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魔女のお茶会  作者: さとうとしお


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15/22

人魚の肉 永遠の命と愛の意味

登場人物

テティス=光明寺=ハーネス

アメリカの大企業のCEOの娘。オカルト趣味があり、かねてから興味があった魔女のお茶会に招待されるが、それは魔女の罠であった。SSのなずなと狼男のフリーダとリュディアに救出され、力の賢者のもとへ案内される。異世界でであった仲間を守る決意を固めた。


服部なずな

テティスのSS。日本人であることをテティスに気に入られた。日本の格闘技の達人である。何よりも主であり、唯一無二の親友であるテティスを守ることを大切にしている。


フリーダ

人狼の代表。彫刻のように整った顔立ちと身体つきをしている美青年。人間界にビリヤードのプロ選手として潜入して魔女のお茶会の動向を探っている。力の賢者、レイノルズから人間界の常識を教わっていて、怪物のなかで唯一人間界に溶け込んでいる。


リュディア

フリーダの実弟。フリーダと同じく人間界に潜入しているが、人間界にいるときは隠れている。フリーダには劣るが腕っぷしが強い。親分肌である。


ヴォルフ=レイノルズ

力の賢者。40代くらいの男性。怪物たちが住む異世界と人間界の境界を守っている。賢者は一人1国家の権力が与えられているが家族を持つことができない、人間に魔法で攻撃してはいけないなど多くの制約に縛られている。自身が尊敬していた"養父ロメオ=フランケンシュタイン"を改造した義妹の魔女=ヴィクトリアを裁くことを目的としている。


シャイナ=レイノルズ 

守りの賢者。ヴォルフ=レイノルズとヴィクトリアの義妹。ヴィクトリアと対峙しているが、面会を許可されていて時々会うことができる。 


ギル=ニコラウス

レイノルズの側近。完全記憶能力を持つ人間の男性。 


ラクウェル

吸血鬼の代表代理。美少女と間違われるほどの美貌をもつ少年。


代表たち

人魚の代表代理、ローラ。ハーピーの代表カラビナ。エルフの代表カザリ。ドワーフの代表ヤゴ。オークの代表ウルゴラスとその妻ドラリナ。


ヴィクトリア=フランケンシュタイン

魔女。癒しの賢者。容姿端麗なフランケンシュタインを作る目的で魔女のお茶会というものを開いていた。養父ロメオ=フランケンシュタインの遺体を使いフランケンシュタインを作った。


ベガ=フランケンシュタイン

ヴィクトリアの"息子"SNSやアーティストとしてはJIROと名乗っている。歌で怪物たちの動きをとめることができる。 


ロメオ=フランケンシュタイン

元々は賢者たちの養父であり、異世界の代表たちを束ねていた神父であった。国家反逆の罪を着せられ殺害されたのち、ヴィクトリアに人造人間フランケンシュタインとして蘇させられる。


ジャック=モリソン

クロノスブレイカーのアクションスタントマンを務める男性。ヴィクトリアに唆されて人魚の肉を食べる。

配信が始まると同時に、コメント欄はいつもの速度で流れ始めた。


――今日も来た  


――待ってた


――この時間帯のJIRO落ち着く


――顔が疲れてる?


画面に映るJIROは、ソファに深く腰を下ろし、ギターを膝に置いていた。 照明は柔らかく、夜の色をしている。


「こんばんは」 それだけで、コメントの密度が一段階上がる。


「今日は……歌う前に、少しだけ話そうかな」 そう前置きして、彼は一度、弦に触れた。 鳴らさない。 確かめるように、触れただけだ。


コメントの流れが、わずかに緩やかになる。 JIROはギターを膝に置いたまま、弦には触れずに続けた。


「前に、永遠の命について話したよね。 もし若さも時間も失わなかったら、って」


画面越しに、彼の目が遠くを見る。


「最近、考えるんだ。 永遠に生きるってことは、 “別れ続ける”ってことなんじゃないかって」


彼の言葉は、視聴者の心に深く響いた。永遠の命というテーマは、誰もが一度は考えたことのあるものだが、JIROの視点は新鮮だった。


「永遠に生きることができたら、どれだけの人と出会い、どれだけの別れを経験するのだろうか」と彼は続けた。


彼の声には、どこか切なさが漂っていた。視聴者たちは、彼の言葉に耳を傾けながら、自分自身の人生についても考え始めた。


「でも、だからこそ、今この瞬間が大切なんだと思う。限られた時間の中で、どれだけの愛を注げるか。それが、僕たちの生きる意味なんじゃないかって」


彼の言葉に、コメント欄は再び活気づいた。


――重い〜


――でも分かる


――推しに先立たれるのつらい


「愛する人が老いて、 弱って、 先にいなくなる。 それを、何度も見送る」


一瞬、言葉が途切れた。


「それでも、誰かを愛したいと思えるなら…… それは、強さなのか、呪いなのか」


JIROは、小さく息を吐いた。


「そんなイメージで、曲を書こうと思ってる。 水の底みたいな、 静かで、逃げ場のない場所の話」


――タイトル気になる!


――絶対泣く


――楽しみ


「完成したら、また聴いてほしい」


彼の指が弦を撫でるたびに、音は部屋の中に広がり、まるで水面に波紋を描くようだった。視聴者たちは、その音に耳を傾け、心の中でそれぞれの物語を紡いでいった。


JIROの演奏は、静かでありながらも力強く、彼の心の奥底にある感情をそのまま音に乗せているようだった。彼の音楽は、言葉では表現しきれない感情を伝える力を持っていた。 


「役として立っているときの自分と、 何も演じていないときの自分が…… ちゃんと繋がってるのか、たまに不安になる」  


視線が、少しだけ下に落ちる。


「でも、不思議なんだけど」 彼は、ほんの一瞬、柔らかく笑った。 「そういうときに限って、 “ああ、まだ大丈夫だ”って思わせてくれる瞬間がある」


それが何なのかは、言わない。


「たぶん……誰かが隣にいるから、じゃない。 言葉をかけられたわけでもないし、 何かをしてもらったわけでもない」  コメントがざわつく。


――恋バナ?


――隣…?


――考察班集合


――彼女とかだったら死ぬ〜


「ただ、ちゃんと“見られている”って感覚だけが残るんだ。 評価とか、期待とかじゃなくて。 そのままの状態を、否定も肯定もせずに」 ギターの弦が、今度は小さく鳴る。 低い音。 深呼吸のような一音。


「……それって、すごく怖い。 でも同時に、救われる」 彼は視線をカメラに戻す。


「恋バナ?ふふ、違うよ。さっき話した話の続きね。」JIROがイタズラっぽく笑った。


コメントが一斉に動く。


――笑顔尊い〜


――永遠の命の話?


――恋バナじゃなくて良かったー


――JIROの世界観好き


「永遠って、響きは綺麗だけどさ」 言葉を選ぶように、ゆっくり続ける。 「同じ景色を、同じ速度で見続けるってことじゃない」 一拍。 「たぶん…… 進み続ける人と、止まれない人が生まれる」


その言い方には、どこか痛みがあった。


「先に行くことが正しいのか、 残ることが間違いなのか。 それは、誰にも決められない」 コメント欄に、静かな共感が増える。


――わかる


――置いていかれるのも、置いていくのも辛い ――JIRO大丈夫?


「だから今回作ってる曲は、 “失うこと”を美化しない曲にしたい」 彼は、はっきりとそう言った。


「別れは、成長の証じゃないし、 痛みは、必ずしも意味を持たない」 ギターを構え直す。


「それでも…… それでも人は、誰かと同じ時間を過ごしたくなる」


弦が、ゆっくりと鳴り始める。 まだ完成していない旋律。 不安定で、どこか脆い。


「この曲は、まだ途中。 たぶん、完成するまで時間がかかる」 彼は、弾きながら続けた。


「もし途中で、 “続けちゃいけない”理由が見つかっても…… それでも、最後まで作ると思う」 その言葉に、理由は語られない。


「だって、作らなかったら」 声が、ほんの少しだけ低くなる。 「自分が、何を守りたかったのか、 わからなくなる気がするから」 最後の音が、空気に溶ける。 沈黙。


コメント欄は、すぐには戻らなかった。


――……


――なんか泣きそう


――今日は保存版


JIROは、軽く息を吐いた。


「ごめん。重かったね」 いつもの調子に戻そうとするが、完全ではない。


「今日はここまで。 また、曲が進んだら聴いてほしい」 手を振る。  


「おやすみ。 ……ちゃんと、眠ってね」


配信が切れる。


画面が暗転したあとも、 視聴者たちはしばらく動けなかった。


〈あれ、誰の話だ〉


〈永遠の命って言葉、あんなに重く言う人だった?〉


〈最近のJIRO、どこか違う〉


誰も、はっきりした答えを出せない。 だが確実に、 彼の中で何かが変わり始めていることだけは、 画面越しにも伝わっていた。


配信を終えたJIRO=ベガは、水を飲もうと部屋を出た。部屋の外にはタブーがいた。


「やぁ、タブー」ベガはタブーに柔らな声で話しかけた。ベガなりの親しさを表したつもりだった。


「…」タブーはベガを見つめる、いや見ているだけで言葉は発さなかった。


「明日も撮影だからよろしくね」


「…」タブーは依然としてベガを見ているだけだった。首を縦にも振らない。


(一応撮影現場についてきてくれたし、気にしなくていいか…コミュニケーションって疲れるな…)ベガはタブーを見て苦笑いをした。


タブーをあとにして、調理場へと向かった。長い廊下を歩く途中、ベガはハッとして立ち止まった。


――最強のフランケンシュタイン、ロメオが珍しく一人で窓の外を眺めていた。暗闇で何も見えないはずだが何かを見つめていた。


(いつも母さんと一緒にいるのに珍しい…母さんが出かけていても部屋から出ることなんてないのに…)その威圧感からベガは前を通るか迷っていた。ロメオが振り返った。ベガは思わず一歩下がり冷や汗をかいた。自分には危害を加えることはないが、タブーのとっつきにくさととは違う、言葉の通じなさではない、でもなぜが恐怖感を彼から感じていた。


ロメオがゆっくりとベガに近づいた。ベガはそうと分かると動くことができなかった。


ロメオは生前の名残か目が細かった。これが生きている人間ならそれが特徴の優しそうな人に見えるだろう。しかし生気を感じさせないフランケンシュタインにはそれが不気味な雰囲気を増加させていた。体格の良い身体を動かしながらベガに近づく。厳かな神父服も今のベガにとっては恐怖をかき立てた。


ロメオはぬっとベガに右手を出す。ベガは身体を少し後ろに引いた。


…ロメオはベガの横髪にそっと触れただけだった。ロメオはそれだけをすると踵を返してヴィクトリアとの部屋へと戻った。


ちょうど良いタイミングだったのか、ヴィクトリアの部屋からヴィクトリアのロメオに甘える声が聞こえた。


(何だったんだ…今の。)


ベガはまだ冷や汗が流れていた。ロメオの意図が読めなかった。


ロメオがベガの髪を撫でるように触れた?それはまるで…


ベガは長く伸びている自分の前髪の"色"を見つめた。


それはロメオと同じ地毛にしては珍しいストロベリーブロンドの髪色だった。


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