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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第65話 ゴブリンを倒せ!

「いや、今日初めて第二階層の探索を始めたばかりなのに、もう第三階層に行くの?」


 俺の言葉を聞いて、三人は何を言うの?というような表情で俺を見る。

 そしてユノが口を開く。


「第二階層主だってイオリが簡単に倒しちゃうんだから、第三階層を探索した方が良くない?」


 もっともだ。そして三人とも第三階層の探索を始めることに異論はないらしい。


「仕方ないな……。それじゃ行くか。聞いたことがあると思うけど、第三階層に出没する魔物はゴブリンだけだ。ここで初めて人型の魔物と遭遇する。人によってはゴブリンを殺すことに気分を悪くしてしまう場合がある。もし誰かそうなったら、すぐに探索を中断するからな」


「うん」「はい」「ああ」


 俺の説明に、ユノ、マイカ、イオリはそれぞれ相槌を打った。

 俺は全然平気だったが、学園では毎年この階層で人型の生き物を殺すことに心が耐え切れず退学してしまう生徒がいると聞いたことがある。どれだけ優秀でも心が優しすぎると探索者には向いていないのだ。

 特にユノ達三人は女性でもあるし、もしかしたら耐えられないかもしれない。その時はすぐにフォローできるよう、ここは慎重に探索を進めていこうと思う。


 俺たちが歩き出すと、一匹のゴブリンがいた。


「私にやらせてくれ」


 このパーティーでは、やはりイオリが一番バッターだ。

 脇に刺した刀に手を置きながら、イオリはゆっくりとゴブリンに向かって歩いていく。

 イオリの存在に気付いたゴブリンは、ダッシュしてイオリに襲い掛かった。

 だがイオリが日本刀を一閃すると、やはりここでも一撃でゴブリンを仕留めるのだった。


「なるほど。爬虫類型の魔物と戦うのとは違う感覚だ。私はどちらかというと、人型の方が戦いやすいきがするな」


 イオリがゴブリンを初めて切った感想を告げる。

 しかし、レベル2なのにゴブリンを一撃か。俺がゴブリンを一撃で倒せるようになったのはレベル3に上がった時だ。改めてイオリの強さを再認識した。


「イオリは何歳ころから剣を習ってたんだ?」


 俺は思わず聞いてみる。おそらくここまで強くなるには、相当の年月がかかっているはずだ。俺なんかスポーツはなんでも得意だったが、武術の心得など一切なく、木刀を実際に握ったのは学園に入学してからだ。


「私が剣を習った歳?うーん……何歳だろう?気づいた時には兄と一緒に父から習ってたんだ」


「物心ついたころからってこと?」


「ああ」


 なんてことだ。だとするとすでに10年以上の経験があるということか?俺なんかがそんなイオリに勝てるはずがない。勝てなくて当たり前なんだ。


「なるほどなあ」


 俺は一人で納得し、うんうんと頷いていた。

 次に見つけたゴブリンには、マイカに魔法で攻撃してもらうことにした。接近してきたら俺とイオリで対処するという計画で。

 その結果、ウォーターボールの連発で、接近してくる前にゴブリンを倒すことに成功した。


「マイカもすごいな。まだまだ魔法は使えそうか?」


「うん。たぶんだいじょうぶ!」


 両手をガッツポーズして答えるマイカ。


「さて、次はユノの番なんだけど……」


「私、怖いよ」


 イオリの攻撃力なら問題ないし、マイカは魔法で遠距離攻撃ができる。だけどユノがゴブリンと戦うにはどうしたらよいだろうか?普通に一対一で戦ったら、ユノが大けがをしてしまうだろう。

 そして俺が考えた結果……。


「ユノ!今だ!思い切り叩け!」


 俺が地面に押さえつけているゴブリンは、フゴフゴと言いながら手足をばたつかせて暴れていた。

 俺に頭を押さえつけられ動けなくなったゴブリンをユノに攻撃をさせるのだ。


「逆に叩きづらいよ!」


「早く叩けえ!」 


「どうやればいいの?あーん、イオリぃ!」


 イオリに助けを求めるユノ。早くしてくれ、ゴブリンが暴れるから。


「木刀を貸してみてくれ」


「はい」


 イオリに言われ、唯一の武器を簡単に手渡すユノ。戦う気あるのか?


「こう、なんというか、スイカ割り?私もやったことはないか、そんな感じで叩けばいいんじゃないかな?」


 そう言ってイオリが木刀を振り下ろす。

 ボコッ!というゴブリンの頭蓋骨が割れた衝撃が俺の手にも伝わる。そしてゴブリンは消滅した。


「あ、すまない、倒してしまった……。ユノ、こんな感じでどうだ?」


 イオリ、木刀でもゴブリンを一撃か……。それよりも……


「ユノ、次はいけそうか?」


「やってみる!」


 次に見つけたゴブリンを捕まえ、再び俺が抑え込むと、今度こそユノは思い切り木刀を振り下ろした。

 ゴツン!と木刀が当たるたびに、ギャーッ!という気味悪い悲鳴を上げるゴブリン。なかなか倒せずにユノの手が震えるけど、最後には叫びながら一撃を加えるとついにゴブリンを倒した。


「怖かったぁ……」


「はぁはぁ……アシストする方が疲れる……」


「ごめんなさい……」


「いや、それはいいんだ。そんなことよりどうだ?ゴブリンを倒すことに忌避感はないか?」


「うん、思ったより平気かも。……だってあんなの、見た目からしてアウトでしょ」


「そうか。それなら良かった」


 三人とも第三階層の人型モンスターを倒すことに対する壁は問題なく越えられたようだ。


「それでシロウ。私たちがレベル3になるにはあとどれくらい戦えばいいんだ?」


「ん?」


 戦闘狂イオリがやる気を出している。


「第二階層じゃあんまり戦ってないし、第三階層ではこれで4体目。俺も含めて四人パーティーだから……あと36匹くらい?」


「そうか!では頑張ろう!」


「待て待て!そんな一度にたくさんは遭遇しないぞ……」


 と、俺は言いかけて、先週の事を思い出した。

 先週はゴブリンの集団に襲われているパーティーを救出した時、なぜかあの部屋にはゴブリンが大量に出現していた。ダンジョンにはモンスターが多数発生する場所があるという。


「あそこに行けば……」


 思わず独り言をつぶやいたのがいけなかった。


「よし!じゃあそこへ行こう!」


 戦闘狂イオリは、本気で今日中にレベルを3まで上げるつもりらしい。

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