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魔女のお茶会  作者: さとうとしお


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8/22

夢へと誘う歌 JIROの特別な夜

登場人物

テティス=光明寺=ハーネス

アメリカの大企業のCEOの娘。オカルト趣味があり、かねてから興味があった魔女のお茶会に招待されるが、それは魔女の罠であった。SSのなずなと狼男のフリーダとリュディアに救出され、力の賢者のもとへ案内される。異世界でであった仲間を守る決意を固めた。ベガ=JIROの呪歌は人狼たち怪物の動きを封じる歌声だったが、唯一その歌に反抗できる歌を持つことがわかった。ただいまお茶会への対策とともにボイストレーニング中である。


服部なずな

テティスのSS。日本人であることをテティスに気に入られた。日本の格闘技の達人である。何よりも主であり、唯一無二の親友であるテティスを守ることを大切にしている。


フリーダ

人狼の代表。彫刻のように整った顔立ちと身体つきをしている美青年。人間界にビリヤードのプロ選手として潜入して魔女のお茶会の動向を探っている。力の賢者、レイノルズから人間界の常識を教わっていて、怪物のなかで唯一人間界に溶け込んでいる。


リュディア

フリーダの実弟。フリーダと同じく人間界に潜入しているが、人間界にいるときは隠れている。フリーダには劣るが腕っぷしが強い。親分肌である。


ヴォルフ=レイノルズ

力の賢者。40代くらいの男性。怪物たちが住む異世界と人間界の境界を守っている。賢者は一人1国家の権力が与えられているが家族を持つことができない、人間に魔法で攻撃してはいけないなど多くの制約に縛られている。自身が尊敬していた"養父ロメオ=フランケンシュタイン"を改造した義妹の魔女=ヴィクトリアを裁くことを目的としている。


シャイナ=レイノルズ 

守りの賢者。ヴォルフ=レイノルズとヴィクトリアの義妹。ヴィクトリアと対峙しているが、面会を許可されていて時々会うことができる。 


ギル=ニコラウス

レイノルズの側近。完全記憶能力を持つ人間の男性。 


ラクウェル

吸血鬼の代表代理。美少女と間違われるほどの美貌をもつ少年。


代表たち

人魚の代表代理、ローラ。ハーピーの代表カラビナ。エルフの代表カザリ。ドワーフの代表ヤゴ。オークの代表ウルゴラスとその妻ドラリナ。


ヴィクトリア=フランケンシュタイン

魔女。癒しの賢者。容姿端麗なフランケンシュタインを作る目的で魔女のお茶会というものを開いていた。養父ロメオ=フランケンシュタインの遺体を使いフランケンシュタインを作った。


ベガ=フランケンシュタイン

ヴィクトリアの"息子"。SNSやアーティストとしてはJIROと名乗っている。歌で怪物たちの動きをとめることができる。 


ロメオ=フランケンシュタイン

元々は賢者たちの養父であり、異世界の代表たちを束ねていた神父であった。国家反逆の罪を着せられ殺害されたのち、ヴィクトリアに最強の人造人間フランケンシュタインとして蘇させられる。

 


ネットの芸能ニュースは『JIROがステージでの練習で怪我、芸能活動は休止せず』という記事が流れていた。


スマホ画面がふわりと明るくなり、暗い部屋の中に青白い光が満ちた。 静かな電子音が鳴り、画面に「◯LIVE」という赤い文字が浮かびあがる。


 その直後、柔らかな照明の中で、ストロベリーブロンドの青年――ベガ=JIROが姿を現した。 彼はステージ衣装のままの姿だったが、ライブ会場よりもずっとシックな、深い紺色の壁を背にしていた。


「こんばんは、みんな。JIROです」


 柔らかな声がマイクを通して流れ、コメント欄が一瞬で加速する。


「来たぁぁああ!!!」


「新衣装!?」


「今日もかっこよすぎるんだけど!!」


「リアルライブの余韻がまだ抜けてないのに……また歌ってくれるの!?最高!!」


「JIROくんケガ大丈夫?ニュースで見たよ!」


「今日も新衣装かっこい〜〜〜」


「生きててよかった(泣)」


 JIROは微笑み、軽く首を振った。


「ライブは本当に楽しかったよ。怪我? ああ、これのことですか?」


 彼は袖から覗く包帯に軽く触れる。 コメント欄が爆発したように揺れた。


「ほんとにケガしてる!!」


「いや無理しないで!」


「それでも歌ってくれるの最高にプロ……!」


「大丈夫、大した傷じゃないよ。みんなの声のほうが、ずっと僕を支えてくれたから」


 その言葉に、またコメントがあふれる。 だが、彼の声にはどこか余裕があり、何かを企んでいるような含みさえ感じられた。


「さて。今日は少しだけ、特別な夜にしたいと思います」


 彼がギターを手にすると、コメントがさらに沸き立つ。


 JIROはライブで披露した数曲をアコースティックアレンジで歌った。 バンドサウンドよりも柔らかく、しかしどこか妖しい香りを帯びた歌声。


 曲の合間、彼は軽く笑って言う。


 彼の声は、まるで夜の静けさを切り裂くように響いた。ファンたちはその声に耳を傾け、心を奪われていく。


 彼の歌声は、まるで魔法のように聴く者の心を包み込み、現実の喧騒を忘れさせる力を持っていた。


 その夜、彼の歌は特別な意味を持っていた。彼の心の中にある様々な感情が、歌を通してファンに伝わっていく。


 彼は、ファンたちに向けて優しく微笑みながら、次の曲のイントロを奏で始めた。


 その曲は、彼自身の経験や思いを反映したもので、聴く者の心に深く響くものだった。


 彼の指がギターの弦を優しく弾くたびに、音楽は空間を満たし、ファンたちの心を癒していく。


 彼の歌声は、まるで夜空に輝く星のように、聴く者の心に希望の光を灯していった。


「今夜はね、少し眠れない人が多いみたいで……だから、優しい曲をいくつか歌おうと思って」


 そして、人気のあるバラード曲へ。 歌詞のひとつひとつが語りかけるようで、コメントは涙の絵文字で溢れた。 


「声が綺麗すぎて逆に眠れない!」


「包帯巻いた手で弾くの心配するけど、尊い」


「はあ……ほんと好き」


 さらに、昔から人気の海外の曲のカバーを歌うと、海外ファンと思われるコメントも流れはじめる。


 ベガ=JIROは静かに視線を画面に戻し、こう言った。


「ありがとう。今日は……もう一曲、どうしても話したいことがあるんだ」


 画面に、暖色系の照明がふっと灯り、彼の表情が柔らかく染まった。


「新曲を作っています。タイトルはまだ秘密ですが……」


 ほんの少し、唇が悪戯っぽく上がる。


「“夢の世界へいざなう歌”です」


 コメント欄が爆発する。


「えええ新曲!?!?」


「夢の世界!? なんそれ素敵すぎん?」


「え、催眠ソング系?寝かしつけソング?」


「眠りの歌ってこと?」


「タイトル気になるー!!」


 JIROはその熱狂を楽しむように、指で髪をかき上げた。


「みんな、最近いろいろ忙しいでしょ。疲れた心を……一度僕の世界で休ませてほしいんだ」


 音楽的な話をするような口調だが、その瞳はどこか暗く光る。


 その言葉に、ベガは少しだけ微笑んだ。彼の心には、母ヴィクトリアの言葉が響いていたが、それ以上に彼自身の思いがあった。


「夢の世界……それは、僕がずっと追い求めてきたものだ。現実の喧騒から逃れ、心の奥底にある静寂を見つけるための場所」


 彼は、ファンたちに向けて優しく語りかけるように続けた。


「みんなも、時には現実から離れて、心を休める場所が必要だと思う。僕の音楽が、その手助けになれば嬉しい」


 コメント欄には、ファンたちの共感の声が溢れた。


「そうだね、現実は時に厳しいけど、音楽は心を癒してくれる」


「JIROの歌声は、まるで魔法みたいに心を包んでくれるよ」


「夢の世界、素敵なコンセプトだね」


 ベガは、ファンたちの反応を見て、心の中で決意を新たにした。


「これからも、みんなの心に寄り添えるような音楽を作っていきたい。だから、どうか応援していてほしい」 


 その言葉に、コメント欄は再び盛り上がりを見せた。


「もちろん!ずっと応援してるよ!」


「新曲、楽しみにしてるね!」


「JIROの音楽があるから、毎日頑張れる!」


 ベガは、ファンたちの声に耳を傾けながら、心の中で微笑んだ。


「夢の世界はね、現実よりずっと自由で、ずっと静かで、ずっと……甘い」


 ふっと囁くように言うと、ファンはさらにざわつく。


「コンセプト最高じゃない?」


「耳が幸せになる未来が見える……」


「これ絶対寝落ちする曲じゃん」


「MVいつ?いつ公開?」


 JIROは、その反応を確認してから、


「この曲は、僕がずっとやりたかったテーマなんだ。  最近、いろいろ変わったことがあって……より強く作りたいと思うようになった」


 “いろいろ”の部分は曖昧だが、彼の胸の奥にはヴィクトリアの呪いと“タブー”の影が渦巻いていた。


「楽しみにしていてください。それじゃあ……今日はここまで」


 JIROは微笑みながら手を振り、配信は終了した。


 画面が暗転すると同時に、世界が変わる。


 ステージ用の照明もデジタルの光も消え、湿ったような古い石造りの廊下が現れる。 黒いローブに長い裾を引きずりながら、ひとりの女――魔女ヴィクトリアが歩いてくる。


 彼女の頬は火照り、髪は乱れていた。 つい先ほどまで、ロメオとの“事後”だったのだ。


 だが彼女の雰囲気は決して甘くない。 むしろ、鋭い。怒りがはっきりと顔に貼り付いていた。


「……フリーダ。あの淫乱娼夫!!よくも、よくも私の邪魔をしてくれたわね……!」


 壁をつたう蝋燭の炎が、ヴィクトリアの苛立ちに合わせて揺れる。 魔力が空気を震わせ、遠くの扉が勝手に開閉するほどだった。


「母さん、落ち着いて。フリーダも弱ってるはずだ」


 ベガが廊下の影から現れ、淡々と言った。 彼はまだ配信の余韻を身にまとっていたが、表情は冷静だった。


「あなたの呪歌が届いたのなら、それでいいわ。  ……でも問題は、お茶会よ」 ヴィクトリアの声が怒りで濁る。


「テティスやあの忌々しい仲間たちが、まだ自由に動けていること。 フリーダが、私の企みを妨害し続けていること」


 その言葉の後ろには、“私の完璧な世界を壊された”という憎悪が隠れていた。


 そして、ヴィクトリアはふっと息を吐いた。


「……さっきの配信。いい声だったわね」


 その言葉は母の誉め言葉ではなく、魔女の道具としての評価だった。


「新曲のこと。夢の世界へ誘う歌……悪くはないわ」


「それは何よりです。母さんに褒められると、僕の仕事を誇りに思えます」


 ベガが淡々と返すと、ヴィクトリアはくすりと笑い、ローブの襟を直した。


「さて――本題に入りましょう。  “タブー”が来たわ」


 廊下の空気が一変した。


 ベガの瞳が冷たく光る。 母の言葉を理解し、それが何を意味するのかを正確に把握していた。


「……来たんですね。あの人が」


「ええ。あなたのために。  あなたの歌を最大限に“使う”ために」


 ヴィクトリアの声は、甘くも残酷だった。


 ベガは息を吸い、目を閉じてほんの一瞬だけ思考を整理する。


(タブー……本当に動かすとは。  母さん、本気なんだね)


「案内しなさい。タブーはすぐにあなたと話したいそうよ」


 ヴィクトリアのローブが大きく揺れ、黒い影が長い廊下へ流れ込む。


 ベガは静かに頷き、その後に続いた。


心の奥では、胸の深いところでざわつくものがあった。


(タブーと……上手くやれるだろうか……)


タブーは銀と金色の髪が入り混じり、大きなヘッドホンをしたベガより筋肉質の、同い年くらいの少年だった。眼は鋭い金色でいつも無表情である。服装はダボッとしたパーカーとジーンズと黒色のロングコートである。そして一番特徴的なのはタブー自身の身長を大いに上回る大剣である。


「久しぶりだね、タブー」


ベガは特に何も考えずに声をかけた。


「…」


タブーはベガを見据えたまま黙っていた。


タブーは無口、無表情、無感情であるため、ベガは意思疎通を取るのが難しいと思っていた。


「来たわね、タブー。」


ベガのあとからヴィクトリアとロメオがやってきた。


「あなたに来てもらったのは他でもなく、あの忌々しい娼夫フリーダが、私の可愛いベガの歌を封じる知恵をつけてきたの。」 


ヴィクトリアが口元に指先をつけながら言った。


「…」


タブーがヴィクトリアに視線を移した。ヴィクトリアはいつもあられもない格好をしていて、ベガは少し恥ずかしいと思っていたが、タブーにとってはどうでも良いことであった。


「ベガとともに行動してテティスという子を捕らえてほしいの」


ヴィクトリアは続けた。「お茶会は2部制にするわ、お客様を待っているだけでは私の欲は満たされない…」


「母さん、それはつまりどういうことなのでしょうか」ベガがヴィクトリアにたずねた。


「困っている人々を甘い蜜で誘うの。あの淫乱娼夫にコレクションをいくつか奪われたけどまだストックはあるわ。」ヴィクトリアは妖しく微笑んだ。「ベガ…あなた芸能界にツテがあるからその方々の情報を集めてちょうだい。私を楽しませてくれそうな愚かな人間を探すのよ。タブーはSSとして連れていきなさいね。」


「彼をSSに?」


「テティスや娼夫が正義感を振り回してくるかもしれないから、特にテティスはあなたの呪歌を防げることが分かった…。タブーがいれば安心よ。でも奴らは私たちがまだテティスだけを狙っていると思ってるから迂闊には動かないはず。フリーダまだ動かないはず。奴も芸能界にいるからベガ、気をつけなさいね」


そういうと、ヴィクトリアはベガの返事も聞かずにロメオを連れて部屋から出た。


何も物を言わないタブーと部屋に取り残されたベガは気まずい空気を感じ取った。


「…じゃあ、用があるときにまた呼ぶから…」


一応タブーに声をかけてからベガも自室に戻ろうとした、


「…」


タブーは何も言わず、何も表情を変えずに見ているだけだった。


ベガはスマートフォンを手に取り、大手レコード会社〈アストラル・サウンズ〉のCEO、ウォルター・ブラッドリーにメッセージを送った。


『ブラッドリーさん、先日はありがとうございました。この間お誘いいただいたアストラル・サウンズの生誕祭の参加についてですが、参加させていただきたいと存じます。』


ベガはメッセージを送信した後、しばらくスマートフォンを見つめていた。彼の心には、ヴィクトリアの言葉とタブーの無言の存在が重くのしかかっていた。


(母さん…一体なにを考えているんだ?僕にはなにも教えてくれなかった…)


ベガはヴィクトリアが何も語らなかったことを不満に思っていた。心がモヤモヤすることもあったが、ブラッドリーには生誕祭で歌を歌ってほしいと頼まれていた。


彼は深呼吸をし、心を落ち着けようとした。芸能界での活動は、彼にとって単なる仕事以上の意味を持っていた。そこには、彼自身の夢と、ヴィクトリアの野望が交錯していた。


その時、スマートフォンが振動し、画面に新しいメッセージが表示された。ウォルター・ブラッドリーからの返信だった。


『JIRO、参加していただけるとのこと、大変嬉しく思います。生誕祭では特別なパフォーマンスを期待しています。詳細は追ってご連絡いたします。』


ベガは微笑み、メッセージを閉じた。しかし心中は複雑であった。


(ここで母さんの欲望を満たせるターゲットを見つけることができるのだろうか…)


彼は再びスマートフォンを手に取り、次のステップを考え始めた。


彼は、アストラル・サウンズの生誕祭でのパフォーマンスが、単なるショー以上の意味を持つことを理解していた。そこには、彼自身の音楽キャリアの未来がかかっているだけでなく、ヴィクトリアの計画を進めるための重要な機会でもあった。


ベガは、どのようにしてヴィクトリアの望むターゲットを見つけ出すかを考え始めた。彼は、芸能界の人々の中から、ヴィクトリアの計画に適した人物を見つけ出す必要があった。


彼は、アストラル・サウンズの生誕祭に参加する他のアーティストや関係者のリストを確認し、誰がヴィクトリアの興味を引くかを見極めようとした。


その中には、最近注目を集めている若手アーティストや、俳優、業界の重鎮たちが名を連ねていた。ベガは、彼らの中からヴィクトリアの計画に利用できる人物を見つけ出すことができるかもしれないと考えた。


彼は、アストラル・サウンズの生誕祭でのパフォーマンスを通じて、どのようにしてヴィクトリアの計画を進めるかを慎重に考え始めた。彼の心には、ヴィクトリアの期待と、自分自身の音楽への情熱が交錯していた。


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