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魔女のお茶会  作者: さとうとしお


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22/22

愛の媚薬 治療

登場人物

テティス=光明寺=ハースト

アメリカの大企業のCEOの娘。オカルト趣味があり、かねてから興味があった魔女のお茶会に招待されるが、それは魔女の罠であった。SSのなずなと狼男のフリーダとリュディアに救出され、力の賢者のもとへ案内される。異世界でであった仲間を守る決意を固めた。


服部なずな

テティスのSS。日本人であることをテティスに気に入られた。日本の格闘技の達人である。何よりも主であり、唯一無二の親友であるテティスを守ることを大切にしている。


フリーダ

人狼の代表。彫刻のように整った顔立ちと身体つきをしている美青年。人間界にビリヤードのプロ選手として潜入して魔女のお茶会の動向を探っている。力の賢者、レイノルズから人間界の常識を教わっていて、怪物のなかで唯一人間界に溶け込んでいる。


リュディア

フリーダの実弟。フリーダと同じく人間界に潜入しているが、人間界にいるときは隠れている。フリーダには劣るが腕っぷしが強い。親分肌である。


ヴォルフ=レイノルズ

力の賢者。40代くらいの男性。怪物たちが住む異世界と人間界の境界を守っている。賢者は一人1国家の権力が与えられているが家族を持つことができない、人間に魔法で攻撃してはいけないなど多くの制約に縛られている。自身が尊敬していた"養父ロメオ=フランケンシュタイン"を改造した義妹の魔女=ヴィクトリアを裁くことを目的としている。


シャイナ=レイノルズ 

守りの賢者。ヴォルフ=レイノルズとヴィクトリアの義妹。ヴィクトリアと対峙しているが、面会を許可されていて時々会うことができる。 


ギル=ニコラウス

レイノルズの側近。完全記憶能力を持つ人間の男性。 


ラクウェル

吸血鬼の代表代理。美少女と間違われるほどの美貌をもつ少年。


代表たち

人魚の代表代理、ローラ。ハーピーの代表カラビナ。エルフの代表カザリ。ドワーフの代表ヤゴ。オークの代表ウルゴラスとその妻ドラリナ。


ヴィクトリア=フランケンシュタイン

魔女。癒しの賢者。容姿端麗なフランケンシュタインを作る目的で魔女のお茶会というものを開いていた。養父ロメオ=フランケンシュタインの遺体を使いフランケンシュタインを作った。


ベガ=フランケンシュタイン

ヴィクトリアの"息子"SNSやアーティストとしてはJIROと名乗っている。歌で怪物たちの動きをとめることができる。 


ロメオ=フランケンシュタイン

元々は賢者たちの養父であり、異世界の代表たちを束ねていた神父であった。国家反逆の罪を着せられ殺害されたのち、ヴィクトリアに人造人間フランケンシュタインとして蘇させられる。

ヴィクトリアは、相変わらず優雅に微笑んでいた。  


柔らかな灯りに照らされたその顔は、 まるで慈悲深い聖母像のようであるが、その瞳の奥には、冷たい愉悦が沈んでいる。


「まあ……可哀想に」 その声は、病に伏した子どもを憐れむような口調だった。


その言葉が向けられているのは、 愛の媚薬に苦しんでいるテティスだった。


シャイナが、一歩前に出る。 指先が、かすかに震えている。


「お願い、姉さん……!」 シャイナの声が掠れた。 「テティスを……元に戻して……!」


ヴィクトリアは、首をゆっくりと傾げる。 「どうして?そのままでいいじゃない」 あまりにも自然な問い。 それが、シャイナの胸を深く抉った。


「だって……この子は……」 シャイナは言葉を探す。「この子は、そのままでは……!」


ヴィクトリアは、くすりと笑った。 その視線が、テティスに向けられる。


「そんなに愛し合っているなら」


ヴィクトリアは、まるで良識ある大人のように続けた。


「本能のままに行為をさせてあげればいいじゃない」


なずなの肩が、ぴくりと跳ねる。


「それが、一番“自然”よ」


自然。 その言葉に、なずなの理性が焼けた。 「……ふざけるな」


低く、怒りを抑えた声を出した。


「人の心を薬で縛っておいて、“自然”だと?」


なずなは、ヴィクトリアを睨みつけた。


ヴィクトリアは、少しだけ驚いたように目を瞬かせ、 それから、楽しそうに微笑んだ。


「相変わらずね、日本人のお嬢さん。」


その視線は、すでに興味を失っている。


「でもね」 ヴィクトリアは、再びシャイナへ向き直る。


「私が与えたのは、“愛を深める薬”よ?苦しんでいるように見えるのは、抑え込もうとしているからよ」


シャイナの顔から、血の気が引いた。


「……そんな……」


その瞬間だった。 ヴィクトリアが、ふっとテティスの側に近寄る。なずなが2人の距離を取らせようとするが、それよりも早くまるで秘密を教えるように、 テティスの耳元へ囁く。


「奥の部屋に、彼――いるわよ?」


その言葉は、刃だった。 テティスの瞳が、わずかに揺れる。


「……ベガ……?」


その名前を口にした瞬間、 胸の奥が、きゅっと締めつけられる。呼吸が乱れ、指先が震え、 足元が覚束なくなる。


それは完全に、媚薬に支配された少女の姿だった。 テティスの足が、勝手に前へ出た。


「テティス!」


なずなが、慌てて手を伸ばす。


「待って、テティス!」


だが、テティスは振り返らない。


背後で、ヴィクトリアが高く笑った。 それは、勝利を確信した者の笑いだった。


「ええ、ええ。行きなさい。あなたは、もう戻れないわ」


ヴィクトリアの視線が、テティスの背中に突き刺さる。


(……捕まえた)


そう、確信していた。 息子も、テティスも。 愛も、理性も。 すべて、自分の掌の上。


なずなは、歯を食いしばりながらテティスを追う。


シャイナは、その場に立ち尽くしていた。 (……姉さん……どうして……)


奥の扉は、重かった。 開くときに、きしむような低い音がした。


テティスは、無意識に息を止める。


(……冷たい)


部屋の空気が、廊下とはまるで違った。 湿り気を含み、金属と薬品と、微かな血の匂いが混じっている。


その中央に“彼”は、立っていた。


ロメオ。


最初に目に入ったのは、その大きさだった。


人の形をしている。


だが、人ではない。


神父の服を着た、鍛え上げられた肉体は、均整が取れていた。次に目が行くのは"ベガ同じ"ストロベリーブロンドのさっぱりとした短髪である。目元は細いが冷たいのか優しさがあるのか分からなくて、ゾッとする印象を与えた。長袖から少し縫い目が見えた。


その視線が、ゆっくりとテティスを捉えた。 「……」


ロメオは、何も言わない。


だが、視線だけで分かる。 ――測っている。 ――価値を、判断している。 背後から、ヴィクトリアの声がした。


「紹介するわ」


その声には、誇らしさと、歪んだ甘さが混じっている。


「私の最愛の人、ロメオよ」


テティスの胸が、強く鳴った。


(……この人が……)


ロメオは、ほんの僅かに首を傾げた。


「……ヴィクトリア」


低い声だった。 機械音でもなく、人間の声でもない。 それは、作られた喉から生まれた、確かな意思の音。


「新しい子を連れてきたのですね」


ヴィクトリアは、嬉しそうに微笑んだ。


「ええ。可愛いでしょう?とても素直で、壊れやすい」


ロメオの視線が、彼女の動きに合わせて滑る。 「……震えているのですか」


問いではなく、確認だった。


テティスは、唇を噛み、視線を落とす。


「……怖い、です」


テティスの声は弱々しかった。


「でも……ベガに会いたくて……」


その言葉に、ロメオの目がわずかに細まった。彼の視線は、テティスの心の奥底を見透かすようだった。


「ベガ……」


ロメオはその名前を口にし、少しの間、考え込むように沈黙した。


ヴィクトリアは、そんなロメオの様子を楽しむかのように微笑んでいた。「彼女は、ベガに会いたがっているのよ」


ロメオは、ゆっくりと頷いた。

「わかりました……それなら、彼女を案内しましょう。」


テティスの心は、期待と不安で揺れ動いていた。彼女は、ロメオの後を追うようにして、部屋の奥へと進んだ。


部屋の奥には、さらに重厚な扉があった。ロメオはその扉を開け、テティスを中へと招き入れた。


その部屋は、まるで別世界のようだった。柔らかな光が差し込み、心地よい香りが漂っている。


「ここが、ベガのいる場所だ。」


ロメオは静かに言った。


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