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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第63話 新装備のお披露目

 その後も第四階層で戦い続けたところ俺はついにレベル4にアップしたので、そこで探索を終えて帰ることにした。

 アイテム買取所へ行き、今日入手したマジックジェムを売る。全部で4000円になった。一人で4000円は新記録だ。だがバックラーが7000円したからまだ赤字だ。冷静に計算してみると、俺は少し慌てて先に進み過ぎているのかもしれない。例えばもう一度第四階層を探索してもう4000円稼げればバックラーの代金の元は取れるのだ。

 しかし俺はそろそろ第四階層主へ挑みたくてたまらない気持ちになっている。

 どっちが良いかまた後で迷宮資料室へ行って、メイリスに相談してみよう。


 そしてお昼になり、買い物を終えたユノ達と合流した。


「三人ともすごい荷物だな……」


「そりゃあそうだよ。探索服一式買いそろえたからね。後で見せてあげるね」


 一度荷物をコインロッカーに預けて、俺たちは迷宮ビルの食堂で昼食を食べる。お手軽で栄養豊富な食事で大満足だ。

 午後からはユノ達のレベルアップのために第二階層の探索だ。

 一旦別れて更衣室から出てきた三人の新しい装備は、なんだか華やかな色合いだった。

 ユノはビビッドオレンジのジャケットにスリムなカーゴパンツ。見るからにアクティブで、まさにユノらしい活発な雰囲気だ。マイカは薄いラベンダー色のローブにベージュのマントを羽織っている。魔法使いって感じだ。そしてイオリは動きやすそうなタイトスーツ。ただものではない感じがする。だが三人の中で一番強そうなイオリだけまだレベル1だ。

 三者三様の服装だが、それぞれの性格が出ていた。


「どう?かわいいでしょ?」


 ユノに問いかけられても、何と答えていいか分からず、俺は返事に困る。


「私たちがかわいすぎて照れちゃった?」


「断じて違う」


 だが四人で歩いていると、男性から見られている視線を感じる。やはりユノ達は目立つのだろう。


「ところで、シロウは何でお鍋のフタなんか持ってるの?」


「は?」


 鍋のフタ?なんの話だ?ユノの視線の先は俺の左手だった。俺は左手を持ち上げる。

 ユノは俺の左手に持つバックラーを見ていた。そこでようやく俺はユノが言っていることを理解した。


「な、鍋のフタじゃねえ!バックラーだ!」


「あれー?そのフタ、取っ手が逆に付いてるよー?」


「だから、これは盾なんだからこれでいいんだよ!」


 気づけばユノもマイカもイオリもクスクスと笑っていた。はっ?もしかしてからかわれているのか?


「お、俺にツッコミさせるな!」


「フフフ、だってシロウって、本気で怒ってるんだもん」


「お、怒ってねえし!」


 くそ、悔しい……。

 俺が大声を出し過ぎたのか、周りから視線を感じる。余計に恥ずかしい。

 ふと視線を気にして周りを観察すると、見られているのは俺ではなくユノ達のような気もする。

 周りを見回すと、男性ばかりだ。探索者は男性の方が圧倒的に多いのではなかろうか。女性の探索者は珍しく、特にユノ達のようにかわいらしい女性はさらに珍しいのだろう。


「やっぱりシロウといるとあんまり声を掛けられないね」


「どういうこと?」


「三人で買い物してた時、何回も男の人から声を掛けられたんだよ」


 ユノの説明に、マイカが補足する。


「先週の原宿はそんなことなかったのにね」


 なるほど。原宿は若い女性が多いが、探索者服を売っているようなところは女性が少ないから珍しかったのだろう。

 そんな雑談をしながら、俺たちは迷宮へと入って行った。


「イオリだけレベル1だけど、普通にヒュージスライム倒せるから、まっすぐ第二階層目指していいよな?」


「ああ」


 イオリの了承を得て、俺たちは不要な戦闘を避けてまっすぐ階層主の部屋へ向かった。

 階層主の部屋の前では、恒例の順番待ちの列が並んでいた。


「行列ができてるー!」


「都会のダンジョンは人が多いからな」


「そうなんだね。さすが先週来ただけあって詳しいね」


 ユノのその言葉がお世辞だと分かっているが、悪い気はしない。

 行列に並んでいると、俺たちに話しかけてくる者がいた。


「あれ?君たちも階層主の部屋に挑戦するの?女の子ばかりみたいだけど大丈夫?」


 なんだかチャラい感じの男たちだった。ナンパ目的だろう。声を掛けられたユノはあからさまに嫌そうな顔をして答えた。


「男性もいるので大丈夫です」


 そう言って俺の後ろに隠れる。

 チャラ男たちは俺の顔をじろじろと見て、そして再びユノ達に声を掛ける。


「見た感じみんな若いみたいだけど何歳?良かったら俺たちと一緒に行こうか?俺たちも三人だし、ちょうどいいじゃんね」


 何がちょうどいいのだろうか?合コンでも始めるつもりなのだろうか?

 ここは迷宮だぞ?お前ら何しに来てるんだ?

 ユノが困ってるみたいなので、俺が代わりに答えてやる。


「やめてもらえますかね。困るんですけど」


 俺の言葉を聞いて、チャラ男は怒りの表情を浮かべた。


「はあ?人が親切心で声を掛けてやってるっつーのに、何が困るっつうんだよ?てか女連れでいい気になってんじゃねえぞガキが?」


 面倒くさい。俺の事をガキというなら、ユノたち同い年の女子だってガキだ。このチャラ男はガキをナンパしようとしてんのか?

 どう答えたら引き下がってくれるのか悩んでいると、なかなか返事をしない俺に対してチャラ男はさらに強気に出てきた。


「ああ?なんか言ったらどうだおまえ?おまえみたいなガキに階層主の部屋はまだ早いんだよ!君たち、こんな弱そうな男より、俺らと一緒に行った方が安全だぜ」


 再びユノに声を掛け近寄ろうとするので、さすがにチャラ男がそれ以上ユノに近づかないように俺は手を上げてチャラ男を止めた。


「ああ?」


 俺が邪魔をしたのが許せなかったようでチャラ男は俺を睨んでくる。

 するとユノが俺に助け舟を出した。


「あなたたちよりもシロウの方が強いので、大丈夫です」


「はあ?こんなガキが?そんなわけないでしょ!ハハハ」


 俺たちのやりとりを横で見ていたマイカは怖そうにおびえているし、イオリはイライラして今にもキレそうだ。早くこの場を納めないといけない。

 そしてチャラ男は俺の実力を見定めるべく質問をしてくる。


「お前レベルいくつだよ?まだ2になったばかりか、もしかしてまだレベル1だろ?」


「いや、レベル4だけど」


「はあ?嘘つくんじゃねえよ!お前みたいなガキがレベル4なはずねえだろ!」


 どうやら俺のレベルを嘘と決めつけたチャラ男は、怒って俺の襟首をつかんできた。

 さすがに温厚な俺も、その手首を思い切り握り締める。


「いだだだだだだだだ!」


 大げさに痛がるチャラ男。かわいそうなので手を放してやる。

 すると、俺の方を少し見た後、何やらぶつくさ言いながら立ち去って行った。


「……あいつら、結局階層主に挑戦する気あったのか?」


「シロウ大丈夫?」


 ユノが心配してくれる。


「いや、俺は大丈夫なんだけど……」


 俺が先週一人で探索をした時は、心配した先輩探索者が何人か声を掛けてくれた。迷宮探索者は親切な人ばかりだと思ったものだが、ユノ達のように可愛らしい女子三人がいると、ああいうナンパ目的の男が近寄ってくるようだ。


「お前たち三人だけで探索には来ない方がいいな」


「そうだよ。だからシロウを誘ったんじゃない」


 どうやらしっかりと警戒していたらしい。


「さっきのチャラ男たちの件は、後でダンジョンレコーダーの映像を探索者組合に提出しておこう」


「ねえねえ、シロウさっきレベル4って言ってたけど、いつの間にレベル4になったの?」


「さっきおまえらと別れてから第四階層の探索をしてたんだ」


「え!いつの間に?ずるい!」


「ずるくない!」


「本当にダンジョン探索が好きなんだね」


 ユノに呆れられた。

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