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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
25/40

25.激突

更新です

「OOOOOOOOOO!!!!」


「ぐっ・・!」


振り下ろされる特大の剣が、その大質量を地面に叩きつける。轟音と共に土煙と瓦礫が舞い、人を叩き切る以前に叩き潰す程に分厚い刃が地面に峡谷を作る。


「如何せん刃が大きすぎる・・!」


言葉とは裏腹にその顔は笑みを形作り、興奮を抑えられないかのように頬を紅潮させる。


思いっきり地面を蹴り、その並外れた身体能力を十二分に活かして巨剣を回避。繋げる動きで大木のようなその足に接近し、取り出した槍を、岩の鎧の接合部を狙って突き出す。


が、


「OOOOOOOOOO!!!!」


効かない。例え神から賜った槍であろうと、それが物理攻撃である限り、この鎧を纏った者には意味を成さない。


故に連続で5度、刃が振るわれる。一刀一刀が死に直結する特大質量による叩き潰し。

ダバーシャは、為す術もなく連続で振るわれるそれらを回避・・しない。


「・・・ふはっ!」


ゾクゾクと背中が泡立ち、手が震える。それは恐怖か?否、否。高揚している。自分は今、死という物が目の前に迫っていることに武者のように奮い立っている。


故に、故に・・!


「滾るなぁ!!」


炎魔術ーーー『三叉振るう(トリシ)は蒼金の神躯(ューラ)


猛りのままに迸る蒼炎が肉体を燃え上がらせ、その手に握った黄金の穂先が三又に変形する。

まるでガネーシャに伝わる神の如く、その身を蒼金に燃え上がらせたその姿は神性に満ち溢れ、その背よりもう一対の炎腕が出現する。


都合4つの腕がそれぞれ握るのは黄金の三叉槍と炎で作りだした槍二本。

生身の両腕で黄金の槍を握り、その後ろに構えた炎の腕で、高音で蒼く染まる炎の槍を持つ。


「ぉぉおおおおお!!!!」


「OOOOOOOOOO!!!!」


異常な膂力を持つ者同士が自身の獲物を振るい、激突させる。


一合目、下から上へと突き上げられた黄金の穂先と分厚い岩剣が、真っ向から激突する。衝撃波と火花が散り、たった一合目で辺りの霧全てが霧散する。


二合目、激突により跳ね上げられた巨剣はその勢いを利用して大きくその腕を回し、横から薙ぎ払うように壁のような刃を叩き付けてくる。

対して、下に押し込まれ、痺れた生身の両腕をすぐさま上げ、三叉槍を再度防御に回すことは叶わない。故に、背後の両腕が動き出す。


現在のダバーシャ程ではないにしろ、かなりの腕力と達人級の槍術を兼ね備えた両腕が振るわれ、横からの叩き付けに合わせるようにその穂先が構えられる。


先の一合目が力と力のぶつけ合いだったのならば、二合目は技と力のぶつかり合い。音すら響かせず、炎の上を岩が通り抜ける。瞬時にダバーシャから見て左側の地面が強烈な衝撃によって吹き飛ぶが、ダバーシャ自身にはかすり傷すら負わせられない。


三合目、大きく隙をさらしたユミルに対し、この一撃のために先の一撃を防御に回していたダバーシャは、万全の体勢で沈みこんだ形から、踏み込み、飛び上がって槍を突き出す。


一拍遅れて踏み込んだ地面が吹き飛び、大気を切り裂いて肉体ごと蒼金が飛来する。

突き出された槍の先。あまりの速度で空気中を移動しているからか、燃え上がった穂先の先端が黄金色に輝いて、ユミルの肉体を貫かんと殺気を滾らせる。


穂先に宿る殺意を直感し、巨体がありえない速度で翻える。流され、大きく左に泳いでいた剣を強引に前に戻し、間髪入れずに剣の腹を穂先と胸の間に差し込んだ。


轟音が響く。鐘に似た、されどそれとは比較にならないほどの大音量がビリビリと大気を震わせ、両者の鼓膜を痛いほど揺らす。が、それでもこの一合は防がれたし防ぎ切れた。


四合目、先程とは違い、胸の辺りを強かに突かれ、押し込まれた身体が後退る。が、それは弱気を示す後退ではなく、次の展開へ繋げるための戦略的後退り。


一歩下がることで穂先と剣の間に余裕を作り、その余裕を利用して大きく大剣を回し上げる。

片手だけで大上段へ構えられた岩の大剣が、瞬く間に振り下ろされる。技もクソもない純粋な腕力と重力を利用した、最初と同じ叩き付け。


山が降ってくる。と、モズならば言うのだろうが、生憎とダバーシャにそこまで詩的なことを言う趣味は無く、今はそんなことを言っている余裕も無い。


踏み込みで飛び上がったため、宙を舞っている現在の自分は、言わずもがな地に足をつけた防御も、受け流しも出来ない状態である。

故に、炎の両腕と槍を交差させ、その中央で黄金の槍を横に構えることで降り落ちてくる山を防がんと全身に力を込める。


これまでで1番の轟音が響く。既に周囲一帯の霧は晴らされ、青空すらも消し飛ばしそうな衝撃波が散って、ダバーシャの肉体は音よりも速く真下の地面へと叩き落とされた。


五合目、再度大上段へ構えられ、今度は両手でその柄を握られた大剣が鳴動する。まるで地震かのように振り上げられた山が震え、外側の要らない装飾。即ち岩壁が剥がれ落ちた。


中から現れたのは赤黒い金属の刀身。ここまでの激突により剥き出しにされた山の中核。

その金属の名は幻緋鉄鉱(アダマンタイト)。またの名を幻緋鉄鉱(ヒヒイロカネ)。この世界における文句無しの最高硬度の自然金属。


火山の噴火ですら破壊出来ず、人の手で鍛えるなど以ての外。・・であると言うのに、振りやすく、剣のように整えられたその剣は人造の輝きを放っている。


山ではなく、正しく剣となったその金属塊が振るわれる。天を切り裂き、霧を絶って、赫黒の刃が下ろされる。


常人ならば、恐ろしいほどのその斬性と質量により、受けた瞬間に死が決定するほどの冴えを尽くされた直下への斬撃。


殺したと、そう誰もが思った瞬間。


「軽いなぁ・・・!!」


振り絞るようなその声音と轟音が空間内を吹き荒れる。突き合わされた槍の穂先と壁のような刃から火花が散り、一瞬の間をあけて・・・空が、割れた。


切り裂かれた青空の奥で星が瞬き、周囲一帯どころか神域全体の霧を晴らす勢いで衝撃波が渦巻き轟く。


叩きつけられた直後。身体中から血を流し、構えていた炎の腕がチリヂリになって尚、ダバーシャは生きていた。

生きて、その瞳に戦意を漲らせ、身体に残る全ての力を込めて、壁へ向かって槍を突き出した。


故にこの拮抗状態が出来る。もはや火花ではなく爆発が巻き起こる程の両者の拮抗は、しかしてその巨体と重力を利用したユミルの方が圧倒的に有利である。


「がっ・・ぐ・・・!!」


炎魔術ーーー『燃える翼の一撫でフェニックス・ストローク


治癒魔術を利用しつつ粘り耐えるが、それでも筋肉の疲労や断裂がすぐに治っていく訳では無い。

故に、徐々に、徐々に、穂先は押し込まれ、赤黒い刃が目の前まで迫って来る。


それでも死ぬまいと、抗い、何とかここから大剣を押し返さんとダバーシャが両手に力を込めたその時。


「よく頑張った!ダバーシャ!」


雷魔術ーーー『鳴王の剛槍ランス・オブ・サンダーキング


側面から雷が轟く。穂先と付き合わせていた剣の腹を的確に穿ったのは、とんでもない速度で飛来した雷の槍。


予想外の箇所に、予想外の場所からの一撃を食らったことで拮抗していた刃が逸れ、地面に落ちる。


「金・・髪・・きさ・・・ま」


「悪いけど、恨み言を聞いてる暇は無いよ」


「あの・・馬鹿・・・は?」


「モズを探しに行こうと思ったタイミングで君の方からとんでもない音が立て続けに聞こえてきたんだ。だから捜索を中断して、君の方へと戻ってきたって訳。・・まあ、案の定とんでもないことしてたみたいだけど。」


「チッ・・・!」


雷を放ち、文字通り横槍を入れた下手人は、その背に壮年の赤毛の男を背負ったエイスであった。忠告するようにそう言って、彼は背負っていた男を地面に下ろす。


「さすがに俺でもこんな大きい相手は無理かなぁ・・・。かと言って怪我人(ダバーシャ)に任せる訳には行かないし・・・」


炎魔術ーーー『燃える翼の一撫で』


「俺ならまだ戦える」


まるで不死鳥のように傷を無くして復活したダバーシャは槍を構え、エイスの一歩前に出る。どうやら、あれだけの怪我を負ってなお、その闘争心には一片の陰りもないようだ。


「・・わかったよ。ただ、真正面から受けたりはしないでね。あくまで回避に徹して欲しい。まだ完全に傷が癒えたわけじゃないだろうしね」


「・・・了解」


止めても無駄だと悟ったのだろう。エイスは諦めて瞑目し、最低限それだけを言ってユミルの方へ身体を向けた。


ダバーシャも、渋々といった様子でエイスの言を了承し、燻った身体に再度火を灯して槍を握る。


ーー決戦が、始まろうとしていた。


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