38.図書館で調べ物をしよう!
更新です!大変遅れてしまい、申し訳のしようもございません!流石に年末年始、ゆっくりしすぎましたね。年末はともかく、年始には割と時間もあったのですが、積みゲーの攻略に当ててしまって・・・。
まぁ、過ぎたことは仕方無いと割り切っていこうではないですか!今後はここまで遅れることはないと思います(そう言って過去何回かオーバーしてますが)ので、何卒、拙作をよろしくお願いします!
それでは改めまして、皆様。あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
【⬛︎⬛︎魔法ーーー影⬛︎り】
「っ・・・!」
自分ではない何かへと自分が成り代わっていく、奇妙で不快な感覚が脳裏を這い回る。
常識外ーー否、枠外の力を人の身で扱うことの冒涜さ、凡人の身で使おうとすることの無謀さが、文字通り身に染みて理解できた。
「マジか・・・」
見れば、掲げた右手の指先がーーほんの気にもならないレベルの僅かな時間とはいえーー『黒く』変色している。
『巨人暴走事件』ーーそう名付けられた、神ロキによる大規模なクーデターから、丸1ヶ月。事件の概要が発表された当時の興奮や興味が薄れ、皆が日常へと戻りつつある今日この頃、俺は、ただ一人、事件とは無関係に残された『黒い』余韻と向き合っていた。
「まぁ、そううまい話はねえって訳か」
よくよく考えてみれば、突然、人外の存在に授けられた力をノーリスクで使えるなんて、そんな都合のいい事があるわけが無いのだ。
ましてや、こんな凡人には身に余るほどの強力な力。むしろ、まだこの程度の被害で済んでいて良かったと考える方が妥当だろう。
「ふぅー・・・」
とはいえ、ショックなものはショックだった。今まで、感覚的なものでしか無かった、自分が変わっていく感覚が、こうやって実体化して出てきたのだから、当然だとは思うが。
「どうすっかなぁ・・・」
前途は多難だ。壊れた相棒は直せていないし、未だ持って未知の力の解明も進んでいない。学院の魔術医や、かかりつけの治癒士なども、このような、人が『黒く』変色していく現象や病気など、聞いたことが無いと言っていた。
唯一可能性として有るのは、『魔族』ーー『魔界』に住む、人類とは別種の力を持ち、見た目もかなり逸脱している人々ーーの【黒化】っつー能力が近いらしいが・・・
「んー・・・分からんなぁ」
あんまっつーか、全く見た事が無い以上、なんとも言えねえってのが正直な所だ。
それを言ってくれた治癒士の先生も、その【黒化】がどんな被害を齎すのか、【黒化】した後自分がどうなるのかとかは、何も分からねえって言ってたし。魔術医の先生に関しちゃ、専門外だっつって取り合ってもくれなかったしな。
ただまぁ、魔族関連なら、図書館に行けばワンチャンあるか?【黒化】なんて聞いたこともないけど、ここがこの世界の最高学府な以上は、その名に恥じない蔵書を持ってるだろうし・・・。
「よし!行ってみるか!」
善は急げだ。魔族の研究とかしてる生徒や教師が借りたりする可能性もあるし、早めに行くに越したことはねえだろ。
幸い、今日休日だから、人もそんなに居ねえだろうしな。
ーーー数十分後
図書館棟入り口前には、俺含め四人の青年が集合していた。
「っつーわけで、お前らにも【黒化】ないしは、身体が黒く変色するような病気とか、魔術について調べて欲しいんだ。あと、出来れば人の影に潜むような魔物とか神の伝承についても。・・頼めるか?」
「OK!そういうことなら、喜んで協力するよ。俺も、あの触手について、ちょっと興味あるしね」
美しい碧眼で真っすぐに俺の目を見据えながら、問いに対して快諾してくれたのは、長い金色の髪を無造作に後ろに流した、エルフの美男子。エルフ達の国の第二王子、エイス・ドンナ・ワルドガイストこと、俺の最も古くからの友人、エイスだ。
「右に同じくです!友達のためなら、それくらいどうってことないですよ!」
続けて、丁寧な口調で承諾してくれたのは、まだ若干幼さが残るものの、十二分に美男子と言っても過言では無い容姿をした青年ーー即ち、巨人暴走事件の発端となった領地、フォグノースはフィオトレイ辺境伯領の長兄、シャールヴィ・フォン・フィオトレイこと、我が親友、シャールヴィであった。
「・・・まあ、協力してやろう」
最後に、図書館とは縁もゆかりもなさそうな筋肉と、しなやかさを同時に併せ持つ肉体を携えて、黄金の槍を肩にかけながら返答してきたのは、青く長い髪を雑に後ろで纏めた偉丈夫にして、稀代の英雄、ダバーシャ・バラカ・クシュラパトラこと、戦闘面での俺の第二の師、ダバーシャであった。
「お前ら・・・ありがとな!お前らみてえな友達持てて、幸せ者だよ俺は・・・」
「ハハ・・大げさだなあ、モズは」
「困ってる友達は見過ごせませんよ」
「フン・・さっさと終わらせるぞ」
「あぁ。・・そういや、三人とも急に呼び出しちまったけど、予定とかは大丈夫か?正直、なんの見当も着いてないから、結構な長丁場になると思うんだけど・・・」
「今日は別になんも無かったはずだから、大丈夫だと思うよ。ただの休日だし」
「僕は・・多分何にも予定は無かったと思うんですけど・・・切羽詰まってる課題とかも特にないですし。それに、何か予定があったとしても、最悪セバスがどうにかするんで、大丈夫だと思います!」
えぇ・・・。呼んどいてなんだけど、いい笑顔で何てこと言いやがるんだコイツ。セバスさん・・・どうか頑張ってくれ。この調子だとコイツ多分予定何個か忘れてるぞ。
「俺は修練の時間に間に合えばそれで良い」
「うーん・・微妙なとこだな。ある程度搾りはするけど、あるかどうかも分からん物を探すわけだし・・・」
「時間になったら一旦引き上げようか。また今度、各々で探しても良いわけだしね」
「決まりだな」
「じゃあ、刻限は夕方の6時までってことで。まぁ、そこまで時間かからんとは思うけど、一応その時間になるか、それっぽい本を見つけたらみんなを呼ぶって感じでいいか?」
「問題ないよ」
「僕も異論ないです」
「じゃあ・・解散!集合場所はーーそうだな、1階ロビーの端の方のテーブルにするか」
「OK。じゃあ、良さそうな本あったら、通信機で知らせるよ」
「分かりました。僕もそうしますね」
そう言って、エイスとシャールヴィは早々に、各々が見当を着けた階へと向かって行った。
残ったのは俺とダバーシャの2人だけ。俺の方は、特段何か理由があってここに残った訳ではなく、単純に出遅れただけなため、このままエイス達と同じ様に館内に向かっても良かったのだが・・・。
「少し付き合え」
アイツらが居なくなってから開口一番。ダバーシャに腕を掴まれ、そう言われた。
「ん?どうした?」
「教えろ」
「は?」
教えろ?え?何を?何を教えればいいんだ?
「黙るな・・!何か話せ!」
「い、いや、話せったって、急にそんなこと言われても・・・っつーか、教えろってなんだよ?何教えりゃいいんだ?別に今んとこ分からねえようなこと無かっただろ?」
「・・・チッ。流石にダメか」
「あ?何だテメェ?ソレが人に物頼む態度かよ?」
「貴様に察するなどという高尚なことをさせようとした俺が馬鹿であったわ。すまんな」
「いいぜ?喧嘩打ってるってんなら買ったろうじゃねえか。あぁ?」
「フ・・貴様ごとき凡夫にわざわざ喧嘩を売るほど俺も暇ではないわ。疾く失せよ。・・さっさと、目的の本を探してくるがいい」
「・・・・・」
フム・・・カマかけるような挑発にも乗ってこなかったし、ワザと見える位置で腕輪に手ぇ突っ込んだりしても見て見ぬふりするみてえな感じだったところを見るに・・これは本当に、喧嘩を売りたいわけでは無い・・のか?
いや、だとしてもあの態度はねえとは思うが・・・まぁ、それは素だろ。多分。普段からこういうやつだったって言われりゃ、そんな気がしないでもねえしな。てか、普段からこんな奴だしコイツ。
「何だ?何を見ている?」
・・でだ。ここで気になるのは、こいつが俺に何を教えて欲しかったのかって所なんだが・・・まぁ、大体の見当はついている。というか、察した。本当に、不器用っつーかなんつーか、良くも悪くも分かりやすすぎるんだよな、コイツは。
「まぁ良いか。しょうがねえ、教えてやるよ。俺としても、このままお前に戦力外になられるのは御免こうむるし、さっさと探しに行きたいからな」
「・・・何を言っている?」
「何って・・分かんねえんだろ?図書館の使い方。だから俺に聞いてきたんじゃないのか?」
「戯けが!俺が一言でも分からないなどと言ったことが・・」
「さっきからチラチラと係員に向けている気配、不自然なほど周囲・・特に、エイス達が上がってった階段を見つめる視線。そんでもって、俺と話している間も頻繁に凝視している館内図。ホント分かりやすいよな、お前は。・・てか、これで利用方法分かるって言う方がどうかしてるぜ?」
「ムゥ・・・」
「大方、エイスに尋ねたら変に煽られるかもしんねえってんで、俺に聞いてきたんだろ?図星か?」
「その気色悪い顔をやめろ愚物。吐きそうだ」
えぇ・・俺今そんなに変な顔してたか?ただめっちゃニヤケ顔で話してただけなんだけど・・・。
「それと、貴様のその考えは図星からは程遠い。俺は元々、赤毛に問おうとしていた。まぁ、薄情にも、奴は俺を見捨てて上に行ってしまったがな。故に、仕方なくだ。仕方なく、俺は貴様に問うことにした。それだけだ」
「はーん成程・・・因みに、何で俺が仕方ない枠なのか、聞いてもいいか?」
「貴様は、金髪ほど酷くは無いが煽りはしてくるだろう?故に、あまり問いたくはなかったのだ。今だって、そのような醜い顔を見せつけてきているしな」
「いやいや、そんな・・ねぇ?俺がいつ、そんなこと・・・」
「見苦しいな」
「クソっ!事実だから何も言えねぇ!」
実際、ダバーシャがああいう聞き方しないで、普通に聞いてきてたら、煽るか、さっきみたいに表情筋が不自然に吊り上がった感じの顔で教えてただろう。それは間違いない。
まぁ、仲が良い故の戯れだと思って・・ね?ダバーシャだって、俺が分かんねえ事聞いたら少なからず煽・・いや、コイツは顔とか行動には出るけど、煽ってきたりはしないな。多分。
もうそろ友達んなって半年なんだ。コイツがそういうのをしなさそうな奴だってことぐらいはよく分かってるさ。じゃなきゃ冗談でも第2の師なんて呼ばねえよ。
「・・・で、だ。そろそろ本題に入るか」
「あぁ。いい加減参加しなければ、後で金髪がうるさいだろうからな。それは、何としてでも避けねばならん」
「そうだな。・・そんじゃあ、図書館の利用法についてだが・・・つっても、そこまで複雑な感じじゃあ無いぜ?ただ、1階2階3階4階・・って感じで、14階まで、ジャンル毎に本が所蔵してあるだけだ。今回の場合は、『魔族』っつー種族と、それの持つ、『黒化』っつー能力について調べたいから、『自然科学』・・つまり、中に『生物』ってジャンルを内包している本を多くおいてある5階か、『歴史』ってジャンルの本が置いてある3階、後はそれについてのより専門的な本が置いてある11・12階を重点的に調べりゃあ良い・・・って感じだ。ここまでで、なんか質問あるか?」
「フム。では・・・『より専門的』な本が11・12階にあるのはどうしてだ?専門的とは言え、同ジャンルならば同じ階に置くのが筋だろう?」
「あー・・なんつったらいいか・・強いて言うなら、11~13階は1~10階の内容を、より専門的・複合的にした、本ってよりかは論文に近い物が置いてある階なんだよ。例え同ジャンルだろうと、論文と書籍ってのは全く違う物だろ?
でもって、書籍っつーと小説とか、文庫本、物語なんかも含まれるが、論文にそう言うのは無い。
必然的に論文は書籍よりも少なくなる。てことは、論文と書籍を分けて置いておく方が、書籍の中に論文が埋もれる心配も無いし、論文をジャンル毎に所蔵しやすくもなる。
・・てなわけで、分けられてるってのがまぁ通説だ。本当の所、何でそういう風に分けてるのかは俺も知らん。同じ階で書籍スペースと論文スペースに分けて置けばいい話じゃね?なんて思ったりもするが・・まぁ、どうでもいい話だな。・・・で、今ので、大体質問の答えは終わった感じだが・・納得できたか?」
「あぁ。大体分かった。要するに、論文と書籍は全くの別ものとして置く場所を分割されており、論文は11~13階、書籍は1~10階にあるというわけだな?」
「まぁそんな感じだ。大体合ってる。・・他になんか質問あるか?」
「そうだな・・では、14階はどうなんだ?1〜10階までは書籍・・貴様の先の言い方から察するに、そこまで専門性の高くない、言わば入門書や、小説などの文庫本などが置かれたりしており、11~13階には、それらをより専門的・複合的に研究した論文が置いてあるのだろう?普通ならばそこまでで良いはずだ。が、この図書館棟とやらにはまだもう一つ、上の階が・・14階が存在しているではないか。では、そこには何がある?入門書も専門書も、論文も置いていないのであれば、そこには一体、何が所蔵されているのだ?」
「分からん」
「・・・は?」
自身の問いかけに対し、清々しいほどに投げやりの即答を返され、面食らったようにダバーシャは閉口した。当然だろう、それまでつらつらと図書館のシステムについて話していた俺が、急にたった一言。それも、質問に対する答えにすらなっていない言葉だけで返答してきたのだ。疑問符しか浮かべられないのも仕方ないという物だ。
俺だって、本当はしっかりとダバーシャの疑問に答えてやりたいし、答えるべきだとも思っているのだが、如何せん、こればっかりは本当にこう答えるしかないのだ。
何せ、俺自身も、「14階に何が所蔵されているのか」なんざ、分かっていないのだから。
「わ、分からんというのは、つまり・・その・・・文字通りの意味でか?」
珍しく、若干タジタジの口調で、再度ダバーシャが問いかけてくる。
「あぁ。文字通り、何にもわかっちゃいねえ。前にそれとなく図書委員の奴らや、係員にも聞いてみたが、全員、何も知らないの一点張りだった。巷じゃあ、アソコにはなんか、曰くつきの呪物だとか、読んだだけで精神に異常をきたすほどの呪いの書とかがある・・なんて噂されてるが・・実際の所どうなのかは誰にも分かっていないって話だ。そもそも普段は、14階自体が、いくつもの鍵での施錠と、校長が張ったらしい超厳重な魔術結界による封印とかいう、物理と魔術の二重防御でガッチガチに閉められてて、中に入ることすら出来ねえしな。調べるもクソもあった物じゃねえよ」
「ムゥ・・・そうか」
「あぁ。それと、間違っても入ろうとはしねえ方が良い。14階に続く扉のドアノブに手ぇかけた瞬間、一瞬で魔力式超高圧電流トラップと侵入者感知ブザーが鳴り響いて、教員室に知らせが行くって話だ。最悪、身体がしびれて動けないまま教師陣からのキツイ折檻が待ってる場合もあるからな。ぜってえやんなよ?」
「やらぬわ戯け。貴様こそ、随分と罠の機構に詳しいではないか。まさか・・・」
「いや、俺はしてねえからな?変な勘繰りすんのはやめてくれよ?俺は只知り合いに聞いただけだ。それ以上でも、以下でもない」
「フム・・ならば、そういうことにしておこう」
「そういうことにしとくんじゃなくて、そういうことなんだよ。お前ぜってえ変な勘違いしてんだろ。違えからな?俺本当にやってねえからな?」
「そうまで否定されると逆に怪しいな・・・」
「は?じゃあ後どうやって言えばいいんだよ?」
「貴様がどう言おうと全て胡散臭く聞こえてしまうからな・・・どうにもならんのではないか?」
「詰みじゃねーか。ふざけんじゃねえぞテメェ」
本当に、俺はやってないっつの。ただ、侵入しようとしてるところを遠くから見てただけで、断じて侵入なんざしてねえし、なんなら中すら除いてねえよ。
ただ、まぁ、なんて言うか・・・こんなこと、ダバーシャ達に言ったら、それこそ変な勘違いとかされちまうだろうから絶対に言いたくないんだが・・・感じちまったんだよな。気配を。
丁度、俺がまだこっちに来てそんなに日が経ってない時期だったってのもあるんだろう。どこに行くにも緊張して、委縮して、ピンと一本、張り詰めた糸みたいな感じに自分の気を張っていたからこそ気付けたんだが・・・。
アレは多分、『呪物』だとか、そんな生易しい物じゃない。
もっと何か、根源的な・・それこそーー今思えばって話にはなってくるがーーあの時、俺に力を渡してきた『アイツ』や、こないだの事件で会った【神様】達みたいな、超常の存在によく似た気配。
もっと言うなら、俺なんかじゃあ到底測れないような、『枠』の外。『常識』の外に居る奴らから感じる気配に、とてもよく似た気配を感じたんだ。
「アソコにはきっと、『ナニカ』が居る」
それが何なのかも、どういう物なのかも俺には分からないまま、ただ漠然と、まるで神託でも受けたかの様に、その考えは俺の中で確信に至った。
至ってしまったのだ。
図書館棟分類表
1階:総記(図書館学、百科事典など)
2階:哲学
3階:歴史
4階:社会科学
5階: 自然科学
6階: 技術(工学)
7階:産業(農業、商業など)
8階: 芸術
9階: 言語
10階: 文学
11階:1~3階のジャンルの論文
12階:4~6階のジャンルの論文
13階:7~9階のジャンルの論文
14階:特急秘匿禁忌事項につき記述無し
お察しの通り、我々の世界でよく知られている図書館の分類法を参考に・・というかほぼ丸々ぱくって利用しております。




