24.天を穿つ
更新です
炎魔術ーーー『閃焔』
・・・従来の炎魔術ーーー『閃炎』を改良し、魔力消費量を上げる代わりに、射程と貫通力を向上させたフォウル・フォン・フィオトレイの改良魔術
元Aランク冒険者、『閃焔』のフォウルの代名詞となった、強力な魔術。
彼の冒険者時代の殆どを支えてきたと言っても過言では無い、唯一無二の炎魔術。
それが今
炎魔術ーーー『閃焔』×50
自分に向けて放たれた。
「っ!!」
霧が晴れたことで、直線上に正確に相手を捉えることが出来るようになったが故だろうか。先程より正確にこちらを狙った50発全てが完璧にエイスを捕捉し、ちょっと横に回避しただけでは追尾されて全身が貫かれる。
ならば、大きく自分の座標を動かせばいい。
雷魔術ーーー『閃くは迅雷』、『轟雷の経道』
眼前へ伸ばすのは雷の『道』。その上を踏むのは、黄金の雷を纏った自分。この魔術は、予め経路を決定することでその経路上を走る自分の雷魔術を強化する魔術である。
故に、その上を駆けるエイスの速度は・・
「づ!!」
音速を超える。
正しく自分を射出するような速度で走り、経路を決める。向かうは上空。駆けるは迅雷。
互いに中、遠距離戦を得手としている以上、この戦いは上を取った方が有利である。
軽々しく音を超えた反動が身体を苛み、鈍痛が全身を蝕む。が、一先ずはコレで最初の50発を振り切った。
「今度はこっちの番ですよ・・!!」
雷魔術ーーー『雷閃芒』×50
展開したのは、先程の意趣返しとばかりに50の砲門。霧に覆われ、よく狙いは付けられないものの、広範囲を吹き飛ばすほどの威力を1発1発に込めればなんの問題も無い。
一斉掃射とばかりに先程自分がいた場所から逆算し、その周辺を狙った光芒が放たれる。
目論見通り、着弾した光芒は広範囲を吹き飛ばして辺りの神霧すら霧散させていたが、肝心のフォウルの姿は、上から見た限りではどこにも見当たらなかった。
ただ1つ、着弾点から立ち上る土煙の中を除いて。
雷魔術ーーー『雷閃芒』
故にエイスは、立ち込めるその土煙に向けて光芒を発射する。が、それはフォウルに当てるために放ったのでは無い。あくまで、土煙を晴らすために放った物。
が、晴れた土煙の向こう側。そこにも、フォウルの姿は見当たらなかった。
「・・どこに行った?」
辺りに霧は無く、土煙も無い。敵が隠れる為の環境。そのほとんどが、現在存在しない状態だ。
それこそ、土の中に潜むか、霧がまだある場所まで瞬時に逃げていたりした場合ぐらいしか、見つけられないなんてことは有り得ない。
その霧がまだある場所だって、かなり離れた場所だろう。この周囲一帯の霧は全て先の魔術で晴らされている筈だし・・・。
「っ!?」
否、否。まだあるではないか。霧のある場所が。見通せない箇所が。
「上かっ!?」
炎魔術ーーー『閃焔』
偶然か、それとも必然か。エイスが上を見たタイミングで、霧の向こうから熱線が飛来する。
「どうやって・・?いや、そもそも何時だ?」
経路を伸ばし、放たれ続ける熱線を回避しつつ思考を巡らせる。
可能性があるタイミングは3つ。
1、エイスが上に昇っている時
2、エイスが術式を構築していた時
3、魔術が着弾した時
この内、1と2は今の角度でフォウルが魔術を撃つ場合、よっぽどの速度でなければエイスは上昇する彼を感知していたはずだ。
が、そんな音も気配も微塵もしなかった。
故に、最も可能性が高いのは、エイスが油断し、着弾の爆発音によって音が聞こえなかった3つ目のタイミング。
これで、何時昇ってきたかは理解した。
後は、どうやって昇って来たかだが・・
「それは、今確かめる!」
見えないならば、見えるようにすればいい。少々考え方がモズやダバーシャに似てきた自分に苦笑しつつ、エイスは魔術を構築しながら経路を伸ばし、移動しながら熱線を回避する。
炎魔術ーーー『閃焔』×50
自分の位置がバレそうだと悟ったのだろうか、50発の『閃焔』、その全てが違う場所から発射された。
が、今更そのようなことをしてももう遅い。既にエイスの術式構築は完了しており、魔術陣の展開も終わっている。
・・後は、『詠唱』をするだけだ
「迸るは迅雷」
予め展開していた魔術陣に更に術式を刻み、魔力を流すことによってその規模が拡大される。
「駆け巡るは稲妻」
拡大された魔術陣が雷を帯び、霧の中にあって尚光り輝いていく。
「其は集束し天を衝く霹靂也」
注がれる魔力量が臨界を超え、エイスの身体に残る魔力の内、半分が魔術陣を食い破る勢いで充填される。
「故に・・・」
キィン・・と、魔力の充填が完了したことを知らせる音が鳴る。刻まれた術式が輝き、何時でも発射できる準備が完了した事を理解する。
「雷よ!我が前の全てを滅ぼせ!!」
雷魔術ーーー『剛槍を放つは天雷の鳴神也』
「・・・・!!!?!?」
閃光や熱線どころの騒ぎでは無い。下から上、中空から上空へ。本来雷が落ちるはずの軌道と逆の軌道を描き、極太の光芒が、激しい輝きを伴って放たれる。
文字通り霧を、空を、消し飛ばす威力の【雷砲】が天を衝いて徐々に収束していく。
消し飛ばされた空の先。エイスの視界に入ったのは端の方に映る青空の切れ端と煌めく無数の星々であった。
「・・やりすぎたかな?けど、コレで見やすくなった」
「・・・・!」
「こんな風にね!」
炎魔術ーーー『閃焔』
雷魔術ーーー『雷閃芒』
熱線と雷光が激突し、魔力と衝撃波が散らされる。
「・・・」
「・・フフっ!」
仕切り直しとばかりに上空で向かい合った両者は、全く同じタイミングで全く同じ数の術式を刻み、魔術陣を展開する。
炎魔術ーーー『閃焔』×40、『操灼』×20
雷魔術ーーー『雷閃芒』×50、『雷槍』×10
星空を切り裂くように両者の側から放たれたのは熱線と光線。
直線の中に織り交ぜられた、縫うように相手を穿つ曲線を的確に操り、フォウルの熱線がエイスに肉薄する。
が、易々とそれに当たるエイスでは無い。50発の光芒を放った後に、手元に残していた10本の槍を閃かせ、迫ってきていた熱線を撃ち落とす。
「・・・!」
炎魔術ーーー『羽ばたく火蝶』、『閃焔』
真っ向からの撃ち合いにおいて不利であると悟ったのだろう。その背に蝶の羽をはやしてフォウルが逃げる。逃げながらも熱線を放ってくるあたり、操られて尚その技術の高さに陰りが見えないことが見て取れるが、それでもエイスに追撃戦の形をとらせた時点で、フォウルの勝機はほとんど潰えたと言っていいだろう。
「チェイスは得意分野なんだよ・・・ねっ!!」
雷魔術ーーー『雷閃芒』
飛来してきた熱線を容易く光芒で撃ち落としつつ、エイスは高らかに宣言する。
背後から圧倒的物量の光芒が放たれる恐怖を、フォウルはまだ知らない。
蠢いた『黒いナニカ』がシャールヴィを飲み込んでいく。まるで影がその主人に這い寄って主人を食べるように、シャールヴィの体が『黒いナニカ』によって縛られる。
「ぅ・・ぐ・・・ぇほっ!・・ぇほっ!」
押さえつけられていた胸が解放され、まともな酸素が体を循環する。喉にたまった唾や血を咳き込むことで外に出し、呼吸困難から自分を解放。
完全に息苦しさとはおさらばだ。
「・・・」
『黒いナニカ』に飲み込まれたシャールヴィは黙して喋らず、俺にもその中がどうなっているかわからないため、手の出しようがない。
故に、俺達は膠着状態に陥った・・・筈だった。
唐突に体が宙を舞う。見れば、俺はかなりの高所まで「何か」に跳ね飛ばされたようだった。
が、不思議と痛みはない。これだけの高さまであの一瞬で打ち上げられたということは、それ相応の痛みや衝撃が伴う筈だが、何故かそれを俺が感じることはなかっ・・・
「っづ!?」
腹部に先ほど蹴られた時と同じような鋭い痛みと衝撃が走って・・直後、耳をつんざく轟音が自分の背中から鳴り響く。次いで襲ってきたのは、さっきとは違うタイプの衝撃と激痛。
恐らくは地面まで蹴り飛ばされたのだと理解はした。理解はしたが、脳が今の一瞬でそれが起きたという事実を受け入れない。
何が、何故、どうやって俺の体を跳ね飛ばし、蹴って地面に叩きつけたのか。答えは、恐らく今俺の胸をもう一度踏みつけた『黒いヤツ』が知っているのだろう。
「何で何で何で何で何で何で何で・・・何で!?」
フォウルは負けそうになってるし、シャールヴィはなんか変なのに粘着されてるし、ユミルは抑え込まれてるし!
一体、何がどうしてこうなった!?何でこんな矮小な存在どもが僕の邪魔をする!?誰にも感知できなかった筈だ!誰にもここは見つからないはずだ!
なのに、なのに何で??どうして!?
・・・いや、待てよ?あの『黒いの』・・どっかで見たような?
「・・・・・っ!!」
思い出した!!『あの戦い』だ!『あの戦い』で、唯一誰の味方にもならず、『観測者』に徹してたあいつだ!!
あのいけ好かない!性根の腐った!混沌めいたヤツ!
あいつが使ってた力だ!!
「・・何が『観測者』だ!何が『僕は介入しない』だ!!」
ゴリゴリに介入してきてるじゃないか!!
・・あー、腹が立ってしょうがない。そもそも最初からアイツのことは嫌いだったんだ。何言ってるかわかんないし。
せっかくの僕のシャールヴィをこんな奴の力で汚されてたまるものか!!
・・・どうせなら、アイツのお気に入りのこのガキを殺してやろうか?
うん!それがいい!・・・それがいい。
改良魔術
・・・基礎魔術を自己流に改良した開発魔術に近い魔術。汎用性の高い基礎魔術に多くみられる傾向にある。
なろうの機能の事情で、魔術の名前が一部投稿時と変わってしまいましたが、何卒ご了承ください。
↑
解決しました




