25 兄貴達も修二と波長が合うんだよね
木曜日は、私達の友ハグを見た1年生と廊下でばったり合った。
「あ、修二さんと抱き合ってた先輩だ~」
「すご~い」
なんか噂になってた。
私はダッシュで逃げた。顔は真っ赤だったと思う。
◆◆
ダイ兄が修二と約束して、再び家に招くこととなった金曜日。
放課後。
「お待たせ美佳ちゃん」
「あ、けど、まだ早いな~」
「うん、だから手土産買って行こうかなって」
「気なんて遣わなくていいよ~」
横で聞いてたマキが割って入ってきた。
「あんたら、どっか行くの?」
「うん。先週、修二がうちの兄貴達に気に入られたからね。今日はうちでご飯なの」
「え、修二って、あのシスコンブラザーズに気に入られたんだ」
「男子高校生ってだけで、美佳の敵みたいなこと言ってたお兄さんだったよね~」
「修二の対人スキルって、やっぱすごいんだ~」
マキや同じグループのみんなも、うちに来てご飯食べたことがある。
その友達感覚で話してるけど、周りはざわついた。
『告白保留』のまま、往来でハグしたこともバレた。ふたりの関係が進展してるように映るからだった。
ただし、招いたのが兄貴達。『家族枠?』の声も上がった。
◆
修二のお土産だけど、私と少しもめてる。
有名なケーキ屋で買おうとするんだもん。価格帯が1個800~1000円。
うちの家族と修二の分でかなり散財させてしまう。
「ダメだって修二」
「いやいや、この前のお礼もあるからさ」
するとピロ~ンとLIMEが鳴った。
ダイ兄からだ。まるで、ケーキ屋の近くで見てるんじゃないかってくらいのタイミング。
ダイ兄『美佳、修二に言っておけ。土産はいらん。買ってくるならマスタードーナッツのオウルドフッションを人数分だってな』
オウルドフッション、1個130円なり。
修二にLIMEの文面を見せた。
「修二~、ダイ兄が高いもの禁止だってよ~」
「え~、すごいタイミング」
「ダイ兄も修二の考えてそうなことが分かるみたいね」
「ええっと・・」
「まだ1回しか会ってなくても、兄の言うことに従いなよ。ね、弟くん」
「・・うん」
修二が笑顔になった。ダイ兄、褒めてつかわす。
家に帰ると、お母さんと私で揚げ物を作った。
修二はソファーで、修二が来るからと早めに帰ってきたハル兄の相手してた。
笑い声が聞こえてきた。修二の声が弾んでる。
「ハル兄さ~ん、それ無茶ですよ~」
「いや、お前も参加しろよ。美佳もいるし、タクやキミハルも来るから大丈夫だって」
夏に遊ぶ約束してた。
修二はハル兄と同級生だったお兄さんに、苛められてたらしい。
代わりにって訳じゃないけど、ハル兄を修二が兄貴みたいに思ってくれたらいいな・・
お父さんとダイ兄が仕事から帰ってきて、晩御飯。
「いっぱい食べてね、修二君」
「お母さん、ありがとうごさいま~す」
「ところで、キミは美佳とは・・」
「ほら父さん、ビールのグラスが空になったわよ」
え~、本日も、お父さんの出番はここまで。
◆
ご飯が終わって、修二を囲んで私、ダイ兄、ハル兄で喋ってる。
で、いきなりダイ兄が爆弾のようなものを投下した。
「おい修二」
「はい、ダイ兄さん」
「お前、なんかあって家族と離れて暮らしてるらしいな」
「・・はい。親戚の家で世話になってます」
私の方がドッキリした。
「ところで、うちは楽しいか」
「ええ、まあ」
「だろ。俺らも不思議なくらい、気兼ねなく話せるぞ」
「そうだな。なんか美佳の仲良しは、昔から俺ら兄弟とも相性がいいんだよな」
ダイ兄とハル兄がニコニコしてる。
そしてダイ兄が続けた。
「だから修二、なんかあったら俺らを頼れ」
「はい!」
「じゃあまず、来月は誕生会しようや。お前も7月生まれらしいな。何日生まれだ」
「え、え~と、7日ですが、その日は・・」
「なんだ、その日は嫌そうだな。じゃあ、7日が嫌なら7月10日に美佳と俺と一緒に祝うぞ」
「・・え」
修二が私を見てる。私も驚いてる。
私はチイちゃんの頃の修二に言った。
『10日にキミもうちにおいで。ダイ兄、ボク、チイちゃんの3人のお祝いをしよう』
けど、ダイ兄には私がチイちゃんにそうやって誘ったこと言ってない。
なのに同じこと言ってる。やっぱり私の自慢の兄貴だ。
大切な修二に、欲しい言葉をあげてくれた。
「修二、嫌か?」
「嬉しいです。大歓迎です」
「おいおい、ダイ兄、10月生まれの俺だけ仲間外れかよ」
「ハル、お前の誕生日なんかどうでもいい。それよか今年は修二の分までプレゼント用意しろや」
「へいへ~い」
修二が本当に嬉しそうだ。
ここにきて、修二と兄貴達を会わせて本当に良かったと思える。
次の約束のようなものは6月末の週末。
ダイ兄の同僚にカラオケで歌いたい人達がいて、修二のバイト先に数人で行く。
ハル兄もゼミの親睦会があるから、この機会に修二のバイト先を使う。
すると私も呼ばれた。修二が同じ日にバイトに入る。仕事が午後8時半まで。
だから私も出向いて4人で何か食べようってことになった。
私が返事する前に、修二の方が食い気味にOKした。
むっちゃ嬉しそうだ。
ただ、このあとシスコンブラザーズは、修二に向かって「美佳とは、節度ある交際をだな・・」と延々と説いていた。
最後が台無しだ。




