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魔女のお茶会  作者: さとうとしお


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21/22

愛の媚薬 選択

登場人物

テティス=光明寺=ハースト

アメリカの大企業のCEOの娘。オカルト趣味があり、かねてから興味があった魔女のお茶会に招待されるが、それは魔女の罠であった。SSのなずなと狼男のフリーダとリュディアに救出され、力の賢者のもとへ案内される。異世界でであった仲間を守る決意を固めた。


服部なずな

テティスのSS。日本人であることをテティスに気に入られた。日本の格闘技の達人である。何よりも主であり、唯一無二の親友であるテティスを守ることを大切にしている。


フリーダ

人狼の代表。彫刻のように整った顔立ちと身体つきをしている美青年。人間界にビリヤードのプロ選手として潜入して魔女のお茶会の動向を探っている。力の賢者、レイノルズから人間界の常識を教わっていて、怪物のなかで唯一人間界に溶け込んでいる。


リュディア

フリーダの実弟。フリーダと同じく人間界に潜入しているが、人間界にいるときは隠れている。フリーダには劣るが腕っぷしが強い。親分肌である。


ヴォルフ=レイノルズ

力の賢者。40代くらいの男性。怪物たちが住む異世界と人間界の境界を守っている。賢者は一人1国家の権力が与えられているが家族を持つことができない、人間に魔法で攻撃してはいけないなど多くの制約に縛られている。自身が尊敬していた"養父ロメオ=フランケンシュタイン"を改造した義妹の魔女=ヴィクトリアを裁くことを目的としている。


シャイナ=レイノルズ 

守りの賢者。ヴォルフ=レイノルズとヴィクトリアの義妹。ヴィクトリアと対峙しているが、面会を許可されていて時々会うことができる。 


ギル=ニコラウス

レイノルズの側近。完全記憶能力を持つ人間の男性。 


ラクウェル

吸血鬼の代表代理。美少女と間違われるほどの美貌をもつ少年。


代表たち

人魚の代表代理、ローラ。ハーピーの代表カラビナ。エルフの代表カザリ。ドワーフの代表ヤゴ。オークの代表ウルゴラスとその妻ドラリナ。


ヴィクトリア=フランケンシュタイン

魔女。癒しの賢者。容姿端麗なフランケンシュタインを作る目的で魔女のお茶会というものを開いていた。養父ロメオ=フランケンシュタインの遺体を使いフランケンシュタインを作った。


ベガ=フランケンシュタイン

ヴィクトリアの"息子"SNSやアーティストとしてはJIROと名乗っている。歌で怪物たちの動きをとめることができる。 


ロメオ=フランケンシュタイン

元々は賢者たちの養父であり、異世界の代表たちを束ねていた神父であった。国家反逆の罪を着せられ殺害されたのち、ヴィクトリアに人造人間フランケンシュタインとして蘇させられる。

レイノルズは、床に散らばったグラスの破片を見下ろしながら、静かに言った。


「……これは、ただの媚薬じゃない」


誰もが息を詰める。


「 “愛することを選んだのではなく、飲んで愛した”―― 選択を奪うための、最悪の系譜の薬だ」


なずなが唇を噛む。


「じゃあ……テティスのこの状態は……」


レイノルズの視線が、ベガへ向いた。


ベガは、壁に背をつけ、必死に呼吸を整えていた。 拳は震え、額には汗が滲んでいる。フリーダがベガの近くまでやってきて近くで膝をついた。


「……母さん…どうして僕まで…」


声は低く、抑えられている。


「欲望を与えているふりをして、 実際には思考の逃げ道を塞ぐ」


フリーダはベガに説明するように言った。


ベガはテティスの方を、見られない。


見れば、 伸ばしたくなる。 守りたくなる。 近づいてしまう。すべてが欲しくなる。


(なぜ母さんは…僕まで巻き込んだんだ…。テティスと僕を…)


「……僕とテティスを離してください」


ベガは、かすれた声で言った。


「このままだと、 俺は……母の言う通りの存在になる」


「そのために俺が近くにいるんだよ」フリーダは冷たく言い放った。


レイノルズは即座に判断した。


「二人を、別々の部屋に。 物理的に距離を取る」


なずなが、テティスの手を取る。


「ごめん、テティス。 今は……」


テティスの頬はりんごのように赤く染まっていた。顔がいつもの幼さもある顔よりも艷やかになっていた。媚薬の効果なのだろうかとなずなは考えた。テティスは、首を振った。


「分かってる……分かってるのに……」


テティスの声が、震える。


「なのに、 ベガがいないと……」


言葉は、最後まで続かなかった。脳裏にベガがこびりついて離れないのだろうか。


夜更け。


ベガはハースト邸のテティスが所有しているコテージのベッドの中で横にさせられていた。


ベガは起き上がり、コテージのドアを開けた。


「行くのか」


そこにはフリーダがいた。


「戻る…母の元へ」


「そうか。君には同情するよ…あんな女が母親だからな」


フリーダは吐き捨てるかのような、氷のような冷たさで言った。


ベガはそんなフリーダに対して何も言わず、フリーダの横を通り過ぎた。


(戻るんだ…母さんの元へ)


テティスの顔が、 何度も浮かぶ。


本心ではテティスとどうなりたいかベガには分からなかった。テティスはベガにヴィクトリア側だと分かっているはずなのに、優しく接された。それがベガにとって不快ではなかった。


自分はテティスと一緒にいたいのだろうか。


母の命を全うし、テティスを母に捧げるのが最善だと分かっているはずだ。


門を越えた瞬間、 ベガは一度だけ、振り返った。


「……ごめん」


誰に向けた言葉かも、分からないまま。


翌朝。


テティスはなずなの目を盗んでベガがいたであろうコテージの前に立っていた。


――空。


「……いない……」


追いついたなずなが、背後で立ち尽くす。


「……行ったんだよ。 自分の意思で」


フリーダは優しい声色でテティスに言った。


テティスは、 その場に座り込んだ。


「ベガ!ベガ!どこに行ったの!?私を置いていったの!?」


なずなは、思わず声を荒げてテティスの頬を叩いた。


「違う! あいつは……あいつは、 逃げたんじゃない!」


言葉が、続かない。テティスはなずなにすがりついてベガの名前を呼び嗚咽を漏らしていた。


なずなは、拳を握りしめた。


(……見ていられない)


なずなはレイノルズに連絡を取った。テティスを助けたいと。ベガへの依存から助けたいと。


レイノルズは、結論を出す。


「愛の媚薬を解除できるのは、二つだけだ」


「異世界にエリクサーといういかなる病も治す薬がある。だがエリクサーの回収には、時間がかかる。 今のテティスには……持たないだろうな」


一瞬の沈黙。


「もう一つの方法は、癒しの賢者ヴィクトリアの魔法だ。」


なずなの顔が険しくなった。その方法だけは、エリクサーよりも不可能だろう。


だがレイノルズが下した判断はなずなの考えとは真逆だった。


「……シャイナにヴィクトリアを説得させ、ヴィクトリアに治してもらおう」


「な…」


なずなは思わず絶句した。


「レイノルズ様、私はヴィクトリアなんかに頼りたくありません!まして協力するはずもなくテティスはヴィクトリアに捕まります!なぜそのような判断を!?」


「なずな、君もシャイナに同行してくれ。」レイノルズはなずなの言葉を聞いてもいないかのように言った。「シャイナのことならヴィクトリアも信じるだろう」


「ではなぜ!」


「今はまだ、私を信じてくれとしか言いようがない。」


なずなは納得できなかった。この男は本当に賢者なのか?ヴィクトリアに治療を依頼する?そんなのシャイナが頼んだって不可能なはずだ。第一ヴィクトリアはテティスを欲しがっている。そんな中にテティスを連れて行ったら思惑通りではないか。


「なずなちゃん」


納得ができずにいるなずなにフリーダが話しかけた。


「納得はできない気持ちはわかる。今は力の賢者を信じてほしい」


「フリーダ様まで…」


ここまででなずなはある違和感を感じた。まるで自分には何かを意図的に隠されているような感覚がした。そしてレイノルズ、フリーダまでもが無謀な作戦に同意した。これは何かあると直感した。


「……フリーダ様までおっしゃるなら、テティスとシャイナ様を護衛します」


レイノルズは異世界で住民たちを守るシャイナの元を訪れた。


全てを聞いたシャイナはなずなと同じような反応をした。


「お兄様正気ですか!?姉さんにテティスを治させるなんて、いくら私の説得でもうまくいくとは思いません!」


「シャイナ、今は俺のことを信じてほしい。騙されたと思ってヴィクトリアのところへ行き、テティスを治してくれと頼むんだ。」


「そんな…姉さんはテティスを欲しがっているのにうまくいくとは思いません。兄様なんか変ですよ!」


レイノルズは真剣な眼差しでシャイナを見つめた。


「自分でも無謀だと思っているさ。ただ…頼む。今は俺を信じてくれ。」


シャイナはここまで必死に頼むレイノルズを見るのは久しぶりだと思った。シャイナも渋々レイノルズの指示に従うことに決め、異世界をレイノルズに託し、なずな、テティスと共にヴィクトリアのところへ行く準備をした。


シャイナはヴィクトリアに使い魔のカラスを飛ばした。シャイナがヴィクトリアに会うときは、居場所を転々とするヴィクトリアに会うのは困難なため使い魔を通してヴィクトリアにコンタクトを取るのだった。


テティスはまだ頬を赤くし、苦しそうにしていた。なずなとシャイナはそんなテティスの手を握り心配そうに見つめていた。


「シャイナ様もレイノルズ様から聞きましたか?」


なずなはシャイナに聞いた。


「えぇ…お兄様らしくないわ。こんなこと…」


カラスの鳴き声がした。使い魔のカラスが居場所を記した紙を前脚に持っていた。


紙にはなずなが読めない文字が書いてあったが、シャイナには読めるらしく使い魔を魔法陣に戻すと、テティスとなずなに「場所が分かったわ。すぐに姉さんの屋敷に行きましょう。」


ヴィクトリアの屋敷まで正規のルートで行くのに意外と現代的な方法で行くのだとなずなは思った。以前リュディアと突入したときもそうだったが、人気のない森の奥に潜んでいた。今回も森の中であるが車を使ってヴィクトリアの元へ向かった。


(賢者だからもっと魔法を使うのかと思った…ワープの魔法とか、瞬間移動する魔法とか…)


向かっている途中なずなは、車を運転するシャイナを見つめながら不思議に思っていた。おそらく多用するのを禁止する決まりでもあるのだろう。


ヴィクトリアの屋敷の場所はオレゴン州だった。シャイナが普段いる異世界への道があるコロラド州からオレゴン州まで車で17時間かかった。


車の長旅が終わり、シャイナは再び使い魔を召喚した。シャイナ曰く森に来たことを伝えるためであった。


しばらくすると、ヴィクトリアのところのフランケンシュタインと思われる顔色が悪いが整った顔立ちをした男が現れた。


「シャイナ様、我が主ヴィクトリア様がお呼びです」


「分かったわ、この子たちも一緒なのは姉さんにも伝えてあるから案内して」


慣れたような様子でシャイナが言った。


3人で森の奥底へと向かった。なずなは途中ヴィクトリアの襲撃を警戒したが、途中で遭遇したフランケンシュタイン達はシャイナがいるおかげなのか大人しかった。


ヴィクトリアの屋敷の前についた。


「はいるよ、テティス、なずな…」


シャイナも少し緊張している様子だった。


ヴィクトリアは治す選択をするのだろうか…


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