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傷だらけになった心の隙間を埋めてくれた人  作者: #とみっしぇる


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29 私達はすでに初体験を済ませたことになってた

週が明けて修二と一緒に登校した。


デタラメ告白の返事はしてない。けれど、キスという形で意思表示してしまった。


気恥ずかしい。それでも修二が喜んでくれた。


もう気持ちが止められない。


修二はいつもの笑顔。最初に助けられた時と比べても格段に表情が柔らかい。


けれどキスしてから、あんだけ口に出してた『告白の返事は』と言わなくなった。


修二を好きだったヤイコとカナコに聞いていた。


幼少期から母親と不仲だったから、修二は深く人に関わるのが怖いと言ったそうだ。


だからふたりは、告白できなかったそうだ。


それが修二だ。


アイツが次に『告白の返事は?』と言えば私は必ずOKする。


なのに言ってくれない。ということは、そういうことなんだろう。


小4の頃の、美佳とチイちゃんがベースになってる親友ポジ。


男女としては・・彼氏彼女になりたいと思うようになったのは私だけだったか。


修二の母親のことを知ってしまった今、アイツがいまだに苦悩しているのが分かる。


心にずかずかと入り込めない。


修二を癒やしたい気持ちは嘘じゃない。同時に本気で好きになってしまった。


母親を見て動揺した修二の気持ちを鎮めようとしたら、気持ちが溢れ過ぎてキスなんてしてしまった。


私のキャパをオーバーしかけてる。


ここからは修二の気持ちに委ねよう。



「美佳ちゃん」

「・・なに」


「俺の気持ち。もっと整理できてから伝えていい?」


「うん。無理しないでね。ゆっくり待つよ」


修二が私から目をそらして前を見て、小声で呟くように言った。


「ありがとう。あ、あの感触も・・心に焼き付いてる」


「・・人前で言わないで」


「けど・・宝物になってる」


こういう追加攻撃がくるから泣きそうになった。


けど、ここは通学路。思わず手を取りそうになるのを我慢した。


教室に入った直後、マキに言われた。


「美佳、やるわね」

「・・へ?」


先日の修二と友ハグに続いて、指を絡めて歩いてるのを見られた。


同じ高校の1年生3人に。


キスしたとこは見られてないけど、その後は修二から指を絡めてくれて、私は腕を絡めた。


その目撃者の姉が、このクラスにいた。


「な、な、な・・」

「あ、え、え~と」


さすがの修二も軽く返せない。


ちらっと、修二グループのカナコとヤイコを見た。カナコと目が合ったけど、ニヤリとされたのみ。再び、同じグループの男子ふたりと喋ってた。


男子ふたりが、それぞれカナコ、ヤイコにアタックかけてるらしく、あっちはあっちで楽しそうだ。


自然なのか意図的なのか分からないけど、アイツとふたりの時間が増えてる。


矛盾してる私。


修二を癒すのは、バカカップルから助けられたお礼。


そう言いながら独占欲も出てきてる。


そして1年生の目撃談には尾びれ、背びれ、さらに大きな羽も付いてた。


私達、ふたりで目的もなく歩いてた。ラブホ街の近くも通り過ぎた気がする。その時に見られたようだ。


私がちょうど初キスのことを『私、初めてが修二で良かった』と言ってたときだ。


ホテルなんて入った覚えはないのに、突入したことになってた。


私は身も心も修二に捧げたと聞こえてきた。


半分は正解。


気持ちは陥落してる。


ただ話が飛躍しすぎた。



昼休み。初めて修二とふたりだけで学食に行った。


そこで、彼氏持ちギャル子にダイレクトに聞かれた。


「美佳と修二~、もうヤッたんだね~」


「な、なにそれ」

「え、え、なんで?」


「まあまあ、みんな分かってるよ。修二が『何でもやらせてくれるでしょ』って告白。そんで美佳からハグしたり腕を絡めたり。それっても~最後までいっていいってゴーサインだろ~」


「・・」「・・」


「ふたり、お似合いだよ。おめでと~~」


私達は絶句した。


そうだった。付き合っていくほど私を大切にしてくれる修二。


心はプラトニックだけど、恋愛図鑑の新しいページは次々とめくられてる。


そして私達の起点となったパワーワードは『美佳ちゃんの心が傷付いた隙を狙えば、あとは何でもやらせてくれるでしょ』



むっちゃ強烈だった。


どおりで朝の教室から、私や修二を見てニヤニヤしてるやつばかりだと思った。


マキの「美佳に先を越されたか~」の意味、やっと分かった。


ところでマキとハルアキ君、どこまでいってるの?


告白のセリフ。歩いた場所。私の態度。


うまく繋げていけば、私と修二が大人の階段を一気に駆け上がったようにしか見えないよな。


放課後、学校をふたりで出た。


「修二、ごめん。私が往来で友ハグとか色々したから、迷惑かけた・・」


「いや、俺は癒されたから感謝してる・・。美佳ちゃん、女の子なのに噂が広がったらまずいよね」


珍しく焦ってる修二。また新しい顔を見せてくれた。


嬉しい。


修二は、私のこと女の子として見てくれてる気がする。


それだけで嬉しいよ。


「いいよ~、どうせ私はモテないから。大した影響ないもんね~」

「ごめんね・・。噂が、こんな方向に向かうことも考えるべきだった」


私は笑ったけど、修二が困った顔だ。


「修二、私はバカカップルから助けてくれたアンタに恩を返したいんだよ」


修二に負担をかけないために、明るく対応しよう。


そして私の気持ちは、はっきりしてる。



好きだよ修二。私の初恋です。



けどね、私をお母さんのように頼ってくれた7年間のチイちゃんの顔も思い浮かぶ。


無責任な言葉だけ投下して、自分は引っ越してしまった。


なのに、私なんかの言葉を大切にしてくれて、頑張ってきたんだ。


「だからね、本当に気持ちが軽くなるまで私の前では無理しないでね。そうだな・・彼女が欲しいと思えるくらいになったら気持ちを教えて」


「うん」


「最初がインパクトありすぎたせいか周りが盛り上がってるけど、私達はゆっくりやっていこうよ」


修二、私の前だけなら今みたいな顔していい。無理して笑わなくてもいいよ。


「7年前は、仲良くなって3週間で離ればなれになったけど、今度はたっぷり時間があるからね」


疲れ切った心を奮い立たせ、今でも頑張りすぎてる。


だから、こんなに愛おしくて、同時に心配になるんだろう。


気が付けば私の目には涙がにじんできて、そして私達は当たり前のように手を繋いでた。

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