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傷だらけになった心の隙間を埋めてくれた人  作者: #とみっしぇる


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13 ハル兄と修二の兄は同級生だった

日曜日は家でぼ~っとして過ごしてる。



昨日、家に帰ってから、サクラコにLIMEした。修二とチイちゃんが同一人物だと本人にも確認を取ったと。


なぜ『修二』が『チイちゃん』だったのか、なんてことない理由だった。


私のクラスには「シュウジ」がふたりいた。前の年からふたりはクラスが一緒。


だから、大きい方がダイちゃん、小さな修二が『チイちゃん』だった。


そんなことも知らないうちに離れたのに、よく仲良くなれたよね、私達。


ただ、一点だけ気になった。今までサクラコは、『修二』をよく知らなくて、『チイちゃん』とは疎遠になったと言ってた。


けれど私が修二とチイちゃんが同一人物だと知ったこと明かしてから、色々と修二のこと教えてくれた。


なんで隠してたんだろ・・



ま、修二との本格的な絡みの起点がバカげた告白だから、この関係がどうなっていくのか分からない。


ただ、昨日は嬉しかった。


修二の笑顔よりも、初めて見せてくれた少し怒った顔が頭に浮かんでくる。


前に何か足りないと思ってたのは感情の起伏だったんだろうか。


本当に私の言葉で心が揺れたんだったら・・



昨日、家に帰った直後から過保護な兄2人の尋問が始まった。デートしたクラスメイトの男って、どんなやつだって聞かれた。


心配してくれる兄貴達を見て、頭に浮かんだことを素直に口にした。


「普段はおちゃらけだけど、私より大人。ダイ兄みたいに優しくて、ハル兄みたいに頼れる人」


そしたら兄貴2人が、どっちの兄が私の中で評価が上なんだって口論を始めた。


私が知ってる家庭は平和で暖かい。



日曜日の昼過ぎ。ハル兄に聞きたいことあって、一緒にお茶飲んでる。ダイ兄は彼女さんとデート。


ハル兄は私と5歳差。修二と折り合いが悪いらしいお兄さんも、5歳差だったはす。


私と修二の小学校時代の絡みは小4の春だけで2か月未満。


けどハル兄は当時は中3。修二のお兄さんと同学年だから、知り合いだったかも。


「ねえハル兄、クラスメイトに、引っ越す前のハル兄の同級生の弟さんがいるんだよ」


「へえ~、名前は分かる?」


修二の兄のフルネームを言った。名字は当然、一緒だろう。下の名前は修二とお父さんの話を盗み聞きしたときに覚えてた。


「・・ケンイチか。中2のとき同じクラスだったアイツだ。ちょっと待ってろ」


小学校の卒アルを見せられた。小4時代のチイちゃんと、あまり似ていない男子が写ってた。


「そこまで似てないかな~。どんな人だったの?」


私の質問なら何でも答えてくれるハル兄が、言いよどんでる。


「・・美佳、お前と、コイツの弟って仲いいのか?」

「うん。すごく優しくて、みんなに好かれてるよ」


「え、好かれてるのか?」


「うん、人が困ってたら率先して助けるし・・。実は私も最近助けられた」

「・・そうなのか」


なんかハル兄の雰囲気が普段とは違う。


男子と仲がいいってだけで、普段なら過保護モードに突入する。けど今は違った意味で渋い顔だ。


「中2のとき、その弟君・・修二だけ家族と離れて、こっちの県に来たんだって」


「じゃあ、兄と弟で一緒に暮らしてないんだな」

「折り合いが悪くて、そうなったって聞いてるよ」



「多分そいつ、兄貴にシカトとか家の外に放置とかって形でいじめられてたはずだ」


「え・・」


「過保護な母親がいるって話で関わらない同級生も多かった。俺は体育祭の委員会が一緒で話してみると悪いやつに感じなかった」


「え、まともな人間が、なんで・・」


「俺に5歳下に可愛い妹・美佳がいるって教えたら、あいつも弟がいるって言ったけど・・」


チイ兄の目が怒りに燃えてる。


「弟なんてストレスを発散する道具。どう扱っても母親は自分の言い分しか信じない。だから自分が正しいって言いやがった」


頭が真っ白になった。


「弟にどんな仕打ちをしてるか、次から次に話し出した。気持ち悪くなって、気が付いたら、そいつを押し飛ばしてた」


「そんなこと、あったんだ」


「アイツは机に引っ掛かって派手に転んで、親を呼ばれた。覚えてるか」


そういえばと思い出した。


ハル兄が同級生と喧嘩して相手の母親が出てきたとかで、中学校にお母さんが行った気がする。


「もう学年末の3月くらいだったよね・・。お母さん、学校には呼ばれたけど、帰ってきたらハル兄に『アンタ悪くない』って言ってた気が・・」


「よく覚えてたな。母さんも同級生も、俺は悪くないって言ってくれた」


それからもハル兄の話は続いた。聞いてて胸が苦しくなった。


修二の兄は胸を張って言ったそうだ。殴ったら父親に怒られるから、やってない。怪我させなければ何しても無罪だって。


その時って私は小3。修二と同じクラスになって初めて話す1ヶ月前だ。


私は喉がカラカラに乾いた。


「修二に、そんな過去がある感じがしない・・。とにかく前向きで、とにかく私に優しくて・・」


「まさか、昨日のデートの相手ってアイツの弟か?」

「・・うん。すごく楽しかった。7年前、引っ越す前に言った言葉も覚えててくれた」


笑えなくなった私を見て、ハル兄が考え込んだ。


自分を落ち着かせるためにお茶を飲み干した。


「美佳、その弟君は常に笑顔なんだな・・」


付き合っていくなら注意点がたくさんあるって、静かに言われた。


「俺が知ってる範囲だけど、そういうやつって、対人関係が両極端なんだよ」


片方は、家族のせいで他人まで恨んでて、笑顔で人に近付いて騙すチャンスを窺ってるやつ。


修二みたいに利益より損を取るやつは、善人になるため逆境の中でも努力できる人。



ハル兄にそう言ってもらって、少しだけ心が軽くなった。


ただ、浮かれた気分も半分くらい吹き飛んだ。

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