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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第71話 な、何かやってもうたー?!

 先ほど使った水魔法でできた水たまりにスライムが寄ってきていた。

 では、これから水魔法を使ってスライムを集め、スライムを倒してポーションを集めるか。

 ランク1ポーションなんか治癒魔法が使えるようになった今は必要がないだろうか。

 まあ必要ないと判断すれば売ればいいし、一万円くらいで売れるらしいから稼ぎとしては良い。

 それに人前で治癒魔法は使えないから、人前で怪我をした時に使うように1個くらい持っていてもいいだろう。

 それに水魔法を使っていたら水魔法のレベルが上がるかもしれないし、もしかしたらスキルのレベルが上げのために必要な経験値は魔物にダメージを与えた時にしか手に入らないのかもしれない。

 その辺の確認も含めて検証してみよう。


 俺はとりあえず出てきたスライムを叩いて倒す。

 いつもと同じマジックジェムがドロップする。

 ステータス画面から水魔法を一度無効にしてから有効にし直す。こうして使用回数のリセットをするのは面倒だが仕方がない。ステータス画面は出しっぱなしにしておこう。

 俺は再び軽く手を動かして水球を浮かべる。右手でボール状の水を握り、投げる。壁にぶつかるまでの飛距離もイメージ通りできるようになってきた。

 一か所にスライムを集めると合体してヒュージスライムになることがあるので、なるべくバラバラに水を撒く。

 そうしてしばらくすると再びスライムがわらわらと集まってくる。

 もはや作業だが、嫌いじゃない。

 そしてもう一度水魔法使用回数のリセットをしながら、ふと考える。治癒魔法のレベルを上げるにはどうしたらいいだろう?

 水魔法は戦っていけば自然に上がるだろう。だが治癒魔法は怪我を治さないと上がらないらしい。だが迷宮探索はできるだけ怪我をしないように進めていくものだ。だとすると治癒魔法のレベルを上げるのは至難の業じゃないのだろうか?


「う~ん……」


 せっかくなので治癒魔法のレベルも上げたいものだ。

 治癒魔法レベル1だと迷宮の中でしか魔法が使えないらしい。レベル2になれば迷宮の外でも効果が弱まるが使えるらしい。だとしたらやはり最低でもレベル2には上げたい。

 わざと自分の体を傷つけて治癒魔法を使うか……。

 しかし俺にはそんな自虐嗜好はない。ようするに痛いのは嫌なのだ。

 だれか都合よく怪我した人がたくさんいないかなあ……。


 そんなことを考えながら、集まってきたスライムをポコポコ叩いて倒してゆく。

 倒しながらふと思いつく。

 スライムを回復しても治癒魔法のレベルは上がるのだろうか?


 思いついたら即実践である。

 まずは死なない程度にスライムにダメージを与える。

 俺は木刀で軽く叩く。

 するとスライムは死んでマジックジェムを落とした。


「これじゃだめだ……」


 俺のレベルも4に上がっているし、攻撃力が高くなっているかもしれない。

 今度は木刀でスライムをチョンと触る。

 スライムの体表にふわっと波紋が広がる。

 これでダメージを与えられただろうか?

 次に俺はスライムに治癒魔法をかける。


「ヒール!……ん?」


 治癒魔法が発動しない。俺の魔力が弱いせいか?それとももしかして?

 俺はしゃがんでスライムの近くに手のひらをかざして再び治癒魔法をかける。


「ヒール!」


 今度はキラキラと光って治癒魔法が発動したことが分かる。


「これはあれか。俺の能力じゃ離れてると発動しないのか……」


 自分の魔法の適性のなさ(おそらくINTの低さ)に悲しくなる。戦士タイプの俺が水魔法と治癒魔法を使えても意味がない気がしてきた。

 ……いや、意味がないなんてことはないはずだ!

 気持ちを切り替える。

 その後、木刀をスライムにかざしてヒールを掛ければ、わざわざしゃがまなくてもヒールを掛けることができることを発見した。そう、経験値稼ぎの反復作業は、どれだけ効率的にできるかが大切なのだ。


 そうして俺は水魔法でスライムを集め、木刀でチョンってやってスライムにダメージを与えた後にヒールをかけ、そして倒す。という謎の作業を繰り返した。

 俺の推測では、これによって水魔法と治癒魔法のレベルを上げつつポーションを集めることができるのだ。

 あくまで俺の推測だが。


 その後も黙々と俺はその作業を繰り返した。

 何度もステータス画面から魔法使用回数のリセットをする。

 おそらく誰か一緒にいたら、途中でそろそろやめようと言い出すだろう。だが俺はソロ。自分が満足するまでやりたいようにやれるのだ。もしこれで魔法スキルのレベルが上がらなかったとしても、攻撃魔法は魔物を攻撃しないとレベルが上がらない、治癒魔法は人間を治癒しないと上がらないということが判明するわけだ。決して無駄ではない。

 そう、無駄ではないのだ。


 俺はそう自分に言い聞かせ、作業を継続する。

 おそらくマジックジェムの数は100個を超えた。普通そろそろポーションがドロップしてもいい頃だ。だが俺のドロップ率は悪いようで、なかなかポーションは出ないし、スキルのレベルも上がらない。

 だんだん俺は無駄なことをしているのではないか?という気がしてきた。

 腕時計を見るとすでに二時間以上この作業を繰り返している。


「ああ、もう!」


 ちょっとイラっとしてしまった。

 と、その時俺は気が付く、ステータス画面の数字が変化していたことに。


 ・・・・・・・・

 一ノ瀬獅郎:LV4▶

 スキル:スキル偽装(非表示)▶

     治癒魔法LV2(無効・非表示)▶

     水魔法LV1(無効・非表示)▶

 パーティメンバー:なし

 ・・・・・・・


 治癒魔法がレベル2に上がってるじゃん!

 驚いて思わず手元が狂い、チョンと触るはずのスライムを少し強く突いて倒してしまった。


「ヒール……あっ!」


 ルーディーンで、思わずヒールを使ってしまう。すでにスライムを倒しているのにだ。

 ミスったと思った俺の右手の木刀の先から、スライムが消えた箇所に治癒魔法が作動する。


「え?なんで?」


 何もない場所に治癒魔法が作動するはずがない。

 スライムは死んだはずなのに?

 そう思って木刀の先を見ると、そこには地面に転がる「1」と書かれた青いジェムがあった。

 そしてランク1ヒールジェムに木刀の先からキラキラが降り注ぐ。

 次の瞬間俺は目を疑った。

 ヒールジェムに書かれている数字が、「1」から「3」へと変わったのだ!


「はあ?!」


 俺は慌ててそれを拾い上げる。

 親指と人差し指でつかみ、目の前のそれを凝視する。

 それは間違いなく超レアアイテム、ランク3ポーションだった。


「な……何かやってもうたー?!」

以上で第四章完結です。

ここまでお読みくださりありがとうございました。


第五章ですがまだ書き途中のため、毎日更新はここで一旦お休みさせていただきます。

ストックが溜まりましたら再び毎日更新でアップしたいと思います。しばらくお待ちください。

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