第42話 レベル3の実力と鉄の短剣
昼食を食べ終えた俺は、新宿ダンジョンへと来ていた。
昨日は緊張したが、二度目となるとなんだか慣れた感じがする。
すれ違う探索者たちに気後れすることもない。
学園の探索者服がゴブリンに破られてしまったので、今日の俺の服装はジーンズに先ほど買ったジャケットを着ている。普段着っぽさもあり、都会の探索者たちの中にいても恥ずかしさはない。たぶん大丈夫。
そして腰には買ったばかりの短剣を差し、手にはいつもの木刀を持つ。通常は木刀、接近戦や硬い敵と戦う時に短剣と使い分ける予定だ。更衣室の鏡で自分の装備を確認し、満足した俺は迷宮へと降りて行った。
迷宮に入る前に一応スキルボードで確認してきたのだが、やはり俺はレベル3に上がっていた。
順調だ。これで昨日よりも楽に探索ができるだろう。
第一階層はほぼ戦闘をせずに通り過ぎ、第二階層では大ネズミも大トカゲも木刀で一撃、第二階層主のジャイアントリザード戦ではついに買ったばかりの短剣を使ってみた。レベル3にアップした攻撃力と、新しい武器の攻撃力によって、ほぼ作業のような戦いで戦闘に勝利した。あっけない。
若干の物足りなさを感じつつ、俺は第三階層へと足を踏み出した。
ここからが本番だ。昨日はゴブリンが複数匹で出現したときに苦戦してしまったが、今日はこの短剣を使えばスムーズに戦える気がする。
そうして歩いていると、一匹のゴブリンと遭遇した。
相変わらず狂暴な緑色の小鬼は、俺の姿を見るや否や襲い掛かってきた。
俺はゴブリンの喉元を狙って横なぎに木刀を振る。
するとあっけなくゴブリンの首の骨を折った感触があり、そしてゴブリンは死んで消えた。
「木刀でも一撃か……」
ゴブリン相手では短剣を出すまでもないかもしれない。
その後も単体のゴブリンと遭遇して倒したのだが、なかなか集団のゴブリンとは出会わない。
昨日は異常だった。あいつらゴブリンを集めてたのか?
ありえる話だ。
一匹の魔物から追われながら逃げ、それを見た他の魔物も追ってきて、敵が集団になるというトレインと呼ばれる現象が起こることがあるという。まとめて倒すことを考えると効率が良いやり方だが、集めすぎて手に負えなくなったり、道中他の探索者を巻き込んだりして大変なことになるので、故意にトレインをすることは禁止されている。
もしかしてあいつらトレインをやったのか?いや、それともあの部屋にゴブリンがたくさんいたのか?
気になった俺は、昨日集団戦をした場所へと向かった。
細い通路から、広くなっている部屋の部分を覗く。するとそこには、目に見える場所に三匹のゴブリンがいた。
そうか、ここは魔物が出やすい部屋なのか。
トレイン疑惑をかけた昨日の探索者たちに心の中で謝罪をする。
離れた場所にいるため、まだ俺は見つかっていない。弓矢や魔法があれば奇襲を仕掛けられる。少なくとも一匹は戦闘不能にできるだろう。手持ちの武器に遠距離攻撃するものがなくて残念だ。こういう時に役割分担のできているパーティだと良いのだろうと思った。ソロの俺は遠距離攻撃用にスリングショットとかを買ってもいいかもしれない。あれなら大した荷物にもならないし。
とりあえず今ないものは仕方がない。行くか!
撤退すると言う選択肢はなかった。
右手に木刀、左手に短剣を持ち、俺は三匹のゴブリンたちに向かって歩き出した。
俺を見つけるなり三匹は襲い掛かってくる。だが今の俺にゴブリンと戦うのに小細工は不要。
射程距離に入ったゴブリンを木刀で一閃。ゴブリンは吹き飛んで地面をバウンドする。
そのすきにとびかかってきたゴブリンを短剣で切り裂く。ほぼ感触がないほどの切れ味でゴブリンの首が胴体から離れる。
そして三体目には蹴りを喰らわす。ドスッ!という感触と共にゴブリンは後ろに倒れる。
そして三匹はマジックジェムへと姿を変えた。
「……余裕だ。昨日はあれだけ必死だったのに……一日で、ここまで変わるとは……」
自分でもちょっと信じられないような気分だった。
俺は完全勝利に満足感を覚えた。
特にこの短剣は良い。良いものだ。ある程度の重さがあるからダメージも与えやすいし、そもそも切れ味が良い。長剣だったら持ち歩くのに重いだろうが、これくらいの重さなら持ち歩くのにも気にならない。
「掘り出しものだったな」
短剣を見てにやけてしまう。
これだけ余裕で勝てるのなら、ちまちまとゴブリンと戦っていても仕方ない。
今、間近になった一つの目標は第三階層の突破だ。ダンジョンは3階層を突破するごとに転移門が開く。そうすれば次回からいきなり第四階層の探索ができるようになる。
今の俺には第一階層も第二階層も移動時間が無駄なだけだ。ポータルが開けば次回の探索が非常に便利になるのだ。
これは挑戦してみるしかないだろう、第三階層の階層主の部屋に。
今ならいける気がする。レベル3の実力とこの鉄の短剣の切れ味なら。




