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学院の凡人は英雄譚を描きたい  作者: (羽根ペン)
第一章 巨人暴走事件
12/40

12.王都ミズガルズ

更新です

「魔法の」


「気配」


魔法・・魔法か・・ってことは、神様達が関わってるってことか?ダバーシャが気配を読み違えることなんざよっぽどの事がない限りありえないからな・・。


「魔法・・・ねぇ」


「と、とりあえず中に入りませんか?外で話すような内容でも無いですし・・」


「・・それもそうだね」


考え込んでしまった俺達に向け、シャールヴィが提案する。それを了承し、案の定扉の前で聞き耳を立てていたセバスさんと合わせて5人で食事のための用意がなされた食堂へ向かう。


さすがは貴族が住んでいた豪邸なだけあり、食器や暖房設備、暖房を動かす燃料などは全て品質の良い、一級品と言っても良いほどの逸品であった。


とりあえずは四人で食卓を囲み、召喚魔術でラビリンスから召来したそれぞれの食事と、軽い料理を食べつつ先程の話の続きを行うことになった。


「魔法・・ダバーシャ、本当に魔法の気配だったのかい?」


「神の扱う力や神そのものの気配はこの中では俺と金髪ぐらいしか察知できん。それに、俺は神の息子だ。そこな金髪よりも神に近い。故に、アレは神の仕業だ」


「成程・・神の力が関わってるのか・・・」


「そうなってくると厄介だね・・というか、ほとんど事件解決が不可能にならないかい?」


「・・いや、そうとは限らないぞ」


「なんで?」


「神にだって格はあるからな。一神教のエイスには分からないかもしれないが、フォグノースやラビリンスの様な多神教における神には基本序列がある」


「・・つまり、事件を起こしてるのが低位の神様であればまだ解決の糸口があるって事かい?」


「あぁ、そういうことになる。ただ、問題は」


「「それをどうやって確かめればいいのか」ですよね?」


「・・その通りだ」


「それなら、アテはあります」


「・・マジで?」


あんの!?


「要するに、神様のことはそれに近しい存在の方に聞けば良いんですよね?実際、半神半人のダバーシャが神の気配を察知できるような感じで」


「いや、それはそうなんだが・・。俺、ダバーシャ以外に半神半人の人間なんか聞いたことないぞ?てか、そういう人がいたら、もっととっくの昔に新聞とかで名前広がってるだろ?」


「でしたら、何の問題も無いですね」


「イマイチその人物の詳細が見えてこないなぁ・・ホントに居るのかい?そんな人が。この国に?」


「・・・」


「えぇ。居ますよ」


懐疑的な表情と態度を隠そうともしないエイスと、押し黙りつつも無言の圧をシャールヴィに放つダバーシャを前にして、シャールヴィは、一歩も引かずにそう言いきった。


「その人は、純然たる人間であり、この国で最も尊敬されている御方。名を始源樹王アスク。・・・神々によって作り出された、正真正銘、不老不死の人物です」








ーーー同じ頃、王都ミズガルズにて


「・・・ここにも居ないか」


ポツリと、巨人が何十人も通れそうな程に広い大廊下を、たった一人で歩く人間が呟いた。


雑に後ろで結われた美しい金髪と、神々がその手で掘り出したかのように端正で美麗な顔が、一定間隔を開けて並ぶ窓に薄く反射する。


覗き込んでいた大部屋の中を再度ゆっくりと見渡し、片手で、開けていた高さ30メートル、幅25メートルの大扉を閉める。


「・・・どこに行ったんだ、ユミル」


たった一人の友を探して。男は整えられた絹の服を引き摺りながら、只ひたすら城の中を歩き回る。









ーーー???


「くっ・・ふふっ・・」


笑いを押し殺し、ソレは笑った。現代を生きる道化師のような、古のものが思い描く魔法使いのような。そんな奇妙な格好をして、ソレは溢れそうになる呵々大笑をすんでのところで押しとどめ続けた。


「はっ・・あはっ・・・」


そうしなければ、バレてしまうから。そうしなければ意味が無いから。・・何故なら、


「イタズラは・・くひっ!・・バレてない時が、いちばん面白いんだから・・・ふひっ!」


霧の奥でソレは嗤う。愚かにも何も知らない大いなる種族を、既に取り返しなどつかないのに足掻く矮小な種族を。そして、


「無知なる神々を・・・ね?」









ーーー翌朝、交易都市ヴィオスキプティ


「よし!取り敢えず次の目的地は決まったな!」


「目標は、依然変わらず王都ミズガルズと、その奥にあるフィオトレイ辺境伯領!」


「新たに目的として、国王始源樹王アスク様に事態の原因となる神々について質問する!・・というのも、加えていいんですよね?」


「あぁ、問題ない。それじゃあ、ミズガルズに向けて!出発ぁつ!!」


「不老不死・・始源を生きた人間か・・・滾るな」


いや、国王様と戦う訳じゃないからな!?




ーーー二日後


「セ、セバスさん。まだ見えないんですか・・?」


「ほほっ・・モズ殿、もう少しですので、少々お待ちを。・・既に、ミズガルズの目の前に屹立する峠は超えました故、直にミズガルズの威容が見えてくるでしょう」


「そ、そうですか・・・」


新しく目的を立てて二日。俺たちは、当初の予定通り道中の魔物を倒しつつ、学院出発から3日間かけて王都へと向かっている。


が、ここ2日。馬車を降りる時と言えば魔物が出てきた時にそれぞれが変わりばんこに魔物を倒すために降りるのを見物する時か、馬の休憩の時ぐらいしか無かったため、揺すられ続けて腰が痛いのだ。


その辺、エイス達に聞いたところ、普段から馬車に乗ってるシャールヴィとエイスは涼しい顔で慣れたと言い、ダバーシャは鍛え方が違うと言ってきたため、改めて目の前の奴らが常識の通用しないヤツらだということを思い知った。


「こ、腰がああ・・」


座布団敷いてるのにこの痛さは尋常じゃねえよ・・。シャールヴィが言うにはこっそり家から持ち出してきた物だから大分昔の奴らしいが、にしたって整備されてないにも限度がある。


帰りは是非乗り心地のいい最新型の馬車に乗りたいもんだぜ。まぁ無事に帰れるかは分からんけども。それこそ神のみぞ知るってことだろう。こんかいはその神が敵かもしれんけど。


「・・そういや、国王様ってそんな簡単に謁見出来るもんなのか?本とかじゃよく、1週間くらいかかってからやっと会えたみたいな描写が結構あるが・・」


「モズ・・流石に英雄譚の読み過ぎだよ。確かに国王っていうのは、貴族達の中でも群を抜いて忙しい方々ではあるけれど、それでも神域の魔物から国の防衛を担う辺境伯の嫡男が、今巷を騒がせてる事件のことで伺いを立てたいって言うのであれば、数分間会うことぐらいは許されると思うよ。少なくとも、うちの国はそんな感じだし」


「そうですね・・。とはいえ、国王様も今回の事件で忙しくしているというのは聞いているので・・会ってもらえるかどうかはやっぱり半々ぐらいの確率になると思います。・・そうなってしまった場合、先にうちの領地に行くことも視野に入れておかなければならないかもですね」


「・・・ま、そこはどっちでも・・良くは無いけど、実際に行ってみてからじゃないと分からないからね。今は不確定な要素になっちゃってもしょうがないよ」


「・・成程。そういうもんか」


「皆様!ミズガルズが見えて参りましたぞ!」


話が一区切り着いたタイミングで、セバスさんが御者台から俺達に向かって声を張る。


言われるままに馬車の窓から身を乗り出して外を見れば、目の前にあったのは、白い山々という天然の城壁に囲まれた白亜の街。


王都ミズガルズ。白と青で統一された城壁と、それに囲まれる、雪のような白を基調とした城下町。街の中央に向けて傾斜ができていき、王都の最も高い所に聳え立つのはーー


城。キレイだとか、そんな簡単な言葉では言い表せないほどに美麗で雄々しく、冷たい印象を持たせる、純白の城。


「ぁ・・」


思わず感嘆の声が漏れる。それ程までに、目の前の純白の光景は俺の魂を刺激した。


離したくとも離せない目を強引に王都から引き剥がし、シャールヴィを見れば、少し得意気な顔でコチラを見ているのが分かった。


「・・・すげえ・・な。すげぇ」


それしか言葉に出来ない自分の語彙力を呪いたくなるほどにすばらしい光景。あのダバーシャですら、尋常じゃない様子で目を見開いて、王都の美麗さに釘付けにな・・・目を見開いて?普通そんなに凝視するか?


「・・どうした?ダバーシャ。なんかおかしい事でもあったか?それとも、今になって急に酔い始めたとか?」


そんな問いかけを全て無視し、ダバーシャが紡いだのは、たった一言。


「金髪」


次いで呼応するように、エイスがその目を見開いた。


「あぁ、分かってる・・・」


ふい・・と、2人が空を見上げる。まるでそこに何かがいるかのように、エイスは訝しむように、ダバーシャは憤りを隠そうともせず、その眉根を寄せ、顔を顰めた。


「「っ!?」」


刹那。2人の顔が驚愕に染まる。同時に、どこからともなく出でた霧が、王都を覆った。


一瞬。空白の間が開く。ソレは、嵐が来る前の予兆めいた静けさのようで。


直後、事は起こった。


「「「「「「VUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」」」」」」


雄叫びが上がり、爆炎が巻き上がる。


ミズガルズは、一瞬にして地獄と化した。


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