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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第一章 迷宮と少年たちのはじまり -The Beginning of Labyrinth and Youths-
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第9話 5歳のころの思い出

 これから俺たちが行くダンジョンの入り口にあるスキルボード。俺たちは入学前に全員一度そこへ行ってスキルの確認をしている。その時俺のスキルは無かったのだが、俺はもう一度改めてしっかりと確認し直したいと思っていた。


 スキルは先天的に持っている者と、何も持っていない者がいる。

 俺は後者だ。先天的スキルは持っていない。

 先天的という言い方をするのは、後天的に、つまり後からスキルを手に入れることができることがあるからだ。

 それは迷宮で、スキルオーブという神秘的な宝珠に手を触れたときに、そのオーブが持つスキルを手に入れることができるのだ。

 だがスキルオーブの発見率は気が遠くなるほど小さい。魔物を倒した時にスキルオーブがドロップすると言われている確率はおよそ0.000001%と言われている。要するに一億分の一だ。

 魔物がドロップする場合だけでなく、迷宮にポツンと落ちている時もある。だが見つけ次第拾われてしまうので、基本的にそれまで誰も足を踏み入れたことがない場所にしか落ちてない。

 そんな場所を探索するのは迷宮の最深部を探索するトップエクスプローラーくらいのもので、基本的に普通の探索者には縁がない話だ。


 一説にはスキルオーブは手に入れるべき人物が手に入れるべきスキルオーブと出会うとも言われているが、確率で言うととんでもなく低いのが現実だ。そんな宝くじが当たるかのような確率の話だが、実は俺はスキルオーブらしきものを手に入れたことがある気がするのだ。

 『らしきもの』というのは、実は本当にそれがスキルオーブだったのかどうかは、しっかりと覚えていないのだ。


 それは俺が5歳の時だった。

 今からちょうど10年前の話だ。

 俺の父は迷宮探索者ではないが、迷宮に興味を持っていた。

 日本国内では資格がないと迷宮探索はできないが、10年前は法律が今より少し緩くて、アメリカではダンジョン探索ツアーなるものがあり、俺は父に連れられそれに参加した。

 俺はまだ小さかったためその時の記憶はあまりよく覚えていないのだが、グランドキャニオンの壮大な景色はよく覚えている。

 そして岩壁にぽっかり空いた穴からグランドキャニオンダンジョンへと足を踏み入れた。

 迷宮の入り口には石板があった。いわゆるスキルボードだ。石板に自分の手を伸ばした時にステータスが表示され、とても喜んでいたのを覚えている。

 そして階段を降り第一階層に行くと、父はガイドに案内されながら、スライム狩りを楽しんでいた。

 スライムは最弱の魔物で、誰にでも簡単に倒すことができる。

 だがその体は酸性で肌に触れると火傷をする可能性があるため、まだ小さかった俺にはスライムと戦わせてもらえず、俺は暇を持て余していた。

 そのダンジョンはグランドキャニオンの岩山の洞窟だと言われたらそうなのだろうと思ってしまうような雰囲気だった。

 俺は何か面白いものはないかきょろきょろしていたが、岩壁に子供一人なら通れそうな横穴を見つけた。

 大人には通ることができないだろうその穴を覗いてみると、奥の方にぼんやりと光る何かを見つけた。

 俺はそれが気になって、幼稚園の遊具の土管を潜る感覚でその横穴に入って行った。

 そこにあったのは子供の両手よりも大きな丸い物体、おそらくそれがスキルオーブだったのだと思っている。

 柔らかい光に興味を惹かれ、俺はその玉に触れた。その瞬間、その玉は消えてしまった。

 びっくりしてウワッと声を上げた時、父の俺を呼ぶ声が聞こえた。

 慌てて穴から出て行ったのは覚えているが、それが何のスキルオーブだったのかよく分からない。

 もしかしたらスキルオーブでなかったのかもしれない。


 スキルには迷宮の外でも使えるスキルがあるが、多くが迷宮の中でしか使えないスキルだ。

 また、自分がどんなスキルを持っているかは、スキルボードを使って確認してみないことにはわからない。

 だからそれから10年、ずっと俺はあの時のことが気になっていたが、何のスキルを獲得したのかが分からずにいた。

 一応入学試験の時に、全員が迷宮の入り口に行きスキルボードの確認をしたが、その時には俺のスキルは表示されていなかった。流れ作業でゆっくり見ていられなかったが、でもスキルオーブを使ったのだからスキルは得ているはずだ。あれがスキルオーブだったらという話だが。


 だが今日それが判明するはずだ。

 今日は学園のダンジョンの入り口のスキルボードでしっかりと確認しよう。そして何かスキルを持っていたら迷宮で実際にスキルを使ってみることができるはずだ。

 俺の心の中はワクワクする気持ちでいっぱいだった。

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