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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第一章 迷宮と少年たちのはじまり -The Beginning of Labyrinth and Youths-
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第6話 入学式を終えて

 入学式が終わって俺たちは教室へと戻ってきた。

 この後、学生証の配布と注意事項についての説明があるらしいが、それが始まるまでの短い休み時間、先ほどの入学式でのことでみんな話が止まらなかった。


「よくぞ言ってくれた、キョウヤ!」


「ありがとう、マモル」


 紫村の友人の千堂が紫村を讃え、紫村は千堂に礼を言っていた。

 そんな立ち話をする二人を取り囲むように数名の女子が集まっていて、千堂と同じように紫村を褒め讃えている。


「紫村君かっこよかったよ!」


 確かに紫村の顔はかっこいい。だが入学式の行為は本当にかっこよかっただろうか?

 新入生代表の挨拶のはずが、ただ単に貴族の上級生たちに喧嘩を売っただけの演説だった。

 紫村がどんな考えを持っていようが構わないが、黙って行動だけしていればいいのに、わざわざああして貴族たちを貶して怒りを買うようなことをしたのはいただけない。そのせいでこれから先、俺たちDクラスに意地悪される気がする。

 ただのトラブルメーカーだろこいつ。


 だがめんどくさくて直接そんなことを言う気もない俺は、教室の一番後ろの席に一人座って黙って教室の様子を眺めていた。

 すると紫村たちのところに早坂が近寄っていくのが目に入った。

 嫌な予感がする。


「紫村君」


 早坂が紫村に声をかける。紫村と千堂、そしてその周りの女子たちも早坂に注目する。


「さっきの挨拶のことだけど……紫村君にいろいろ思うところがあるのはわかるけど、貴族の人たちとももっと仲良くしてみたらどうかな?」


「どういう意味?」


 紫村の顔に不満そうな表情が浮かぶ。これはまずい。早坂を止めないと。


「あんな言い方したら、きっと傷つく人もいると思うんだよね。貴族の中には嫌な人っているんだろうけど、そうでない人もいると思うんだ。だから貴族がとか一般市民がとかそういう言葉でくくるのはやめて、良い人とは貴族だって仲良くやればいいし、だからあんな言い方はしないで……」


「君に何が分かるっていうんだ?」


 紫村が少し強い口調で早坂の言葉を遮る。驚く早坂の言葉が途切れる。


「そうよ、あんた何なのよ?紫村君より成績悪いくせに偉そうに」


 取り巻きの女子たちからも早坂を責める言葉が発せられる。

 話が通じなかったからか、さすがの早坂も何と言っていいか分からず困惑している。


「良い人がいるとかいないとか、そういう話をしているんじゃないんだ。この国の貴族制を破壊しないとダメだっていうことを僕は言ったんだ。それとも君は貴族制に賛成なのか?」


「あの……そういう事はよくわからないんだけど……」


「わからないなら僕に意見しないでもらえるかな!」


「……ご、ごめんなさい」


 ついに謝ってしまった早坂に、取り巻きの女子たちも「知らないくせに出しゃばらないでくれる?」だの、「この子もしかして紫村君の気を引きたいだけなのかもよ」だの、好き勝手言い始める。

 そこでやっと俺もその輪に辿り着いた。


「悪い悪い紫村!俺たちは地方出身で、周りに貴族がいなかったから、そういう事は分かんねえんだわ!」


「一ノ瀬君」


 早坂が驚いた顔で俺を見る。

 紫村たちの意識が俺に移る。敵を見るかのような視線が痛い。


「君たちは、そんなに何も知らないでこの先この学園でやっていけるのかい?この学園は社会の縮図だ。あからさまな貴族優先、平民蔑視が染みついている。貴族にも良い人がいるだなんて、そんな甘い考えを持っていたらつらい思いをするのは君たちの方だよ。入学式だって僕が何か言う前にブーイングをしてきたのはあいつらの方だからね」


「……そうは言うけどな。今朝、生徒会長の妹が挨拶代わろうかって提案してきただろ?」


「提案?あれは生徒会長が来なきゃ、もっと強い口調で命令してきただろうね。まあそれでも僕は断ったけど」


「あれたぶんな、あの妹、入学式でお前が非難されるだろうと心配して、代ろうかって提案してくれたんだぜ?」


「は?あの女は自分が名誉ある役に付きたいから自分がやりたいって言っただけだよ」


 紫村は驚いた顔をする。紫村だけでなくその場に居合わせた千堂も驚きを隠せずにいる。


「本当にそうかな?」


「君に何が分かるっていうんだ?それともあの女から直接聞いたのか?」


「そうじゃないけどな。でもあの提案を受け入れていれば、お前が入学式で罵声を浴びることもなかったし、入学式も平穏に終わっていただろうな」


「あ、あれはあれで良かったんだ!僕の意見を表明することができたんだからね!」


「ああ、お前にとっては良かったのかもしれないな。でもああやってお前が貴族に喧嘩を売ったせいで、今後俺たちDクラス全員が貴族から悪意を向けられるようになっちまったけどな。クラスにはこの早坂みたいにみんなと仲良くやっていきたい人間だっているんだぜ?」


 俺の言葉に紫村が何も言い返せずにいると、取り巻きの女子たちが俺を責め始める。


「あんた何よ偉そうに!あんた確か成績一番悪いんでしょ?頭悪い癖に偉そうな事言うのやめてもらえるかしら?」


 紫村とはまだ討論できるが、こいつらとは会話が成立しない。何を言われても自分たちが正しいと言い返したいだけの人間だ。

 俺は取り巻きの女たちは無視し、最後に紫村に声をかける。


「まあ、このクラスにもお前と違う考えの人間もいるっていうのだけは覚えといてくれ!それじゃ俺たちは席に戻るぜ。な、早坂」


「うん……」


 そう言って俺と早坂はその場を離れた。

 相変わらず取り巻き女たちの罵声は止まらないが無視だ。

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