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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第四章 内なる力の目覚め -Awakening Within-
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第58話 金曜日に登校すると、担任が変わっていた。

 灰島による紫村襲撃事件があった翌朝、いつものように教室の席に座っていると、なぜか真島の代わりに、医務室の城之内先生が教室に入ってきた。

 一体何事かとざわつく教室内。


「はい、皆さん、静かにしてください!」


 そして教壇に立った城之内先生は、状況の説明を始める。


「もう話を聞いている人もいるかもしれませんが、昨日このクラスの紫村君が、B組の灰島君たちに襲撃され怪我を負いました。そしてこのクラスの担任の真島先生は加害者の灰島君を擁護し、あろうことか被害者の紫村君を責めて退学させようと企みました」


 俺も関わったためそのことを知っていたが、初めてその話を聞いた生徒からは、「えー!」と驚きの声が漏れた。


「もちろんそんなめちゃくちゃな事がまかり通るわけがありません。真島先生にはこの学園を去ってもらうことになりました。また本件は本来傷害事件として警察沙汰になってもおかしくない事件でした。B組の灰島君についての処遇ですが、生徒会長の九条さんから灰島君の御父上である灰島男爵へと話をしてもらい穏便にことを済ませたいということとなり、灰島君には普通の高校へと転校してもらい今回の件についてはそれで手を打ってもらうこととなりました。ということなんだけど、良いわね?紫村君」


 城之内先生からそう言われ、紫村は少し考えて、そして「はい」と短く返事をした。


「そもそも紫村君にだって悪いところがあるわよ。入学式で貴族を敵に回す発言をして反感を買うようなことをしたから、あなたの事をよく思っていない人も多いのよ」


「……ご迷惑をかけてすいませんでした。あの時の事は、今では良くない言い方だったと思っています」


 なんと、入学当初は貴族に対してあんなに喧嘩腰だった紫村が、考えが多少変わったようだ。これに懲りて今後はトラブルを起こさないでもらいたい。

 そしてなぜか城之内先生は俺の方を見た。


「それと一ノ瀬君!」


「はい?俺?」


「あなたもほどほどになさいね」


「待ってください。俺何かした?」


 俺はなぜ怒られているのか分からず、困惑した。


「何かしたって……あなた自覚ないの?」


「え?全く心当たりないんですけど?」


「はぁ。あなたはまず探索初日に大けがをするという事件を起こしたでしょ?」


「あれは紫村が押したから……」


「それにA組の九条ヒカルさんを助けるためと言って、勝手に第一階層の階層主に挑戦した」


「それは悲鳴が聞こえたから仕方なく……」


「それに昨日も紫村君が襲われた事件にかかわってたみたいじゃない!」


「俺は紫村を助けようとしただけで、何もしてねえわ!」


 全部冤罪だ!確かに立て続けにトラブルにかかわってしまったが、全部俺が悪いわけじゃない!


「だれが原因とか関係ないわ。あなたと紫村君の二人が、入学早々立て続けにトラブルにかかわっているせいで、真島先生が去った今、誰もD組の担任にはなりたがらないのよ」


「ええ?それじゃ担任不在なの?」


「ええ、でもそれじゃ困るでしょ?今大急ぎで新しい担任の先生を探してくれているのだけれど、見つかるまで私が担任代行をすることになったわ」


 なんと、真島の代わりに城之内先生が担任に?

 城之内先生は優しいし、美人だし、昨日も俺たちに協力して助けてくれたし、もうずっと城之内先生が担任でいいんじゃないか?

 と俺が思ったら、考えていたのは俺だけじゃないようで、「城之内先生が正式にD組の担任になって!」と、何人もの生徒から言われていた。


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、私には医務室のお仕事もあるの。ごめんなさいね。そういうわけで短い間になると思うけど、みなさんよろしくね」


・・・・・・・・


 俺は最近、探索の授業では白石と水野とパーティーを組んでいる。

 一番最初のころは色々な人間と組んで誰とでも上手く連携をなどと指導されたが、そう言われたのは本当に最初だけで、最近はほぼみんな固定メンバーだ。

 白石と水野は、俺がスタンドプレーに走っても文句を言わないから気が楽だ。二人も俺が他の生徒よりもたくさんスライムを倒してくるため、俺と組むのは楽でいいと思ってくれてるらしい。つまりはWin-Winの関係ってやつだ。


「そういえばおまえらスコアはいくつになった?」


 スコアとは、一年の一学期で言うと単純に一人当たりのスライムを倒した数だ。二学期は第二階層の魔物、三学期は第三階層の魔物の数で計算する。

 探索終了後、入手したマジックジェムを売却し、パーティーメンバーの数で割る。その合計数がスコアだ。一学期のノルマは100以上であり、そして同時におおよそ100でレベルアップをする。

 俺の質問に水野が答える。


「おかげ様でもう40になったよ。他のクラスメイトと比べて断然高いよ。あの紫村君たちよりも上だからね」


「もうレベル2の一ノ瀬君には興味のない話かもしれないけど」


「まあ俺はポーション狙いでスライムを倒すだけだよ」


 スライムがポーションを落とすということがなければ、本当に探索の授業の意味がなくなってしまうところだった。

 俺たちがそんな会話をしている時、すぐ近くで赤石たちのパーティーがもめていた。


「ごめん、赤石君、僕らは別の人と組もうと思うんだ……」


「あ、ああ。俺にパーティーを外れろっていうことか?」


「いや、そういうわけじゃないんだけど、僕らが他の人と組むんで、結果的にそうなっちゃうんだけど……」


「なんか気に障ることをしたか?」


「いや、そういうわけじゃ……」


 ちょっと気になって、俺はその様子を見守る。

 すると別の仲間が赤石に向かって発言した。


「はっきり言ってやれよ。赤石君。君が喧嘩をしたから昨日トラブルになったんだろ?そういう人と組むのが嫌なんだよ僕らは」


 赤石がパーティーを追放されるようだ。昨日貴族を殴ったっていう話を聞いたからだろう。

 はっきりと追放を言い渡された赤石は、眉間にしわを寄せ思い悩んだ表情を見せた。


「ひっ、お、怒らないでくれよ!仕方ないじゃないか!」


 その顔を見て、クラスメイトは狼狽する。


「いや、悪い、怒ってはいない。分かった。俺は別のパーティーを探す」


「そ、そうかい?分かってくれたらいいんだ」


 赤石は一人になってしまったようだ。

 幸い俺のパーティーは三人だ。もう一人入る余裕がある。


「おーい!あか……」


「ちょっと!」


 俺の腕を白石が引っ張る。


「どうした?」


 白石はひそひそ声で俺に話しかける。


「もしかして赤石君を誘おうとしてるんじゃないよね?やめてよ。彼は不良だっていうじゃないか。もし一ノ瀬君が赤石君と組むなら、僕らは抜けさせてもらうよ」


「ええ?」


 白石と水野が抜けたら俺は赤石と二人になってしまう。そしたらまたもう一人探すのは面倒だ。それはこいつらも同じだが、こいつらは当てがあるのだろう。

 俺が躊躇していると、俺より先に別の人間が赤石に声を掛けた。


「赤石君、僕たちのパーティーに入らないか?」


 紫村だった。


「紫村……」


「僕たちは三人だから、ちょうど一人空いているんだ」


「いいのか?優等生のお前たちと違って、俺は落ちこぼれだぞ?」


「何を言うんだ?そんなことを言ったら、僕たちD組は全員落ちこぼれだ。だけど僕は誰一人として落ちこぼれなんていないと思ってる。クラス全員でがんばろうよ」


「紫村……。ありがとう」


「お礼を言うのは僕の方だよ。昨日は助けてくれてありがとう!」


 そして千堂もその会話に加わる。


「よろしく、赤石君」


「ああ……」


 そんな三人の会話を聞いていた、紫村のパーティーの榎島はというと、


「あ、あの、そしたら赤石君がもといたパーティーが人が足りなくなってしまうから、僕がそっちに入ろうかな……。それじゃ」


 赤石にびびってパーティーを抜けてしまったようだ。

 なんにせよ、赤石も組むパーティーが決まってよかった。紫村と赤石っていうのも以外な組み合わせな気もするが。

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