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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
5/93

5.世界の形 Part1

更新です。

「ゔ・・あぁ・・・」


一限、算術学の地獄を乗り越え、太陽の下に出た吸血鬼の如く悶えながら次の授業の教室へ向かう。


あの先生なんであんなテンション高いんだよ・・朝一のしかも今年度最初の授業がアレとか・・もしかして今年度は厄年か?


「・・はぃ、それじゃあ、歴史学の授業を・・はぁ、やるぞ」


とか考えつつ教室に入り待っていると、気だるそうな顔をして、2時間目の歴史学担当であるフィロス先生が教室に入ってきた。


「今日は・・統一戦争後の国々の地理と簡単な概要の説明を・・していく。昨年度のざっくりとした・・復習なので、覚えてる者も、多いとは・・思うが、改めて、今日、学び直して・・ほしい」


それでは先ず七国の概要から説明する。と、そう言って、フィロス先生は黒板に絵を描き始める。

円形のピザを綺麗に7等分し、円の中央でそれぞれの線が交わっている箇所を再度円で囲んで終わり。


「知っての通り、上が北で・・下が南だ」


ちなみにこのフィロス先生なのだが、歴史オタクとして非常に学院内で有名な先生である。・・・つまりはどういうことか。


「統一戦争後、勝利した七つの大国の王達は魔術的協定を結んで大陸をきっちり7等分し、それぞれの領土にした。更に、統一歴元年に開かれた七大国国王会議で七大国不可侵条約を結び、それぞれの国への領土侵犯等を行えないようにした。また、同会議で七大国平和通商条約を結んで国交を正常化。現代まで続く貿易網の基盤がこの時に形成された。更に翌年には七国合同軍備縮小宣言で各国の騎士団や魔術師団、兵器の数が縮小され、同年、七大国不戦条約(KADBKMB条約)を結び、二度と先の大戦のような悲劇を起こさないことを誓った。その証明に、不戦条約の横の記号は統一言語に直した時の各国の王の名前の頭文字をとって着いている。まあそのまま使う人は少ないし基本的には不戦条約で通じるため、豆知識として覚えてくれ。そして次に・・」


授業が始まると、物凄い早口になるんだよこの先生。よく聞けば凄い分かりやすく大戦後の大まかな解説してくれてるって分かるんだけど、早口すぎて基本的に生徒達からは半分くらい聞き逃されている。


俺も最初来た時はビビって3分の2ぐらい授業内容聞けなかったからな。解説する気あんのかよって感じだ。しかもここで言ったことがテストに出ることもあるため、一部の人達からは物凄い嫌われている授業でもある。俺は好きだけど。


何だかんだ早口なだけで、話してることはわかりやすいからな。頑張れば聞き取れるし。聞いて分かろうとしないやつは理解を放棄しているだけって訳だ。


「ふぅ・・」


流石に捲し立てるように話したため疲れたのか、フィロス先生が小休止を挟もうと息を吐いた次の瞬間。教室内の生徒のほとんどが、物凄い速度でノートにペンを走らせる。

フィロス先生の特徴として、早口の他にもう1つ挙げられるのが速記だ。彼は歴史の話になると話すのが早くなり、書くのも速くなるため、生徒達は話すのと同じ速度で黒板に書かれる先生の文章を、彼が休んでいる間に書き取らなければならないのだ。


もちろんそれは俺も例外では無い。そして、いい加減書きすぎて指が痛くなってきた頃に、また先生の話が始まるのだ。

幸い、今日の授業は各国の特徴説明だけだったため、昨年度書いたノートに付け足すだけに留めたためそこまで指を痛めずに済んだが、これが普段だと授業中に指を吊りかけることもザラにある。


別の意味で算術学と同じぐらい過酷な授業であると言えた。


閑話休題。


折角先生が各国の説明をしてくれているため、俺もノートを見て振り返っておくべきだろう。


先ず一国目。

7大国の中で一番北に位置する国。

【巨神国家フォグノース】


「フォグノースという名前自体統一言語に直している言葉であるため、元の言葉にして国名を言うのならば『フォカ・ノロウル』だろう」というのはフィロス先生の談だが、まあフォグノースの方が既に馴染んでるし知識として覚えておく以上の価値は無いため今はフォグノースと言っておく。


まずフォグノースの一番の特徴と言えばやはり巨人族だろう。なんでも、国名にも入る、『巨神』はフォグノースに伝わる神話の中の神の異名であるとか。


まあそれはいいとして、巨人族。ただの人間を数倍ぐらい拡大した感じの人々であり、平均的な身長は確か3〜5メートル。でかいのだとその4〜5倍の大きさの者もいるらしい。現に、当代のフォグノースの副王様は身長が25メートル、横幅が10メートルと、歴代の巨人達の中でも特別でかい方なのだとか。


そんな人間がいるなら会ってみたいが、後でシャールヴィに聞いたところ、滅多なことでは会えないとのこと。ただ、あいつは会ったことがあるらしい。

なんでも王城には彼のための特別入口が作られたとか、そんな話もある。


閑話休題。


とにかく、フォグノースと言えば巨人という種族が人口の半数を占めているという話は有名だろう。

そのおかげか、フォグノースは鉱山資源の発掘を他国と比べて容易に行うことが出来るため、今この大陸で流通してるダイアモンドやルビー、魔鉱石なんかは大体フォグノース産だ。


また、巨人関連で言うともう1つ。一年に一回。確か冬頃に巨神祭(ラグナロク)っていう祭りがあったはずだ。ラグナロクの成り立ちは、フォグノースに伝わる神話において、いずれ来ると信じられている終焉の時に起こるとされる超大規模な巨人達の暴走現象を抑えるため、適度に彼らに暴走の発端となるようなストレスの発散をしてもらおうっていう目的からだった思う。


つまり毎日国の労働力として多大な功績を残してくれている巨人に一年の感謝を伝える日であり、それと同時に巨人からも平和な国土と魔術の知識を授けてくれる人間へ感謝を伝える祭りでもある。


・・けど、後でシャールヴィに聞いたら、これはそういう趣旨と言うだけであり、現在はその趣旨はあまり気にされておらずみんなで楽しむなんかでかい祭りみたいな感じになっているらしい。


まあでも、統一戦争以前から続いてる点は素直にすごいと思う。今回の暴走事件はこの時期から外れてるし、ラグナロクのほとんど直後から始まってる事件だから多分祭りとの関連性はないんだよなぁ・・それこそ本当に終末の時とかだったらどうしようって話なんだが・・今考えても仕方ないか。


あと、フォグノースは常に冬に近く、1年を通して気温が低く湿気のある国だったりする。だから作物はあまり育たない。育っても芋とかそれくらいだな。


因みに、湿気が強いっていうのにもしっかり理由がある。というのも、フォグノースの国土をそのまま北にずーっと進んで行くと、デカイ霧の塊みたいなのが見えてくるんだ。その先は神域。所謂神々が住まう所と言い伝えられており、実際、その先に調査に行った人々が行方不明になったり、フォグノースの王様がそこで神と話していたのを目撃したりした人がいたりする。何にせよ、謎の多い土地というのは確かだ。


続いて二国目。

フォグノースの隣に位置する、俺の故郷の国。

【迷宮国家ラビリンス】


フォグノースと同じく、人間が立ち上げた国だが、あっちと違うのは巨人が居ないことだな。ラビリンスの大きな特徴としては、名前にある通り迷宮があることだな。


一口に迷宮と言っても色々なタイプがある。迷路型だったり洞窟型だったり、果ては宮殿型だったり。とにかく沢山あるが、ラビリンスの迷宮はタイプ別にするのであれば国家型というのが一番ふさわしいのでは無いだろうか。


国家型というのは、その名の通り、国土面積の全てが迷宮と化しているタイプの迷宮のことを言う。とはいえそんな迷宮も国も恐らくラビリンス意外にないだろうから、まあ、唯一の型と言っても過言ではないと思う。正直、こんな所に国を作った初代の王様は頭がおかしいんじゃないかと思うが、今はその話は置いておく。


因みにだが、正式な手続きやらなんやらを踏まずにそのまま国土内に入った場合、中でえげつない程に迷う。それはもう死ぬんじゃないかと思うぐらい迷う。が、裏を返せばそれは正式な手続きさえすれば迷わずに王都に行くことができるということにもなる。


その手続きというのが、『迷宮通行許可証』。通称、『アリアドネ』だ。これを持っていれば、迷宮(ラビリンス)内の通行を安全にできることが国王から保証され、五体満足で王都に着くことができるようになる。商人達は大抵持っているんじゃないだろうか。


また、国土がそんなことになっているからか、ラビリンスには王都以外に貴族達の領地が無いのも特徴として挙げられる。即ち、王都以下、迷宮まで全てが国王の管轄ということになっているのだ。


もちろんそれを補佐する門閥貴族などはいるものの、彼らは領地を持たずラビリンス王都の上層にある家で暮らしている。


少し話は変わるが、ラビリンスに大昔から伝わる迷宮には作り手がいる。それが「初代迷宮賢王ダイダロス」。彼が今の迷宮の元となる物作り、代々の国王であるダイダロス王家がその範囲を徐々に広げて行ったことで、ラビリンスは統一戦争を勝ち抜き、七大国に名を連ねることが出来た。


この話が示す事実の1つに、ダイダロスの一族は迷宮を操ることが出来るというのが挙げられる。まあ、そうでなければ『アリアドネ』なんか発行できないから当然っちゃ当然なんだが。


ただ、『アリアドネ』があっても100%安全ってことは無いため、迷宮内を常に巡回する、案内役兼護衛の『アリアドネの赤鞠』という騎士団が存在する。彼らは基本的には行方不明者の捜索や商人の護送等を行う者達であり、俺の父親なんかもここの下っ端に所属している。


そんな迷宮国家ラビリンスだが、主要産業は魔道具となっている。何を隠そう俺の家の「冷蔵庫」や「再暖機」なんかは全部ラビリンス製だ。

何故魔道具なのかと言うと、時折迷宮内で起こる魔力の歪みに引っ張られて、異世界の道具等が出現することがあるのだ。


そういった物の仕組みを解析し、魔術でもって再現する実験を続けていたところ、魔道具の製造技術が進化していき、今に至るというわけだ。ラビリンスじゃあ子供でも簡単な魔道具ぐらいなら作れるからな。俺も作ったことあるし。


今をときめく新兵器、魔導銃なんかもラビリンス発祥だ。まあ魔導銃の詳しい説明は今すると長くなるから割愛するが。


フォグノースと違い、ラビリンスの気候は、国王が迷宮内の空間をいじれるため、作物を育てやすい四季が巡る感じになってはいるものの、大前提として国土面積が足りなすぎるためあまり進捗は芳しくないのが現状である。


また、フォグノースと同じようにラビリンスにも神域はある。というか、国土のほとんどが神域である。即ち迷宮。その迷宮の中において、国王ですら感知できない程の奥深くに、神々は住んでいると言われている。あくまで伝承だから詳細は不明だが。


次いで三国目。

ラビリンスの隣。大陸の東側に位置する国。

【饗祭国家ガネーシャ】


ダバーシャの生まれ故郷であり、おそらく最も神に近い国だ。先の二国と同じく、人間が建てた国であるが、こちらは統一戦争中に独立した比較的新しめの国と言える。


特徴の1つとして、前述の通り、人々と神々の距離が近いところだろう。先ず国王である老賢神王ブラフマーが神の1柱だと言われている。

現に、会ったことがあるダバーシャも「あの御方は神だ」と言っていたため、恐らく本当だろう。


そして、こちらも特徴の一つとしてあげられるのだが、一年に一度、年越しにある一大イベント『饗宴祭』において、ガネーシャという神が降臨し、人々と語らうという催しが行われるのだ。


つまり、フォグノースやラビリンスのように神々が引きこもっておらず、積極的に人民と関わりを持つという点で神と人の垣根が他国と比べて極めて低いと言えるのである。


また、国名の通り年がら年中祭りをしているかのように活気のいい国であるため、王都は毎晩騒がしく、賑やかな所も特徴と言えるだろう。


気候は一年を通して温暖である。故に牧畜が盛んであり、豚や鶏が多数育てられ、農業も盛ん。

この大陸の食糧事情を、一手にとは言わないが担っている国として、かなり他国との取り引きが多い国でもある。


更に言うと、建物・・特に屋根の形も特徴的である。他国の屋根は三角や四角などと角張った物が多い中、ガネーシャの建物の屋根は、遠くから見るとまるで燃えているかのような、先が尖り、側面が丸みを帯びている一風変わった屋根なのだ。


大まかな特徴としてはこんなものだろう。



ちょっと長くなったんで各国解説を2話に分けさせて頂きます。読みにくくなるかもしれませんが、予めご了承ください。

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