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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第三章 剣と誇り -Sword and Pride-
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第45話 第一剣術部

「部活動見学?」


 俺は紫村に聞き返した。


「ああ、今日の放課後にマモルと一緒に部活動見学に行こうと思ってるんだけど、一ノ瀬君も一緒にどうだい?」


 正直、興味はあった。

 この学園の部活は、普通の高校による全国大会などには出場できない代わりに、さまざまな特殊な部活があり、割と入部退部も自由にできるらしい。

 特に人気なのが各種の武術部だ。一年の三学期になると第三階層で人型の魔物であるゴブリンと戦うことになるため、対人戦闘を学ぶために入部が増えるらしい。

 かく言う俺も昨日実際にその対人戦闘を体験して、やはりそのための技術を学んでみたいという気があったのだ。


「部活動って言ったって、どの部活を見に行くんだ?」


 武術部以外だったら興味がないと断るつもりでそう尋ねた。すると紫村から返ってきたのは意外な答えだった。


「第一剣術部さ」


「第一って……第一が付く部活は貴族しか入れないんじゃなかったか?」


 剣術部には第一剣術部と第二剣術部があり、第一剣術部には貴族しかいないと聞いたことがある。

 すると紫村の横にいた千堂マモルが解説を始めた。


「調べたんだが、入部するためには貴族でなければいけないなどという規約はどこにもなかったんだ。第一剣術部には一流の武術家が講師として教えに来ると聞く。それに対して第二剣術部は同好会のような雰囲気らしい。だとしたらどうせ入るなら第一剣術部の方がいいと思わないかい?」


「規約って……、実際部員には貴族しかいないんだろ?」


「らしいね。だとしたら僕たちが庶民の部員の第一号になればいいじゃないか」


「いや、万が一入部できたとしても、お前ら貴族と仲良く部活動できんのかよ?」


 紫村の貴族嫌いは特別だ。なんかあったらすぐ喧嘩しそうだ。

 俺の問いは的を得ていたらしい。紫村は難しい顔をして少し考えてから答えた。


「仲良くは無理だろうね。でも講師から指導してもらうだけでもいいと思ってるんだ」


 門前払い受けなきゃいいんだけどなと考えていたら、俺たちの会話に割り込んで来る者があった。


「第一剣術部に見学に行くのかい?」


 俺たちは声の主を見た。

 イオリだった。


「あ、ああ、瀧川さん。そのつもりだよ」


「私も一緒に行っていいかな?私も気になっていたんだ」


 隠れ戦闘狂のイオリは目を輝かせていた。


★★★★★


 放課後、結局俺たち四人で第一剣術部の見学に行くことになった。

 この学園には体育館の代わりに武道館があり、主に第一剣術部が使用している。外から見たことはあったが、中に入るのは初めてだ。

 練習する生徒たちの騒がしい音が中に入る前から聞こえていた。木の床をドタバタ踏み込む足音や、激しい掛け声など。活気があるのが見て取れる。

 紫村が見学の許可を取ると、意外にもスムーズに見学させてもらえることになった。

 中に入るとなかなかの広さだった。2階には観覧席もあり多くの人を収容できる。道場では木刀と防具を装備した生徒たちが練習をしていた。


「おお!これが第一剣術部……」


 俺は珍しいものを見る気持ちでちょっと感動していた。

 並んで素振りをしている生徒たちもいれば、鎧をつけたマネキンに打ち込みの練習をしている者、一対一で対人戦の練習をしている者もいた。

 そんな練習風景に見惚れていると、俺たちは道場の隅に並べられているパイプ椅子へと案内された。そこには俺たちより先に見学に来ていた生徒たちがいて、椅子に座って部活風景を見学していた。


「あら?」


「ん?」


 俺を見つけて振り返ったのは、A組の九条ヒカルだった。


「お嬢も見に来てたのか」


「ええ、まだ入部するか決めてはいないのだけれど、私に合った武術を探そうと思って」


「そっか。弓術部とか槍術部とかいろいろあるしな」


「そうね」


 俺は空いていた席……お嬢様の隣に当然座っている如月メイの横に座った。

 俺の横にはイオリが、そして紫村、千堂と並んで座る。


「……世話になったな」


 隣に座る如月メイが、俺に声をかけてきた。金曜日のことだろう。

 たった3日前のことだが、ヒュージスライムから二人を助けたことが遠い昔の事に感じる。土日が濃すぎたせいだ。

 そういえばお嬢様の陰に隠れていて、メイから直接お礼を言われていなかった気がする。


「まあ気にすんなよ」


 俺は軽く答えた。

 そして第一剣術部の部活動を見ようとしたのだが、どうも横からの視線が気になる。

 メイだ。なんかずっとこっちを見ている?と思って見ると、俺ではなくイオリを見ているようだ。


「メイちゃん、イオリと話したいの?」


「あ……、そ、そういうわけでは」


「イオリ、メイちゃんが金曜日のお礼言いたいみたいだから席代わってもらってもいいかな」


「ん?もちろんだ」


 俺は気を聞かせてイオリと席を代わってあげた。

 だがメイはなかなか話しかけようとしなかったため、イオリは再び剣術稽古の様子を見始めた。


「き……金曜日のことは感謝する」


 照れていてなかなか声を掛けられなかったのか、メイがようやく重い口を開いた。


「ああ。シロウも言っていたが、気にしないでくれ。私は階層主と戦えて楽しかっただけだから」


 イオリはニコリと笑って答えた。

 メイも視線は道場を見ながら、イオリへと再び話しかける。


「その……おまえの剣術はどこの流派なのだ?」


「流派?いや、私の剣は父と兄から教わったもので、流派とかは特にないと思う」


「そうなのか?それにしては流麗な剣裁きだった。どこぞの有名な流派だと思ったのだが」


「褒めてくれているのか?ありがとう」


「いや、まあ……」


 二人の会話を横で聞いていて、なんだかほほえましく感じた。

 すると、俺たちの前に第一剣術部の部員が一人やってきた。


「本日は我らが第一剣術部の見学へようこそ。それでは入部希望者は体験入部ということでこれから実際に剣を持って練習に参加してくれ」


 俺は今日は見学だけのつもりだったのだが、入部希望の紫村と千堂はすぐに立ち上がって他の入部希望者たちと一緒に前に出て行った。


「おいおい、お前らはダメに決まってるだろう」


 やはり紫村と千堂は、入部を断られた。

 ああ、今日は紫村がおとなしくしてると思ってたが、これは絶対揉めるパターンだ……。

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