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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
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7.魔術について

更新です。

さて、歴史学の授業が終わって、皆と昼飯を食い終わったところで3限目は『魔術学』の授業だ。


「こんにちは!皆さん!魔術学の授業担当のエリカです!今年度もよろしくお願いします!」


チャイムが鳴るのと同時に勢いよく入ってきて、流れでそのまま自己紹介を敢行したのは、我らが2年2組の副担任エリカ先生。


昨年度の学院の魔術学なんて最終学期の授業しか受けてないからそこまで思い入れがある訳でもないのだが。それでも、あの濃ゆい春休みを挟んで尚、彼女の授業は面白かったと思えるほどには記憶に残っている。


そもそも魔術学とは何なのか。これはまあ先述の通り、魔術に関するアレコレを分かりやすく、俺のような凡人にも理解出来るぐらいにマイルドにして学ぶ学問のことだ。


まあ、これはあくまで魔術学基礎の内容なんだが。学院では1年生の夏休み前にはこの段階を修了し、1年生の二学期からは術式の応用の段階に入る。


「昨年度の復習の前に!魔術とはなんなのか、忘れてる人がいると困るので、ざっくりと説明します!まず魔術とは・・」


魔術。誰が言い始めたか、神の模倣。そう呼ばれるこの技術は、体内にある魔力をインクとして『魔術言語』という特殊な文字を描き、それを『術式体』という特殊な文体で現実世界に表出させ、円環の形である『魔術陣』の形に整えることで発動する奇跡の技である。


何故円の形なのかにもしっかりとした理由があり、そうした方が現実世界への干渉力を高められるからである。

円とはすなわち終わりの無い図形であり、その特性を利用することで魔術陣が大気中にある魔素(大気に漂う魔力の気体)に解ける時間をある程度先延ばしにすることが可能になる。


また、魔術陣にも描き方があり、基本的にはいくつかの円が重なっているように描かれることが多い。

どんな文言を魔術言語で描くのかは属性ごとによって変わるため、この場合は割愛しよう。


魔術属性。全ての人間に対して、生まれる時・・否、生まれる以前から、神による神託によって決められる、本人が使える魔術の属性のこと。


基本七属性(オーソドックス)と呼ばれる、使い手の人口が他の魔術に比べて比較的に多い、『炎、水、風、岩、光、闇、召喚』の七属性を起点として氷や雷、珍しい物だと血液や鏡などに派生したりすることも確認されている。


大抵の者は1つしか属性を持つことが許されないが、極稀に2属性以上を持つ者が現れたりすることもある。具体的には某エルフの第二王子とか。


ここまでが、『統一戦争以降』のざっくりとした魔術についてだ。

統一戦争よりもさらに昔。この大陸ができた頃(と言われている)の時代には、魔術にはそもそも属性という概念が存在しなかった。


俗に言う無属性魔術である。そこから、統一戦争の直前期までの間にざっくりとした属性という概念が生まれ(何故生まれたかは不明。神々の加護とも言われているし、自然現象の模倣をしたとも言われている)オーソドックスなる物の分類が発達していった。


所謂魔術の基礎的な部分がこの時にできたわけだ。そして、統一戦争時代。それまで使い手によってどのように発動させるかなどで個人差があり、こと戦争においては扱いにくい道具のような扱いを受けていた魔術・・・いや、確かこの時は『奇跡』や、『道術』とか呼ばれてたか?・・・はこの時代でその見解が一新される。


まず魔術陣の正式な描き方の取り決めが行われ、それまで横列や縦列、場合によっては宝石なんかも利用されていた魔術陣の形が『円形』に固定される。それから、『魔術言語』と『術式体』の開発。各属性の細分化が行われ、『奇跡』を運用する技術は飛躍的に向上した。


したがってその類似性から、人々は神が扱うとされている権能。魔力により自然の法則を生み出す『魔法』という力にあやかり、それに似たことを技術でもって行うということで、『奇跡』に『魔術』という名をつけた。


つまるところ、現代で言う魔術とは、戦争に際して、人々によってその技術を誰でも使えるようにという願いを込められ、開発された物であるため、非常に体系化されており、言ってしまえばわかりやすいのである。


戦術的に、不明さによって不意を突くことよりも、大人数で一気に手軽に発動できる方が優位だってことに気付いたんだろうな。こと統一戦争においては、大陸大戦と言えるくらいには大人数で行われていたわけだし。


そう考えると、歴史学ともかなり繋がりが深いんだよな魔術学。無論、言語学とも繋がってるし、算術学だって歴史の偉人によって開発されたから今こうやって俺でもギリギリわかるレベルにまで、算術という学術が出来た当初よりは簡単になっている訳だし。


歴史は偉大なり。全ての学問が歴史に繋がっていると言っても過言では無いのだろう。


とかなんとか考えている間に、予鈴が鳴り響く。昨年度の復習をたっぷり50分かけて行い、残りの40分で高度な魔術言語と術式体の解析and読み込みを行って、その日の魔術学の授業は終了した。


四限は魔術薬学だったため割愛。俺とダバーシャの制服のブレザー(ダバーシャはブレザー絶対着ない主義なためワイシャツ)が少し焦げたくらいで特に何も起きなかった。





その後は、俺たち2人は修練場でエイスたちを待ちつつ戦闘訓練。今日やるのは魔術を使わない、技量と体力、膂力のみの戦闘だ。


「準備はいいか?」


「いつでもOK」


「ならば・・」


「「始めよう!」」


互いに同時に発した号令と共に俺は後ろへ下がり、ダバーシャは前、即ち俺へと突貫してくる。

数瞬の後、互いの持つ刃と刃が激突。木剣故火花が散ったりはしないが、鈍い音が修練場に鳴り響く。


ダバーシャが槍を使うとリーチや身体能力の問題から俺が圧倒的に不利になるため、今回奴には剣を使って訓練してもらうことにした。

その方が互いのためにもなるしな。俺は単純に俺自身のスキルアップが。ダバーシャは普段使わない武器でもってより近くの状態での接近戦に慣れることが出来るという、我ながら素晴らしい訓練だ。


と、最初は思っていた。


「うぉっ!?」


目の前ギリギリを掠めた木剣の刃を仰け反りで避け、続く流れで放たれた蹴りをバックステップで距離をとる事で凌・・ぎきれねえ!!


「チィッ!」


咄嗟に左手に持った木刀を逆手に持ち替え、追い縋ってきた蹴りを受けつつさらに後退。

それを視認するよりも先に、ダバーシャは振るった体制から強引に木剣を引き戻す。


再度の横薙ぎが左目の視界に入った瞬間、俺は右腕を前に振るう。攻撃すると言うよりは合わせるように、その手に握った木刀を打ち付け、木と木のぶつかる小気味いい音が鼓膜を揺らす。


次は何が来る!?と、そう思ってる暇すらなく、思考の途切れ目。空白の合間に迫ってきていたのはーー顔面。


鈍い音が額から鳴り、頭を、視界を、世界が揺らす。否、世界では無い。揺れているのは俺自身だ。慌てて視界を合わせようとかぶりを振れば、その隙を穿つように、膝が顎を目掛けて強襲してくる。


木刀と腕を十字に構えて即席の防御とし、ダバーシャの膝がたっぷり1秒かけてそれを砕いたのを思考に収めつつその場から離脱。地面に予め突き刺していた木刀1本の場所まで移動し、引き抜いて、先程までダバーシャが居た場所を見る・・って居ない!?


「遅いぞ」


瞬間、側頭部を木剣の柄頭が襲う。まるで壁に頭が引っ張られるような錯覚さえ覚えるほどの勢いで身体が吹き飛び、しかしてなんとかその挙動を制御しようと三半規管と運動神経、脳の全てを唸らせて壁に激突する直前で停止。


手と顔がすごいことになっているが気にせず、今度は正面から迫ってくるダバーシャに対してこちら側から木刀を振るう。何の変哲もない袈裟斬り。それに対して行われたのは、達人的な技巧による1分の狂いもない受け流し。


両者の、後ろから前への体重移動と木剣の腹。木刀の、木剣と比べての細さを十全に生かした、袈裟斬りに対しての完璧な斜め受けによる流し技。


自分は本当に木刀を振るったのかと誤認させられる程の手応えの無さを噛み締めつつ、返す刀で俺の身体はぶった斬られた。


「60戦2敗58勝」


「クッソが・・また負けたぁ・・・!」


「じっとしていろ。手当する」


炎魔術ーーー『燃える翼の一撫でフェニックス・ストローク


赤色の魔術陣がダバーシャの右手に展開されるのと同時、その手を炎が包み、まるで翼のような形を形成。俺の顔面と手がソレに撫でられた瞬間、負っていた傷が一瞬で完治した。


完全に治り、血も流れなくなったことを確認して、俺はダバーシャを睨む。

槍が達人級だから剣はあんま使えねえのかなって思ってやらせたら普通に達人みたいな動きしやがるし、こっちの攻撃はほとんど受け流されるし、挙句の果てには高度な魔術もちょちょいのちょい!


天才か己は!そういや天才だったな畜生!

のクセ努力もするから手に負えねえぜ。つーか途中からほぼ格闘戦じゃねえか!剣を使えよ剣を!


最初の一戦目で速攻俺の一刀流の技巧に限界がきたから、そこからしばらく本業の二刀流でやってたけど、全く勝てなかった・・。俺二刀流なのに手数でゴリ押しされて負けてる・・。


「ぃゃ、でもあそこで腕を・・、若しくは脚・・?」


だが、まだ諦めちゃいねえぜ俺はよォ!こうなったら負けず嫌い全開だ!いくら泥臭かろうと勝てばいいんだよ勝てばなぁ!


「よし、ダバーシャ!もう1回だ!フルスロットルで行くぞ!」


「あぁ!期待しているとも我が友よ!」


「始めだァ!!」


先ずは開幕速攻!今回は俺から攻めをしかけ・・


「はいそこまで」


「ブッ!?」


「む・・」


雷光を眩く反射する金色の髪が揺れ、俺の顔面に掌底をダバーシャの眼前に氷剣を突きつけて両者を止める。何事かと思って、遮った下手人を見れば・・


「集合場所についても中々来なかったから何事かと思ってここら辺まで来たら、修練場で木刀での一方的な殺し合いをしてる奴らがいるって言われてね。悪いけどこの場は収めてもらうよ。」


「は!?エイス!?何で止めたんだよ!!」


「そうだ。俺達はこれからもう1戦・・!」


「2人とも・・」


エイスの身体から冷気が迸る。そこでやっと色々と冷えたのか、俺は正気を取り戻した。どうやら、負けず嫌いがたたって戦闘狂のようなことになっていたみたいだ。


ていうかエイスさん。あの、顔が怖いんですけど。てか、その手は一体・・俺の見間違いじゃなければ魔術陣・・それも、雷魔術のような・・。


「今日の予定、まさか忘れたとは言わないよねぇ・・?」


「ひっ!?」


喉が引き攣る。迸る冷気によって気温は下がるばかりだと言うのに、俺の背中からはまるで灼熱の太陽の下にいるかのように滝のような汗が流れていた。


「これは立派な大遅刻だよねぇ?・・うん。・・あぁ、やっぱりそうかァ。」


マズイ、遂に1人で会話始めやがったぞこいつ。って!目付きが変わった!?


「それじゃあ、お仕置きしないとだなぁ・・・!」


「あこれマズ・・」


「もう遅い」


雷魔術ーーー『放たれし雷吼シューティング・ハウル


「ぎゃああああああああああ!!!!!」


直後、俺の視界は閃光に包まれた。


休日なのに遅れてしまった・・申し訳ないです。

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