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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第67話 イオリ VS ホブゴブリン

 今から階層主に挑戦しようと言うイオリに対し、俺は少し回答を考える。

 この四人での戦いは、俺とイオリの攻撃力の高さが際立っている。だが先ほど経験したように、集団戦となるとまだ課題が多いのも事実だ。

 だがせっかく第三階層まで来たのだ。このまま第三階層主のホブゴブリンを倒してしまえば、ユノ達も今後ポータルを使って第四階層から探索を再開することができる。逆に今から戻ったら、次も第一階層からやり直すことになる。第一階層からやり直すとなると面倒なのは、各階層主の部屋の行列だ。あれを待つの間が暇なのだ。だとしたらやはり今日このままの勢いでホブゴブリンを倒してしまいたい。

 それでは戦う前提で検討してみる。階層主の部屋に出る敵はホブゴブリンだけだ。集団戦に問題がある俺たちだが、敵が一人の時は特に問題ないだろう。それにホブゴブリンなら俺一人で倒すことも可能だ。つまり、


「余裕だな……」


 そう、ホブゴブリンを倒した方が今後の探索にも効率が良いのだ。


「行こう、階層主の部屋に」


 俺の言葉を聞いてイオリが嬉しそうに笑った。

 ユノとマイカはびっくりしていたが、説明をして納得してもらった。


・・・・・・・・


 第三階層主の部屋の前の行列は、第一階層や第二階層と比べると少し少なかった。

 そして順番が来た俺たちは扉を開けて部屋の中へと入る。

 部屋の中央にはこん棒を持った大型のゴブリン、ホブゴブリンが待ち構えていた。


「武器を持った敵は初めてだな」


 イオリが緊張している?確かに第三階層に出るゴブリンは武器を持っていない。ホブゴブリンが持つこん棒とイオリの日本刀がぶつかったら、当たりどころが悪ければ日本刀は折れてしまうだろう。


「シロウ。シロウは一人であいつを倒したのだよな?」


「ああ、そうだけど」


「それじゃあ私もあいつと一対一で戦わせてくれないか?」


「……武器は日本刀で大丈夫か?」


「ああ。万が一ピンチになったら助けてくれ」


 万が一か。そうだな、たぶん今のイオリなら一人で問題なく倒せるだろう。


「分かった。イオリが怪我をしたら交代するぞ」


「ありがとう」


 俺の決定にユノとマイカも口出しはしなかった。

 イオリが一人で部屋の中央にいるホブゴブリンに向かって歩き出し、俺たち三人は離れた場所でそれを見守ることにした。


 ある程度の距離まで近づくと、イオリは日本刀を抜き両手で構える。

 ホブゴブリンもイオリの強さを感じたのか、半身でこん棒を前に出してイオリの様子を見ている。

 イオリの日本刀を警戒しているのだろうか?こん棒の先を左右に振ってイオリをけん制している。

 イオリは前後に小さく動きながら間合いを測る。

 俺たちは二人が対峙するのを見つめる。身長はイオリの方が高い。だがホブゴブリンの方が筋肉の量が多く力強そうに見える。イオリは身長こそ高いが細身なので、知らない人から見たら華奢に見えるだろう。だが俺たちはイオリの強さを知っている。勝つのはイオリだと信じていた。


 先に大きく動いたのはホブゴブリンだった。

 大振りにこん棒を振り回した。イオリはバックステップでそれを避ける。簡単には踏み込めないようだ。再びイオリは剣先を向けたまま距離を調整する。

 ホブゴブリンも刀が当たらない距離でイオリをにらみつける。イオリが動いたところを狙おうとしているのだろう。だがイオリも容易には踏み込まない。


 イオリは今、あえて間合いを詰めなかった。あの判断、鋭いな。

 俺もこの戦いの観戦に引き込まれていた。

 そしてやはり先にしびれを切らすのはホブゴブリンだ。こん棒を再び振り回す。イオリは一度交わすと一歩踏み込む。その殺気に気付いたのかホブゴブリンは後ろにジャンプして逃げた。

 そして再び膠着状態になる。


「大丈夫かな?」


 ユノが心配そうに声を出す。

 そんなユノに俺は笑って答える。


「大丈夫さ。見てみろイオリの顔を。笑ってるじゃないか」


 イオリは楽しそうな顔をしていた。

 対して焦っているような顔のホブゴブリンは、また我慢ができなくなりこん棒を振り下ろした。

 その時だった。同時にイオリの日本刀が振り下ろされる。

 ホブゴブリンのこん棒とイオリの日本刀が衝突する!と思った瞬間だった。響いたのは、ゴブリンのこん棒が真っ二つになる乾いた音だった。

 切り落とされたこん棒の先端は、カランという音を立てて地面を跳ねる。


「おお!」


 俺たちは思わず声を上げる。

 慌てたホブゴブリンは、小さくなった自分の武器をブンブンと振り回す。だがその距離で振り回しても、もうイオリには届かない。そしてイオリはホブゴブリンが次の隙を見せるのを待っていた。

 そして次にイオリが踏み込んだ瞬間、横なぎに振られた日本刀は、ホブゴブリンの首をはねていた。


「うわー!」


 スポーンと飛んだ首に浮かぶホブゴブリンの断末魔の表情が一瞬見えたが、死亡と同時にホブゴブリンは消滅した。えぐいのを見ちゃったぜ。


「あ!」


 イオリが声を上げた。


「たぶんレベルが上がった」


 イオリがレベル3に上がったのならば、一緒にパーティーを組んでいるユノとマイカのレベルも上がったことだろう。


「ユノとマイカはレベル3になった感覚は分かるか?」


 俺の問いに二人が同時に答える。


「分かんない」


 レベルが上がった時に感じる、体の軽さや力がみなぎる感覚は、人によっては分かりにくいようだ。

 そういえば俺のスキル偽装でもパーティーメンバーの表記があったはずだ。確認できるだろうか?

 俺はステータス画面表示を念じる。


 ・・・・・・・・

 一ノ瀬獅郎:LV4▶

 スキル:スキル偽装(非表示)▶

 パーティメンバー:早坂柚乃▶、百田舞香▶、瀧川伊織▶

 ・・・・・・・・


 それを見て気づく。あ、パーティーメンバーにレベル表記はなかったわ。

 そしてステータス画面を消そうと思ったが、俺はあることを発見してしまう。

 ……ユノとマイカの名前の右側にも三角マークがあることに!

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