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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
23/40

23.副王

更新です

「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」


耳を劈くどころか耳が弾け飛ぶような特大の咆哮を上げ、巨人は振り上げた拳を振り下ろす。


「ふっははははははは!!!!!」


炎魔術ーーー烈赫掌、『燃え猛る拳』


それに対し、真っ向から立ち向かうのはその身に炎を宿したダバーシャ。両拳を2重の炎で包み込み、溜めに溜めた全身の力を拳に乗せて、迫り来る巨拳へと跳躍する。


ーーー激突


爆発音にしか聞こえないほどの轟音で肉がぶつかり合う音が響き、衝撃波が一時的に濃霧を散らす。


「っ!ぐぁ!!」


「OOOOOOOOOO!!!!」


銃弾のような勢いで地面へと殴り飛ばされ、瞬く間に先程までダバーシャが立っていた地面に風穴が空く。

が、受身をとっていたのか、それすらも最低限のダメージで済ませ、吠えるように笑いながら、ダバーシャは立ち上がる。


「いい!良いぞ!王よ!・・もっとだ!もっと強く来い!!」


「えぇ・・・」


「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」


抑えきれぬ猛りを燃え上がらせ、歓喜するダバーシャを見て呆けつつもドン引きしたのは、その隣で一部始終を見ていたエイス。


「金髪。邪魔だ、逃げるか移動するかしろ」


が、暗に巻き込んでしまうと言われたことで正気に戻り、今自分に出来ることを思案する。


「・・了解。俺はモズを探してくるよ」


「そうしろ。・・また後でな」


「へぇ・・珍しい。そんなこと、言ってくれるんだね?」


「チッ!・・さっさと行け!」


「ハイハイ」


雷魔術ーーー『纏雷速攻』、『閃くは迅雷』


その身に迸る雷の奔流を帯び、エイスは濃霧の奥へと駆け出した。


「O・・・」


巨人は一直線にこの場から離れていくエイスを凝視し、赤い瞳を炯々と輝かせる。・・どうやら、去る者は追わないらしい。


「ふむ・・貴様の役目は、あくまでもこの場所の防衛であると・・そういうわけか」


その問いに、巨人は返答を示すかのように拳を握る。


「何があるか知りたくば力づくで・・か。それもまた良いだろう!・・・貴様は、久方ぶりに猛る相手だ!」


「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」


咆哮と同時に振るわれたのは、巨大な両拳による目にも止まらぬ速さのラッシュ。その全てを受けることは、流石のダバーシャと言えども難しい。


故に、その全てを見切ってダバーシャは跳躍する。ヒラヒラと先程叩きつけられたせいで破れた服の残骸を舞わせ、幅3メートルを超える拳打の嵐を回避する。


直撃すれば一溜りもないだろうその全てを、昂る心を強引に抑えながら屈み、躱して避けていく。

丁寧に、丁寧に。針の穴に糸を通すように足を動かし、身体を翻し、寸分の狂いもなく行った回避の先。


「OOO!!!」


一際大きく振りかぶられた巨拳がクレーターを生む。完全に仕留めきったとでも思ったのだろうか、巨人はそこで動きを停めた。


「ここだな」


「!?」


一瞬、理解出来ないほどの速度で距離を詰めてきていたダバーシャの蹴りが、巨人の右頬を穿つ。

身長25メートルを超え、体重がkgではなくtで表される程に巨大な身体が大きく揺らぐ程の豪脚。


どうやってそれを為したのか、その矮小な身体のどこにそんな力を秘めていたのか、理解不能なまま続けて2度、体勢を立て直す前に蹴りが顔面と腕に叩きつけられる。


「O!?」


咄嗟の防御姿勢すらも貫通する程の威力で見舞われた蹴りにより、巨人の身体が大きく後退させられた。


一方、それを為した当の本人はと言うと。


「ふむ・・腕の上を走るのは初めてだったが・・存外、容易いものだな」


何事もなさげに着地し、未だ警戒して防御を解かない巨人を見上げる。


「はっ!・・巨人の王といえどもこの程度か。これならまだ先の『原初の王』の方が楽しめるぞ!」


流れるように煽りを入れつておきながら、しかしダバーシャの思考は冷静であった。故に、ここまでの戦いにおける違和感を容易に理解する。


「とは言え・・まだ魔術を使わんとはな。・・・俺を舐めているのか、それとも、何か使えん理由があるのか・・・」


どの道、使わないならばそれで良い。厄介事が1つ消えるだけだ。もし使われても、未だ自分に余裕がある以上、そう一瞬でこの拮抗状態が崩れることは・・


「OOOOOOOOOO!!!!!」


唐突に巨人が雄叫びを上げる。まるで自分を奮い立たせようとするかのように、赤く染ったその目を爛々と輝かせて咆哮する。


「・・・何だ?何が来る?」


思考を中断し、全力で周囲を警戒。大暴れしたからか、すっかり霧散した霧のおかげでかなり見やすくなった周りの景色に注意を払う。


が、何も起きない。少なくとも周りから何かが来たりや、広域に広がる魔術陣が展開されているなんてことはなかった。


では、何故急に雄叫びを上げたのかと、そう考えた次の瞬間。


岩魔術ーーー『包み鎧う岩神の甲冑ゴッド・オブ・アーマード・ロック


巨人の足元に術式が刻まれ、大魔力を行使する巨大魔術陣が展開される。次いで、それに呼応するように大地が鳴動し、あちこちで地響きが鳴り響いた。


地裂とはまさにこの事と言わんばかりに地面が割れ、神域に、幾つもの深い谷が造られる。


が、その谷ですらこの大魔術の副産物でしかない。


「OOOOOOOOOO・・!!」


谷底から、地を割ってせり上がってきたのは一領の鎧。とある英雄譚において、小人の名工が作り上げた伝説の鎧と比べても遜色がないほどに完成された至高の逸品。


分厚さ、強靭さ、硬さ・・鎧に必要な全てを兼ね備えたその岩の鎧こそ、最高位の魔術によって造られた護りにおける絶対の切り札。


「・・・恐らく、物理的な攻撃は通らんな」


同時に、巨人・・副王ユミルはもう1つの魔術を行使する。


岩魔術ーーー『抉り断て岩王の峰剣キング・オブ・ガウジアウト・ロック


手元に展開された魔術陣から現れたのは、刃長15メートル、刃幅3メートルの特大剣。

剣と言うよりも、剣の形に丘を削り出した何かと言った方が正しいだろう岩の大剣を握り込み、岩壁を纏った威容は、これ以上ない程に王者であった。


あのダバーシャをして気圧されるほどの大きさと威圧感が、再び霧に覆われた神域内で一際目立つ。


「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」


咆哮が上がる。先程よりも大きく、長く、見せつけるように上げた獣のような雄叫びが音圧だけであたりの霧を押し退ける。


気合十分。本気で殺しに来ていることが分かる程の殺意がその眼光から迸り、大きく拳の中の特大剣を振り上げる。


流派もクソもない、ただ真っ向からこちらを大質量で叩き潰すことだけを考えた、愚直で豪快な縦振り。


それを前にして、ダバーシャは・・・


「猛るな」


と、そう呟いた。








濃霧の中を迅雷が駆け回る。

推定、モズが蹴り飛ばされた方向へと一直線に駆け抜けてきたエイスだが、数分間走っても尚その姿が見えてこない。


この時のエイスは知る由もないが、モズとシャールヴィは戦いながら移動しているため、その正確な位置は定まっておらず、何処にいるのかなどは本人達にすらよく分かっていない。


「っ・・!!」


が、先程から音だけはずっと聞こえてきているのだ。剣と剣がぶつかり合う音、地面に何かが何回も着弾してる音、そして・・足音。


「っ!?」


咄嗟にソレに反応出来たのは、日頃のダバーシャとモズとの訓練のおかげだろう。

一閃。駆けている自分の真後ろで、紅蓮のビームが炸裂する。


地面に着弾した瞬間に着弾点を爆砕させたその閃光を視界の端に捉えたエイスは、ノータイムでその閃光を放ってきた下手人に向けてこちらからも閃光を放つ。


雷魔術ーーー『雷閃芒』


が、手応えは無い。当てたという実感も、倒したという感触もエイスには無かった。

あったのは、次なるピンチの局面のみ。


炎魔術ーーー『閃焔』×20


都合20本もの炎の閃光が同時にエイスの眼前へと放たれる。


走り続ける自分に対して偏差撃ちをすることで瞬時に当てに来た相手の狙いの正確さと、自分が未だに相手の位置を捉えられていないことに戦慄しつつ、エイスは屈み、跳んで身を翻すことでその全てを回避する。


が、20本目の光線を回避した所で、ある物が視界に入った・・否、ソレは見せつけるようにエイスの眼前に置かれていたのだ。


「ぅ・・ぁ・・・」


「っ!!」


濃霧を切り裂き、直進し続けるエイスの目の前に突如として現れたのは、1人の老人。

実年齢に見合わないほどに老け顔のその老人は、この7日間でエイスが親しくなった2人のうちの1人。


そのまま直進すれば間違いなく倒れ伏す老体を跳ね飛ばしてしまうと瞬時に理解したエイスは、全身を駆動させて無理やりにその場から飛び退り、セバスを跳ねる直前でその方向を転換し、事なきを得る。


が、狙撃手は生じたその隙を逃さない。強引に体勢を変えたことで一瞬泳いでしまったその体へ、熱線が飛来する。


炎魔術ーーー『閃焔』×30


「チッ!」


嫌なタイミングで嫌な事をしてくる。狙撃手の鏡のような相手に対して苛立ちつつ、頭の中で歯車を回す。


イメージするのは極太の光線。たかだか30発程度の熱線を容易く吹き飛ばす、一条の光芒。


想像と術式構築、からの陣の展開。その全てにかかった時間は、それらの工程を得手とするモズにも負けず劣らずの僅か一秒半。


雷魔術ーーー『唸れ、迸る雷砲よグロウル・ライトニング・カノン


熱線が届く寸前。展開された砲門から撃ち放たれたのは一条の閃光。目の前の熱線、その全てを圧倒的な速度と威力で消し飛ばし、神霧すら容易く霧散させる。


直線上。光芒が届く限りどこまでも先まで、霧が散る。故に、狙撃手はその姿を現すしか無かった。


「っ!貴方は・・!」


「・・・」


現れたのは、燃えるような赤髪。爛々と輝く紅の目。見覚えのある顔付きを老けさせ、壮年まで成長させたかのような男。


フォウル・フォン・フィオトレイ。彼自身がよく使う魔術と同じ、『閃焔』の2つ名を持つ英雄にして・・シャールヴィの父親がそこに居た。


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