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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
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4.戦闘スタイル

更新です

「ぅ・・あ・・・」


あれから数時間後。すっかり日が暮れてから目を覚ました俺は、俺が起きるのを待っていたのか、少し汗をかいた服のままこっちを見る3人に俺が寝てしまってからの話を聞き(俺が起きる直前まで訓練してたらしい。体力バケモンかよ)、取り敢えず誰がどんな戦い方をするかを共有しあった。


「まず俺が、召喚魔術を利用した、限定的に、遠近両方で対応可能な器用貧乏アタッカー。前衛はダバーシャとシャールヴィがいるから、基本は後衛で行こうと思ってる」


こうやって自分で整理してみると、中々にどっちつかずというか、本当に器用貧乏な立ち位置だな。

オールラウンダーと言えるほど対応可能な範囲も射程も広くは無いし、かと言って近接が得意と言えるほど剣術やらなんやらに長けてる訳では無い。


自分で言ってて悲しくなってくるな。


「次は俺かな。俺は雷と氷の二属性持ちで、モズの言葉を借りて言うなら遠近両方に対応は出来ないかな。基本的には遠距離一辺倒だね。その分、火力は期待してくれて構わないよ」


バカいいやがって。近距離対応出来ないとか言うくせして雷魔術の強化でアホほど加速して突っ込むこともあるじゃねえか。そのクセ遠距離火力は学院内でも随一ってんだから手に負えない。


種族特性もあるのか魔力量もアホみたいに多いし、そもそも術式の組み立てや魔術陣の展開量、大きさ、速度のスペックが高すぎる。


恐らく魔術だけで言うなら、学院教師にだって引けを取らないレベルの実力を持っているだろう。エイスとはそういう男だ。まあ、陣の展開速度だけは負けるつもりはないが。


「俺は金髪とは逆に近距離しかできん。遠距離技も使えなくは無いが、威力は期待するな。それに、遠くから撃つより近づいて殴った方が速いだろう?」


戦い終わった後だからか、いつもより少し饒舌になったダバーシャがエイスに続いて口を開く。


なんの神かは分からないものの、何らかの神と人間のハーフであり、半神半人であるダバーシャは生まれつき、その肉体スペックが馬鹿みたいに高い。どんぐらい高いかと言うと、強化魔術を使っていなくても振るった拳が地面を割り、走る速度が鍛え抜かれた駿馬より速いと言えるほどには高い。


加えて、動体視力とか運動神経も抜群に良いため、厄介極まりないことにフェイントが通じないとかいう性質も持ってたりする。また、強化魔術に限って言うならば、恐らくエイスと同程度かそれ以上の実力を持つとも言われている(俺の私見でしかないが)。


実際、俺はアイツが音を置き去りにした場面を何回か見た事があるからな。信憑性は期待してくれ。


「じゃあ最後は僕ですね。僕は基本的には風魔術を利用した、高機動の前衛として戦います。使う武器は主に片刃の蛮刀と、常時旋回させて攻守一体で運用する円形の小盾ですね。遠距離魔術は使えなくは無いですが・・まあ、威力はそこまで期待しないで下さい」


何だろう・・この、圧倒的敗北感。かなり俺と近いバトルスタイルだからか妙に親近感と敗北感が胸中を埋めつくしているんだが・・まあ、それはさて置き。


「めちゃくちゃ堅実というかなんというか・・」


「戦ってた時も思ったけど、ここまで攻防両方で隙のない戦士は、俺は初めて見たよ」


「汎用性の鬼だな」


「そ、そこまで褒められると照れるというか・・」


実際、今回は俺は味方として戦ったから良かったものの、敵として戦ったら非常にやりにくい相手だっただろう。まず遠距離攻撃をしても機動力で避けられ、少し威力や速さを高めようと魔術の発動準備に時間がかかれば速攻でその隙を叩かれる。


よしんばそこから逃げられたとしても、常時旋回している盾が側面から急襲。足止めを食らってる間に倒されるだろうな。逆に盾を何とかしようとしたらそれこそ近付いてインファイトに持ち込むくらいしかやれることが無い。


でもそうすると今度はシャールヴィ自身の速さに着いて行けなくなる。・・これは凶悪だな。

特に盾が敵にとって怖すぎるし極悪すぎる。さらに驚くべきはそんなもんを常時運用しておいて一切疲れた様子を見せないコイツの脳みそだろう。


まあなんにせよ、行き過ぎたオールラウンダーはこうなるという姿をまざまざと見せ付けられた気分だ。さっきの発言と戦いの様子から察するに遠距離戦も、エイスほどは行かなくても俺やダバーシャよりは出来そうだし。







「で?これからどうする?」


取り敢えずそれから、修練場の様子を見に来た教師に「何時までいるつもりだ!さっさと帰れ!(意訳)」と叱られたため、修練場の外に出て一言。


夕飯でも食いに行くかと続けて誘おうかと思ったが、俺がそうするよりも早くエイスが話し始めた。


「もう時間も結構遅いからね。俺は帰って休もうかなって考えてるよ。明日も学校あるしね」


「なら、僕もそうします」


「了解。・・ダバーシャはどうする?」


「俺はもう少しここで槍を振る」


「OK。じゃあ俺も帰ろうかな。・・それじゃあ皆、また明日ー」


「うん、またね」


「さようなら」


「ああ」


四者四様の別れの挨拶が夜闇に響き、該当の横に設置してある、光魔術で稼働する魔道具「街灯」の下を通って寮まで戻る。


その日は、冷蔵庫に保存してあった野菜と肉を軽く炒め合わせた即席野菜炒めと常備してあるパンで腹を満たし、風呂に入って就寝。昼間殆どの時間気絶してたからかしばらく寝付けなかったが、一時間ほどして日付が変わった頃、やっと来た眠気に身を任せて寝ることが出来た。


因みに夢は見なかった。








翌朝、快晴。昨日と同じように高等部二年二組の教室に入り、ダバーシャと少し話した後にホームルームが始まる。


「・・改めて今年度もよろしく。昨年度に引き続き、担任のフィロス・フォン・オフォスだ」


教壇に登って、開口一番そう切り出したのは気怠げな態度を隠そうともしない、フィロス先生。こんな態度だが授業は非常に分かりやすく、生徒人気も高い。

話だけ長い教頭よりもよっぽど生徒達から慕われている。確か歴史学の教師だった筈だ。


「皆さんおはようございます!私も、昨年度に引き続き、このクラスの副担任を行わせて頂きます!エリカ・ル・リュウエンです!よろしくお願いします!」


快活に挨拶をしたこの人は新任のエリカ先生。昨年度から学院の教師になった人だ。名前からわかる通りリュウセンの人だ。確か魔術学の教師だったと思う。学院教師になれるくらいには優秀らしいが、噂では男の趣味が悪く、尽く玉砕してるらしい。


体型は、フィロス先生はガリガリだ。はっきり言って不健康そうな見た目。対してエリカ先生は出るとこは出ている健康的な体付きをしている。ほんと、この人男の趣味意外は完璧なんだけどなぁ・・。


「・・・お前ら、履修登録は春休み中に済ませてあるな?頼むから、済ませてないとか言うなよ・・俺が面倒くさくなるから・・」


当然、春休み中に提出済みだ。そこまで先生方の手を煩わせる訳には行かない。俺は歴史学と魔術学、魔道具学、戦闘学、魔術薬学、召喚魔術学、算術学、言語学の合計8つの授業を取っている。

簡単にそれぞれ解説すると、


歴史学は文字通りこの世界の歴史を学ぶ授業だ。更に、歴史と地理は相関性が高いため、歴史を学びつつ同時に地理も学んでいくという、脳内の記憶領域をえげつなく圧迫してくる。が、流れがわかってしまえば取るに足らず、話の内容も面白いため俺は結構好きな授業だ。英雄譚も沢山聞けるしな。


魔術学は魔術について基礎から応用まできっちり学ぶ授業だ。具体的には術式や魔術の発展体系、術式をどう動かしてどう魔術陣を組み立ててどう発動させるのかみたいなのを学んでいく。


魔道具学は魔道具の作り方について学ぶ授業だ。術式を道具に付与、ないしは内蔵させる方法を学び、それを売ったりなんだりする。俺が物作り好きになったきっかけがこの授業だ。今はどうにかして魔導銃を個人で作りたいと画策している。


戦闘学は読んで字のごとく戦いについて学ぶ授業だ。近接戦、遠距離戦、戦術、剣術戦闘、魔術戦闘等々、戦いに関する多くのことを戦闘のスペシャリストでありプロフェッショナルである教師陣からみっちり叩き込まれる。正直言ってあまり気乗りはしない。


魔術薬学は所謂錬金術について学ぶ授業だ。この薬草をどう煎じてどう魔術加工したらどんな薬を作れるのかなど、どうにかして魔術と科学を絡めて様々な物を生み出そうとする。頭を凄く使うため、俺はあまり好きではない。


召喚魔術学は魔術学を更に応用して、召喚魔術に特化させた授業だ。専門性は高いがその分自分の持つ魔術という手札について理解が深められるため、やってて楽しいのは間違いない。他にも炎魔術学や風魔術学なんかもある。


算術学は数字を扱う授業だ。俗に言う計算術に特化した学問と言ってもいい。生きていく上で役に立つとエイスから絶賛されたため受けているが、正直嫌いだ。いや、嫌いを通り越して大嫌いだ。ややこしい計算式と数字には2ヶ月ちょいで辟易した。


言語学はその名の通り、多言語を扱う授業だ。基本的にはこの大陸にある七つの大国の古代言語と、七大国間で協定を結んで作り上げた統一言語を学ぶ。英雄譚は七大国が今の形になる前(便宜上統一前と呼ぶ)の各国の古語で書かれている場合がほとんどである為、それらを研究するために使えるので俺は好きな学問だ。


まあ以上が俺がとっている授業達の概要な訳だが、この他にも、算術学を応用した数学やら魔術に頼らない自然現象の原理を究明し、未知を探究する物理学、1つの古代言語に絞った、ラビリンス古語学など、その数は多岐に及ぶ。


今日は、俺とダバーシャはホームルームの後に2時限、昼休みを挟んでもう2時限やって終わりだ。


昨日聞いたところによると、シャールヴィとエイスはもう1時限あるとの事なので、2人が合流してから、4人で今週末からの九連休でのフォグノースにおける旅程決めと必需品の買い出し、連携の訓練を進めることにした。


因みに一週間は7日で、週の初めからそれぞれルミナスの日、ウルカヌスの日、ネプチュトゥヌスの日、ケレスの日、プルトの日、ユピテルの日、アポロの日と呼ばれている。このうち、ユピテルとアポロの日が休日であり、それ以外の日は平日となっている。


つまり今日はウルカヌスの日であり、今週のユピテルの日から来週のアポロの日までの九連休でフォグノースの事件解決に行くことになるということだ。


とはいえ、今はそんなことを考えているよりも目の前の授業に集中するべきだ。何せ俺はテストの点数がやばいからな。得意教科でしっかり取れないと最悪留年する可能性もある。


「っし!気ぃ引き締めろぉ・・今日の一限は・・。」


「おはよう!算術学選択の諸君!!算術学担当のガニタム・イヴ・プラブハリだ!今年度一発目の授業、気合い入れていくぞおおお!!!」


・・・終わったぁ。


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