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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第59話 スコア

 探索の授業ではパーティーを組みつつも俺は白石たちとは別行動でスライムを狩っていた。連携など必要がないスライムを効率的に狩るには個人行動が最適なのだ。

 そうして一人で行動していると、ユノ達のパーティー(ユノ、マイカ、イオリの三人)と出会った。


「あっ、シロウ君」


 俺を見つけて声を掛けてきたのはマイカだ。


「よう!捗ってるか?」


 俺の挨拶に、ユノが答える。


「捗るわけないじゃない、シロウが授業中は水魔法でスライムを集めるのを止めておけって言うもんだから、こつこつ倒すしかないのよ」


「そうだよな、悪い悪い」


 マイカの水魔法を使って水を撒けばスライムが集まってくる。だがそんなスライムの特性は意外と知られていないようだ。だとしたらこれを秘密にしておいた方がクラス対抗戦の時に役に立つのではないかということと、こういう迷宮独特のシステムの発見をダンジョンナレッジというのに登録すると知的財産として褒賞をもらえたりすることもあるらしいので、そちらも確認しているところだ。登録前に人に知られて先に登録されたら台無しなので内緒にしてもらっている。


「そーいえばさー、シロウは日曜日にどこに遊びに行ってたの?」


「へ?」


「日曜日、電車に乗って都心の方に行ってたでしょ?」


「なんで知ってるの?」


「私たちは日曜日に原宿に遊びに行ったんだけど、その時電車でシロウを見かけたんだよね。その革ジャンもその時買いに行ったんでしょ?」


 いろいろとお見通しのようだ。だが俺はどこまで話して良いか迷う。

 正直俺が一人でダンジョンに潜っているのはあまり言いふらしたいとは思わない。学園で第二階層探索はまだしてはいけないと言われているのに新宿ダンジョンで第四階層まで行ったという話が広まったら、もしかしたら教師に怒られる可能性もある。一応規則上は問題ないはずだが。でも貴族はレベリングで高レベル探索者に学園よりも深い階層の探索に連れて行ってもらえるらしいし、ばれても問題ないのかな?分からないけど、とりあえずは秘密にしておきたい。

 だがユノ達はどっちかと言えば身内みたいな感覚だ。他人に話さないでくれと言って、彼女たちにだけばらすのなら大丈夫かな。

 俺が思案していると、ユノはまた話を続けた。


「私たちはね、クレープを食べたり、猫カフェに行ってきたりしたんだよ」


 週末の事を思い出したのかマイカも会話に参加してくる。


「猫ちゃん可愛かったねえ」


「ね!」


「猫ちゃん?……別にカフェに行かなくたって、どこにでもいるだろ猫くらい……」


「分かってないなあ!ノラネコは警戒してなかなか近寄らせてくれないんだけど、猫カフェの猫ちゃんは人懐っこいんだよ!」


「猫のことはネコチャンって言う決まりなのか?」


「もー!良さが分かってないなあ。あのクールなイオリだってメロメロだったんだから!今度シロウも連れてってあげようか?」


「いや、遠慮しとく……」


 なんだか話が逸れていく……。


「……それで、その革ジャンはどこで買ったの?」


 一気に話を引き戻された。


「これは……新宿駅前の探索者リサイクル市だ」


「えー?何それ?楽しそう!」


「なんか週末限定でフリマみたいなのがやってたんだ」


「それ目的で新宿まで行ったの?」


「目的というか、目的は新宿ダンジョンだったんだけど……」


「ええ?誰と行ったの?」


「一人で……」


「一人でわざわざ新宿まで行ったの?どこも一緒じゃないの?」


「実は、第二階層より先を探索したくて……」


 思わず暴露してしまう。まあユノたちならいいか……。


「まさか……一人で第二階層に行ったの?」


「あー……最終的には、第四階層まで……」


「はあああああああっ!?!?」


 俺の言葉にユノは大げさに驚いた。

 その後はユノから、こないだの土日の探索のことを根掘り葉掘り聞かれてしまい、嘘をついてまで隠すほどではないと思い、土曜日に第三階層で知らない人を助けたことや日曜日に第三階層主のホブゴブリンを倒した後に第四階層をちょっとだけ覗いてポータルで帰ってきたことまで、全部洗いざらい喋ってしまった。

 三人は俺の話をワクワクした表情で聞いていて、話が終わるとユノは怒るように言った。


「私たちに内緒で探索に行くなんてズルいよ!」


「ズルいの?」


「だって仲間でしょ!」


「いや、放課後は最近一緒に探索してるけど、俺のパーティーメンバーは白石と水野だから」


「それは授業中だけでしょ?」


「そうだよ」


「じゃあシロウの正式パーティーじゃないじゃん」


「正式パーティーって……、正式には俺はソロ探索者だよ!」


「……そっか、ソロだったんだ。……なんか、ちょっとさびしいな」


「なんだよそのリアクション?」


「まあいいや、それじゃ今度の休みは私たちも連れてってね」


「何でそうなる?お前たちと一緒に探索をしたら第四階層の続きの探索ができないじゃないか」


「じゃあ私たちも第四階層に行けるくらいにレベルアップするのを手伝ってよ」


「だから何でだよ!」


「仲間でしょ!」


「今日しつこいね……」


「じゃあ分かった。土曜日か日曜日のどっちかだけでいいから連れてって」


 うーむ……、そうすれば残りの一日は自分の探索ができるのか。


「それならまあいいか……?」


「やった!」


「いやでも待て、お前も第二階層の探索をしたいってことだろ?だとしたらその前にまずはレベル2になるのが先だ。そして俺抜きでヒュージスライムを倒したら一緒に新宿ダンジョンの第二階層の探索に行こう」


「分かった!約束ね!」


 上手く断ることができたのかもしれない、なぜならレベル2になるのは普通は6月後半から7月にかけてだと言われているからだ。……と思ったが、よく考えたら俺たちは今も普通じゃない探索をしている。

 普通の探索というのは、毎日授業での探索で数匹のスライムを倒す。それを続けていると6月後半から7月にほぼ全員がレベル2に上がるのだ。

 だが俺たちはマイカの魔法でスライムをおびき寄せ、先週から大量のスライムを倒している。明らかにペースが速い。


「ちなみにユノ、マイカもスコアは今どれくらいだ?」


 スコアとは、一年一学期で言うと単純に一人当たりのスライムを倒した数だ。二学期は第二階層の魔物、三学期は第三階層の魔物の数で計算する。

 探索終了後、入手したマジックジェムを売却し、パーティーメンバーの数で割る。その合計数がスコアだ。一学期のノルマは100以上であり、そして同時におおよそ100でレベルアップをする。

 ユノ達のスコアは、


「私は90だよ」


「私は91」


「私はまだ80だ」


 放課後部活に出ていて一緒に探索しないことがあったイオリだけ少し少ない。


「ちなみに今日倒した数は?」


 俺に言われて、三人はそれぞれ回収したマジックジェムを数える。


「5!」


「私は4」


「私は6だな」


「とすると、二人ともちょうど95、イオリだけ86。もう少しでレベルアップじゃん!」


「あと5匹だ!」


「がんばろう!」


「うむ」


 その日の授業を終え、迷宮の入り口でスキルボードを確認する。

 その結果、ユノもマイカの二人はレベル2へと上がっていた。

 その表示を見たユノが、満面の笑みで俺の腕をつかんだ。


「はいっ、これで明日の約束、決まりね!」


 イオリだけ残念ながらまだレベル1だったが、イオリの実力ならレベル1でも第二階層に行っても問題ないだろう。


「分かったよ」


 俺はしぶしぶ翌日三人と新宿ダンジョンへ行くことを承諾するのだった。

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