発するような拍手。


スタンディングオベーション。


誰も「新人」とは思っていなかった。 これは“帰還”ではない。 “誕生”だった。


舞台袖で、それを見ていたベガ=JIROは、満足そうに目を細めた。


「……綺麗だよ、バーバラ。 いや――ヴァレリア」


数日後。 巨大スクリーンに映し出されたのは、白一色の世界。


ゆっくりと現れるのは、ヴァレリアの横顔。


ナレーションが流れる。


『年齢は、肌に刻まれるものではない  ――選び取るものだ』


カメラが正面を捉える。


完璧な肌。 張り、透明感、影すら美しい。


化粧品ブランド 《NOCTURNEノクターン


新アンバサダー:ヴァレリア


インタビュー形式で、彼女は静かに語る。


「若さを保ちたい、とは思わないわ」 「ただ……自分が一番美しい“瞬間”を、更新し続けたいだけ」


記者が聞く。


「年齢や過去について、触れられるのは嫌では?」


ヴァレリアは微笑む。 完璧に計算された、隙のない微笑。


「過去は、もう必要ないの。今の私が“本物”だから」


その言葉に、SNSが一気に燃え上がる。


――強すぎる


――この人何者?


――生き方が刺さる


――憧れる……


――怖いのに、好き


PR動画の最後。 ヴァレリアがカメラに近づき、囁く。


「美しさは、与えられるものじゃない。  ――“飲み干す”ものよ」


どこにあるのかも分からない屋敷の玉座でヴィクトリアは、満足げに微笑んでいた。


「……ええ、完璧。これで私の遊びは、また一段階進んだわ」


赤いワインを揺らしながら。


そしてその影で、 ベガは次の“歌”を、静かに書き始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ