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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第七章 森林に眠る宝 -Legacy in the Forest Cave-
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第86話 質問攻め

 授業を抜け出して億本伯爵と面談してきたため、教室に戻るとクラスメイトに囲まれてしまった。


「ねえねえシロウ、億本伯爵ってどんな人だった?」


「いや、別に普通のおじさんだったよ……」


 ユノの良くわからない質問に真面目に答える俺。


「貴族だからすごくダンディーなのかと思ったのに」


「いや、ダンディーにはダンディーだったけどな」


 本当に良くわからん質問だ。


「お礼って、何かお礼状みたいなのをもらったの?表彰みたいなの?」


「いや別にそういうんじゃねえから。でもお礼の品っつってこれくれたんだぜ」


 俺はマイカに答えながら、億本伯爵からもらった小箱を机に置く。


「何これ?」


 俺はそっと箱のふたを開ける。

 中に入っていた透明な石を取り出し、みんなに見せる。


「アミュレットかい?」


 それに気づいたのは千堂だった。お前もいたの?


「良く知ってるな千堂」


「まあね。卒業までに10階層のゴブリン要塞に挑戦しなくてはいけない。それがあればゴブリンマジシャンの攻撃も怖くないからね。いつか僕も手に入れたいと思っているよ」


「でも相当レアなんだろ?」


「そうだね。まあ貴族かよほどのお金持ちじゃなきゃ手に入らないかな」


「10階層っつうと、三年になるまでは持ってても意味はないのか」


「そりゃあそうだよ。攻撃魔法をかき消すためのアイテムだからね。攻撃魔法を使う魔物と戦う時にしか役に立たないよ」


「売ったらいくらになるんだろうな?」


「え?もらったものを売っちゃうのかい?」


 そんな俺たちの会話を聞いていた紺野イスズが出しゃばってきた。


「待って待って!売るなら私が買い取るよ!」


「出たな悪徳商人。売らねえよ」


「えーなんで?じゃあポーションでもいいよ。買い取るわよ!」


「だからおまえには売らねえっつーの!」


「えー!なんで?」


 紺野の実家は北海道の札幌ダンジョン近くにあって、ダンジョン産のアイテムを取り扱うお店をやっているらしい。だから貴重なアイテムを俺から安く買い取って、実家で高く売りたいらしい。


「転売目的のやつに売るかっつーの!」


「転売じゃないよ!買い付けだよ」


「どっちにしても売らないよ。それに億本伯爵からもらったばかりなのにすぐに売ったって知れたらまずいじゃねえかよ」


 一応は俺にも常識はある。


「さっき売る気満々だったくせに……」


 ユノのツッコミはスルーだ。


「高く買い取って上げるのに。ランク1でもいいよ。一万五千円までなら出すよ」


 悪徳商人はまだ諦めていないようだ。


「一万なら購買で買えるだろ?」


「いやー、購買で買い占めたのを高く売ってそれがバレると退学になるらしいんだよね~。でも生徒が自分で取ったポーションならいいんだって」


 どうやら本当に購買のポーションを買い占めようとしたことがあったらしい。恐ろしい女だ。

 そしたら俺たちの会話を聞いた榎島が声を掛けてきた。


「ねえ紺野さん、ポーションを一万五千円で買ってくれるって本当?」


「もちろんだよ!」


「先週ドロップしたんだけど、使う機会がなかなかなさそうだから売ろうか悩んでたんだよね。5000円も得しちゃうなら紺野さんに買ってもらおうかな?」


 学園の購買では利益を取らない方針のため、ランク1ポーションなら買取価格も販売価格も同じ一万円だ。手数料などは学園が負担してくれている。これはこの学園の中だけの話で、普通の店だと価格にはバラつきがあり、買取価格は安くなるし販売価格は高くなる。


「やめとけやめとけ榎島。紺野が一万五千円出すって言うなら、普通の店に持って行きゃもっと高く売れるぞ」


「え?そうなの?」


「ちょっと営業妨害は止めてよ!」


 俺は常識を知らない榎島に助け舟を出す。紺野からクレームが入ったが、同級生を騙して設けようとするんじゃない!自分でダンジョンで入手しろ!と一喝してやった。

 その後しばらくの質問攻めから解放され、俺の机の周りにはいつものユノ、マイカ、イオリの三人が残っていた。

 億本伯爵の話題はもう終わって、だらだらと雑談を続けていた。


「そういえば来週のGWってみんな予定は?シロウは実家に帰るの?」


「いや、帰らないけど?」


「えー?帰るなら一緒にって思ったのに」


「ユノは帰るの?」


「うん。お父さんが寂しがってるってお母さんが言ってたの。マイカは?」


「私も特に予定はないから、実家に帰ろうかな?」


 そして二人はイオリの方を見る。

 視線に気づいたイオリは聞かれる前に答えた。


「私は紫村たちがGWも部活に出ると言うので、付き合うことにした」


「大変だねえ」


「いや、教えることで私自身の技術を見直すことができるから、大変というよりやりがいを感じているよ」


「へえ~、そうなんだ」


 そして三人は俺の方を見る。


「それで、シロウは実家に帰らずに何して過ごすの?まさかダンジョン?」


 聞かれて俺は白状をする。


「俺は泊まりで奥多摩に行く予定なんだ」


「「「奥多摩?」」」


 三人がハモった。


「そう。奥多摩ダンジョンに行くつもりだ」

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