第68話 チートスキル発覚
今まで一人でいる時にしかこのステータス画面は開いたことがなかったから気づかなかった。俺のスキル「スキル偽装」には、まだ知らない能力があったのだ!
ユノたちは俺の方に気付いていない。俺は三人にきづかれないようにステータス画面に手を伸ばした。
まずはユノの名前の右側の三角マークを触る。
・・・・・・・・
早坂柚乃:LV3▶
スキル:治癒魔法LV1(有効)▶
パーティメンバー:一ノ瀬獅郎▶、百田舞香▶、瀧川伊織▶
・・・・・・・・
なんとユノのステータスが表示された。俺のスキルはパーティーメンバーのステータスも見ることができるらしい。
それによるとやはりユノもLV3に上がっていた。
LV3の右側の三角を押すと俺の時と一緒で表示する数字を下げたり戻したりすることができた。
そして問題はスキルだ。俺の時は(表示)と(非表示)を切り替えることができ、非表示の時はスキルボードにスキルを表示させないことができた。しかしユノはというと、表示・非表示ではなく、(有効)となっていた。俺は治癒魔法の右側の三角マークを押してみた。
・・・・・・・・
治癒魔法◀
・治癒魔法LV1・・・有効(表示)
・・・・・・・・
俺は恐る恐る有効の文字を押してみる。
・・・・・・・・
治癒魔法◀
・治癒魔法LV1・・・有効(非表示)
・・・・・・・・
これは?
俺はもう一度押す。
・・・・・・・・
治癒魔法◀
・治癒魔法LV1・・・無効(非表示)
・・・・・・・・
無効?それはまずい。ユノの魔法が使えなくなってしまう!
俺は慌ててもう一度押す。
・・・・・・・・
治癒魔法◀
・治癒魔法LV1・・・有効(表示)
・・・・・・・・
すると最初の表示へと戻った。有効(表示)→有効(非表示)→無効(非表示)の順に変わるようだ。
まだ実際に確認していないが、これは恐らく、
有効(表示)・・・スキルボードへの表示もあり魔法も使える
有効(非表示)・・・魔法は使えるがスキルボードに表示されない
無効(非表示)・・・スキルボードに表示されないし魔法も使えない
ということだろう。つまり俺のスキルはパーティーメンバーのスキルも偽装できるのだ。
念のためマイカの方も確認したが、同じ挙動だった。
何というか、俺のスキルは持っているスキルを隠したり使えなくしたりできるということらしい。なんだか使い勝手は微妙だが、バレたらまずいスキルのような気がしたので、黙っておくことにしよう。
そうしてひとまず俺は自分のステータス表記に戻した。
そして、そこに書かれている文字に、俺は言葉を失った。
・・・・・・・・
一ノ瀬獅郎:LV4▶
スキル:スキル偽装(非表示)▶
治癒魔法LV1(無効・非表示)▶
水魔法LV1(無効・非表示)▶
パーティメンバー:早坂柚乃▶、百田舞香▶
・・・・・・・・
そこには、先ほどまでなかった、ユノとマイカのスキルが表示されていたからだ。
まさか二人のスキルを奪ってしまったのでは? そんな罪悪感のような感情が胸をよぎる。急いで二人のステータスを確認するが、そこには最初と変わらずそれぞれのスキルが表示されていた。思わず俺はほっとする。
つまり二人のスキルを奪ったのではなく、コピーしてしまったということか?
パーティーメンバーのスキルを自分のスキルとして偽装できるから「スキル偽装」なのだろうか。
俺は自分のステータス画面に表示されている「治癒魔法LV1(無効・非表示)▶」の右側の三角マークに人差し指を伸ばすと表示が切り替わる。
・・・・・・・・
治癒魔法◀
・治癒魔法LV1・・・無効(非表示)
・・・・・・・・
デフォルトでは無効(非表示)となっている部分を触る。ユノたちのスキルをいじった時と同じく、有効(表示)→有効(非表示)→無効(非表示)の順に変わるようだ。
つまりこれを有効にすれば俺にも二人と同じスキルが使えるのでは?
スキルボードでばれてしまわないように、治癒魔法も水魔法も「有効(非表示)」に変えておいた。
実際に使って試してみなければ分からないが、もし本当にスキルが使えるようになっていたら、これは紛れもなくチートスキルだ。
いろいろな人とパーティーを組み、そのスキルをコピーさせてもらい自分のスキルとして偽装してしまえば、いくつものスキルが使えるようになってしまうのだ。
生まれつき1個持っていれば幸運と言えるスキルが、2つ目以降を手に入れるには奇跡的に迷宮でスキルオーブを手に入れるしかない、それが俺の場合はこんなに簡単に複数のスキルを手に入れることができるのだ。
このスキルは危険だ!これはチートだ――いや、チートすぎる。
もし誰かに知られたら、危険人物として捕まるかもしれない。冗談じゃない。
俺はチート過ぎる自分のスキルに対し、ワクワクする高揚感と同時に恐怖を覚えた。
「シロウー!第四階層に行かないの?」
ユノの声が聞こえて、俺は慌ててステータス画面を消した。
「あ、ああ。ぼーとしてすまん」
ところで俺のスキルによって表示されるステータス画面は、彼女たちにも見えるのだろうか?
第三者にも見えるのであれば、迂闊に表示できない。
最も信頼のおけるユノ達ならもしバレても内緒にしてくれるだろうと思い、俺は思い切ってユノを相手に確認してみることにした。
俺は自分のステータス画面を表示する。
「ユノ、この辺に何か浮かんでいるように見えるか?」
「え?何、何?どういうこと?」
俺は自分の手前のステータス画面が浮かんでいる空間に両手をかざし、ユノにも見えるか聞いてみる。
だがユノはそこ部分を覗きこみ、何も見えないリアクションを取る。
「何もないように見えるけど?」
「いや、何もないんだが、もしこれくらいの距離で、スキルボードがなしでもスキルの確認ができたら便利だなあと思って」
「どういうこと?」
「ゲームだと任意のタイミングで自分のステータスの詳細を見れるじゃん?現実でもそうなればいいのになあと思って」
俺は適当なことを言ってごまかす。
とりあえずユノには俺のステータス画面が見えないということが分かった。つまり俺以外の人間にこの画面は見えないということだ。これで普段探索中にスキルを使っても、誰かに見られてばれる可能性はなくなった。
「またゲームの話?現実とゲームは違うんだからね」
「そ、そうだな。それじゃまあ今日はこんなところで帰りますか?イオリも満足したよな?」
「ああ。レベルアップもできたし、今日は満足だ。続きはまたの機会の楽しみにとっておこう」
俺たちは階層主を倒したことで現れた第四階層への階段を降りてゆき、そしてポータルで地上へと戻るのだった。
★★★★★★★★
帰りの電車では俺たちの強みと集団戦への課題などを話し合いながら帰った。
地上でスキルボードを確認し、三人ともレベルが3に上がっているのを確認して喜んでいた。
それにしても三人ともまさか一日でレベル3に上がってしまうとは思わなかった。そして三人は今俺が探索中の第四階層に辿り着いてしまった、俺がせっかく先に進んで先導しようとしても、すぐにこいつらには追い付かれてしまうんじゃないだろうか?
でもなんというか嫌な気分ではない。
俺は、一人でレベルアップする楽しさとはまた別の、仲間と一緒に強くなる楽しさを分かり始めてきていた。
そしてもう一つ、俺の心の中には、今日発見した俺の新たな能力に対して、一人でも引き続き使えるのか明日またダンジョンに潜って検証してみようと心に誓うのだった。




