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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
14/40

14.王都暴走

更新です

「VOOOOOOOOOOOO!!!!!」


ミズガルズに入った瞬間、眼前の巨人が怒号を上げる。冷静にそれを分析し、背負った黄金の槍を抜き放ったダバーシャは、一段、さらに前へと踏み込んで・・加速。


拳と槍の石突が激突し、轟音と衝撃波が巻き起こる。鎧を纏った、恐らく冒険者だろう巨人の拳と驚異的な膂力で競り合い、後ろの被害に注意しつつ、その拳を圧倒的な力で抑え込む。


「VUAAAAAAAAAA!!!!!!」


「うわぁぁぁああ!!?」


「金髪!そっちだ!」


「VU!?」


瞬間、怒号を上げた目の前の巨人を、石突を強引に前に突き出すことで抑えたダバーシャは、壁を突き破って出てきたもう一体を直前で察知し、エイスに伝達。


「了解だ・・よ!」


雷魔術ーーー『咆哮を上げよ雷獣(ハウリング・サンダー)


流れるように手を振るい、頭上に術式を刻んで魔術陣を展開。瞬間、霹靂の獣が出でる。巨大な口腔から放たれた雷の閃光が、瞬く間に飛び出てきた巨人を飲み込んだ。


「VOOOOOO!?!?」


身体を貫いた雷を防御する間もなく、巨人が倒れる。


「っ!?殺し・・」


「てない!出力は加減してあるよ!」


「シッ!」


「V!?」


炎魔術ーーー『烈赫掌』


ダバーシャは、敢えて槍を長く持つことで穂先の直撃を避け、抑えていた巨人の側頭部へと高速で薙いだ柄をぶち当てる。

強化された腕力で強引に薙ぎ倒された巨人は、鎧ごと耳を砕かれて地面に激突。そのまま意識を失った。


「・・この程度ならば造作も無い」


「このまま一気に奥まで行くよ!」


「はい!」


風魔術ーーー『我等の脚に追風を(ウインド・フット)


シャールヴィが碧緑の魔術陣を王都を駆け巡る3人全員の脚に展開し、爆発的な加速を付与。全員の速度がまた一段速くなる。


「ありがとうシャールヴィ。・・それじゃあ、ここからは散開して動こうか。多分一人一人で救助していった方が効率がいい。・・それに、この国に騎士団が居ないわけじゃないんでしょ?」


「・・騎士団が来るかは微妙なとこですね。フォグノースには人族の騎士団と巨人族の騎士団があるので、彼らはその対応におわれてるかも・・」


「・・・じゃあ固まって動いた方がいいかもね」


「どっちでも構わん。一先ず、俺は1番煙が上がってる所に行く」


「じゃあ俺達もそうしようか」


「はい!煙が一番出てるのは・・多分北の工場区画ですね」


「そこに行くぞ」


進路を北・・王都門の反対側に決め、道中の暴走してる巨人を鎮圧しつつ、3人は奥へ奥へと進んでいく。









「・・・よし、行くか」


とりあえずセバスさんを馬車の中で休ませて、俺は握ったことの無い手綱を握りつつ、門から王都の中に侵入。幸い、こんな事件中だからか門番の兵士などはいなかった。


「フィオトレイ家からの救援の者でーす!!誰か救助を必要としてる人はいませんかー!!」


馬車の屋根の上に高々とフィオトレイ家の家紋が入った旗を掲げ、王都の大通りをひた走る。道中で巨人から逃げてきた人達を次々と馬車の中に乗せ、巨人と戦っている冒険者達を援護しつつ、とりあえずは一番目立つ王城へ馬を進める。


「おう!坊主!その様子見てっと御者やんのは初めてだろ?俺が変わってやるから、アンタは馬車の上から他の人らを探してやってくれ!」


「了解です!」


途中で助けた冒険者のおやっさん(名前はガマルって言うらしい)のその提案に乗っかり、俺は御者台を彼に任せて旗を掴み、一気に身体を馬車の屋根へ持ち上げる。


「・・視野が要るな。フィリップ!出てきてくれ!」


召喚魔術ーーー『憑依召喚:フィリップ』


眼球の周りを白色の魔術陣が覆う。途端、視界が縦横に伸びていき、蜻蛉の視点が王都を見据える。


と、早速東の方で視野に何かが入った・・アレは・・大量の人と巨人?・・てことは!


「ガマルさん!東に行ってくれ!あっちから大量に巨人と人々が走ってくる!」


「了解だ!」


「VOOOOOOOOOOOO!!!!!」


「きゃあああああ!!」


東へ走り出すと同時に接敵。眼前から走って来るのは子供を抱えた、今にも倒れそうな女性と、その後を追って走る暴走した巨人。


大方、途中の家屋を倒壊させつつ大通りまで走って来たのだろう。両者とも肩で息をしており、女性に至ってはフラフラと覚束無い足元で懸命に倒れ込もうとする力に耐えているようにしか見えない。


そんな彼女とは対照的に、まだまだ体力は有り余っていると言わんばかりにあっという間に肩で息を整えることを止め、また一段、その速度を加算する。


速さだけで見ればそこまで大した領域じゃない。・・が、特筆すべきはその攻撃範囲。このままあの巨人が腕を振るだけで、彼女は母子共にぺしゃんこに潰されてしまう。・・それだけは避けたい。


「っ!!」


そうこうしてるうちに、召喚魔術じゃ間に合わねえどころか、例え間に合ったとこで出力が十分な威力を発揮できない距離にまで、親子と巨人の距離は狭まっていた。・・・こうなったら・・・もうコレ以外に方法が無え!


「チィッ!」


一瞬の逡巡の後、右手を前へ。手のひらを大きく開き、「出ろ」「出ろ!」と脳内で念じ続ける。

アイツがそうしていたように。出来る限り真似た体勢とポーズで、『あの黒いの』を出す!


が、さっぱりソレが出てこない。いくら待っても、思い描いた、全てを束縛するような影が出でることは無かった。


「きゃっ!?」


女性が躓く。同時に、その腕の中から2人の子供がまろび出る。


マズイ!マズイマズイマズイマズイマズイ!


速く!早く!疾く!本当に俺にあの力が渡されてるんなら!今すぐ・・


「出てこいよ!」


咆哮を上げる。喉が痛くなるほど大きく叫んだ俺に呼応したのか、ザワ・・と、一瞬空気が歪んで。


【■■魔法】ーーー『影■り』


「っ!?ぐぁ・・」


瞬間、溢れるほど膨大な情報が俺の脳へと襲い来る。激しい頭痛が吐き気を伴い、津波のように思考を侵食していく。


辛うじて見えたのは、真正面からこちらを踏みつけるように降ってくる、巨大な足。


「うっ・・ああああ!!!???」


無我夢中で両手を動かし、降ってくる足の裏を抑えようと前に突き出したところで・・・影が蠢いた。


数瞬して、視点が戻る。地の底から、馬車の上。

蜻蛉の視野で王都を探っていた俺の視点へと、意識が切り替わる。


「っは!・・・はー・・はー・・・」


乱れた呼吸を整えつつ眼前を見れば、這い寄ってきた影に脚を、腕を拘束されて倒れた巨人が視界に入る。幸い、引き倒された勢いが異様に強かったのか、巨人は気絶していたため、俺の方から強い衝撃を与えたりして気絶させる必要な無くなったが。


「もう・・二度と使いたくねぇ・・」


本当に気持ち悪かった。自分という形が崩れ落ちて、影という膨大な情報量のネットワークに格納されたまま外を眺めるような、そんな気分だった。


・・誰だって、自分が無くなっていく感覚は気持ち悪く感じるし嫌に違いないだろう。


・・・たった一瞬とはいえそれを感じてしまった俺は、果たして本当にあの『魔法』を使う前までのオレとオナジなのだろうか?


「・・・いや、今はいい。考えるな。それより、王都を救う方が先・・っ!」


瞬間、前方より少し右。王都の東側で、突然に稲妻が迸る。この王都で今そんな大規模な雷魔術を単独で行えるのは、俺の知ってる中ではエイスしかいない・・ってことは、少なくともあそこにエイスは居ると仮定して良いだろう。


「すげえなぁ!坊主!まさか2属性持ちとは思わなかったぜ!」


ガマルさんのそんな言葉が胸中を抉る。黒い影が、まるで這いずるように俺の背中を登ったような、そんな気がした。


「ガマルさん!巨人達の奥から俺の仲間が来ます!それと挟み撃ちして、目の前の巨人達を一掃しましょう!」


「分かった!なら、進路はこのままでいいんだな!」


「ええ!東で大丈夫です!」


街を南から北へ通る大通りを走り抜け、貴族区画の直前で東へ曲がった先。広く抜けた、平時なら恐らくかなり美しいだろう街並みは、今日この時に限って、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。


悲鳴と雄叫びが響き渡り、あちこちで魔術による爆発や岩塊が飛び交っている、戦場と呼んで差し支えない光景が目の前を覆い尽くしていた。


「VOOOOOOOOOOOO!!!!!」


巨人の一体が此方に気付いたのか、体に纏った鎧の重さをものともせずに、信じられない速度でこちらへと駆けてくる。


「坊主!来るぞ!あの鎧・・巨人族の騎士団だ!」


「了解!冒険者の皆さん!よろしくお願いします!」


「「「了解!!」」」


それまでに助けた冒険者達が一斉に馬車から顔を覗かせ、火球が、水球が、風刃が、剛矢が次々に巨人の体を襲う。


が、その勢いは止まらない。何度か煩わしげに迫る魔術を切り払っただけで、その他を全てその身で受け、一切傷つくことなく彼我の距離を詰めてくる。


「こんのっ・・!」


召喚魔術ーーー『高速召喚:岩塊×4』


出し惜しみしてる場合じゃない。故に、俺は腕輪の縛りを無くして中空へと4つ、術式を刻む。

展開された魔術陣は文字通りの砲門と化し、そこから、周囲の倒壊した家々の瓦礫や崩れた城壁の一部を射出(しょうかん)


さしもの巨体も、同じくらいの質量攻撃を一気にされればなすすべもなく地面に倒れるだろうと踏んだが、どうやらその通りだったようで。

その隙を狙った、馬車内の冒険者達が総員でかかれば、後は頭や鳩尾を袋叩きにしていっちょう上がり。


これと同じ手順を次々にやっていけば、順調に暴走を収めることが・・


「っ!!」


と、そんな甘い期待をしたところで意味は無く。どうやら神々は、そこまで俺たち人類に甘くはなかったらしい。


「オイオイマジかよ!!?」


予想の3倍・・いや、5倍の数の巨人が此方に向かって駆けてくる。しかもその全員が、先程の巨人と全く同じ装飾の鎧を着け、同じ剣を持っている。


それがここでの戦闘音を聞きつけたからなのか、それとも他の要因によってのことなのかは知らないが、今はそんなことを考えてる暇は無い。


「に、逃げろおおお!!全員!フィオトレイ家の馬車まで待避いいい!!!」


馬車に全員を乗せようとしたところで気づく。・・これは無理だと。あの影の力を使っても、今の俺の魔力量じゃ、せいぜいが三体同時に捕まえられるか否か程度の力しかとてもじゃないが、2桁以上の数の巨人を一度に相手取れる力は無い。


「足止めは俺がする!だから、全員が馬車に乗ったらすぐ出発してくれ!」


ガマルさんに有無を言わせず手綱を渡し、馬の尻を叩いて強引に出発させる。エイスの到着まで待ってる暇は無い!今はとにかく時間を稼がないと・・!


覚悟を決めろ、モズ・ヘカーテ。お前はこんなとこで死ぬ男じゃないだろ?生きて『アイツら』の英雄譚を書くんだろ?


「さぁ!かかって来やがれ巨人共!俺が全員ぶっ倒して気絶させてやるよ!」


ありったけの魔力を身体中から絞り出し、懐から銃を取り出して構える。


「これより放つは我が究極の一撃!」


俺のたった一つの奥義!てめえらに向けて撃ってやるよ!どうせその鎧頑丈なんだろ?多分死にはしねえだろうから安心して喰ら・・・


「え?」


「モズ・・無謀と勇気を履き違えたら行けないよ」


雷魔術ーーー『鳴王の剛槍ランス・オブ・サンダーキング


振るわれる手が視界に入ったと同時、囁くように・・けれど確かに鼓膜を揺らす友の声が戦場の怒号に交じって響き渡る。


直後、展開された巨大な魔術陣から、雷を纏った大槍が出でる。放たれるのと同時に加速し、光に迫る速度を得た大槍が、衆目に晒されたのは一瞬のこと。


放たれたと直感した時には既に、眼前の巨人達は、高く空へと吹き飛んで。


コレが英雄だと言わんばかりのその姿は、戦場において尚、一切の翳りを見せずに輝いて見えた。


2025/3/29・・ 少し表現を変更しました。大きな違いはありません

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