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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第60話 女子の買い物には付き合いきれん

 土曜の早朝の電車内は週末の混雑とまではいかないが、ちょうどいいくらいの賑わいで、車窓から差し込む朝日がまぶしかった。俺は、ユノ、マイカ、イオリの三人と並んで座り、新宿ダンジョンへ向かう特別快速電車に乗っていた。


「東京の電車って、特急とか特快とか準急とか色々あって、難しいな」


 俺の言葉にユノが答える。


「私も良く分かってないんだけど、スマホで検索すればだいたいわかるんじゃない?」


「確かに。スマホがなかった時代は乗り換え激ムズだったんだろうなあ……」


 俺たちの会話を聞いて、マイカが訪ねてきた。


「シロウ君たちの住んでた街って、電車の種類ないの?」


「いや、そもそも電車にすら乗らなかったな。車社会なんだろうな。学生は自転車でどこまでも行く感じだったな」


「私はバスで出かけることもあったよ」


 俺たちはそんなふうに他愛のない会話をしながら、電車に揺られていた。およそ40分ちょっとで目的地へと着く予定だ。


「新宿と言えば、先週は私たちは新宿で乗り換えして原宿まで行ったんだよ」


「猫カフェか?」


「そうそう。ね、イオリ」


「あ、ああ。できれば毎週行きたいところだな」


 猫カフェのことを思い出しているのだろうか、イオリがニヤついている。


「毎週行くようなところじゃねえだろ?そんなら猫飼った方が早いじゃないか」


「そうだな。私は将来絶対にネコチャンをお迎えするつもりだ」


 なんかイオリって、もっとクールな子かと思っていたが、戦いと猫のことになると人が変わるみたいだ。


「猫はまた今度にしてくれ。今日の目的地は『探索者リサイクル市』だ」


「そ、そうだったな……」


 イオリがシリアスな顔に戻る。


「可愛い装備があるといいねえ」


 今日の本題の話になった途端、とんでもない的外れな事を言い出すマイカ。

 そしてユノもそれに乗っかる。


「そうだね。絶対に可愛い装備を見つけようね」


「おまえら真面目に探索する気があるのか……?」


 窓の外にはだんだんと高層ビルが見えるようになっていた。


・・・・・・・・


 新宿で降りた俺たちは、俺が先頭に立って女子たちを案内しながら、新宿ダンジョン前に集まる探索者リサイクル市へとやってきた。

 先週ここで買い物をしたことのある俺が、三人にいろいろと紹介しながら見て歩く。


「それじゃ、まずは探索服を探す感じか?」


「そうだね。武器はとりあえずは木刀のままでいいけど、可愛い服じゃないとテンション上がらないもんね」


 まだかわいいにこだわっていやがる……。

 とりあえず初心者の俺たちにもよさそうな店を見つけ、一緒に探すことにする。


「これなんかどうだ?オオトカゲの革のセットアップ。軽くて丈夫だぞ」


「全然かわいくないじゃん!シロウ、センス悪いよ」


「かわいく……?」


 混乱してる俺にマイカが説明してくれる。


「獣の革は男の人が着てるにはかっこいいかもしれないけど、女の子には似合わないよね」


 そういうものなのだろうか?

 しかし魔物のドロップアイテムの革を使って作ったアイテムは数多い。これら全部NGなのか……。

 気を取り直して、革以外のアイテムを探す。


「ユノ、これはどうだ?防刃ジャケットみたいだぞ。値段も安いし」


「えー?黒?」


「色?」


「可愛くないよね」


 ユノが黒い色に拒否感を示すと、マイカが可愛くないと共感する。こいつら、本気で可愛い服を探すつもりか?

 イオリも何も言わずに店内にある服を物色しているが、気に入ったものが見つかってなさそうだ。


「それじゃ逆に、おまえらどういうのが欲しいんだよ?」


「そうだなあ。シルエットが男性っぽくなくて、女性らしい可愛さのある形がいいなあ」


 何を言っているのか理解不能。


「私はやっぱりもっと明るい色合いのものがいいな」


 どうせ汚れるんだから、色にこだわる理由が謎。


「私は猫のプリントか刺繍が入ったものを探している」


 最後に一番やべえやつがいた。

 ……俺にはこいつらの琴線に触れるアイテムを見つけられる自信は全くなかった。


「俺にはお前たちの欲しいものを探すのは無理です。すいません……」


 30分ほどいくつかの出店を回ったが、俺はついに諦めた。

 俺のギブアップ宣言を聞いたユノ、マイカ、イオリの三人は顔を見合わせる。


「やっぱりこういうところじゃ良い服が見つかりそうにないね。デパートとか行ってみる?」


「そうしよ」


「ちょっと待って!俺はもうおまえらの買い物に付き合うの無理!別行動にさせて!」


「仕方ないなあ……」


 どうやら俺には、女性特有のゆっくり物色して買い物をするのに、一緒に回るのは無理だと分かった。

 そして俺たちは別行動をとることにし、お昼に新宿ダンジョンビルで待ち合わせをする約束をした。

 デパートに向かって歩き出す三人を見送った後、俺はスマホを確認する。

 現在の時刻は9時半、昼まで少し時間がある。


「さて、どうやって時間を潰すかな?」


 俺が振り向くと、そこには新宿ダンジョンビルがそびえ立っていた。

 そうだ、俺の最高の時間つぶしと言えば決まっているじゃないか。

 よし。今から新宿ダンジョンの第四層の続きを探索するぞ!

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