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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第一章 迷宮と少年たちのはじまり -The Beginning of Labyrinth and Youths-
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第7話 新入生への注意事項

 少しして担任が教室へと入ってきた。

 入学式を終えて、臨時で職員会議があったらしい。紫村の挨拶での騒動の落としどころを決めるためだ。

 その結果、学園から紫村へのお咎めは無し、そして貴族たちにもDクラスへの報復行為の禁止を通達することになったらしい。

 つまりお互いに大げさにせずに騒動を治めろということだった。


「紫村は大変だったな。とりあえず我々教師からは何も言う事はないが、今回のことでおそらくお互いの印象が最悪になったと思う。だから今後しばらくは違うクラスとはなるべく関わらないようにしてくれ。当然生徒同士の喧嘩は厳禁だ。もしも揉め事になったとしても、絶対に手を出してはダメだからな。今日からお前たちは迷宮探索者となったんだ。迷宮探索者は一般の人よりも力が強いのだから、暴力なんてもってのほかだ」


 法律では、一般の人の傷害事件よりも、迷宮探索者が障害を起こした時の方が罪が重くなる。

 それだけ迷宮探索者の暴力は危険なのだ。

 そんなことは紫村も分かってくれているはずだが、どうだろう?心配だ。

 職員会議の報告が終わると、担任の真島は本題に移る。


「それじゃあ次は級長・副級長の選出だが、例年だと入試のそれぞれクラス別の主席と次席にやってもらうことになっている。当然このクラスの主席は学年主席でもある紫村だが、どうだ?級長を頼んでもいいか?」


「断る理由がありません」


 紫村は胸を張って答えた。


「それじゃ次席の千堂も副級長をやってくれるか?」


「もちろんです。よろしくなキョウヤ」


「ああ。またお前の力を貸してくれ」


「もちろんだとも」


 そう言いあって二人は握手を交わす。

 そんな二人を見た一部のクラスの女子たちが黄色い悲鳴を上げる。

 キャーじゃねえよ。普通にキモイだろこの二人。


「では今年一年間、二人にはクラスを代表して引っ張って行ってもらいたい。よろしく頼む。次にダンジョンについての注意事項をいくつかしておく。まず明日はスキルについての説明と確認がある。ダンジョンの入り口まで行って、スキルを持っている者にはスキルを使ってもらう。本格的な探索はまた後日だ。スキルについてだが、誰が何のスキルを持っているかは個人情報になる。もちろん同じパーティーになった者のスキルを知ることは大事だが、この先クラス対抗戦などでは所持スキルの情報がばれているのとばれていないのでは大きな違いになる。公開していいと言っている者のスキル情報については自由だが、基本的にはあまり人のスキルについては言いふらさないようにしてもらいたい。また所持スキルを秘密にしている者にしつこく聞かないように」


 明日はいよいよ迷宮の入り口まで行けるらしい。みんなのスキルを見るチャンスだ。ワクワクする。


「それと君たちには重大なことになるだろうが、在学中は恋愛は禁止だ」


「えー!」


 めんどくさそうな女子から不満の声。

 そんなのおまえ入学の注意事項に書いてあったから知ってるはずだろう。


「まあ、そう言うな。確かにおまえたちはアイドルとかではないし、多感な10代に恋愛禁止は酷かもしれんな。だが迷宮探索ではパーティーメンバーとの人間関係がよく問題になる。特に恋愛に関しては、同じパーティーに恋人がいた場合、他のメンバーよりもあからさまに恋人を優先する行動を取ってメンバーのひんしゅくをかったり、その逆で恋人でない仲間を優先したときに恋人の機嫌を損ねたりして、それ以降の連携に支障をきたすなんてことがよくある。社会人でさえそうなのだから、お前たちのように恋愛経験が少ない若い者ではそれで迷宮探索に支障をきたす可能性がかなり高い。もちろん恋愛が悪いことだとは言わないが、この学園では三年間で全員をレベル10にするというカリキュラムがある。問題を起こしてばかりいてはそれが叶わなくなるんだ。どうしても恋愛がしたいというのであれば、今からでも遅くない、退学届けを書いてから恋愛をしてくれ」


 校則なのだから仕方がないだろう。恋愛なんて卒業してからでもできる。

 俺は教師の言葉に納得する。

 まだ不満を持った者もいるのだろうが、クラスに反論をするものはいなかった。


「というわけで、パーティー編成も当然同性とのみになる」


「ええー?!」


 再び一部の女子たちから不満の声が。


「レベルを上げるためには一人一人が自分で魔物を倒せるようになる必要がある。男女のパーティーを組んでしまうと、どうしても男が魔物を倒して女は何もしなくなることが多い。女子生徒諸君もこの学園に入学したからには、男子に頼ることなく、自分で魔物を倒してレベルアップしてくれ」


 当然の話だ。だが一部の女子たちはまだ納得がいかないといった顔をしていた。

 担任はそれに気づいたのか、一つの抜け道について話す。


「ただまあそれは授業でダンジョンを探索する時だけの話だ。放課後にダンジョン探索したり、休日に学園以外のダンジョンに潜る機会があったとして、そんな場合まで男女混合パーティーを禁止するわけじゃない。飽くまでも授業としての探索での話だけだから、もしそういう機会があった時はみんなの好きにしてくれ」


 俺は、休日に学園以外のダンジョンに潜るというワードに胸がときめいた。

 そうだ。俺たちは迷宮探索者になった。だから公開されているダンジョンなら、どこにでも潜っていいことになる。学園のダンジョンに飽きたら違うダンジョンに挑戦するのも楽しそうだ。

 とにかく早くダンジョンに潜りたい。


「最後に課外活動についての連絡だ。ご存じの通り、おまえたちは迷宮探索者となったからには今後全てのスポーツの公式大会への参加が禁止されることになる。レベルアップをした人間は普通の人間よりも著しく身体能力が上がってしまうため、ドーピングと同じになってしまうからだ。だから部活動も普通の学校のようなスポーツの部活動はこの学園にはない。その代わりにこの学園には、様々な武術部が存在する。一番規模が大きいのが剣術部だ。槍術部や弓術部などもある。これは大会に出るための部活ではなく、すべては迷宮探索のための技術を磨くための部活だ。ほかにもスキル研究部や、スキルの中でも魔術スキルに特化した魔術研究部などもある。どのような部活に入るのも自由だし、部活に入らないというのも自由だ。だが3学期になると、3階層、ゴブリンという人型の魔物との闘いが始まる。その時初めて対人戦闘術の必要性を感じるものが多く、武術系の部活に入る者が増えることが多い。すぐに入部しても、三学期になってから入部しても、入部時期も自由だ。よく検討してみてくれ」


 部活動も面白そうだ。だがそれ以上にとにかく迷宮に入ることが面白そうだ。


「それと授業の迷宮探索だけでは、どうしても遅れてしまう者が出てしまう。そういう者は授業だけでなく、授業が終わった17時から19時まで学園のダンジョンが解放されているので、自主練習に課外活動として迷宮探索してもらってもいい。部活動を優先するか、課外でも迷宮探索をするのを優先するか、それもそれぞれ自分で決めてくれ」


 そして説明が終わると、入学初日もそれで終わり、俺たちは寮へと帰って行った。

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