第70話 俺のスキルの本当の能力の検証
日曜日の午後、俺は学園ダンジョンへとやってきた。第二階層の探索を禁止されているとはいえ、第一階層のスライムはポーションを落とすこともあるし、スキル検証もできるし、なんだかんだ第一階層の探索も楽しんでいる気がする。
さて、俺は誰もいなさそうな場所まで移動してきた。ここなら誰かと会うこともないだろう。
新宿ダンジョンの第一階層は、どこに行っても人がいて、こっそりスキル検証などする余裕もない。それに比べて学園のチュートリアルダンジョンは、わざわざ休日にまで探索をする生徒はほとんどいないため、こっそり作業に適している。
俺はステータス画面を出し、確認をする。
・・・・・・・・
一ノ瀬獅郎:LV4▶
スキル:スキル偽装(非表示)▶
治癒魔法LV1(有効・非表示)▶
水魔法LV1(有効・非表示)▶
パーティメンバー:なし
・・・・・・・
パーティーを解散したが、ユノの治癒魔法とマイカの水魔法は追加されていた。つまり一度コピーしてしまえば、パーティーを解散してもその後も使い放題ということだ。
思い返せば初探索で俺は紫村と千堂と一緒にパーティーを組んだが、彼らのスキルはない。
それにユノ達と組んだばかり時も、最初はこの表示はなかった。
この表示が現れたのは、二人のステータス画面を見てからだ。
おそらく紫村たちも、次に組んだ時に彼らのスキルの操作をすれば、俺のステータスに反映できるのだろう。……まあ次に組むことはまずないと思うが。
スキルをコピーできる条件はなんとなく分かった。おそらく間違いないはずだ。
それよりもなによりも問題なのは、このスキルが本当に使用できるかどうかだ。
それじゃ検証1、スキルが本当に使えるかの確認だ!
スキル使用が有効になっていることを確認し、まず俺は、マイカの水魔法が使えるか挑戦してみた。
手のひらを上に向け、水よ浮かべとイメージする。
体の中から手のひらに向けて何か目に見えない力が流れていくのを感じる。もしかしてこれが魔力だろうか?
俺はさらに集中をする。すると突然俺の手のひらの上に、野球のボールくらいの大きさの水球が発生した。
「できた?!」
やはり俺にはコピーしたスキルを使うことができるのだ!
次はこの水球を飛ばすことだ。
俺は右手を高く掲げ、水球よ飛べ!とイメージする。
次の瞬間、水球は弧を描いて前方へと飛んで行った。
バシャっと音を立てて地面に落ちる。
……なんかイメージと違う。
マイカはもっと直線的に飛んで行った。俺の水球では、モンスターにダメージを与えられる気がしない。
「もう一度やってみよう」
俺は先ほどと同じように水球を発生させ、今度はもっと速く飛ぶイメージで射出する。
だが水球は先ほどと同じわっとした動きで飛び、地面へと落ちた。
スピードも遅ければ、なんなら飛距離もそんなにない。5メートル程度だろうか。走り幅跳びでももっと跳べる気がするので、俺の場合は跳び蹴りをくらわした方がましじゃなかろうか?
投げるようなモーションで飛ばしたらどうなるだろう?それならそこそこのスピードが出る気がしたので、挑戦してみることにした。
水球を浮かべ、それを野球のボールを持つような姿勢でそっと握る。
大きく振りかぶり、上げた片足を踏み込んでオーバースローで投げる。
水球は野球の投球のような速度と飛距離で飛んで行って、壁にぶつかった。
やはりイメージ通りだった。もしかしたら俺は魔法使いが魔法を使うイメージよりも、体を使ったスポーツのような動きの方がイメージしやすいのかもしれない。しかしこれだとマイカのように連発ができないな。まあ魔法も使い方によるか。
もう少し練習してみようと、四回目の水球を作り出そうとした時、体の中から感じたエネルギーの感覚がなく、手のひらの上に水球は発生しなくなってしまった。
「あれ?」
これって、もしかして……魔力切れというやつか?
ちょっと待ってくれ。マイカはレベル1の時点でほぼ無限に魔法を使い続けていた。なのに俺はレベル4でも3回しか使えないのか?
心当たりはある。俺の説では、知力が魔法操作の良し悪しを決める。まあ正直この学園の学力は高い。俺はこの学園の中では学力はギリギリだ。ようするに知力が不足している可能性が高い。それと戦闘スタイルだ。俺は間違いなくフィジカル派。戦士タイプだ。マイカは魔法使いタイプ。ユノも回復魔法使いだから同じはず。だから戦士タイプの俺は、二人と違って魔法を使う才能がほぼないのだ。しょうがないのだ。
魔力が尽きたら回復魔法も使えないのだろうか?
俺は試してみる。
検証2、MPが尽きたら他の魔法も使えなくなるのか?だ。
怪我はしていないが、とりあえず右手で左腕を癒す姿勢で、回復魔法をイメージしてみた。
するとキラキラとした光が左腕に降り注いだ。
どれだけの怪我を治せるかは分からないが、治癒魔法も使えそうだ。
だとすると攻撃魔法と回復魔法で使うMPが違うとか?それともスキル毎に使用回数があるのだろうか?これは今後何度か調べてみないと分からないだろう。
それじゃあ今度は、
検証3、スキルを無効にしたら使えなくなるかどうか?の確認だ。
・・・・・・・・
一ノ瀬獅郎:LV4▶
スキル:スキル偽装(非表示)▶
治癒魔法LV1(無効・非表示)▶
水魔法LV1(無効・非表示)▶
パーティメンバー:なし
・・・・・・・
治癒魔法と水魔法を無効にする。
そういえば水魔法はすでに使えなくなっていたので、どちらにせよ使えないか。まあいい。
無効状態で魔法発動をイメージしてみたところ、やはり治癒魔法も水魔法も一切使えなかった。
では今度は二つのスキルを元に戻してみる。
治癒魔法を使ってみたところ、先ほどと同じくキラキラしたやつがでた。
治癒魔法は何回使えるのだろうかと思い、繰り返してみる。その結果その後2回キラキラが出て、その後は魔力の感覚が消えた。最初の1回を加えると計4回か。一日4回かな?それとも途中で回復して使えるようになるのかな?
もし時間経過で使えるようになるのであれば、水魔法もまた使えるようになるのかな?と思い、もう一度水魔法を使ってみる。
「出た!」
先ほど打ち止めになったはずの水球が発生した。
何回できるか確認のため、水球を飛ばす。今度も三回やったら出なくなった。
「わずか数分で全回復する?だとしたら超便利じゃん」
そう思ったのだが、その後10分ほど待っても、回復魔法も水魔法も使えないままだった。
なんでだろう?
俺は考える。
さっき水魔法が再度使えるようになった理由を考える。
そういえば、一度水魔法を無効にしてから有効にし直した。もしかしてそれか?
俺は検証のため、再び水魔法と回復魔法を無効にし、そして有効に直した。
その結果、
「出た!」
水魔法も回復魔法も使えるようになっていた。
これはすごい発見だ!
要するに俺のスキルの能力を使えば、俺の苦手な魔法系スキルをほぼ無限に使用できるということだ!
同時に俺の理論、人にはMPがありそれを使い切ると魔法が使えなくなるというのは違っていたのかもしれない。まあそれはどうでもいい。MPがなくなっても俺は無限にスキルを使うことができるなら、もしかしたら簡単にスキルレベルも上げることができるかもしれない。
じゃあ次は魔法を使いまくってスキルレベルを上げることができるかの検証だ!
「ふふふ……」
俺は楽しくてニヤニヤが止まらなかった。